「中国人身売買」と検索すると、女性の強制結婚、性的搾取、誘拐、海外での強制労働、SNSを通じた人身取引など、さまざまな問題が浮かび上がります。しかし、この言葉が指す範囲は広く、中国人が被害者となるケース、中国国内で外国人が搾取されるケース、中国系の犯罪ネットワークが国境を越えて関与するケースを区別する必要があります。
2026年11月現在、日本の警察庁が公表した2025年の人身取引事犯では、被害者77人、検挙142件、被疑者78人が確認されています。一方、中国国内では、結婚を装った人身取引やオンライン上の虚偽求人を利用した搾取が問題となっており、2026年には中国の最高人民法院もインターネットを利用した新たな犯罪形態への警戒を示しました。日本の公的統計、国際機関の支援資料、海外政府の調査を照らし合わせながら、実態と背景を整理します。
【基礎知識】中国人身売買とは何を指す?人身取引との違いと犯罪の定義

中国人身売買とは、一般的には中国人を対象とする売買・誘拐・搾取や、中国国内外で発生する人身取引を指す表現です。法律や公的統計では、通常「人身取引」という言葉が使われます。
重要なのは、単に人を別の場所へ移動させたり、金銭を介して結婚を仲介したりすることと、犯罪としての人身取引を区別することです。人身取引は、搾取を目的として、暴力、脅迫、詐欺、誘拐、権力の濫用、弱い立場の悪用などの手段を用いて、人を獲得・移送・引き渡し・収受・隠匿する行為を指します。
国連の人身取引議定書が定める3つの要素
国連の人身取引議定書第3条では、人身取引を次の3要素から定義しています。
- 行為:人を獲得する、輸送する、引き渡す、隠匿する、受け取る。
- 手段:暴力、脅迫、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用、脆弱な立場の悪用など。
- 目的:性的搾取、強制労働、奴隷化、隷属、臓器摘出など。
この定義で特に重要なのは、被害者本人が同意したと主張していても、上記の不正な手段が用いられていれば、人身取引の成立を妨げないという点です。
また、18歳未満の児童については、搾取目的で人を獲得・移送・収受するなどの行為があれば、暴力や脅迫といった手段が証明されなくても人身取引に該当します。警察庁もこの国際的な定義を採用しています。
中国人身売買で区別すべき3つの対象
この問題を理解するには、被害者と加害者の国籍、犯罪が発生した場所を分けて考える必要があります。
- 中国人が被害者となるケース:中国国内の性的搾取や強制労働、海外の詐欺拠点や建設現場での労働搾取など。
- 外国人が中国国内で被害に遭うケース:外国人女性の強制結婚、性的搾取、家事労働や工場労働の強要など。
- 国際的な犯罪ネットワークが関与するケース:中国人や外国人を国境を越えて移送し、性的搾取や強制的な犯罪行為に従事させる事案など。
したがって、中国人身売買という言葉だけで、被害者と加害者を同一の国籍集団として捉えることは適切ではありません。中国人自身も、国内外で深刻な人身取引の被害に遭っています。
【被害の実態】中国人女性の性的搾取・強制結婚・強制労働の実情
中国に関連する人身取引では、性的搾取だけでなく、偽装結婚、家事労働、工場労働、詐欺への強制参加など、複数の形態が確認されています。
1. 中国人女性や少女に対する性的搾取
米国務省の人身取引報告や英国政府が2026年に更新した中国の現代奴隷制に関する国別資料では、中国人女性や少女が中国国内外で性的搾取の対象になる問題が取り上げられています。
報告されている代表的な手口は、都市部での高収入求人を装った勧誘です。地方出身の女性に対して魅力的な仕事を紹介し、移動後に高額な紹介料や渡航費用を請求することで、借金を返済できない状況に追い込みます。
その後、旅券の取り上げ、移動の制限、監禁、金銭的・身体的な脅迫などによって、本人の意思に反して性的サービスを強要する事例が報告されています。
被害者が最初から犯罪組織との関係を認識しているとは限りません。通常の就職活動や恋愛、生活費の援助をきっかけとして、徐々に支配されるケースもあります。
2. 結婚を装った女性の売買と強制結婚
中国に関連する人身取引の中でも、国際的に問題視されているのが、結婚仲介を利用した女性の搾取です。
南アジア、東南アジア、北東アジア、アフリカなどから女性を募集し、中国人男性との結婚を紹介する名目で移送する手口が報告されています。
問題は、本人が結婚相手や生活環境について十分な情報を与えられていなかったり、結婚後に自由を奪われたりすることです。場合によっては、家事労働の強要、性的暴力、強制的な妊娠・出産などを伴う搾取につながります。
2025年の米国務省人身取引報告を引用した英国政府の2026年資料では、不法な結婚仲介業者が女性を中国へ移送し、強制労働や性的搾取に従事させる事例が取り上げられています。仲介に高額な費用が発生し、その費用を負担した男性側が女性から労働や性的サービスを取り戻そうとする構造も指摘されています。
ただし、国際結婚や結婚仲介そのものが人身取引に該当するわけではありません。本人の自由な意思、契約の透明性、移動の自由、婚姻後の生活環境などが判断の要点です。
3. 中国人男性や女性に対する強制労働
人身取引は女性だけの問題ではありません。男性も建設、製造、農業、鉱業、漁業などの分野で強制労働の被害に遭う可能性があります。
海外の中国系企業に関連する労働現場では、求人内容と実際の仕事が異なる、賃金が支払われない、退職時に違約金を要求される、旅券を保管される、自由に職場を離れられないといった問題が報告されています。
特に、海外就労を希望する人が高額な紹介料を負担した場合、借金を理由に職場を離れられなくなる債務拘束の危険があります。
また、漁船で働く労働者についても、長時間労働、賃金未払い、通信や移動の制限など、強制労働を疑わせる状況が国際的な調査で指摘されています。
4. オンライン詐欺拠点での強制的な犯罪行為
2026年現在、国境を越えた人身取引で特に注意すべきなのが、オンライン詐欺拠点での強制労働です。
ミャンマー、カンボジア、ラオスなどの一部地域では、高収入のIT関連職やカスタマーサポート職を装った求人で人を集め、現地に到着した後、詐欺業務に従事させる犯罪が問題となっています。
被害者は、恋愛詐欺、投資詐欺、電話やインターネットを利用した詐欺などに強制的に関与させられることがあります。仕事を拒否した場合に暴力や脅迫を受けたり、施設から出られなくなったりする事例も報告されています。
ここで注意したいのは、詐欺行為に関与していた人が、必ずしも自発的な加害者とは限らないことです。強制されて犯罪に参加させられた人は、詐欺の実行者であると同時に人身取引の被害者である可能性があります。
この点は、被害者を単純に犯罪者として扱わず、強制や支配の有無を調べる必要性を示しています。
【2026年最新統計】警察庁・出入国在留管理庁が公表した人身取引の実態
日本国内の人身取引を把握するうえで重要なのが、警察庁と出入国在留管理庁の公表資料です。ただし、両機関は異なる業務を担当しており、統計の対象や集計方法も異なります。
警察庁の2025年人身取引事犯統計
警察庁が2026年4月に公表した「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」では、2021年から2025年までの人身取引事犯について、検挙件数・被疑者数・被害者数が示されています。
| 年 | 検挙件数 | 被疑者数 | 被害者数 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 61件 | 43人 | 42人 |
| 2022年 | 83件 | 37人 | 46人 |
| 2023年 | 114件 | 55人 | 57人 |
| 2024年 | 96件 | 57人 | 63人 |
| 2025年 | 142件 | 78人 | 77人 |
2025年は前年と比較して、検挙件数が96件から142件に増加し、被害者数も63人から77人に増えています。
国籍別では、日本人66人、フィリピン人10人、タイ人1人でした。つまり、警察庁が把握した被害者の8割以上が日本人であり、外国人被害者だけを対象にした問題ではないことが分かります。
また、日本人被害者66人のうち51人は18歳未満でした。若年層が人身取引の被害に遭う危険性は、2025年の統計でも明確に表れています。
注目すべきなのは、この国籍別集計に中国人被害者が掲載されていない点です。ただし、これは警察が把握した当該統計上の結果であり、中国人被害者が日本国内に存在しないことや、中国に関連する国際的な人身取引が存在しないことを意味しません。
出入国在留管理庁が保護した外国人被害者
出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した2025年の統計では、人身取引被害者として保護の手続を実施した外国人は3人でした。
内訳は、スリランカ人1人、フィリピン人1人、タイ人1人です。3人はいずれも女性で、不法残留となっていた1人には在留特別許可が認められました。
前年の2024年は7人だったため、入管庁が保護手続を実施した外国人被害者数は減少しています。しかし、同庁自身も、人身取引は潜在性が高く、手口の巧妙化によって被害が表面化しにくいと説明しています。
警察庁の77人と入管庁の3人は、集計対象が異なります。両者を足して日本国内の被害者総数とすることはできません。また、いずれも認知・保護された事例の数字であり、実際の被害規模をそのまま表すものではありません。
数字から見える日本と中国人身売買の関係
日本の2025年統計では、中国人被害者は国籍別の公表区分に現れていません。一方、中国国内や第三国での被害は、日本の警察庁や入管庁の統計だけでは把握できません。
したがって、中国人身売買の規模を調べる際には、日本国内で確認された被害者数と、中国国内・海外で報告された人身取引の実態を混同しないことが重要です。
【犯罪ネットワークの仕組み】人身売買ブローカー・仲介業者・SNSの関係
国際的な人身取引は、一人の犯罪者だけで完結するとは限りません。募集、移送、金銭管理、監禁、搾取などを複数の関係者が分担するネットワーク型の犯罪として行われることがあります。
人身取引に関与する主な関係者
- 募集・勧誘者:求人、結婚、旅行、交際などを装って対象者に接近する。
- ブローカー:仕事や結婚の仲介を装い、移動や契約を手配する。
- 移送・管理に関与する者:移動や宿泊を管理し、被害者の自由を制限する。
- 搾取する事業者・犯罪組織:性的サービス、強制労働、詐欺などから利益を得る。
- 資金管理に関与する者:犯罪によって得られた利益を管理・移転する。
すべての事件にこれらの関係者が存在するわけではありませんが、複数の人物が関与することで、被害者が加害者の全体像を把握しにくくなります。
SNSを利用した人身取引が増える背景
インターネットやSNSは、求人や交際相手を探すための一般的なサービスとして利用されています。しかし、その匿名性や国境を越えた情報拡散の速さが、犯罪者に悪用されることもあります。
警察庁は、SNSで知り合った相手から性的サービスを強要されるケースや、高収入の海外求人を信じて渡航した後に旅券を取り上げられるケースなどを、人身取引の兆候として紹介しています。
2026年4月、中国の最高人民法院に関係する公式情報を掲載する裁判所サイトも、従来型の誘拐が減少する一方、インターネットや虚偽の交際関係を利用した新しい人身取引が増えていると報じました。
同サイトによると、中国の最高人民法院は、女性や児童を対象とする誘拐・人身取引犯罪について、2025年の件数が2012年のピークと比べて約78%減少したと説明しています。一方、オンライン上の隠語や虚偽の関係を利用する手口は、捜査や司法判断を難しくしていると指摘しています。
この数字は中国当局が説明する特定の犯罪分野の推移であり、強制労働や国際的な人身取引全体が78%減少したことを意味するものではありません。
パスポートの取り上げと監禁が示す危険性
人身取引の被害者を支配する手段として、旅券や身分証明書の取り上げが問題になります。
旅券を管理されると、被害者は自分の身元や在留資格を証明しにくくなり、移動や帰国の手続にも支障が生じます。加えて、借金、暴力、家族への脅迫などが重なると、被害者は逃げたり、警察に相談したりすることが難しくなります。
ただし、外国人労働者の旅券を会社が一時的に保管しているという事実だけで、直ちに人身取引が成立すると決まるわけではありません。本人の同意、返還の自由、移動の自由、強制労働の有無などを総合的に確認する必要があります。
【原因と背景】中国人身売買がなくならない社会的・経済的要因
人身取引が発生する背景には、経済格差、雇用機会の不足、社会保障へのアクセスの難しさ、性別による不均衡、犯罪組織の利益追求など、複数の要因があります。
1. 経済格差と地方から都市への人口移動
中国では地方から都市部へ移動して働く人々が多く、就職や生活のために仲介業者を利用する場合があります。
英国政府の2026年8月の国別資料では、中国の戸籍制度(戸口・戸籍登録制度)によって、地方出身者が居住地で社会保障や公共サービスを十分に利用できない場合があることが、人身取引や労働搾取のリスクと関連していると整理されています。
仕事を探す人が仲介業者に依存し、高額な紹介料を負担したり、労働条件を十分に確認できなかったりすると、債務拘束や不当な労働契約につながる危険性があります。
2. 男女比の不均衡と結婚を利用した搾取
中国の人口構造や過去の出生制限政策による男女比の不均衡は、結婚相手を探す市場や女性の移動に影響する社会的背景として議論されています。
米国務省の人身取引に関する調査では、女性不足を背景とする結婚需要が、外国人女性を対象とした不法な結婚仲介や強制結婚につながる可能性が指摘されています。
ただし、男女比の不均衡だけで人身取引が発生するわけではありません。経済格差、女性の社会的地位、法執行の実効性、仲介業者の不正などが重なったときに、搾取の危険性が高まります。
3. 国境を越える犯罪組織と取り締まりの難しさ
人身取引ネットワークは、被害者の出身国、移送先、搾取が行われる場所が異なる場合があります。
そのため、一つの国の警察だけでは、募集から移送、搾取、資金管理までの全体像を解明できないことがあります。
加えて、国境地域の監視体制、外国語による相談対応、被害者の認定基準、国際捜査の協力関係などに差があると、犯罪組織がその隙間を利用する可能性があります。
4. 被害者が声を上げにくい構造
人身取引の被害者は、加害者からの脅迫だけでなく、借金、家族への危害、社会的な偏見、在留資格への不安など、複数の問題を抱えている場合があります。
特に性的搾取を受けた女性は、帰国後の差別や周囲の視線を恐れて被害を申告できないことがあります。外国人労働者の場合、言語の壁や雇用契約に関する知識不足も、相談を妨げる要因です。
被害者が警察や行政に相談できない状況が続けば、犯罪が表面化せず、統計にも反映されにくくなります。
【2026年の国際情勢】中国の人身取引対策と海外機関の評価
2026年には、中国国内の法執行機関による対策と、海外政府や国際的な調査機関による評価の双方が公表されています。両者の視点には違いがあり、犯罪の減少を示す発表だけでなく、被害者の特定や保護の実効性にも目を向ける必要があります。
中国最高人民法院が示した新たな犯罪傾向
2026年4月4日付の中国の裁判所関連公式報道では、女性や児童を対象とする誘拐・人身取引の減少と、オンラインを利用した新しい犯罪形態の増加が取り上げられました。
同報道では、知的障害や精神疾患のある女性6人を結婚の仲介と偽って利用し、利益を得ていた人物に対して無期懲役が言い渡された事例も紹介されています。
この事例は、被害者の社会的・経済的な弱さを利用する犯罪が、結婚という形式を装って発生する危険性を示しています。
米国務省の2026年人身取引報告
2026年10月8日に公表された米国務省の「Trafficking in Persons Report 2026」では、中国は人身取引対策の評価で最低ランクのTier 3に分類されました。
同報告を紹介する2026年10月の調査資料では、新疆ウイグル自治区などにおける少数民族への強制労働の疑い、海外の一帯一路関連事業に従事する労働者の保護、被害者の特定や支援に関する情報公開の不足などが指摘されています。
ただし、Tier 3は米国政府が独自の基準に基づいて各国の人身取引対策を評価した結果です。中国国内で確認されたすべての事件の数値や、個別の被害事実を直接示すものではありません。国家による強制労働をめぐる評価についても、中国側の立場と海外の評価には対立があります。
中国の人身取引対策で残る課題
英国政府が2026年8月に更新した中国の現代奴隷制に関する資料では、中国国内の人身取引に関する包括的な統計や被害者の特定・保護に関する情報が不足していることが課題として挙げられています。
特に、性的搾取の被害者と強制労働の被害者を同じように把握できていないことや、被害者が犯罪に関与させられた場合に、被害者としての認定が十分に行われない可能性が問題視されています。
今後は、犯罪の摘発件数だけでなく、被害者が安全に救出され、適切な医療・法律・生活支援を受けられるかどうかが、対策の実効性を判断する重要な基準になります。
【日本の被害者保護】警察庁・出入国在留管理庁・IOMの支援体制
中国人を含む外国人が日本国内で人身取引の被害に遭った場合、日本には警察、出入国在留管理庁、関係省庁、国際移住機関(IOM)などが連携する保護の仕組みがあります。
警察庁による救出と犯罪捜査
警察庁は、人身取引の被害者の早期発見・保護と、加害者の取り締まりを進めています。
警察が示す被害の兆候には、SNSで知り合った相手から性的サービスを強要されること、高額な借金を理由に売春を強制されること、海外就労の名目で渡航した後にパスポートを取り上げられることなどがあります。
緊急時は110番、緊急性のない警察相談は「#9110」が利用できます。
出入国在留管理庁による被害者認定と保護
出入国在留管理庁は、人身取引の被害者、または被害者である可能性がある外国人について、本人の保護を第一に対応する方針を示しています。
関係機関やNGO、一般の人から情報提供を受けた場合には、警察などと連携して被害の状況やブローカーの関与を調査します。
被害者であることが認定された場合には、被害回復に必要な手続や在留上の対応が検討されます。人身取引の被害者が不法残留状態にあるという理由だけで、被害の実態を無視して対応することがないよう、保護を優先する仕組みが設けられています。
国際移住機関(IOM)による帰国と社会復帰の支援
国際移住機関(IOM)は、国境を越える移住に関する課題に取り組む国際機関です。日本の出入国在留管理庁とも協力し、人身取引被害者へのインタビューや被害者認定に関する支援を行っています。
被害者が自らの意思で帰国を希望する場合には、IOMが自主的帰国支援を実施します。帰国後も再び人身取引の被害に遭わないよう、個別の事情に応じた社会復帰支援を行います。
支援の内容には、次のようなものがあります。
- 安全な帰国に向けた相談や移動支援
- 医療や心理的ケアにつながる支援
- 法律相談や社会福祉サービスへの紹介
- 帰国後の生活再建に関する支援
- 教育や職業訓練などを通じた社会復帰の支援
帰国させることだけで支援が終了するわけではありません。被害者が経済的・社会的に自立し、再び搾取されない環境を整えることが重要です。
2026年に改定された人身取引対策行動計画
日本政府は2022年12月に「人身取引対策行動計画2022」を策定しました。その後、2026年9月に「人身取引対策行動計画2026」へ改定しています。
2026年9月15日の第13回人身取引対策推進会議では、被害者の増加や犯罪手口の巧妙化を踏まえ、政府全体で対策を強化する方針が示されました。
特に、悪質ホストクラブへの対策、売買春に関する規制の在り方の検討、被害者の認知と保護、入国・在留管理の強化、国際捜査協力などが重要な課題となっています。
人身取引対策は外国人の保護だけに限定されません。日本人女性や児童が性的搾取を受ける問題も含め、国内外の被害を幅広く把握する必要があります。
【プロの結論】中国人身売買を正しく理解するための判断基準と誤解
中国人身売買の問題を考える際、最も避けたいのは、国籍や民族だけで犯罪の実態を判断することです。中国人が被害者となる事件、外国人が中国国内で搾取される事件、中国系の犯罪ネットワークが第三国で関与する事件は、それぞれ異なる背景と構造を持っています。
誤解1:中国人身売買はすべて誘拐事件である
人身取引は、必ずしも暴力的な誘拐から始まるわけではありません。求人、恋愛、結婚、留学、海外就職など、日常的な活動を装った勧誘から始まることもあります。
本人が自分の意思で移動した場合でも、その後に詐欺や脅迫によって支配され、搾取された場合には、人身取引に該当する可能性があります。
誤解2:中国人女性の国際結婚はすべて人身売買である
国際結婚や結婚仲介は、それ自体が犯罪ではありません。問題になるのは、本人の意思を無視した移送、強制結婚、性的搾取、労働の強要、移動の自由の剥奪などです。
結婚の形式が整っていても、実態として本人が自由に生活できず、搾取されているならば、人身取引の問題として調査する必要があります。
誤解3:統計上の被害者が少なければ問題も小さい
人身取引は犯罪の性質上、被害者自身が被害を認識できないことや、加害者の脅迫によって相談できないことがあります。
また、国境を越えた犯罪では、募集国、移送国、搾取が行われる国の統計が一致しません。日本の入管庁が保護した外国人被害者数だけで、中国に関連する国際的な人身取引の規模を判断することはできません。
人身取引を疑う際に確認すべきポイント
仕事や結婚、海外渡航をめぐるトラブルでは、次のような点を確認することが大切です。
- 求人や結婚の条件について、事前の説明と実際の内容が一致しているか。
- 高額な紹介料や借金を理由に、仕事や生活を強制されていないか。
- 本人が自分のパスポートや身分証明書を自由に管理できるか。
- 仕事を辞めたり、移動したり、帰国したりする自由があるか。
- 暴力、脅迫、監禁、性的サービスの強要などが発生していないか。
- 本人が自由に家族や外部の相談機関と連絡できるか。
これらは人身取引を疑うための確認事項であり、個別の犯罪成立を自動的に判断するものではありません。危険がある場合は、本人を責めたり、無理に事情を聞き出したりせず、警察や専門の支援機関につなぐことが大切です。
中国人身売買に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中国人身売買とは具体的にどのような犯罪ですか?
A1:性的搾取、強制労働、強制結婚などを目的に、暴力、脅迫、詐欺、誘拐、弱い立場の悪用などによって人を獲得・移送・支配する行為を指します。国境を越える場合だけでなく、国内で発生する場合もあります。
Q2:2025年の日本で中国人の人身取引被害者は確認されていますか?
A2:警察庁の2025年の国籍別統計では、日本人66人、フィリピン人10人、タイ人1人の計77人が公表されており、中国人は掲載されていません。ただし、これは警察が把握した統計上の結果であり、中国人被害者が存在しないことを証明するものではありません。
Q3:中国人身売買では女性だけが被害者になるのでしょうか?
A3:いいえ。女性や少女の性的搾取や強制結婚だけでなく、男性の建設・工場・漁業などでの強制労働、児童の労働搾取、オンライン詐欺への強制参加なども報告されています。
Q4:SNSを通じた人身取引はどのように見分けられますか?
A4:高収入を強調する海外求人、説明のない高額な仲介料、渡航後の契約変更、身分証明書の取り上げ、外部との連絡制限、退職や帰国の拒否などは注意すべき兆候です。SNS上の相手が実在する人物であっても、仕事内容や契約条件を別の方法で確認する必要があります。
Q5:日本で人身取引の被害に遭った場合、どこに相談できますか?
A5:緊急の場合は110番、警察への一般相談は「#9110」が利用できます。また、出入国在留管理庁の人身取引に関する相談窓口は0120-279-338です。岩手・宮城・福島県からは0120-279-226が案内されています。外国人被害者については、関係機関やIOMなどによる支援につながる場合もあります。
まとめ:中国人身売買の現在と今後の人身取引対策
中国人身売買は、誘拐や強制結婚だけに限定される問題ではありません。女性や児童への性的搾取、男性を含む強制労働、海外のオンライン詐欺拠点での強制的な犯罪行為など、複数の形態が存在します。
2025年の警察庁統計では、人身取引事犯の被害者77人、検挙142件が確認されました。2026年には中国の司法機関がオンラインを利用した新しい犯罪形態への警戒を示し、日本政府も人身取引対策行動計画2026を策定しています。
今後の課題は、犯罪組織の摘発だけではありません。潜在的な被害者を早期に見つけ、国籍や在留資格にかかわらず安全を確保し、医療・法律・生活面での支援につなげることが欠かせません。
特に重要なのは、被害者が自ら助けを求められない状況を理解することです。パスポートの取り上げ、借金による拘束、SNSを通じた虚偽求人、強制結婚などの兆候を社会全体で把握することが、人身取引の防止につながります。
中国人であるか外国人であるか、日本人であるかを問わず、搾取されている人を保護することが人身取引対策の基本です。2026年以降は、国際的な捜査協力と被害者中心の支援体制をどこまで実効性のあるものにできるかが問われています。