朝、窓の外から聞こえてくる「デーデーポッポー」という低く穏やかな声や、公園やベランダで耳にする「クルックー」という独特の鳴き声。身近な鳥である鳩は、何気なく鳴いているように見えますが、その声には求愛や縄張りの主張、仲間とのコミュニケーションなど、さまざまな意味が込められています。
鳩の鳴き声は種類によっても異なります。日本でよく見かけるキジバトは「デーデーポッポー」と規則的に鳴く一方、ドバトは「クックー」「ゴロッポー」のような喉を鳴らす声が特徴です。加えて、鳴く時間帯や周囲の状況、体の動きを観察すると、何を伝えようとしているのかも推測できます。
【鳩の鳴き声の種類】クルックーとデーデーポッポーは何が違う?

鳩の鳴き声を聞き分けるとき、最初に注目したいのが音のリズムと響き方です。日本の住宅地や公園で耳にする代表的な鳩には、キジバトとドバト(カワラバト)がいます。
同じハト科の鳥でも、鳴き声の印象はかなり異なります。声の特徴を知っておけば、姿が見えなくても種類をある程度絞り込めます。
「デーデーポッポー」はキジバトの代表的なさえずり
キジバトの鳴き声は、「デーデー、ポッポー」「デデッポッポー」「デデッポォーポォー」などと表現されます。
特徴は、低く落ち着いた音を一定のリズムで繰り返すことです。フレーズの途中に区切りがあり、少し間を置いてから同じような声を繰り返します。
この声はキジバトのオスが発する代表的なさえずりです。繁殖期には、相手へのアピールや自分の存在を知らせる行動と関係しています。
我孫子市の公式野鳥情報でも、キジバトは普段「クウッ」「プゥー」などと鳴き、オスは「デデッポォーポォー」と繰り返してさえずると紹介されています。つまり、キジバトはいつも同じ声を出しているわけではありません。
「クルックー」「ゴロッポー」はドバトの特徴的な声
駅前や公園、マンションの屋上などでよく見かけるドバトは、「クックー」「クルックー」「ゴロッポー」といった、喉の奥で音を転がすような声を発します。
キジバトの声と比較すると、短くこもった印象があり、低音が強く聞こえることもあります。
特に求愛行動をしているドバトは、胸や喉を膨らませ、頭を上下に動かしながら鳴くことがあります。鳴き声だけでなく、こうした動作を組み合わせて観察すると、行動の意味を理解しやすくなります。
米国コーネル大学鳥類学研究所のロックピジョン(カワラバト)の解説でも、喉を鳴らすような連続音と、胸を膨らませる動作、お辞儀、尾羽を広げる行動が関連づけられています。
鳩の鳴き声は大きく3つの場面で理解するとわかりやすい
鳩の声は、単純に音の種類だけで分類するよりも、鳴いているときの状況と合わせて考えることが大切です。
- さえずり:繁殖期の求愛や存在のアピールに関係する、比較的長く繰り返す声。
- 地鳴き・短い声:日常的な場面で聞かれる短い発声。個体同士のやり取りなどに関係する。
- 警戒時の声:危険を感じたときなどに発する短く鋭い声やうなり声。
ただし、鳩の発声には個体差や状況による変化があります。「クルックーなら必ず求愛」「短い声なら必ず警戒」というように、音だけで意味を断定することはできません。
【鳩が鳴く理由】求愛・縄張り・コミュニケーションに隠された意味
鳩が鳴く理由は、単に仲間を呼ぶためだけではありません。繁殖に関わる行動や、ほかの個体との距離を調整する行動など、生活に密着した役割があります。
1.求愛行動でパートナーに存在を知らせる
鳩の鳴き声を理解するうえで、重要なのが求愛行動です。
繁殖相手を探しているオスは、特徴的な低い声を繰り返しながら、相手の近くを歩いたり、頭を上下に動かしたりします。ドバトの場合、胸を膨らませて体を大きく見せ、円を描くように歩く行動も見られます。
鳴き声は、視界に入らない相手にも自分の存在を知らせるための手段です。特に巣の周辺で長く鳴く行動には、パートナーを引き寄せる意味があります。
鳩の求愛は声だけで完結するものではありません。姿勢や歩き方、尾羽の動きなどを組み合わせた複合的なコミュニケーションです。
2.縄張りや巣の周辺を守るために鳴く
鳩は繁殖や休息に利用する場所を確保しようとします。ほかの個体が近づいたときに、胸を膨らませて鳴きながら相手に向かって歩く行動が見られることがあります。
この場合、鳴き声は求愛というよりも、相手への牽制や場所をめぐる競争に関係している可能性があります。
同じ場所で何度も鳴いている個体がいる場合、近くに巣やお気に入りの止まり場所がある可能性があります。
3.パートナーとの関係を維持する
鳩はつがいで行動し、繁殖や子育てを協力して行う鳥です。
鳴き声は相手との距離を保ったり、巣の周辺で存在を知らせたりするコミュニケーションにも関係します。
特に巣の近くで聞こえる声は、単独で縄張りを主張している場合とは異なり、つがいの行動と結びついている可能性があります。
4.危険を察知して警戒する
鳩は周囲の環境をよく観察し、人や動物が近づいたときに警戒することがあります。
警戒時には、普段のゆったりしたさえずりとは違う短い発声や、急に飛び立つ動作が見られます。
コーネル大学鳥類学研究所の解説でも、警戒したロックピジョンは短いうなり声を発するとされています。声だけではなく、突然の動きや周囲の変化も観察することが判断の手がかりになります。
【キジバトとドバトの違い】鳴き声・姿・行動を比較
鳩の鳴き声を正確に聞き分けるには、声と一緒に姿も確認することが大切です。
キジバトとドバトは体の大きさが近く、遠くから見ると似ていることがあります。しかし、羽の模様や首の特徴、群れ方などには明確な違いがあります。
キジバトとドバトの特徴一覧
| 比較項目 | キジバト | ドバト |
|---|---|---|
| 分類・由来 | 日本に分布する野鳥 | カワラバトを原種とする飼育由来の野生化個体 |
| 代表的な鳴き声 | デーデー、ポッポー | クルックー、クックー、ゴロッポー |
| 声の印象 | 低く、ゆっくりした繰り返し | 喉を鳴らすようなこもった音 |
| 体長 | 約33cm | 約32cm |
| 羽の特徴 | 茶褐色のうろこ状の模様 | 灰色を中心に白・黒・茶色など個体差が大きい |
| 首の特徴 | 青灰色と黒色のしま模様 | 緑や紫の光沢が見られることが多い |
| 行動 | 単独やつがいで見られることが多い | 群れで行動することが多い |
| 主な生息環境 | 森林、農耕地、公園、住宅地 | 駅前、公園、建物、農村など |
この比較は、日本野鳥の会のBIRD FAN、農林水産省の鳥獣害対策資料、自治体の野鳥解説などに掲載されている特徴を整理したものです。
キジバトは首のしま模様と茶色い羽が目印
キジバトは、全体的に灰褐色から赤みを帯びた茶色の体をしています。翼には黒褐色と赤褐色が混ざったうろこ状の模様があり、首の側面には青灰色と黒色のしま模様があります。
森林だけでなく、住宅地の庭木や街路樹にも生息しています。1羽や2羽で見かけることも多く、木の上から「デーデーポッポー」という声が聞こえてくる場合は、キジバトの可能性があります。
ドバトは羽色のバリエーションと群れ方が特徴
ドバトは灰色の個体がよく知られていますが、白色や黒色、茶色が混ざった個体など、羽色には幅があります。
公園や駅前で複数の鳩が集まっている場合、ドバトである可能性が高くなります。
大阪市の2026年10月14日付の公式解説によると、ドバトは野生のカワラバトが飼いならされた後、日本に持ち込まれ、野生化したものです。市街地の建物などを利用して生活し、群れで行動する習性があります。
鳴き声だけで見分けられないときの判断基準
鳩の鳴き声は、距離や周囲の音、聞き手の感じ方によっても違って聞こえます。そのため、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 声が「デーデーポッポー」のように区切られた繰り返しか確認する。
- 「クルックー」「ゴロッポー」のような喉を鳴らす音か確認する。
- 鳥の首に特徴的なしま模様があるか観察する。
- 翼のうろこ状の模様や全体の羽色を確認する。
- 単独・つがいで行動しているか、群れで集まっているかを確認する。
特に首のしま模様は重要です。鳴き声が不明瞭でも、姿が確認できれば種類を判断する大きな手がかりになります。
【鳩の鳴き声の時間帯】朝や夕方に聞こえやすい理由と繁殖期
鳩の鳴き声は、早朝に聞こえることが多いという印象を持つ人も少なくありません。実際、キジバトは早朝に特徴的な声を繰り返すことが知られています。
ただし、鳩は朝だけに鳴くわけではありません。日中にも鳴きますし、繁殖や周囲の環境によって発声するタイミングは変わります。
早朝に鳴き声が目立つのはなぜ?
朝に鳩の声がよく聞こえる理由には、鳥の活動時間と周囲の音環境の両方が関係しています。
キジバトの代表的なさえずりは早朝に聞かれることがあり、日の出前後は周囲の生活音や交通音が少ないため、低い鳴き声にも気づきやすくなります。
農研機構のハト類に関する文献資料では、キジバトの採食活動は早朝と夕刻に多いという報告が紹介されています。また、ドバトについても、地域によって早朝と午後に活動のピークが見られることが示されています。
ただし、採食活動の時間帯と鳴き声の時間帯は同じではありません。朝に聞こえるからといって、すべての鳴き声が食事や求愛を意味するわけではありません。
夕方にも鳴くことがある
夕方は、採食や移動、休息場所への移動など、鳩の活動が見られる時間帯です。
特に公園や建物周辺に複数のドバトが集まっている場合、個体同士の短い発声が聞こえることがあります。
朝と夕方は鳩の姿を見つけやすい時間帯でもあるため、鳴き声と行動を合わせて観察するのに適しています。
繁殖期はいつ?鳴き声が増える季節
キジバトの繁殖期は地域によって異なります。春から夏にかけて繁殖活動が活発になる地域がある一方、ほぼ一年を通して繁殖する個体もいます。
日本野鳥の会のBIRD FANでは、キジバトはほぼ一年中繁殖すると紹介されています。三重県総合博物館の解説でも、キジバトは冬季でも繁殖できるため、特徴的なオスのさえずりをほぼ一年中耳にする可能性があると説明されています。
ドバトも繁殖期が長い鳥です。大阪市の2026年10月の公式情報では、早春から初冬まで何度も子育てをするとされています。
そのため、「春が終わったから鳩は鳴かなくなる」「秋や冬には求愛しない」と考えるのは正確ではありません。
鳴き声の頻度が増えた場合は、繁殖活動が関係している可能性がありますが、気温や周囲の環境、個体の状態なども影響します。
【鳩のオスとメスの鳴き声】求愛行動から性別を見分けられる?
鳩のオスとメスは、見た目だけで判断するのが難しい鳥です。キジバトは雌雄で羽色がほぼ同じであり、ドバトも個体ごとの羽色の違いが大きいため、色だけでは性別を特定できません。
オスは繁殖期に特徴的なさえずりをする
キジバトの場合、「デーデーポッポー」という特徴的なさえずりはオスの発声として知られています。
繁殖期のオスは、声を繰り返すだけでなく、相手に近づいたり、体を動かしたりして求愛します。
ドバトでも、オスが胸を膨らませ、首を上下に動かしながら鳴く行動が見られます。相手の周囲を歩いたり、尾羽を広げたりする動作も求愛のサインです。
メスも鳴く?オスとメスの違い
メスも鳴き声を発します。ただし、繁殖期に見られる特徴的なさえずりと、普段の短い発声は区別して考える必要があります。
また、オスとメスの発声の違いは種類や状況によって異なり、すべての鳩に共通する単純な音のルールがあるわけではありません。
声の高さだけでオスかメスかを判断するのは難しく、鳴き声単独で性別を確定することはできません。
鳴き声と一緒に観察したい求愛行動
性別や求愛の状況を推測するには、鳴き声と行動を組み合わせて確認することが大切です。
- 胸を膨らませる:体を大きく見せながら相手にアピールする行動。
- 頭を上下に動かす:お辞儀のような動作を繰り返す。
- 相手の周囲を歩く:円を描くように移動しながら鳴く。
- 尾羽を広げる:体の姿勢を変えて相手に存在をアピールする。
- くちばしを接触させる:求愛やつがいの関係に関連する行動として見られる。
特に、鳴きながら胸を膨らませて相手の周りを歩く場合は、求愛行動の可能性が高まります。
ただし、同じような姿勢がライバルへの威嚇や場所をめぐる競争で見られることもあります。相手との距離や動きの変化も確認しましょう。
【鳩の鳴き声がうるさい理由】繰り返し鳴く原因と観察のポイント
毎朝同じ場所から鳩の鳴き声が聞こえたり、長時間にわたって「クルックー」という声が続いたりすると、騒音として気になることがあります。
鳴き声が何度も繰り返されるのは、同じ個体が求愛や縄張りの主張を続けている場合や、近くに複数の個体が集まっている場合などが考えられます。
同じ場所で繰り返し鳴くのはなぜ?
鳩が毎日同じ場所で鳴く場合、その場所が止まり木や休息場所、巣の周辺になっている可能性があります。
特に繁殖期には、同じ場所を繰り返し利用し、相手に存在を知らせる行動が見られます。
また、建物の屋根やベランダ、ひさしなどは雨風を避けられるため、ドバトが休息や営巣に利用することがあります。
鳴き声が大きく感じられる3つの原因
鳩の鳴き声そのものの音量だけでなく、周囲の環境によっても騒がしく感じることがあります。
- 早朝の静けさ:生活音が少ないため、低い鳴き声が目立ちやすい。
- 建物による反響:壁や天井に音が反射し、実際より近くで鳴いているように感じることがある。
- 同じ声の繰り返し:求愛や縄張りに関係する発声が何度も続くと、心理的にも騒がしく感じやすい。
鳴き声を聞き分けるための実践的な観察方法
鳩の鳴き声を見分けたい場合は、録音した音だけに頼るよりも、発声時の状況を記録すると理解が深まります。
- 時間を確認する:早朝、昼間、夕方のどの時間帯に多いか記録する。
- 声のリズムを確認する:長く繰り返す声か、短くこもった声かを聞き分ける。
- 鳥の数を確認する:1羽だけなのか、複数の個体がいるのかを見る。
- 姿勢を確認する:胸を膨らませたり、お辞儀をしたりしていないか観察する。
- 周辺環境を確認する:近くに巣や止まり場所があるか確認する。
これらの情報を組み合わせれば、求愛や縄張りの主張、日常的なコミュニケーションなど、鳴いている理由を推測しやすくなります。
なお、鳴き声が気になる場合でも、餌を与えて集まる個体を増やしたり、巣や卵を不用意に動かしたりすることは避けましょう。営巣中の鳥への対応は、自治体の案内や関係法令を確認することが大切です。
【鳩の鳴き声に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:鳩の「クルックー」という鳴き声にはどんな意味がありますか?
A1:主に求愛やパートナーへのアピール、縄張りに関係する発声などが考えられます。ドバトでは、胸を膨らませたり頭を上下に動かしたりしながら鳴く場合、求愛行動の可能性があります。ただし、声だけで意味を断定することはできません。
Q2:デーデーポッポーと鳴く鳥は何ですか?
A2:代表的なのはキジバトです。低い声で「デーデー、ポッポー」と一定のフレーズを繰り返します。特にオスの繁殖期のさえずりとして知られています。
Q3:鳩はなぜ朝早くから鳴くのでしょうか?
A3:早朝は鳩の活動が見られる時間帯であり、繁殖に関係するさえずりが聞こえることもあります。また、周囲が静かなため、普段なら気づきにくい声も聞こえやすくなります。
Q4:鳩はオスとメスで鳴き声が違いますか?
A4:キジバトではオスが「デーデーポッポー」という特徴的なさえずりを発します。メスも声を出すため、声の高さや音だけで性別を確実に判断することはできません。
Q5:鳩は一年中鳴くのでしょうか?
A5:はい。キジバトやドバトは繁殖期間が長く、地域によっては一年を通して繁殖することがあります。そのため、春や夏だけでなく、秋や冬にも鳴き声を聞くことがあります。
Q6:鳩が同じ場所で何度も鳴くのはなぜですか?
A6:巣や止まり場所の周辺で、求愛や縄張りの主張、パートナーとのコミュニケーションを行っている可能性があります。近くにほかの鳩がいるか、胸を膨らませる動作があるかも確認すると判断しやすくなります。
まとめ:鳩の鳴き声は種類・時間帯・行動を合わせて見分ける
鳩の鳴き声には、種類や状況に応じた違いがあります。「デーデーポッポー」という低く規則的な声はキジバト、「クルックー」「ゴロッポー」のような喉を鳴らす声はドバトを見分ける代表的な手がかりです。
また、鳩が鳴く理由は求愛だけではありません。縄張りの主張、パートナーとのコミュニケーション、警戒など、周囲の状況によって発声の意味は変わります。
【プロの結論】鳴き声を正しく理解するための3つの判断基準
鳩の鳴き声を観察するときに押さえておきたいのは、次の3点です。
- 音で種類を絞る:「デーデーポッポー」ならキジバト、「クルックー」ならドバトを候補にする。
- 行動で意味を推測する:胸を膨らませる、お辞儀をする、相手の周囲を歩くなどの動きを確認する。
- 時間と環境を考慮する:早朝や繁殖活動が活発な時期など、鳴きやすい状況を把握する。
特に大切なのは、鳴き声だけで意味を決めつけないことです。鳥の姿勢や相手との距離、周囲の環境まで観察すれば、同じ「クルックー」という声でも、どのような行動の一部なのかを理解しやすくなります。
2026年現在も、住宅地や公園で身近に観察できるキジバトとドバト。何気なく聞き流していた鳴き声に少し注意を向けるだけで、鳥たちの求愛や暮らし、コミュニケーションの様子が見えてきます。
主な事実確認資料: 日本野鳥の会、我孫子市公式ウェブサイト、農林水産省、農研機構、三重県総合博物館、大阪市公式ウェブサイト、米国コーネル大学鳥類学研究所。