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【2025年最新統計】漁船事故と海中転落で何人が命を落としているのか

硲 俊 硲 俊 • 更新: • 公開: • 読了約 16 分
目次

マグロ漁船の死亡率を考えるうえで、まず確認すべきなのが、海上保安庁が公表した2025年の海難発生状況と、水産庁の令和7年度水産白書だ。

2026年4月1日に公表された海上保安庁の確定統計によると、2025年の船舶事故は全国で1,711隻、事故に伴う死者・行方不明者は42人だった。そのうち漁船は356隻、死者・行方不明者は25人を占めている。

つまり、船舶事故全体に占める漁船の割合は約21%である一方、死者・行方不明者では約60%が漁船に関係している。事故件数の割合に比べて、人的被害の割合が大きい点は見逃せない。

2024年と2025年の漁船事故を比較

2025年の事故隻数は前年より減少したものの、死者・行方不明者数は増加した。

海上保安庁の公表値を比較すると、次のようになる。

項目 2024年 2025年
漁船の船舶事故隻数 464隻 356隻
死者・行方不明者数 22人 25人
前年との比較 ― 事故108隻減・死者等3人増

事故隻数は約23%減少した一方、死者・行方不明者は約14%増加している。事故の発生件数が減れば、必ずしも死亡リスクも同じ割合で下がるわけではないことが分かる。

海中転落では60人中39人が死亡・行方不明

さらに深刻なのが、漁船からの海中転落だ。

水産庁の令和7年度水産白書によれば、2025年に漁船から海中に転落した人は60人。そのうち39人が死亡または行方不明となった。

60人を分母にすると、死亡・行方不明者の割合は65%に達する。

ただし、これは海中転落した人に限定した割合であり、漁船乗組員全体の死亡率ではない。また、死亡者だけでなく行方不明者も含んでいる。両者を区別して理解する必要がある。

2024年は海中転落者63人、死亡・行方不明者38人だった。2025年は転落者数が3人減少した一方、死亡・行方不明者は1人増加している。海中転落そのものを減らす対策と、転落後に生存できる環境を整える対策の両方が求められる。

【公的データ比較】漁船の死亡事故・労働災害を一覧で検証

マグロ漁船死亡率

ここでは、2026年10月時点で利用できる水産庁と国土交通省の資料を、対象期間と統計の意味を区別して整理する。

統計・項目 公表された数値 対象・注意点 2025年の漁船事故 356隻 海上保安庁の船舶事故統計 2025年の事故死者・行方不明者 25人 漁船の船舶事故に伴う人数 2025年の海中転落 60人 漁船からの転落者 海中転落による死亡・行方不明 39人 転落者の65%に相当 2024年度の漁船労働災害 215人 船員法に基づく3日以上の休業災害 同年度の漁船の職務上死亡・行方不明 死亡4人・行方不明2人 船員災害の報告集計 2024年の漁船労働災害発生率 千人率10.1 陸上全産業の2.3に対して約4.4倍

資料:水産庁「令和7年度水産白書」、海上保安庁「令和7年における海難発生状況」、国土交通省「2024年度船員災害疾病発生状況報告集計書」。期間・対象範囲・事故の定義が異なるため、各行の数値を合算することはできない。

特に注意したいのは、2025年の海中転落による39人と、船員災害報告における死亡・行方不明者数は、別の統計であることだ。集計対象や事故の定義が異なるため、重複の有無を確認せずに足し合わせてはいけない。

【危険性の実態】漁業の労働災害発生率はなぜ約4倍なのか

マグロ漁船の危険性を理解するうえで、事故による死亡だけでなく、日常的な船上作業に伴う労働災害も重要な指標となる。

水産庁が2026年3月に公表した資料では、漁船漁業船員の労働災害発生率は、2019~2021年の3年間平均で千人率12.2だったのに対し、2022~2024年の直近3年間平均では10.2となった。約16%改善しているものの、陸上の全産業平均と比べると依然として4倍以上の水準にある。

2024年単年の比較でも、漁船の発生率は千人率10.1、陸上全産業は2.3であり、約4.4倍となっている。

労働災害の中心は海中転落だけではない

国土交通省の2024年度船員災害疾病発生状況報告では、漁船における休業3日以上の職務上災害は215人だった。

作業別では漁ろう作業が83人で最も多く、漁具や漁網を扱う作業も含め、船上での実作業に危険が集中している。

事故の種類を見ると、漁船を含む船員全体では転倒119人、はさまれ76人、動作の反動・無理な動作53人、転落・墜落52人、巻き込まれ29人などが報告されている。

漁船の現場では、次のような危険が重なっている。

- 転倒・転落: 船体の揺れや甲板の濡れによって足元が不安定になる。
- 巻き込まれ: ウインチなどの漁労機械や動く漁具に身体が接触する。
- はさまれ: 漁具や機械の可動部分に手足が挟まれる。
- 切り傷・裂傷: 漁具や漁網の取り扱い中に負傷する。
- 過重な身体負担: 長時間の作業や重量物の取り扱いで身体に負荷がかかる。

こうした事故は、船舶が沈没したり転覆したりするような大規模な海難とは異なり、通常の操業中にも発生する。漁業の危険性は、重大事故だけを見ていても把握できない。

「4倍」は死亡率ではなく死傷災害の発生率

ここで、数字の読み違いを避けたい。

漁業の労働災害発生率が陸上の約4倍というのは、死亡率が4倍という意味ではない。

比較されているのは、職務上の災害によって休業4日以上となった死傷者の発生率だ。死亡事故だけでなく、負傷による休業も含まれる。

したがって、この統計から「マグロ漁船に乗ると死亡する確率が陸上の4倍」と結論づけることはできない。正確には、漁船で働く人は陸上の全産業で働く人よりも、休業を伴う労働災害に遭うリスクが高いということだ。

【遠洋マグロ漁業の構造】長期航海と人手不足が安全に与える影響

遠洋マグロ漁船には、一般的な沿岸漁船とは異なる労働環境がある。

操業海域が遠く、航海期間が長いことに加え、船内が生活の場と職場を兼ねる。陸上の職場であれば、事故が発生したときに救急車を呼び、病院へ搬送することもできるが、洋上では同じ対応をすぐに実行できるとは限らない。

航海期間の長さと救助までの時間

遠洋漁業では、操業海域が日本から離れているため、事故発生後の救助や医療対応に時間がかかる可能性がある。

船内で重傷者が発生した場合、船長による緊急対応、通信による救助要請、近隣船舶や関係機関との連携などが必要になる。陸上のように医療機関へ直ちに搬送できる環境ではないことが、遠洋漁業の重大なリスクとなる。

国土交通省も船員の労働環境について、長期間にわたる乗船、船内生活と仕事が一体となる特殊性、陸上や他船から直ちに支援を受けにくい孤立性を指摘している。

海技士の高齢化と乗組員不足

水産庁の令和7年度水産白書では、航海期間が長い遠洋漁業において、海技士の資格取得機会が限られることや若手人材の減少が課題として挙げられている。

20トン以上の漁船では、船舶の総トン数などに応じて船長や機関長などに必要な海技資格と人数が定められている。しかし、遠洋漁業では乗船期間が長く、上級資格の取得に必要な機会を確保しにくいという事情がある。

漁業全体の就業者数も減少している。水産庁によれば、2024年の漁業就業者数は11万4,820人で、前年から5.4%減少した。

乗組員不足は単に採用人数の問題ではない。安全な航行を担う資格者の確保や、経験を持つ船員から若手への技術継承にも関わる。

2026年に進む船員の労働環境改善

2026年には、漁船員の労働条件に関する制度面でも動きがあった。

国土交通省は2026年4月24日、「特定漁船員の労働時間、休日及び定員に関する政令」の閣議決定を発表した。5月13日に施行された同政令では、対象となる特定漁船について、労働時間や休息時間、休日、必要な乗組員数などの基準を定めている。

主な内容は次のとおりだ。

- 1日当たりの労働時間は原則8時間以内。
- 1週間当たりの平均労働時間は40時間以内。
- 休日は1週間当たり平均1日以上。
- 1日当たりの休息時間には連続6時間以上を含める。
- 操業期間中は別の休息時間規制が適用され、原則として1日8時間以上の休息時間を確保する。
- 労働時間の遵守に必要な乗組員数を確保する。

ただし、この制度は特定漁船を対象とするものであり、すべてのマグロ漁船に一律に適用されるという意味ではない。船舶の種類や法令上の対象要件を確認する必要がある。

【事故原因と安全対策】マグロ漁船の命を守るために必要なこと

漁船事故を減らすには、操船時の安全確認と、甲板上での作業管理の両方が欠かせない。

海中転落を防ぐライフジャケットの効果

水産庁の令和7年度水産白書には、2025年の漁船からの海中転落者について、ライフジャケット着用の有無による生存率の比較が掲載されている。


2025年の海中転落時の生存率


81%


着用者
ライフジャケットあり


50%


非着用者
ライフジャケットなし

約1.6倍


着用者の生存率は非着用者の約1.6倍
出典:水産庁「令和7年度水産白書」掲載の海上保安庁調べ

注目すべきなのは、2025年の漁船からの海中転落時におけるライフジャケット着用率が約4割にとどまっていることだ。

つまり、転落時の生存率を高める効果が統計で確認されているにもかかわらず、着用が十分に徹底されていない現状がある。

小型船舶では、原則として船室の外にいる乗船者にライフジャケットの着用が義務付けられている。遠洋漁船を含め、実際の作業に適した装備を選び、着用を習慣化することが大切だ。

衝突事故を減らすAISと見張り体制

2025年の漁船事故では、衝突が最も多い事故種類だった。

水産庁は、その背景として見張り不十分、操船不適切、居眠り運航などの人為的要因を挙げている。また、船体機器の整備不良や気象・海象情報の確認不足も事故につながっている。

対策として重要なのが、次の取り組みだ。

- AIS(船舶自動識別装置)による周囲の船舶情報の把握。
- 航行中の適切な見張りと操船ルールの徹底。
- 出航前の機関・設備の点検。
- 気象情報や海上警報の確認。
- 乗組員間の情報共有と緊急時の連絡体制整備。

AISは船舶の位置、針路、速力などの情報を相互に交換するシステムで、衝突予防に役立つ。水産庁も関係機関と連携して漁船への普及を進めている。

甲板作業では機械の安全管理が不可欠

漁労作業中の巻き込まれやはさまれを防ぐには、機械設備の安全対策と、作業手順の統一が重要になる。

特に複数人で漁具を扱う場合、合図の確認不足や作業者同士の意思疎通のずれが重大事故につながる可能性がある。

安全教育では、機械の非常停止方法、危険区域への立ち入り制限、作業前の声掛け、異常発生時の停止手順などを全員が理解しておく必要がある。

水産庁が推進する漁業カイゼン講習会や安全推進員の育成も、こうした事故の未然防止を目的としている。

【マグロ漁船死亡率】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:マグロ漁船の死亡率は何%ですか?

A1:2026年10月現在、マグロ漁船だけを対象にした乗組員の死亡率を示す公的な数値は確認できません。漁船全体では2025年に事故に伴う死者・行方不明者が25人発生していますが、これをマグロ漁船の死亡率に置き換えることはできません。

Q2:2025年に漁船から海中転落して死亡した人は何人ですか?

A2:水産庁の令和7年度水産白書によると、2025年の漁船からの海中転落者は60人で、そのうち39人が死亡または行方不明となっています。39人には行方不明者も含まれます。

Q3:漁業の労働災害発生率が4倍というのは、死亡率も4倍という意味ですか?

A3:違います。約4倍という数字は、休業4日以上の死傷災害の発生率を陸上の全産業平均と比較したものです。死亡率が4倍という意味ではありません。

Q4:マグロ漁船に乗る場合、最も重要な安全対策は何ですか?

A4:海中転落防止、ライフジャケットの着用、甲板上の機械作業における安全確認、適切な見張りと操船が重要です。2025年の公的データでは、海中転落時のライフジャケット着用者の生存率は81%、非着用者は50%でした。

【プロの結論】マグロ漁船の死亡率よりも注目すべき3つの事実

マグロ漁船の死亡率を調べると、ネット上では「死亡率が非常に高い」「乗れば命の危険がある」といった強い表現を目にすることがある。しかし、公的統計から確認できるのは、マグロ漁船単独の死亡率ではなく、漁船全体の海難事故や労働災害の実態だ。

今回の統計から、特に重要な事実は3つある。

第一に、漁船事故は人的被害の割合が大きい。2025年の漁船事故は356隻で、死者・行方不明者は25人だった。全船舶事故に占める漁船の割合は約2割だが、死者・行方不明者では約6割を占める。

第二に、海中転落は重大な死亡リスクにつながる。2025年には60人が漁船から海中に転落し、39人が死亡または行方不明となった。ライフジャケット着用者の生存率は非着用者を大きく上回っており、安全装備の徹底が命を守るうえで重要だ。

第三に、遠洋漁業では事故防止だけでなく、労働環境の改善も欠かせない。長期航海、海技士の高齢化、人手不足、船内での生活と仕事の一体化など、事故の背景には産業構造上の問題も存在する。

漁業の労働災害発生率が陸上の約4倍という現実は、船上で働く人の安全対策がまだ十分とはいえないことを示している。

まとめ:マグロ漁船の危険性は数字の正しい理解から見えてくる

2026年10月現在、マグロ漁船だけの死亡率を示す公的統計は確認できない。一方、2025年の漁船事故356隻、死者・行方不明者25人、海中転落者60人、死亡・行方不明者39人という数字から、漁船で働く人々が直面する危険の大きさは明らかになっている。

また、漁業の労働災害発生率は陸上の全産業平均の約4倍であり、転倒や機械への巻き込まれといった日常的な作業事故も深刻な課題だ。

マグロ漁船への就職や乗船を検討する場合には、死亡率という単一の数字だけで判断せず、船舶の安全設備、ライフジャケットの着用管理、乗組員の人数、労働時間、休息時間、緊急時の救助体制などを確認することが大切だ。

海の仕事には、食卓に魚を届けるという大きな役割がある。その仕事を支える乗組員の命と健康を守るためにも、2025年の事故統計が示す課題を、具体的な安全対策と労働環境の改善につなげていく必要がある。

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