2026-27シーズン、中井亜美のショートプログラム(SP)使用曲は、アルゼンチンタンゴの名曲「Por Una Cabeza(ポル・ウナ・カベサ)」だ。振付を担当するのは、韓国の振付師シン・イェジ。これまでの可憐なイメージから一歩踏み出し、タンゴという新しいジャンルに挑戦している。
一方、前シーズンの2025-26は、映画『道(La strada)』の音楽を使ったプログラムだった。さらに過去をたどると、「シェルブールの雨傘」「Baby, God Bless You」「アイ・ガット・リズム」など、ジャンルの異なる楽曲が並ぶ。フリーでは何を滑っているのか、振付師は誰なのか。2026年11月3日時点の国際スケート連盟(ISU)、フジテレビ、テレビ朝日などの公開情報をもとに整理する。
【2026-27最新】中井亜美のショート曲は「Por Una Cabeza」

2026-27シーズンの中井亜美のショートプログラムは、カルロス・ガルデル作曲の「Por Una Cabeza(ポル・ウナ・カベサ)」。振付師はシン・イェジだ。
この組み合わせは、フジテレビのフィギュアスケート情報サイト「フジスケ」と、国際スケート連盟の選手プロフィールの両方に掲載されている。テレビ朝日の2026年グランプリシリーズ選手紹介でも、同じ楽曲と振付師が確認できる。
「Por Una Cabeza」は、スペイン語で競馬の「首差」を意味する表現に由来するタンゴの名曲。1935年にカルロス・ガルデルが作曲した作品で、映画『Scent of a Woman(セント・オブ・ウーマン/夢の香り)』で使用されたことでも広く知られている。
もともとは1935年の映画『El Tango Bar』のために生まれた楽曲であり、アルゼンチンタンゴを代表する作品の一つだ。優雅さと情熱、そしてリズムの切れ味を併せ持つ音楽である。
中井にとって、この曲への挑戦は単なる選曲変更ではない。2025-26シーズンまでの映画音楽や親しみやすい旋律を中心としたプログラムから、タンゴ特有の駆け引きや身体表現を前面に出す方向へと踏み出した。
テレビ朝日の選手紹介では、中井自身も今季のテーマについて次のように語っている。
「タンゴを通して、新しい自分を切り拓いていきたいです!」
五輪メダリストとして迎えるシニア2年目。新しい表現に取り組む姿勢が、今季のショートプログラムの大きな見どころになっている。
【新プログラムの見どころ】振付師シン・イェジとの初タッグ
2026-27シーズンの注目点は、楽曲だけではない。ショートの振付を担当するシン・イェジ(Yea-Ji Shin)との新しい組み合わせも重要だ。
2026年5月1日の日刊スポーツの報道によると、中井は新シーズンについて「やったことのないジャンルに挑戦する」と説明。ショートでは韓国の振付師シン・イェジと初めてタッグを組み、タンゴ調の楽曲に挑戦することを明らかにした。
これまで中井のプログラムを担当してきた振付師には、鈴木明子、宮本賢二、デヴィッド・ウィルソンらがいる。そこに新たにシン・イェジが加わったことは、表現の幅を広げるうえでも注目される変化だ。
ドリーム・オン・アイス2026で新SPを初披露
新しいショートプログラムは、2026年6月26日に開幕したアイスショー「ドリーム・オン・アイス2026」で披露された。
ワールド・フィギュアスケートWebの現地レポートでは、中井の演技について、切れのある軽やかな足さばきと、表情による緩急が印象的だったと紹介されている。
特に興味深いのは、振付に盛り込まれた演出だ。中井はリンク中央で観客にアピールする場面や、フェンスを使ったバーを意識した演出について言及。ステップでは曲を口ずさみ、かっこいい表情と笑顔を使い分けることにも取り組んでいる。
タンゴは、単に音楽のテンポに合わせて滑るだけでは魅力が伝わりにくいジャンルだ。視線、手の動き、足さばき、身体の向きなど、細かな表現がプログラム全体の印象を左右する。
中井が目指しているのは、従来の明るく親しみやすい魅力を残しながら、タンゴならではの大人びた表現も取り入れることだと考えられる。
また、同じワールド・フィギュアスケートWebの記事では、中井が憧れの浅田真央もエキシビションでこの曲を使用していたことに触れている。尊敬するスケーターが滑った楽曲に、自分自身の競技プログラムとして挑む点も興味深い。
【歴代プログラム一覧】中井亜美のショート曲・フリー曲を6シーズン比較
中井亜美の使用曲を理解するには、ショートだけでなくフリーも合わせて確認すると分かりやすい。
フジテレビの公式選手紹介ページでは、2021-22シーズンから2026-27シーズンまでのプログラムと振付師が掲載されている。以下が歴代の一覧だ。
| シーズン | ショートプログラム(振付師) | フリースケーティング(振付師) |
|---|---|---|
| 2026-27 | Por Una Cabeza(シン・イェジ) | パリのアメリカ人(デヴィッド・ウィルソン) |
| 2025-26 | La strada(デヴィッド・ウィルソン) | What A Wonderful World(宮本賢二) |
| 2024-25 | シェルブールの雨傘(宮本賢二) | シンデレラ(デヴィッド・ウィルソン) |
| 2023-24 | Baby, God Bless You(鈴木明子) | オンリーホープ(デヴィッド・ウィルソン) |
| 2022-23 | アイ・ガット・リズム(鈴木明子) | ミス・サイゴン(宮本賢二) |
| 2021-22 | O Holy Night(宮本賢二) | To Believe(宮本賢二) |
この一覧から分かるのは、中井が特定の音楽ジャンルに固定されず、シーズンごとに異なる作品や表現に取り組んできたことだ。
2021-22〜2023-24:音楽の幅を広げたジュニア時代
2021-22シーズンのショートは、ジャッキー・エヴァンコの「O Holy Night」。フリーには同じく「To Believe」を使用していた。両方とも宮本賢二が振付を担当している。
2022-23シーズンには、ジョージ・ガーシュウィンのジャズナンバー「アイ・ガット・リズム」に挑戦。振付は鈴木明子が担当し、フリーではミュージカル作品「ミス・サイゴン」を使用した。
続く2023-24シーズンのショートは「Baby, God Bless You」。振付は鈴木明子が担当した。フリーは「オンリーホープ」で、デヴィッド・ウィルソンが振付を手がけている。
この時期は、クラシックやジャズ、映画・舞台音楽など、異なる音楽の特徴を経験していった時期として整理できる。
2024-25:映画音楽「シェルブールの雨傘」へ
2024-25シーズンのショートは、フランス映画『シェルブールの雨傘』の音楽。振付は宮本賢二だった。
フリーには「シンデレラ」を採用し、デヴィッド・ウィルソンが振付を担当。ショートとフリーで異なる作品世界を表現する構成となった。
2025-26:映画『道』の音楽「La strada」
2025-26シーズンのショートは、イタリア映画『道』の音楽「La strada」。振付はデヴィッド・ウィルソンが担当した。
フリーにはルイ・アームストロングの名曲「What A Wonderful World」を採用。こちらの振付は宮本賢二だった。
このシーズン、中井はシニアデビューを果たし、グランプリシリーズで優勝。グランプリファイナルでも2位となり、ミラノ・コルティナ五輪では銅メダルを獲得した。
2026-27:タンゴへの挑戦
そして2026-27シーズンは、ショートが「Por Una Cabeza」、フリーが「パリのアメリカ人」へと変わった。
ショートの振付はシン・イェジ、フリーはデヴィッド・ウィルソン。これまでの歴代プログラムと比較しても、ショートの表現方法に大きな変化が見られるシーズンだ。
【前季のショート曲】La stradaと映画『道』、ニーノ・ロータの関係
2025-26シーズンのショート曲「La strada」を詳しく知りたい人も多いはずだ。
La stradaは、イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニが手がけた1954年公開の映画『道』の原題でもある。映画音楽を担当したのは、イタリアの作曲家ニーノ・ロータ(Nino Rota)だ。
映画『道』は、旅回りの大道芸人ザンパノと、彼に連れられて旅をするジェルソミーナを中心に描いた作品。人間の孤独や優しさ、悲しみを描く映画として知られ、ニーノ・ロータの音楽も作品の印象を支える重要な要素になっている。
2025-26シーズンの中井のショートは、この映画の音楽を使用し、デヴィッド・ウィルソンが振付を担当した。
特筆すべきは、2026年ミラノ・コルティナ五輪でも、このプログラムが大舞台で披露されたことだ。
フジテレビの公式戦績によると、中井は五輪個人戦のショートで78.71点を獲得して1位。フリーでは140.45点を記録し、合計219.16点で銅メダルを獲得した。
つまり「La strada」は、単に前シーズンに使用した曲というだけではない。中井がシニアデビューから五輪メダリストへと成長した時期を象徴するプログラムの一つでもある。
映画音楽を通じた物語性のある表現から、次のシーズンにはタンゴへ。音楽の変化を追うと、中井が新しい表現を積極的に取り入れていることが見えてくる。
【ショートとフリーの違い】2026-27はガーシュウィン作品も注目
中井亜美の使用曲を調べる際に間違えやすいのが、ショートとフリーの取り違えだ。
2026-27シーズンは、ショートとフリーで音楽の方向性が異なる。ショートはタンゴ、フリーはジョージ・ガーシュウィンの作品を中心とする構成になっている。
ショートは「Por Una Cabeza」
ショートの楽曲はカルロス・ガルデルの「Por Una Cabeza」。シン・イェジが振付を担当する。
競馬を題材とするタンゴの情熱的なリズムを生かし、ステップや視線、表情の変化を組み合わせた演技が特徴だ。
フリーは「パリのアメリカ人」を中心とした複数曲構成
一方、フリーはデヴィッド・ウィルソン振付の「パリのアメリカ人」。ISUの公式選手プロフィールには、次の3つの楽曲が登録されている。
- 「An American in Paris(パリのアメリカ人)」
- 「Shall We Dance?」
- 「Second Rhapsody / Cuban Overture」
いずれもジョージ・ガーシュウィンの作品だ。
したがって、フリーの曲名を単に「パリのアメリカ人」と紹介することは間違いではないものの、実際の登録情報を見ると複数の楽曲を組み合わせた構成であることが分かる。
この違いは、使用曲を調べるうえで押さえておきたいポイントだ。
ショートの「Por Una Cabeza」はタンゴのリズムと表現が中心。一方、フリーはガーシュウィンの複数作品を通じた音楽的な展開が見どころとなる。
さらに振付師も異なる。ショートはシン・イェジ、フリーはデヴィッド・ウィルソンだ。同じ選手のプログラムでありながら、二人の振付師による異なる表現を楽しめる構成になっている。
【2026年最新の競技実績】新SPは試合でも結果を残している?
新プログラムが実際の競技でどのように評価されているのかも気になるところだ。
2026-27シーズンの「Por Una Cabeza」は、6月のドリーム・オン・アイス2026で初披露された後、9月の木下グループ杯などで競技プログラムとして使用されている。
ISU公式プロフィールに掲載された2026年11月3日時点の記録では、ショートの自己ベストは80.27点。2026年9月4日の木下グループ杯で記録した得点だ。
さらに10月のグランプリシリーズ・フランス大会では、ショート3位からフリー1位へと順位を上げ、合計219.74点で優勝した。
この結果は、今季のプログラムが単に新しい表現への挑戦にとどまらず、競技成績にもつながっていることを示している。
自己ベストと今季ベストは区別したい
ここで注意したいのが、自己ベストとシーズンベストの違いだ。
ISUの公式プロフィールによると、ショートの自己ベストは80.27点、フリーの自己ベストは149.08点。総合自己ベストは227.08点で、2025年のグランプリ・フランス大会で記録したものだ。
2026年のフランス大会での219.74点は、2026-27シーズンの総合ベストにあたる。過去の自己ベストと混同しないようにしたい。
新プログラムの完成度は、シーズンを通じてどのように高まっていくのか。特にショートでは、タンゴのリズムに対する足さばきや表情の変化が、今後の評価を左右する見どころになりそうだ。
【プロの結論】中井亜美の使用曲はシーズンと振付師をセットで見る
中井亜美のショート曲を調べるとき、最も重要なのはシーズン、ショート・フリーの区別、振付師の3点をセットで確認することだ。
特に2025-26と2026-27は、どちらも話題性の高いプログラムであるため、情報が混在しやすい。
例えば、次のように整理すれば間違えにくい。
- 2026-27のショートを知りたいなら「Por Una Cabeza」
- 2025-26のショートを知りたいなら「La strada」
- 2026-27のフリーを知りたいなら「パリのアメリカ人」
- シン・イェジの担当プログラムを知りたいなら2026-27のショート
- デヴィッド・ウィルソンの担当プログラムを知りたいなら2025-26のショートと2026-27のフリー
また、公式情報を確認する場合は、ISUの選手プロフィール、フジテレビの「フジスケ」、テレビ朝日のグランプリシリーズ選手紹介が参考になる。
ISUは国際大会に登録された使用曲や振付師を確認するのに適しており、フジテレビは過去のプログラムをシーズンごとに比較しやすい。選手本人の新しいプログラムへの思いや振付の背景については、日刊スポーツやワールド・フィギュアスケートWebなどの取材記事が補足情報になる。
曲名だけを追うのではなく、どの振付師が、どのシーズンに、どのような表現を作り上げたのか。その視点で見ると、中井亜美のプログラムの変遷がより立体的に理解できる。
中井亜美のショート曲に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中井亜美の2026-27シーズンのショート曲は何?
A1:カルロス・ガルデル作曲の「Por Una Cabeza(ポル・ウナ・カベサ)」です。振付師は韓国のシン・イェジです。
Q2:2025-26シーズンのショート曲は何だった?
A2:映画『道(La strada)』の音楽「La strada」です。振付師はデヴィッド・ウィルソンでした。
Q3:中井亜美の2026-27シーズンのフリー曲は何?
A3:「パリのアメリカ人」を中心とした構成です。ISUの公式プロフィールには「An American in Paris」「Shall We Dance?」「Second Rhapsody / Cuban Overture」の3曲が登録されています。振付師はデヴィッド・ウィルソンです。
Q4:中井亜美の歴代ショート曲には何がある?
A4:2021-22年の「O Holy Night」、2022-23年の「アイ・ガット・リズム」、2023-24年の「Baby, God Bless You」、2024-25年の「シェルブールの雨傘」、2025-26年の「La strada」、2026-27年の「Por Una Cabeza」です。
Q5:シン・イェジは中井亜美のフリーも振り付けている?
A5:2026-27シーズンのシン・イェジの担当はショートです。フリーはデヴィッド・ウィルソンが振付を担当しています。
まとめ:中井亜美は「Por Una Cabeza」で新しい表現へ
2026-27シーズンの中井亜美のショートプログラムは、タンゴの名曲「Por Una Cabeza」。振付師シン・イェジとの初タッグで、これまでとは異なる表現に挑戦している。
前シーズンの「La strada」は、映画『道』の音楽を使用したデヴィッド・ウィルソン振付のプログラムだった。五輪のショートで1位を獲得した演技としても記憶に残る。
歴代のショート曲を振り返ると、「アイ・ガット・リズム」「Baby, God Bless You」「シェルブールの雨傘」など、多彩な音楽を取り入れてきたことが分かる。
そして今季のフリーでは、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」を中心とした複数曲構成にも挑戦している。
「Por Una Cabeza」は、中井亜美が新しい自分を表現するために選んだ2026-27シーズンのショート曲。タンゴならではのリズム、表情、足さばきが、今後どこまで磨かれていくのか。歴代プログラムとの違いにも注目しながら、今季の演技を見届けたい。