2026年3月26日、東京都豊島区東池袋の大型商業施設「サンシャインシティ」にあるポケモンセンターメガトウキョーで、21歳の女性店員・春川萌衣さんが元交際相手の男に刃物で刺され、死亡する事件が発生した。男も事件直後に死亡した。
池袋ポケモンセンター刺殺事件として報じられたこの事件は、単なる店舗内の殺傷事件ではない。春川さんは事件前から元交際相手による付きまといを警察に相談しており、相手はストーカー規制法違反の疑いで逮捕され、接近禁止命令も受けていた。それにもかかわらず、なぜ最悪の結果を防げなかったのか。
2026年7月29日には、警視庁が死亡した男を殺人などの疑いで書類送検した。加えて、事件後に臨時休業していた店舗も8月24日に営業を再開している。事件発生から捜査の進展、警察対応の検証、現在の状況までを時系列で整理する。
【事件の概要】サンシャインシティで何が起きた?春川萌衣さんと広川大起容疑者の関係

事件が発生したのは、2026年3月26日午後7時15分ごろ。東京都豊島区東池袋のサンシャインシティ専門店街アルパにある「ポケモンセンターメガトウキョー」だった。
店舗で勤務していた春川萌衣さん(当時21歳)が、刃物を持って店内に入った広川大起容疑者(当時26歳)に襲われた。広川容疑者は春川さんを刺した後、自身の首も刺し、2人は病院に搬送されたものの、いずれも死亡が確認された。
FNNプライムオンラインなどの報道によると、広川容疑者は店内に入るとレジカウンターの中に向かい、春川さんを刃物で襲った。捜査関係者への取材では、首などを少なくとも5回刺したとされる。
警視庁は殺人事件として捜査を開始。防犯カメラ映像などから、事件当時の行動や襲撃に至る経緯を調べた。
2人は元交際相手だった
事件の背景には、春川さんと広川容疑者の過去の交際関係があった。
毎日新聞の報道によると、2人は東京都八王子市内のファストフード店で知り合い、2024年10月ごろから2025年7月ごろまで交際していた。
その後、関係が解消されたものの、広川容疑者による付きまとい行為が続いたとされる。春川さんは帰宅途中の待ち伏せや自宅周辺での行動などに不安を感じ、警察に相談することになった。
また、春川さんはポケモンセンターで働くことを希望しており、勤務先は本人にとって大切な職場だったと報じられている。
今回の事件で見落としてはならないのは、被害者が勤務先を変えれば解決するという単純な問題ではなかった点だ。被害者には仕事を続ける権利があり、加害者による接近を防ぐ責任を被害者側だけに負わせることはできない。
【事件前から3月26日まで】警察への被害相談と接近禁止命令の経緯
サンシャインシティ事件を検証するうえで重要なのが、2025年12月から2026年3月までの警察対応だ。
事件発生前に警視庁は被害相談を受理し、元交際相手の逮捕、追加の捜査、接近禁止命令など複数の措置を講じていた。
2025年12月25日:春川さんが警視庁八王子署に相談
春川さんは2025年12月25日、元交際相手から付きまとわれているとして警視庁八王子署に相談した。
毎日新聞によると、春川さんは帰宅途中に待ち伏せされ、自宅までついてこられるという被害を訴えていた。
相談後、警察署員が春川さんを自宅まで送り届けたところ、付近をうろついていた広川容疑者を発見した。広川容疑者の車内から果物ナイフが見つかったことなどを受け、警視庁はストーカー規制法違反の疑いで逮捕した。
2026年1月:追加の捜査と接近禁止命令
逮捕後の捜査では、広川容疑者のスマートフォンから春川さんを撮影した動画が見つかったと報じられている。
この件では性的姿態撮影等処罰法違反の疑いで再逮捕され、刃物の所持についても銃刀法違反の疑いで捜査が進められた。
加えて、2026年1月29日にはストーカー規制法に基づく禁止命令が出された。
FNNプライムオンラインの報道によれば、広川容疑者は復縁を望んでいたことを話す一方、今後は近づかないという趣旨の説明をしていた。
翌30日には関係する容疑で略式起訴され、罰金80万円を納付して釈放された。
警視庁は広川容疑者にカウンセリングや治療を受けるよう働きかけたが、本人は拒否していたという。
被害者側にも避難や勤務先変更を助言
警視庁は春川さんに対しても安全確保のための助言を行っていた。
毎日新聞によると、春川さんは2026年2月上旬までの約1か月間、遠方の親類宅に避難していた。その後、自宅に戻り、ポケモンセンターでの勤務を再開した。
警察は勤務先の変更についても助言していたとされるが、春川さんにとって同店で働くことは大切な目標だった。
また、広川容疑者の釈放後、警視庁は3月12日までに計3回、春川さんと連絡を取っていた。本人からは異常がないとの返答があったと報じられている。
しかし、その約2週間後に事件は起きた。禁止命令が出され、警察による連絡も続いていたにもかかわらず、春川さんの命を守ることはできなかった。
【関係者と事件の時系列一覧】広川容疑者の逮捕から7月29日の書類送検まで
事件の関係者と捜査の経緯を整理すると、今回の事件は交際解消後の付きまとい、警察への相談、逮捕と行政措置、そして禁止命令後の殺害という流れで発生している。
| 時期・主体 | 出来事・関係 | 確認されている内容 |
|---|---|---|
| 2024年10月ごろ | 春川さんと広川容疑者 | 八王子市内の勤務先で知り合い、交際を開始。 |
| 2025年7月ごろ | 2人の交際関係 | 交際を解消。春川さんはポケモンセンターで勤務していた。 |
| 2025年12月25日 | 春川さんと警視庁 | 付きまとい被害を相談。同日、広川容疑者をストーカー規制法違反の疑いで逮捕。 |
| 2026年1月 | 警視庁と広川容疑者 | 盗撮や刃物所持に関する追加捜査が行われ、1月29日に禁止命令。30日に略式起訴、罰金納付後に釈放。 |
| 2026年2月上旬 | 春川さん | 約1か月間の親類宅への避難を終え、勤務先での仕事を再開。 |
| 2026年3月26日 | 春川さん・広川容疑者 | ポケモンセンターメガトウキョーで刺殺事件が発生。2人とも死亡。 |
| 2026年7月29日 | 警視庁・東京地検 | 広川容疑者を容疑者死亡のまま、殺人などの疑いで書類送検。 |
| 2026年8月24日 | 株式会社ポケモン | ポケモンセンターメガトウキョーとピカチュウスイーツが営業再開。 |
この時系列から分かるのは、警察が事件前に被害を把握していなかったわけではないということだ。相談の受理から逮捕、禁止命令、被害者への安全対策まで、複数の対応が実施されていた。
一方、措置が実施されたことと、実際に被害を防げたことは別問題である。特に、禁止命令後に加害者がどのような行動を取っていたのか、勤務先に対する危険をどう評価していたのかが重要な検証対象となる。
【警視庁の対応を検証】逮捕と接近禁止命令があっても事件を防げなかった理由
今回の事件をめぐって大きな議論となったのが、警察の対応は十分だったのかという問題だ。
警視庁は、2025年12月25日の相談を受けて広川容疑者を逮捕し、追加の犯罪捜査を進めた。2026年1月には禁止命令を出し、加害者に対する治療やカウンセリングも働きかけている。
被害者側に対しても避難や勤務先変更を助言し、釈放後には複数回の連絡を行っていた。
警視庁は一連の対応について、毎日新聞の取材に対し、その都度最善の措置を取っていたとの説明をしている。
問題は接近禁止命令の実効性
ストーカー規制法に基づく禁止命令は、加害者に対して被害者へのつきまといや接近などを禁じる行政措置だ。
命令が出されること自体は、被害防止に向けた重要な対応である。しかし、命令が出たからといって、加害者が物理的に被害者へ近づけなくなるわけではない。
今回の事件では、広川容疑者が禁止命令を受けた後も、勤務先で春川さんを襲撃した疑いが持たれている。
つまり、禁止命令を出した後の継続的な危険評価と、実際の接近を防ぐ仕組みが十分に機能していたのかという問題が残る。
定期的な連絡だけで危険性を判断できるのか
もう一つの論点は、被害者への定期的な連絡のあり方だ。
警視庁は3月12日までに春川さんと3回連絡を取っていたが、本人から異常がないとの返答を受けていたと報じられている。
ただし、被害者がその時点で異常を感じていないことと、加害者側の危険性がなくなったことは同じではない。
ストーカー事案では、被害者が把握していない場所での待ち伏せや、勤務先への接近などが起きる可能性もある。被害者の回答だけでなく、加害者の行動や過去の違反、執着の程度などを総合的に確認する必要がある。
被害者に退職や転居を求めるだけでは不十分
勤務先変更や避難は、危険から距離を取るための選択肢になり得る。
しかし、被害者が仕事や生活の基盤を手放さなければ安全を確保できない仕組みでは、被害者に過度な負担を押しつけることになる。
春川さんはポケモンセンターで働くことを望んでいた。仕事を続けたいという意思は尊重されるべきであり、加害者の行動を制限する対策と、勤務先の安全確保を並行して進めることが必要だった。
今回の事件について警察の対応を検証する際には、当時の危険度評価、釈放後の監視・連絡体制、職場との情報共有、禁止命令の実効性を個別に確認することが重要になる。
【ストーカー被害の再発防止】2026年の法改正と警察・勤務先に求められる対策
サンシャインシティ事件を受けて考えるべきなのは、同じような被害をどうすれば防げるのかという点だ。
ストーカー行為は、単なる恋愛関係のもつれや個人間のトラブルではない。相手の意思に反して接近や監視、交際の要求などを繰り返す行為は、被害者の安全や生活を脅かす問題である。
2025年のストーカー規制法改正で何が変わった?
警察庁によると、2025年12月10日にストーカー規制法の一部改正法が公布され、同年12月30日から主要な改正内容が施行された。
主な変更点は次のとおりだ。
- 位置情報取得への規制拡大:紛失防止タグを利用した無断の位置情報取得などが規制対象に追加された。
- 職権による警告:被害者からの申し出がなくても、警察が必要と判断すれば警告を行える仕組みが設けられた。
- 勤務先との連携:被害者を雇用する事業者や学校の長が、被害者への援助に協力する主体に追加された。
- 禁止命令の実施体制:禁止命令等を行う主体について、被害者の住居所在地を管轄する公安委員会等への対応範囲が拡大された。
また、2026年3月10日からは、ストーカー行為をするおそれのある人物に被害者の情報を提供する可能性がある者に対し、警察が情報提供を行わないよう求める仕組みも始まっている。
今回の事件が発生した3月26日は、これらの法改正が施行された後だった。警察だけでなく、被害者が働く職場との連携をどう具体化するかも課題となる。
警察庁は勤務先や学校との一層の連携を都道府県警察に指示している。これは、被害者が日常生活を続けながら安全を確保するためにも重要な変更だ。
警察庁の統計が示すストーカー被害の現状
警察庁が2026年3月19日に公表した「令和7年におけるストーカー事案等への対応状況」によると、2025年のストーカー事案に関する相談等件数は2万2,881件だった。前年から3,314件、16.9%増加している。
同年のストーカー規制法に基づく禁止命令等は3,037件で、前年から25.8%増加した。法改正後の2017年以降で最多となっている。
加えて、警察庁の資料では、禁止命令等を受けた加害者への連絡を2024年3月から実施しており、2025年の実施件数は1,698件だった。加害者をカウンセリングや治療機関につなげる取り組みでも233人が実施につながっている。
これらの数字は、ストーカー事案への対応が警告や禁止命令だけで完結するものではなく、継続的な支援や加害者への働きかけを必要としていることを示している。
再発防止のために必要な4つの視点
1. 危険性の継続的な評価
一度逮捕した、あるいは禁止命令を出したという事実だけで対応を終えてはならない。過去の行為、再接近の兆候、命令違反の可能性などを継続的に評価する必要がある。
2. 警察と勤務先の連携
加害者が被害者の勤務先を知っている場合、職場は重要な安全確保の対象になる。従業員の相談窓口、防犯体制、緊急時の連絡手順などを整え、警察との連携を具体化することが求められる。
3. 被害者の生活基盤を守る支援
転居や退職だけを解決策にせず、仕事を続けながら安全を確保できる方法を考える必要がある。避難先の確保、個人情報の管理、勤務中の安全対策などを組み合わせることが重要だ。
4. 加害者への継続的な対応
カウンセリングや治療を勧めても本人が拒否する場合、その後の危険性をどのように評価し、法律に基づく措置や関係機関との連携を進めるのかが課題となる。
被害者の安全を守ることと、加害者の行動を抑止することは、別々の問題ではない。両方を同時に進める体制が必要になる。
【2026年10月現在の状況とプロの結論】書類送検後の捜査・店舗の営業再開
2026年10月31日現在、事件に関する大きな節目は7月29日の書類送検と、8月24日の店舗再開だ。
7月29日:広川大起容疑者を容疑者死亡のまま書類送検
2026年7月29日、警視庁巣鴨署は広川大起容疑者を殺人、銃刀法違反、ストーカー規制法違反などの疑いで東京地検に書類送検した。
共同通信などの報道によれば、広川容疑者は2026年3月26日、ストーカー規制法に基づく禁止命令が出ていたにもかかわらず、勤務先のポケモンセンターメガトウキョーに押しかけ、春川さんを刃物で刺して死亡させた疑いが持たれている。
事件直後に広川容疑者自身も死亡しているため、被疑者として刑事裁判を受けることはない。
ただし、書類送検は無意味な手続きではない。警察が収集した証拠や捜査結果を検察に送り、事件の法的な処理につなげるための手続きだ。
弁護士ドットコムの法律解説によれば、被疑者が死亡している場合でも、捜査した事件を検察官に送致することは原則として必要になる。死亡した人物を刑事裁判にかけることはできないため、通常は被疑者死亡を理由とする不起訴処分となる。
また、送致された捜査記録は、事件の経緯や客観的証拠を後から検証するうえでも意味を持つ。
8月24日:ポケモンセンターメガトウキョーが営業再開
事件を受け、株式会社ポケモンは3月26日にポケモンセンターメガトウキョーとピカチュウスイーツを臨時休業すると発表した。
同社は警察への全面的な協力と、スタッフの心身のケアを優先する方針を示していた。
その後、2026年7月27日に公式サイトで営業再開日を発表。8月24日から営業を再開した。
再開に際しては店舗の一部改装を実施し、従業員の安全確保に関する取り組みを強化。再開後しばらくは入店制限も設けられた。
2026年10月31日現在、ポケモンセンター公式サイトでは、同店の通常営業時間は月曜日から日曜日までの10時から20時と案内されている。
【プロの結論】事件が残した最大の課題は「命令後の安全確保」
サンシャインシティ事件の本質は、警察に相談していなかった被害者が突然襲われたという単純な構図ではない。
春川さんは警察に助けを求めていた。警察は元交際相手を逮捕し、禁止命令を出し、被害者への避難や勤務先変更の助言、定期的な連絡も行っていた。
それでも事件は起きた。
ここから導かれる重要な教訓は、ストーカー対策の成否を逮捕件数や禁止命令の発出件数だけで評価してはならないということだ。
本当に確認すべきなのは、命令を出した後に被害者の安全が維持されているか、加害者の行動が変化していないか、勤務先や家族などの関係者と適切な情報共有ができているかという点である。
また、被害者が仕事を辞めたり、住み慣れた場所を離れたりしなければ安全を得られない社会であってはならない。被害者の生活を守りながら、加害者側の接近を防ぐ仕組みこそが必要だ。
被疑者死亡のまま書類送検された今回の事件では、刑事裁判によって本人の責任を問うことはできない。だからこそ、残された証拠や警察の対応記録を検証し、今後のストーカー対策に反映させることが重要になる。
【サンシャインシティ事件】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:サンシャインシティ事件はいつ、どこで発生した?
A1:2026年3月26日午後7時15分ごろ、東京都豊島区東池袋のサンシャインシティ内にあるポケモンセンターメガトウキョーで発生した。21歳の女性店員・春川萌衣さんが元交際相手の男に刺され、2人とも死亡した。
Q2:広川大起容疑者は事件前に逮捕されていた?
A2:逮捕されていた。2025年12月25日に春川さんが付きまとい被害を警視庁に相談し、広川容疑者はストーカー規制法違反の疑いで逮捕された。その後、追加捜査や再逮捕が行われ、2026年1月29日には接近禁止命令が出されていた。
Q3:広川大起容疑者はその後どうなった?
A3:事件直後に自身も死亡した。2026年7月29日、警視庁は殺人やストーカー規制法違反などの疑いで、容疑者死亡のまま東京地検に書類送検した。死亡しているため刑事裁判は行われない。
Q4:ポケモンセンターメガトウキョーは現在営業している?
A4:営業している。2026年8月24日に営業を再開した。再開にあたって一部改装と従業員の安全対策強化が実施された。公式サイトでは通常営業時間を10時から20時と案内している。
Q5:今回の事件で警察対応の何が問題になっている?
A5:逮捕や接近禁止命令などの措置が取られていたにもかかわらず、事件を防げなかった点だ。禁止命令後の危険性評価、加害者の行動確認、勤務先との連携、被害者の安全確保が十分だったのかが検証すべき課題となっている。
まとめ:サンシャインシティ事件から考えるストーカー対策の今後
サンシャインシティ事件は、2026年3月26日にポケモンセンターメガトウキョーで発生した、元交際相手による重大なストーカー殺人事件だ。
春川萌衣さんは事件前に警察へ被害を相談していた。広川大起容疑者は逮捕され、接近禁止命令も受けていたが、最終的に勤務先で春川さんを殺害する結果となった。
7月29日の書類送検によって警察の捜査は検察への送致という段階に進み、8月24日には店舗も営業を再開した。しかし、事件が残した問題はそれだけで解決するものではない。
今後の再発防止には、警察による継続的な危険性評価、加害者への実効的な対応、勤務先との情報共有、被害者の生活を守る支援が欠かせない。
最も重要なのは、被害者に逃げ続けることを求めるのではなく、加害者が被害者に接近できない環境を社会全体で整えることだ。
春川さんのように、警察へ相談し、法的措置も取られていた人の命が失われた事実を、今後のストーカー被害防止と警察活動の検証に生かせるか。それが、この事件から社会に突きつけられた課題である。