『ありす、宇宙までも』
小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ
連載開始:2024年6月3日
主人公・朝日田ありすが、日本人初の女性宇宙飛行士コマンダーを目指す成長物語。
売野機子の現在の代表作として、特に注目されているのが『ありす、宇宙までも』です。
2024年6月3日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」27号から連載が始まり、同年8月30日にコミックス第1巻が発売されました。
主人公は、容姿端麗でスポーツも得意な小学6年生・朝日田ありす。一見すると何でもできる人気者ですが、言葉が拙く、授業についていけないという悩みを抱えています。
彼女が出会うのは、優れた学力を持つ孤高の天才少年・犬星類。ありすの抱える問題に気づいた類との出会いをきっかけに、彼女は宇宙飛行士という大きな夢へ向かって歩き始めます。
主人公・ありすと犬星類の関係性が物語の軸
朝日田ありす
明るく人気者の少女。学習面で困難を抱えながら宇宙飛行士を目指す。
犬星類
優秀な頭脳を持つ孤高の少年。ありすの可能性を見つけ、学びを支える。
二人の関係は、単純な恋愛や師弟関係だけでは説明できません。それぞれが異なる困難を抱え、相手との関わりを通して成長していくバディものとしての魅力があります。
小学館の公式作品紹介では、ありすの目標は日本人初の女性宇宙飛行士コマンダー(船長)になることと説明されています。
作品の根底にあるのは、現在の能力だけで将来の可能性を決めてしまわないという考え方です。勉強が苦手な少女が、学ぶことの意味を知り、自分の未来を自分で切り開こうとする姿が物語の推進力になっています。
マンガ大賞2025の選考で評価された理由
2025年3月27日、第18回マンガ大賞の授賞式で、『ありす、宇宙までも』がマンガ大賞2025の大賞に選ばれました。
マンガ大賞の選考基準は、公式発表によると「友達に薦めたいマンガ」です。2025年の選考では、一次選考に238作品が挙がり、その中から10作品が二次選考へ進みました。一次選考には97人、二次選考には94人が参加しています。
つまり、単に話題性の高い作品を選ぶのではなく、実際に作品を読んだ選考員が、他者に推薦したいと思えるかどうかを重視した賞です。
受賞時の報道では、売野機子自身も、この賞を目標に作品を始めたことを明かしています。webゲンロンの2026年インタビューでも、連載開始時から受賞を明確な目標として設定し、掲載直前にネームを描き直したことが語られています。
受賞は偶然の話題化だけでなく、作者と編集部が作品の完成度と読者への伝わり方を意識して制作してきた結果として捉えられます。
2026年10月現在の最新刊は第7巻
『ありす、宇宙までも』第7巻
770円

税込・B6判・160ページ
ISBN:9784098640294
小学館公式書誌情報
2026年10月31日時点での最新刊は第7巻です。
第7巻では、中学3年生になったありすが「明日やることリスト」の達成を目指し、学校生活の中でさまざまなミッションに挑戦します。
アメリカでのスペースキャンプから1年が経過し、物語は宇宙飛行士を目指すための大きな夢だけでなく、日常の学校生活にも焦点を当てています。同級生たちとの関係が変化していく様子や、亡くなった両親が残したノートの発見も重要な展開です。
小学館の商品紹介では、第7巻刊行時に累計70万部突破が発表されています。マンガ大賞の受賞後も重版が続き、読者層を広げていることがうかがえます。
第8巻はいつ発売?2026年11月30日発売予定
気になる第8巻についても、小学館の公式書誌ページで情報が公開されています。
『ありす、宇宙までも』第8巻
2026年11月30日
予定価格:770円(税込)
ISBN:9784098641680
B6判・160ページ
第8巻の見どころ
- 15歳になったありすの中学最後の夏休み。
- JAXAの管制官・昼埜から届く電話。
- 宇宙開発の現場で新たに始まる挑戦。
- 犬星が抱える家庭に関する重大な決断。
第8巻の公式紹介では、シリーズ累計80万部突破も掲げられています。第7巻の70万部突破からさらに販売規模を伸ばしていることが分かります。
したがって、2026年10月末に購入する場合は第7巻が最新刊、11月30日以降は第8巻が新刊となる予定です。
【インタビューから分析】売野機子の漫画が持つ独自の魅力
売野機子の作品を深く理解するには、本人がインタビューで語った創作姿勢を知ることが役立ちます。
特に注目したいのが、2026年1月のwebゲンロンのインタビューと、2026年3月発売の「月刊 星ナビ」4月号に掲載されたインタビューです。
1. 映画の構成を漫画づくりに生かす
webゲンロンのインタビューで、売野機子は過去にヒットした映画や音楽、テレビドラマを分析してきたと話しています。
単に流行作品を参考にするのではなく、なぜその作品が人の感情を動かすのか、どの場面が物語全体にどのような効果を与えるのかを言語化してきたそうです。
例として挙げたのが映画『タイタニック』です。作品の構成や感情を動かす仕組みを分析し、それを異なる設定の漫画に応用するという考え方です。
この制作方法は、ジャンルが異なる作品を手がけながらも、読者を物語に引き込む力を維持している理由の一つと考えられます。
2. 読者に伝わることを重視する
同インタビューで、売野機子は漫画を描く目的について、自分の感覚や考えを共有できる人を探したいという思いを語っています。
特に印象的なのは、自己表現だけで終わらせない姿勢です。
「読者に伝わらなかったら意味がない」 ――売野機子、webゲンロン2026年1月5日配信インタビュー
自分が描きたいものを追求する一方、読者が受け取れる形になっているかを編集者に確認する。作品へのこだわりと読者への意識を両立させようとする姿勢が見えてきます。
3. 宇宙という遠い目標を設定した理由
「月刊 星ナビ」2026年4月号では、『ありす、宇宙までも』の制作背景について詳しく語っています。
売野機子は、主人公の人生を面白く描く方法として、あえて「最も遠い目標」を設定したと説明しています。宇宙飛行士という難しい職業は、ありすの現在の状況から見れば非常に遠い夢です。
しかし、その距離があるからこそ、主人公が何を学び、どのように困難を乗り越えていくのかという成長の過程が物語になります。
また、宇宙開発の描写については、筑波宇宙センターを一般見学者として何度も訪問したほか、アメリカのスペースキャンプの舞台となったアラバマ州ハンツビルにも足を運んでいます。
加えて、日本宇宙少年団の関係者や元JAXA関係者、元宇宙飛行士の山崎直子らから情報提供を受け、上垣内茂樹による専門的な確認も制作に取り入れています。
こうした取材・監修体制が、漫画のドラマ性と宇宙開発の現実感を結び付けています。
【評判・評価】売野機子の漫画は何が評価されている?
売野機子の作品に対する評価を考える際、個人の感想と漫画賞などの客観的な評価を分けて見ることが大切です。
『ありす、宇宙までも』は、マンガ大賞以外にも複数の漫画賞・ランキングで評価されています。
| 賞・ランキング | 評価 |
|---|---|
| ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2024 コミック部門 | 4位 |
| Renta!マンガ大賞2024 | 少年・青年部門「心ゆさぶるマンガ賞」 |
| このマンガがすごい!2025 オトコ編 | 16位 |
| マンガ大賞2025 | 大賞 |
| 次にくるマンガ大賞2025 コミックス部門 | 11位 |
| このマンガがすごい!2026 オトコ編 | 18位 |
読者から支持される3つのポイント
① 登場人物が抱える弱さを丁寧に描く
売野機子の漫画では、最初から何でもできる完璧な人物よりも、何らかの欠落や悩みを抱えた人物が中心になります。
『ありす、宇宙までも』のありすは、明るく人気者でありながら学習面の困難を抱えています。『MAMA』の少年たちも、才能を持つ一方で、自信や人間関係に悩みます。
読者が登場人物の弱さに共感し、その成長を見届けたくなることが、作品の魅力につながっています。
② 恋愛だけに頼らない人間関係の描写
『ルポルタージュ』では、恋愛が社会的に必要とされなくなった世界を描いています。『インターネット・ラヴ!』では、SNSを通じた憧れが現実の関係へ変化していきます。
どちらも恋愛を扱っていますが、単純な恋愛成就だけが目的ではありません。人と人がつながることの意味や、他者を理解する難しさが作品の中心にあります。
③ ジャンルに縛られない表現力
少年合唱団、近未来社会、オンライン恋愛、宇宙開発。売野機子は作品ごとに舞台を変えています。
それでも、登場人物の内面を掘り下げる姿勢には共通点があります。ジャンルの違いよりも、人間を描く作家としての一貫性が評価につながっていると考えられます。
売野機子の漫画がおすすめの人・好みが分かれそうな人
おすすめできる読者
- 登場人物の心理や成長をじっくり楽しみたい。
- 恋愛だけでなく社会的なテーマにも関心がある。
- 一般的なジャンル分類に収まらない漫画を読みたい。
- 映画のような構図や印象的な場面づくりが好き。
- 弱さを抱えた人物が努力して前進する物語が好き。
好みが分かれる可能性がある読者
- 明快な勧善懲悪や単純な爽快感を最優先する。
- 登場人物の複雑な心理描写をあまり必要としない。
- 現実社会を反映した重いテーマを避けたい。
- 作品ごとに大きく異なるジャンルを読むことに抵抗がある。
最初の一冊を選ぶなら、受賞作から入りたい人には『ありす、宇宙までも』、心理描写を重視する人には『MAMA』、社会的なテーマに興味がある人には『ルポルタージュ』がおすすめです。
【FAQ】売野機子に関するよくある質問
Q1:売野機子の読み方は?
売野機子は「うりの・きこ」と読みます。東京都出身の漫画家で、2009年に商業デビューしました。
Q2:売野機子の漫画家デビュー作は何?
2009年10月、白泉社の「楽園 Le Paradis」に掲載された『薔薇だって書けるよ』と『日曜日に自殺』の2作品です。2作品同時掲載でのデビューでした。
Q3:売野機子の代表作は?
『MAMA』『ルポルタージュ』『ロンリープラネット』『インターネット・ラヴ!』『ありす、宇宙までも』などが代表作として挙げられます。
Q4:『ありす、宇宙までも』は何巻まで発売されている?
2026年10月31日時点では第7巻まで発売されています。第7巻は2026年6月30日発売で、第8巻は2026年11月30日発売予定です。
Q5:『ありす、宇宙までも』はマンガ大賞を受賞した?
はい。2025年3月27日に発表されたマンガ大賞2025で大賞を受賞しました。
Q6:売野機子のインタビューはどこで読める?
2021年のShe is、2026年1月のwebゲンロン、2026年3月発売の「月刊 星ナビ」4月号などで本人のインタビューを読むことができます。特に2026年のインタビューは、創作方法や『ありす、宇宙までも』の制作背景を知るうえで参考になります。
まとめ:売野機子はジャンルを越えて人間の可能性を描く漫画家
売野機子は、2009年の商業デビュー以来、短編、少年合唱団を題材にした長編、社会派ドラマ、BL、ファンタジーなど、幅広い作品を発表してきた漫画家です。
『MAMA』では才能と運命、『ルポルタージュ』では恋愛と社会制度、『インターネット・ラヴ!』ではSNSを介した人間関係を描きました。そして『ありす、宇宙までも』では、困難を抱えた少女が宇宙飛行士という夢に向かって成長していく姿を描いています。
マンガ大賞2025の受賞は、これまで培ってきた人物描写と物語構成の力が、幅広い読者に届いた大きな節目です。
2026年10月現在、最新刊は第7巻。11月30日には第8巻の発売も予定されています。今後の物語では、ありすと犬星がどのように成長し、宇宙飛行士という目標へ近づいていくのかが大きな見どころです。
初めて読むなら『ありす、宇宙までも』から、売野機子の作家性を幅広く知りたいなら『MAMA』『ルポルタージュ』『インターネット・ラヴ!』へと読み進めると、作品ごとに異なる魅力を発見できます。
記事情報基準日:2026年10月31日