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【危険性の医学的な真相】妊娠中に深部静脈血栓症が起きやすい理由

御影 遼 御影 遼 • 更新: • 公開: • 読了約 18 分
目次

妊婦の足裏マッサージ事故を理解するために欠かせないのが、深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)の関係だ。

この2つは別々の病気というより、血栓が発生した場所と移動した先という関係にある。

深部静脈血栓症(DVT)とは何か

深部静脈血栓症とは、脚や骨盤などの深い部分を走る静脈に血の塊ができ、血液の流れを妨げる病気だ。

妊娠中は、出産時の出血に備えて血液が固まりやすくなる。また、大きくなった子宮が骨盤周辺の血管を圧迫することで、脚から心臓へ戻る血液の流れが滞りやすくなる。

米国疾病予防管理センター(CDC)の2024年5月15日付の解説によると、妊娠中の女性は妊娠していない女性と比較して、血栓ができるリスクが約5倍になる。出産後もリスクは続き、特に産後3か月間は注意が必要とされている。

ただし、リスクが5倍になるという数字は、妊婦の5人に1人が血栓症になるという意味ではない。

英国王立産婦人科医協会(RCOG)の患者向け資料では、妊娠中および産後6週間の静脈血栓症は、女性1,000人当たり約1~2人と説明されている。発症自体はまれだが、見逃した場合には重大な結果につながる。

なぜ脚のマッサージで肺塞栓症につながるのか

問題となるのは、脚の静脈にできた血栓が血流に乗って移動することだ。


深部静脈血栓症から肺塞栓症に至る仕組み


脚の深部静脈に血栓ができる

妊娠中の血液凝固の変化や血流の停滞などが関係する。


血栓が血管壁から離れる

血栓の一部が血流に乗って移動することがある。


血栓が肺動脈に到達する

血栓が肺の血管を塞ぎ、肺塞栓症を引き起こす。


呼吸・循環機能に重大な障害が生じる

重症の場合、急激な血圧低下や心停止に至ることもある。


脚に血栓が存在する状態で強いマッサージを受けると、血栓が移動する危険性がある。2020年のチェンマイ大学の症例報告では、脚のマッサージ後に肺塞栓症を発症した女性について、この機序が考察されている。

特に、血栓がすでにできていることに気づかず施術を受けるケースは危険だ。本人が健康だと思っていても、初期の深部静脈血栓症には気づきにくい場合がある。

肺塞栓症の初期症状で見逃してはいけないサイン

妊娠中の脚のむくみは珍しいことではない。しかし、通常のむくみと血栓症の兆候を区別する必要がある。

症状 考えられる状態 対応
片脚だけが急に腫れる DVTの可能性 速やかに医療機関へ
ふくらはぎの痛み・圧痛 DVTの可能性 マッサージを中止して受診
脚の赤みや熱感 DVTなどの可能性 早急に医師へ相談
突然の息切れ・呼吸困難 PEの可能性 直ちに救急要請
胸痛・血痰 PEの可能性 直ちに救急要請
意識消失・失神 重篤な循環障害など 直ちに救急要請

日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」でも、妊娠・産褥期にDVTや肺血栓塞栓症が疑われる場合の対応が定められている。

片脚の腫脹や疼痛、皮膚の色調変化などがあれば深部静脈血栓症を疑い、必要に応じて下肢静脈超音波検査を行う。突然の呼吸困難や胸痛などがあれば、肺血栓塞栓症を考慮した迅速な診断が必要になる。

緊急性の高い症状

突然の息切れ、胸痛、血痰、失神などが現れた場合は、マッサージを中止するだけでは不十分だ。日本国内なら119番で救急車を要請し、妊娠中であることを伝えてほしい。

【因果関係を検証】足裏マッサージが死亡の直接原因だったのか

妊婦足裏マッサージ死亡

「マッサージを受けた直後に肺塞栓症が起きた」という事実と、「マッサージが死亡の原因だった」という医学的判断は、同じものではない。

この点を考えるうえで、2020年の症例報告は重要な資料となる。

2020年の症例では血栓と肺塞栓症が画像で確認された

論文に記載された女性は、妊娠25週の25歳で、妊娠中の定期的な産前診察を受けていなかった。

施術を受けたのは、チェンマイの商業施設にある伝統的なタイ式マッサージ店。脚と足のマッサージを受けてから約5~10分後、突然呼吸困難となり、意識障害、けいれん、心停止を起こした。

現場に偶然居合わせた看護師2人が応急処置を行い、救急隊による蘇生措置を経て病院に搬送された。病院でも高度な心肺蘇生が行われ、心拍は再開したものの、患者は昏睡状態に陥っていた。

医療チームは画像検査を実施。CT血管造影では左右の肺動脈に複数の血栓による閉塞が確認され、両脚の圧迫超音波検査でも深部静脈血栓症が確認された。

その後、母体の重篤な低酸素状態などを背景に、胎児にも異常が生じ、胎児は子宮内で死亡した。論文の執筆時点である発症から2か月後も、女性は意識を回復していなかった。

医師たちはマッサージと血栓の移動をどう判断したのか

論文の著者らは、マッサージ中に突然呼吸困難と循環不全が発生したこと、画像検査で肺塞栓症と深部静脈血栓症の両方が確認されたことを重視した。

そして、妊娠によって生じた血液凝固傾向を背景に、本人が気づいていなかった既存の血栓が脚へのマッサージによって移動し、肺動脈を塞いだ可能性が高いと考察している。

これは単なる偶然の時間的一致ではなく、医学的な検査結果と発症経過を組み合わせた判断だ。ただし、単一の症例報告であり、あらゆるマッサージが肺塞栓症を引き起こすことや、妊婦全体に同じ危険性があることを証明したものではない。

2021年の研究が示した意外な事実

2021年8月6日には、Stephanie M. Mueller氏とMartin Grunwald氏による、妊娠中のリラクゼーションマッサージに関する系統的レビューが医学誌「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。

この研究では12件のランダム化比較試験を分析し、健康上の問題がない妊婦に対する適切なリラクゼーションマッサージについて、ストレス、不安、背中や脚の痛みなどの軽減につながる可能性を報告している。

一方、試験のうち7件は合併症のある妊婦などを除外しており、5件は既往症などの情報を十分に報告していなかった。つまり、健康な妊婦を対象とした研究結果を、血栓症のリスクがある妊婦にそのまま当てはめることはできない。

さらに同研究は、妊娠中に脚の深部筋肉を強く揉むことは避けるべきだと指摘している。血栓を移動させる可能性があるためだ。一方、表面的なリンパドレナージや穏やかなタッチについては、適切な条件下での選択肢として紹介している。

また、同レビューでは、特定の足つぼを刺激すると陣痛が始まるという説について、科学的な裏付けは確認されていないと説明している。

したがって、「足裏の特定の場所を押しただけで必ず流産する」という説明も、「妊娠中のマッサージなら何をしても安全」という説明も、医学的な理解としては適切ではない。

【妊娠中のマッサージは安全?】足つぼの禁忌と施術前の注意点

妊婦がマッサージを受けること自体が、すべて禁止されているわけではない。

米国産科婦人科学会(ACOG)は、妊娠中のマッサージについて、妊婦への施術に習熟した施術者を選ぶことや、横向きの姿勢で施術を受けることなどを紹介している。

つまり、妊娠中の身体に配慮したマッサージと、強い刺激を加える一般的な脚のマッサージは区別して考える必要がある。

妊娠中に避けるべきマッサージ

特に注意したいのは、次のような施術だ。

- 脚の深部を強く揉む施術: 深部静脈血栓症がある場合、血栓を移動させる危険性がある。
- ふくらはぎへの強い圧迫: 痛みや片側の腫れがある場合は、施術をせず医師の診察を優先する。
- 血栓が疑われる状態での足つぼ: 足裏だけの施術であっても、下肢全体の状態を確認せずに刺激を加えることは避ける。
- 妊婦への対応経験がない施術者による施術: 妊娠週数や身体の変化に配慮できない場合は利用を控える。

特に、深部静脈血栓症と診断されている人や、血栓症が疑われる症状がある人は、マッサージを受けてはいけない。自己判断で揉んで血栓を解消しようとすることも避けたい。

妊娠中でも受けられる可能性がある施術

健康状態に問題がなく、産婦人科医から施術について了承を得られている場合は、妊婦向けに調整された穏やかなリラクゼーションマッサージが選択肢になる。

重要なのは、一般的なマッサージ店で提供される施術と、妊娠中の身体に合わせて行う専門的な施術を同一視しないことだ。

妊婦向けの施術では、一般に次のような配慮が行われる。

- 腹部を圧迫しない。
- 長時間仰向けの姿勢を続けない。
- 横向きなど身体に負担の少ない姿勢を選ぶ。
- 脚の深部を強く揉まない。
- 妊娠週数や体調に合わせて施術内容を調整する。

なお、足裏のリフレクソロジーについては、2023年に13件のランダム化比較試験を分析した系統的レビューも公表されている。妊娠中の不安や陣痛時の痛みなどに対する効果が報告された一方、足のむくみに対する効果などは十分な証拠が得られていない。施術方法や研究の質にもばらつきがあるため、すべての妊婦に安全だと断定することはできない。

妊婦がマッサージを受ける前に確認したいこと

施術を予約する前に、少なくとも次の点を確認したい。

1. 産婦人科医にマッサージを受けてもよいか相談したか。
2. 妊娠週数や妊娠経過を施術者に伝えたか。
3. 過去に深部静脈血栓症や肺塞栓症を発症したことがないか。
4. 血栓症の家族歴や血液凝固に関する病気がないか。
5. 片脚の痛み、腫れ、赤み、熱感などがないか。
6. 妊婦向けの施術経験がある担当者か。
7. 強い脚の揉みほぐしを避けられるか。

過去の血栓症、血栓性素因、長期間の安静、肥満、喫煙などは血栓リスクを評価する際に考慮される。リスクが高い場合は、通常のマッサージを受ける前に医師の判断を仰ぐ必要がある。

【妊婦の足のむくみ対策】マッサージ以外でできる安全なケア方法

妊娠中に足がむくむと、マッサージで解消したくなる人も多い。しかし、むくみの原因によって適切な対処法は異なる。

両脚に徐々に現れる軽いむくみは、妊娠に伴う身体の変化によることが多い。一方、片脚だけが急に腫れたり、痛みや熱感が伴ったりする場合は、深部静脈血栓症を疑う必要がある。

足のむくみを和らげるための日常的な工夫



1. 足を少し高くして休む

座っているときや横になるときに、クッションなどで脚を少し高くする。足の静脈にかかる負担を和らげる方法の一つ。


2. 無理のない範囲で歩く

体調に問題がなければ、短時間の散歩などで身体を動かす。長時間同じ姿勢で過ごすことを避ける。


3. 締め付けの少ない靴や靴下を選ぶ

足首やふくらはぎを強く締め付ける衣類を避け、ゆったりしたものを選ぶ。


4. 水分を適切に補給する

脱水を避け、医師から指示された水分・食事管理を守る。むくみがあるからといって、自己判断で水分を極端に制限しない。


米国保健福祉省の女性の健康に関する情報や英国NHSも、脚を高くして休むこと、長時間の立ち仕事を避けること、適度に歩くことなどを妊娠中のむくみ対策として紹介している。

むくみをマッサージで解消しようとしてはいけないケース

次のような状態では、自己判断でマッサージを受けず、先に産婦人科へ連絡してほしい。

- 片脚だけが急に腫れた。
- ふくらはぎに痛みや圧痛がある。
- 脚の一部が赤くなり、熱を持っている。
- 腫れとともに歩行時の痛みが出ている。
- 以前より明らかにむくみが強くなった。

また、顔や手足の急激なむくみ、強い頭痛、視界の異常などがある場合は、妊娠高血圧症候群など別の重大な病気も考える必要がある。むくみを単なる疲労として扱わないことが大切だ。

【プロの結論】妊婦のマッサージで本当に重視すべき判断基準

今回の2つのタイの症例と医学研究から導き出せる要点は、マッサージの安全性を妊娠週数だけで判断してはいけないということだ。

妊娠初期だから安全、安定期だから問題ない、足裏だけなら大丈夫という単純な判断はできない。妊娠中は時期にかかわらず血栓症が発生する可能性がある。

施術を受けるかどうかを判断する際には、次の3つの基準が役立つ。

判断基準 推奨する対応
妊娠経過が順調で、症状もなく、医師の了承がある 妊婦向けの穏やかな施術を検討
血栓症の既往やリスク因子がある 施術前に産婦人科医へ相談
片脚の腫れ・痛み・熱感などがある 施術を中止し、速やかに受診
突然の呼吸困難・胸痛・失神がある 直ちに救急要請

とりわけ、脚のむくみを解消する目的で強い足つぼマッサージを受けることは、慎重に考える必要がある。血栓症が隠れている可能性を排除できないからだ。

マッサージはリラックスや筋肉の緊張を和らげるための補助的な方法であり、血栓症を治療する手段ではない。症状がある場合には、施術ではなく医学的な診断を優先することが母体と胎児を守る基本となる。

【妊婦の足裏マッサージ死亡】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:妊婦が足裏マッサージを受けると死亡することがあるのですか?

A1:極めてまれではあるが、妊娠中に脚のマッサージを受けた後、深部静脈血栓症に関連する大規模な肺塞栓症を発症した医学的症例報告がある。2019年にはタイでウィラワンさんの死亡も報じられた。ただし、妊婦の足裏マッサージ全般が死亡につながるという意味ではない。

Q2:タイのウィラワン・ケドケスリさんはなぜ死亡したのですか?

A2:2019年1月11日にチェンマイのマッサージ店を訪れた後、けいれんや心停止を起こし、胎児を失った。その後も昏睡状態が続き、同年7月19日に死亡したと海外メディアが報じている。肺塞栓症や虚血性脳卒中も報道されたが、マッサージが死亡の直接原因だったとする医学的・司法的な最終判断の詳細は、公表報道からは確認できない。

Q3:妊娠25週の脚マッサージ後に肺塞栓症を発症した医学論文は実在しますか?

A3:実在する。2020年4月22日に「BMC Pregnancy and Childbirth」に掲載された症例報告で、妊娠25週の25歳のタイ人女性について記録されている。CT血管造影で肺塞栓症、脚の超音波検査で深部静脈血栓症が確認された。2019年に死亡したウィラワンさんとは別の症例として扱う必要がある。

Q4:妊娠中の足つぼマッサージは絶対に禁止ですか?

A4:すべての足裏マッサージが一律に禁止されているわけではない。ただし、深部静脈血栓症が疑われる場合や、血栓症のリスクが高い場合は、脚へのマッサージを避けて医師に相談する必要がある。施術を希望する場合は、産婦人科医の了承を得て、妊婦への施術経験がある専門家を選ぶことが望ましい。

Q5:妊娠中に足がむくんだら、どうすればよいですか?

A5:両脚に現れる軽いむくみであれば、脚を高くして休む、長時間同じ姿勢を避ける、体調に合わせて歩く、水分を適切に補給するといった方法がある。ただし、片脚だけの急な腫れや痛み、熱感があれば深部静脈血栓症の可能性があるため、マッサージをせず速やかに受診する。

まとめ:妊婦の足裏マッサージ死亡事件から学ぶべきこと

2019年にタイ・チェンマイで起きたウィラワン・ケドケスリさんの死亡報道は、妊娠中のマッサージに潜むリスクを考えるうえで忘れてはならない出来事だ。

加えて、2020年に公表された妊娠25週の女性の症例報告は、脚に潜んでいた深部静脈血栓症とマッサージ後の肺塞栓症との関連を、画像検査を含む医学的資料によって示した。

一方、2021年の系統的レビューでは、健康上の問題がない妊婦に対する適切なリラクゼーションマッサージには一定の利点も報告されている。重要なのは、妊娠中のマッサージをすべて危険と決めつけることではなく、施術方法、母体の健康状態、血栓症のリスクを総合的に考えることだ。

妊娠中の足のむくみや疲労は珍しくない。しかし、痛みや片側だけの腫れを伴う場合には、マッサージで解決しようとしてはいけない。突然の息切れや胸痛は、さらに緊急性の高いサインとなる。

2026年現在も、この事件から学ぶべき教訓は変わらない。妊婦の身体に触れる施術には、専門知識と適切なリスク評価が必要だ。気持ちよさや施術料金、口コミだけで選ぶのではなく、母体と胎児の安全を最優先にした判断が求められる。

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デジタルマーケター 御影 遼
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映画と連続ドラマの公開情報を担当。配給会社の公式プレスシート、作品公式ページ、興行通信の数値を確認し、あらすじと配信状況は公開時点の内容として明記します。

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