「朝鮮人差別用語」とは、朝鮮半島にルーツを持つ人々や在日コリアンを、民族や出身地を理由に侮辱したり、見下したりする目的で使われる言葉や表現を指します。
ただし、朝鮮半島に関係する言葉がすべて差別用語というわけではありません。「朝鮮人」という呼称自体にも歴史的・学術的な使用例があり、問題になるかどうかは、言葉の意味だけでなく、使用された時代や相手、発言の意図、前後の文脈によって変わります。
2026年現在、日本では2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法をはじめ、民族差別や人権侵害を防ぐための取り組みが続いています。一方、インターネット上では民族を侮辱する投稿や排他的な表現が問題となっており、言葉の歴史を理解することは、日常会話や報道、出版においても欠かせない課題です。
【まず知っておきたい】朝鮮人差別用語の意味と定義とは?

朝鮮人差別用語は特定の民族を侮辱する表現
朝鮮人差別用語とは、朝鮮民族や韓国・朝鮮にルーツを持つ人々を対象に、民族的な優劣をつけたり、人格を否定したり、社会から排除しようとしたりする言葉を指します。
一般的には、次のような特徴を持つ表現が問題になります。
- 民族や出身地を理由に相手を見下す。
- 朝鮮人を一律に犯罪者や危険人物として扱う。
- 人間性を否定するような侮蔑的な呼び方をする。
- 民族的な特徴を動物や昆虫などに例えて侮辱する。
- 日本社会から出ていくように要求する。
重要なのは、単に朝鮮半島に関係する言葉を使ったかどうかではなく、民族的な属性を理由に人の尊厳を傷つけているかどうかである。
法務省も、特定の国の出身者やその子孫を理由に、日本社会から排除したり、危害を加えたりする一方的な言動を、一般にヘイトスピーチと説明している。
「朝鮮人」という言葉そのものも差別用語なのか
ここは誤解されやすいポイントだ。
「朝鮮人」という言葉は、本来、朝鮮民族や朝鮮半島に関係する人々を表す呼称として使われてきた。歴史研究や植民地時代の資料、民族史を説明する文章でも使用される。
そのため、この言葉自体をあらゆる場面で差別用語と決めつけることは正確ではない。
一方、日本の植民地支配や戦後の民族差別の歴史を背景として、現在でもこの呼称に不快感や否定的な印象を抱く人がいる。
鳥取大学の谷守正寛氏・金善日氏による論文「『朝鮮人』という呼称をめぐって」でも、言葉の辞書的な意味と、実際に聞いた人が受け取る感情には違いがあることが論じられている。
つまり、言葉の意味が中立的であっても、歴史的な背景や使用状況によっては、相手を傷つける可能性がある。
差別用語とヘイトスピーチはどう違う?
両者は関連しているものの、同じ意味ではない。
| 項目 | 意味 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 差別用語 | 特定の民族や集団を侮辱する言葉 | 言葉そのものや使用文脈が問題になる |
| 侮蔑表現 | 相手を見下し、人格や尊厳を傷つける表現 | 個人・集団への軽蔑を含む |
| 民族差別 | 民族的な属性を理由とする不平等な扱い | 雇用、教育、住宅などにも及ぶ |
| ヘイトスピーチ | 特定の民族や国籍の人々を排斥・侮辱・攻撃する言動 | 言葉だけでなく、投稿、演説、プラカードなども含む |
| 人権侵害 | 個人の尊厳や権利を不当に侵害する行為 | 差別、脅迫、名誉や人格への攻撃など |
法務省は、ヘイトスピーチの具体例として、民族や国籍を理由にした排斥、危害の告知、著しい侮辱などを挙げている。
単語の問題にとどまらず、社会の中で誰かの居場所や安全を脅かす言動にまで発展することが、ヘイトスピーチの重大な問題である。
【歴史的背景を検証】朝鮮人差別用語が生まれた理由と経緯
差別的な呼称が社会に定着した背景には、日本と朝鮮半島の長い歴史がある。
言葉の問題を理解するには、植民地支配、関東大震災、戦後の社会制度という複数の出来事を切り離さずに考える必要がある。
1910年から1945年までの日本による植民地支配
1910年、日本は韓国併合によって朝鮮半島を植民地化した。
その後、1945年の敗戦まで、日本の統治下で朝鮮半島の人々は政治的・社会的な制約を受けた。
この時期には、経済的な理由で日本に渡った人々、仕事を求めて移住した人々、戦時動員によって日本に連れてこられた人々など、さまざまな経緯を持つ人々がいた。
したがって、在日コリアンの歴史をすべて強制連行だけで説明することも、すべて自由意思による移住として説明することも適切ではない。
植民地支配という権力関係の中で、朝鮮半島出身者に対する民族的な偏見や差別が形成され、社会生活のさまざまな場面に影響を及ぼした。
1923年の関東大震災と朝鮮人への流言
朝鮮人差別の歴史を考えるうえで、特に重要なのが1923年9月1日の関東大震災である。
震災直後、社会が混乱する中で、朝鮮人が暴動を起こしている、井戸に毒を入れた、放火しているといった根拠のない情報が広がった。
内閣府の中央防災会議による「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」では、こうした流言を背景として、住民の自警団や軍隊、警察の一部による朝鮮人などへの殺傷事件が発生したことが記録されている。
加えて、当初は軍隊や警察も流言に巻き込まれ、情報を増幅させた経緯が指摘されている。
日本ファクトチェックセンターが2023年に公表した検証でも、朝鮮人による暴動や投毒などの噂は、当時の公的記録などから事実ではなかったと確認されている。
この出来事から分かるのは、差別的な言葉や偏見が単なる口論にとどまらず、社会不安と結びついたときに、現実の暴力につながる危険性である。
戦後の在日コリアンと社会的な差別
1945年の日本の敗戦後、朝鮮半島出身者の多くは帰国した一方、日本に残って生活基盤を築いた人々もいた。
1947年には外国人登録令が施行され、在日朝鮮人も外国人登録の対象となった。
その後、1952年のサンフランシスコ平和条約発効に伴い、旧植民地出身者の日本国籍の扱いにも大きな変化が生じた。
戦後の在日コリアンは、日本で生まれ育った人々を含め、世代を重ねながら生活してきた。
しかし、就職、住宅、教育、結婚などの場面では、民族や国籍を理由とした差別が問題となってきた。
このような社会的背景が、民族を侮辱する呼称や差別表現を温存させる一因になった。
【呼称の由来と関係性】差別語の使用実態と歴史的な変化
差別用語には、最初から侮辱を目的として生まれたものだけでなく、別の意味を持っていた言葉が、特定の民族に向けて使われることで侮蔑的な意味を帯びたものもある。
代表的な差別表現と使用上の問題
代表例として研究論文でも取り上げられているのが、「チョン」という表現である。
これは朝鮮人を侮辱する意味で使用されてきた言葉であり、現在も差別的な呼称として認識されている。
ただし、この言葉の語源については諸説があり、確定した一つの由来があるわけではない。
立命館大学の金友子氏による2023年の論文「立命館大学『チョン語』問題」は、朝鮮語の授業を略して「チョン語」と呼ぶ学生の事例を取り上げている。
学生の中には差別する意図がなく、単なる略称として使用していた人もいた。しかし、受け取る側には侮辱的に感じられる可能性があった。
この研究は、言葉を使う側の意図と、受け取る側の経験が一致するとは限らないことを示している。
呼称と歴史的出来事の関係を整理
| 時期・領域 | 主な出来事・呼称 | 理解しておきたいポイント |
|---|---|---|
| 1910~1945年 | 日本による朝鮮半島の植民地支配 | 民族的な上下関係や偏見が形成された歴史的背景 |
| 1923年 | 関東大震災と朝鮮人に関する流言 | 偏見やデマが殺傷事件につながった |
| 1947年 | 外国人登録令 | 戦後の在日朝鮮人をめぐる法的・社会的環境が変化 |
| 戦後~現在 | 在日朝鮮人・在日韓国人などの呼称 | 国籍、民族的ルーツ、本人の自己認識を区別する必要がある |
| 1980~2020年代 | 侮蔑的な俗語やネット上の差別表現 | 日常会話やインターネットでの無自覚な使用も問題になる |
| 2016年6月3日 | ヘイトスピーチ解消法施行 | 国として不当な差別的言動の解消を推進 |
| 2024年度 | 法務省の在留外国人に対する基礎調査 | 差別やヘイトスピーチの実態を数値で把握 |
| 2026年 | 法務省による新たな実態調査の準備 | インターネット上の差別表現などを調査対象に設定 |
「朝鮮人」「韓国人」「在日コリアン」はどう使い分ける?
これらの言葉は、似ているようで意味が異なる。
朝鮮人
朝鮮民族や朝鮮半島にルーツを持つ人々を指す歴史的・民族的な呼称として使われる。歴史研究では重要な用語だが、相手に直接使う場合は本人の受け止め方に配慮したい。
韓国人
大韓民国の国籍を持つ人を指す表現。韓国出身であることを示したい場合には適切である。
在日韓国人
日本に生活基盤を持つ韓国籍の人々を表す呼称。
在日朝鮮人
日本に生活基盤を持つ朝鮮半島にルーツのある人々を表す歴史的・民族的な呼称。本人の自己認識や使用する文脈を尊重する必要がある。
在日コリアン
在日韓国人や在日朝鮮人など、朝鮮半島にルーツを持つ人々を幅広く表す呼称。日本国籍を取得した人を含む文脈でも使用される。
なお、国籍に関する誤解にも注意したい。
2008年4月8日の政府答弁書では、外国人登録における「韓国」は国籍を示す一方、「朝鮮」は朝鮮半島出身者を示すものであり、北朝鮮という国籍を表すものではないと説明されている。
つまり、「朝鮮籍」と「北朝鮮国籍」を同じ意味として扱うことは正確ではない。
【2026年の実態】在日コリアンへの差別と人権侵害はどう続いている?
差別的な呼称の問題は、過去の歴史だけに存在するものではない。
インターネット、職場、住宅、学校など、現在の社会生活にも関係している。
法務省の2024年度調査が示した外国人差別の実態
法務省が公表した「令和6年度在留外国人に対する基礎調査」では、外国人住民が経験する差別やヘイトスピーチについて調査している。
調査対象は18歳以上の中長期在留者と特別永住者の計2万人で、有効回答数は7,621人だった。
主な結果は次のとおりである。
- ヘイトスピーチを受けた経験がある人:12.7%
- 直接受けた経験はないが、見聞きしたことがある人:31.6%
- 差別を受けた場面で最も多かったもの:家を探すときの17.4%
- 仕事をしているとき:14.2%
- 仕事を探すとき:12.4%
また、ヘイトスピーチを受けたり見聞きしたりした場所では、インターネットが65.5%と最も高かった。
この結果から、民族や国籍を理由とした差別が、日常生活やオンライン環境に関係していることが分かる。
ただし、この調査は在留外国人全体を対象にしたものであり、在日コリアンだけの被害率を示したものではない。特定の民族の実態として数字を読み替えないことが重要だ。
インターネット上で差別表現が広がる理由
インターネットでは、匿名性や情報の拡散速度によって、民族を侮辱する投稿が短時間で広がる場合がある。
特に問題となるのは、次のような投稿である。
- 民族全体を犯罪者として扱う投稿。
- 特定の民族に対して一律に退去を要求する投稿。
- 歴史的な事件について根拠のない情報を広める投稿。
- 民族的な特徴を利用した侮辱や嘲笑。
- 個人への批判を民族全体への攻撃にすり替える投稿。
法務省は、インターネット上の人権侵害についても、差別的な書き込みや侮蔑、無責任なうわさなどが人権侵害につながる可能性を指摘している。
特に、特定の個人の行動を、その人の民族全体の性質であるかのように一般化する表現には注意が必要だ。
在日コリアンが受ける影響は言葉だけではない
民族差別は、直接的な侮辱だけでなく、日常生活の選択肢を狭める形でも現れる。
例えば、住居探しで民族的な背景を理由に断られる、採用時に不当な扱いを受ける、学校でルーツを理由にからかわれるといった問題がある。
また、差別的な発言を繰り返し見聞きすることで、自分の出自を周囲に知られることへの不安を抱く人もいる。
法務省が2016年3月に公表した「ヘイトスピーチに関する聞き取り調査」では、在日韓国・朝鮮人の被害者が、インターネット上の差別的な映像や街頭での攻撃的な言動に恐怖や苦痛を感じた経験が紹介されている。
差別用語は、単なる不快な言葉ではなく、当事者の安心感や社会参加にも影響を及ぼす問題なのである。
【法律と報道の現在地】ヘイトスピーチ解消法と2026年の動向
2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法
2016年5月、日本では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が成立し、同年6月3日に施行された。
一般にはヘイトスピーチ解消法と呼ばれている。
この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されないことを宣言し、国や地方公共団体に対して、相談体制の整備や教育、啓発活動などの取り組みを促している。
法務省は、この法律の趣旨について、次のように説明している。
本邦外出身者に対する「不当な差別的言動は許されない」。
ただし、この法律はヘイトスピーチに対する刑事罰を直接定めた法律ではない。
また、法律の対象となる言動に該当しない場合でも、民族や国籍を理由に差別意識を助長する排他的な言動が許されるわけではない。
2026年はヘイトスピーチ解消法施行から10年
2026年6月3日、ヘイトスピーチ解消法は施行10年を迎えた。
法務省は、これまでの人権啓発や相談対応に加え、自治体による条例制定や公共施設の利用に関するガイドラインなどの取り組みが進んできたことを紹介している。
一方、街頭での差別的な活動が減少傾向にあるのに対し、インターネット上では差別表現が継続し、内容も多様化していることが課題として挙げられている。
2026年3月には、法務省の有識者検討会が新たなヘイトスピーチ実態調査の内容や手法について基本的な考え方を取りまとめた。
調査対象として検討されたのは、次の4分野である。
1. 法務局や自治体などが把握している差別事例。
2. SNSや掲示板、動画投稿サイトなどのインターネット上の差別表現。
3. 国民のヘイトスピーチに対する認知や意識。
4. 新聞などメディアにおけるヘイトスピーチの報道状況。
2026年4月15日の衆議院法務委員会でも、法務省はこの基本方針を踏まえて実態調査の実施に向けた検討を進める考えを説明している。
10年前の法律制定時とは情報環境が変わり、差別表現の問題は街頭活動だけでは捉えきれなくなっている。
報道・出版では差別表現をどう扱うべきか
新聞、テレビ、雑誌、ウェブメディアでは、差別的な言葉を扱う際に、正確な報道と人権への配慮を両立させる必要がある。
特に注意したいのが、歴史資料の引用と現在の報道表現を区別することだ。
例えば、過去の新聞記事や公文書に差別用語が記載されている場合、歴史的な事実を検証する目的で引用することには意味がある。
しかし、読者の注意を引くために侮蔑表現を見出しに使ったり、説明なしに繰り返したりすることは、当事者への二次的な被害につながりかねない。
報道・出版においては、次のような対応が望ましい。
- 歴史資料に登場する差別用語は、引用の必要性を検討する。
- 差別的な表現を現在の編集部の言葉として使用しない。
- 引用する場合は、歴史的背景や差別性を説明する。
- 見出しやサムネイルで侮蔑表現を強調しない。
- 被害者や当事者の自己認識を尊重する。
- 国籍と民族的ルーツを混同しない。
重要なのは、差別用語を一律に隠すことではなく、歴史的事実を正確に伝えながら、差別を再生産しないことである。
【実践編】差別語の見分け方と適切な言い換え方
差別的な呼称を避けるには、言葉を覚えるだけでは不十分だ。
どのような場面で使うのか、相手がどのように受け止めるのかを考える必要がある。
差別的な表現か判断する5つの基準
次の5点を確認すると、問題のある表現を見分けやすくなる。
1. 民族的な属性を理由に侮辱していないか
相手の人格や行動ではなく、民族的な出自そのものを否定していないかを確認する。
2. 集団全体を一括りにしていないか
特定の個人の行動を、韓国人や朝鮮人全体の性質として説明することは適切ではない。
3. 排除や危害をあおっていないか
「出ていけ」「危害を加えろ」といった民族的な排斥や攻撃につながる言動には特に注意が必要だ。
4. 歴史的な差別表現を無自覚に使っていないか
昔から使われている言葉でも、現在では侮蔑的な意味を持つ場合がある。
5. 相手が望む呼称を尊重しているか
本人が使っている呼び方や自己紹介を尊重することが、最も確実な配慮につながる。
差別的な呼称を避けるための言い換え一覧
| 使用場面 | 推奨される表現 | 注意点 |
|---|---|---|
| 朝鮮半島にルーツを持つ人々全体 | 朝鮮半島にルーツを持つ人々 | 民族的背景を幅広く説明できる |
| 日本に生活基盤を持つ人々 | 在日コリアン | 本人の自己認識を尊重する |
| 韓国籍の人 | 韓国人・韓国籍の人 | 国籍を正確に表現する |
| 朝鮮籍の人 | 朝鮮籍の人 | 北朝鮮国籍と同一視しない |
| 民族的背景を説明する場合 | 朝鮮民族・韓国系・朝鮮系 | 文脈に応じて使い分ける |
| 歴史上の人々を説明する場合 | 当時の朝鮮人・在日朝鮮人 | 時代背景を明確にする |
言い換えの際に気をつけたいのは、単純に「朝鮮人」をすべて「韓国人」に置き換えないことである。
朝鮮半島にルーツを持つ人々の中には、韓国籍、朝鮮籍、日本国籍など、異なる法的・社会的背景を持つ人がいる。
また、本人が「在日朝鮮人」と名乗っている場合に、第三者が一方的に別の呼称へ変更する必要もない。
学校や職場で差別表現を指摘するときの対応
学校や職場で差別的な呼称が使われていた場合、単に相手を非難するだけでは問題の解決につながらないことがある。
まずは、その表現がなぜ問題になるのかを説明することが大切だ。
例えば、次のような伝え方が考えられる。
- 「その言葉は民族を侮辱する意味で使われることがあるよ」
- 「本人がどう呼ばれたいかを確認した方がいいと思う」
- 「国籍と民族的なルーツは分けて考えよう」
- 「その表現ではなく、具体的な名前や適切な呼称を使おう」
学校では人権教育や歴史教育の中で背景を説明し、職場ではハラスメント防止や多文化共生の研修に取り入れる方法もある。
差別的な投稿を見つけた場合の相談先
差別表現による被害を受けた場合、個人で抱え込む必要はない。
法務省では、人権問題に関する相談窓口を設けている。
主な相談先は次のとおり。
- みんなの人権110番:0570-003-110
- 法務局・地方法務局の人権相談窓口
- 法務省のインターネット人権相談受付窓口
- SNSによる人権相談窓口
みんなの人権110番では、差別やハラスメントなどの相談を受け付けており、受付時間は平日8時30分から17時15分までとなっている。
インターネット上の投稿が問題となっている場合には、投稿日時や内容、掲載場所などを記録しておくことも、相談時の状況説明に役立つ。
【朝鮮人差別用語】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:朝鮮人という言葉自体が差別用語なのですか?
A1:必ずしもそうではない。「朝鮮人」は歴史的・民族的な意味で使われる呼称でもあり、歴史研究や学術論文にも登場する。ただし、相手を侮辱する意図や差別的な文脈で使われる場合には問題となる。本人の自己認識や使用状況を考慮することが大切である。
Q2:朝鮮人差別用語の代表例には何がありますか?
A2:研究論文などで取り上げられている例として、朝鮮人を侮辱する意味で使われてきた「チョン」という表現がある。現在では差別的な呼称として認識されており、日常会話や報道で使用することは避けるべきである。
Q3:在日コリアンと在日韓国人は同じ意味ですか?
A3:完全に同じではない。在日韓国人は一般に韓国籍を持つ日本在住者を指す一方、在日コリアンは朝鮮半島にルーツを持つ人々を幅広く表す呼称として使用される。本人の国籍や民族的な自己認識によって適切な表現は異なる。
Q4:ヘイトスピーチ解消法には罰則がありますか?
A4:2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法そのものには、刑事罰の規定はない。同法は不当な差別的言動が許されないことを宣言し、国や自治体に啓発や相談体制の整備などを促す法律である。ただし、個別の行為が他の法律に違反する場合は別途法的な問題となる。
Q5:2026年現在、朝鮮人差別やヘイトスピーチの調査は行われていますか?
A5:法務省は2026年3月に新たな実態調査の基本的な考え方を取りまとめている。インターネット上の投稿、相談機関が把握した事例、国民の意識、メディアの報道状況など、4分野を対象とする調査が検討されている。2026年4月の国会答弁では、調査の実施に向けてさらに検討を進める方針が示された。
まとめ:【プロの結論】差別用語を正しく理解し、相手の尊厳を守るために
朝鮮人差別用語の問題は、単なる言葉遣いの問題ではない。
その背景には、日本による朝鮮半島の植民地支配、関東大震災時の流言と殺傷事件、戦後の在日コリアンをめぐる社会的な差別、そして現在のインターネット上のヘイトスピーチという長い歴史がある。
特に理解しておきたいのは、言葉を使う側に悪意がなかったとしても、受け取る側にとっては過去の差別や侮辱を思い起こさせる場合があるということだ。
2026年はヘイトスピーチ解消法の施行から10年に当たる。法制度や行政の取り組みが進む一方、SNSなどを通じた差別表現への対応は引き続き課題となっている。
差別表現を避けるために意識したいのは、次の3点である。
1. 歴史を理解すること: 差別的な呼称が生まれた背景や、在日コリアンが経験してきた歴史を知る。
2. 正確な言葉を選ぶこと: 国籍、民族、出身地、本人の自己認識を混同せず、状況に合った表現を使う。
3. 相手の尊厳を尊重すること: 自分の意図だけで判断せず、言葉が相手に与える影響を考える。
差別のない社会を築くために必要なのは、言葉を機械的に置き換えることだけではない。異なる歴史や文化、アイデンティティを持つ人々が、互いを一人の人間として尊重する姿勢である。
言葉の意味と歴史を正しく理解し、日常会話、学校教育、職場、報道、出版のあらゆる場面で適切な表現を選ぶことが、民族差別を繰り返さない社会への第一歩となる。