野球中継やスポーツニュースで耳にする「ブルペンデー」とは、どのような投手起用を指すのか。簡単にいうと、特定の先発投手に長いイニングを任せず、複数の救援投手を計画的に継投させて試合を組み立てる戦術である。通常の先発ローテーションとは異なり、ブルペンにいる投手たちの力を組み合わせて9イニングを戦うのが特徴だ。
この戦術が世界的に注目されたきっかけは、2018年のMLB・タンパベイ・レイズだった。加えて、2019年には千葉ロッテマリーンズもブルペンデーで完封勝利を収めている。2026年にはMLBのポストシーズンでも救援投手の投球割合が高くなっており、先発とリリーフの役割分担そのものが変化しつつある。
ただし、ブルペンデーとオープナーは同じ意味ではない。投手の登板順序、バルクピッチャーの役割、勝利投手の決まり方まで理解すると、この戦術が単なる苦肉の策ではなく、緻密なデータと投手運用に基づく作戦であることが見えてくる。
【基本解説】ブルペンデーとは?意味・由来とブルペンゲームの仕組み

ブルペンデーの意味は「救援投手全員で試合を作る日」
ブルペンデー(Bullpen Day)は、英語の「Bullpen(ブルペン)」と「Day(デー)」を組み合わせた野球用語だ。
ブルペンとは、試合中に救援投手が投球練習を行い、登板に備える場所を指す。そこから転じて、野球では中継ぎ投手や抑え投手など、先発以外の投手陣をまとめて「ブルペン」と呼ぶ。
ブルペンデーは、通常の先発投手に試合の大部分を任せるのではなく、複数のリリーフ投手を順番に登板させ、試合全体をカバーする戦術である。
一般的な先発ローテーションでは、先発投手が6〜7イニング程度を投げ、残りを中継ぎや抑えが担当する。
一方、ブルペンデーでは、最初から救援投手を中心とした継投計画を組む。
例えば、次のような投手起用が考えられる。
- 1番手:1イニング
- 2番手:2イニング
- 3番手:2イニング
- 4番手:1イニング
- 5番手:1イニング
- 6番手:1イニング
- 7番手:1イニング
この場合、7人の投手が合計9イニングを担当する。
実際の投手数や担当イニングは、選手の能力、相手打線、試合展開によって変わる。必ず7人で投げるという決まりはない。
また、ブルペンデーには公認野球規則上の特別な定義や、専用の公式記録があるわけではない。球団や報道によって使用範囲に多少の違いがある野球用語だ。
ブルペンゲームの意味とは?
ブルペンゲーム(Bullpen Game)も、ブルペンデーとほぼ同じ意味で使われる言葉だ。
両者の違いは、表現の焦点にある。
- ブルペンデー:救援投手中心で戦う日、投手運用の方針。
- ブルペンゲーム:救援投手を中心に構成された試合そのもの。
日本の野球報道では、両者がほぼ同義で使われるケースも多い。
ただし、ブルペンゲームだからといって、必ずしも試合開始から複数の投手が短い間隔で交代するわけではない。
最初の投手が1イニングを投げ、その後に別の投手が3〜4イニングを担当する形もある。
重要なのは、従来型の先発投手に長いイニングを任せるのではなく、救援投手を中心に試合を設計している点だ。
なぜ2018年にブルペンデーが注目されたのか
ブルペンデーの考え方そのものが2018年に突然誕生したわけではない。
過去にも、先発投手が不足した場合や、延長戦が続いて投手が足りなくなった場合などに、複数の救援投手で試合を乗り切ることはあった。
転換点となったのが、2018年のMLB・タンパベイ・レイズである。
MLB公式サイトの2018年3月27日付の記事によると、レイズは開幕時点で通常の先発投手を4人配置し、5番目の先発枠を「ブルペンデー」として運用する構想を立てていた。
この計画では、長いイニングを投げられる救援投手と、短いイニングに特化した投手を組み合わせていた。
つまり、単に先発投手がいないから仕方なく継投するのではなく、最初からブルペンの戦力を最大限に生かす構想だった。
同年、レイズはオープナーも積極的に取り入れ、従来の先発・中継ぎ・抑えという役割分担を大きく変えた。
2018年は、ブルペンデーとオープナーが現代野球の戦術として広く認識されるようになった重要なシーズンなのである。
【徹底比較】ブルペンデーとオープナー・ショートスターターの違い
ブルペンデーを理解するうえで、特に混同しやすいのがオープナー、バルクピッチャー、ショートスターターという3つの用語だ。
いずれも先発投手が長いイニングを投げないケースに関係するが、それぞれ役割が異なる。
オープナーとは?最初の1〜2イニングを担当する投手
オープナー(Opener)は、試合開始直後に登板し、主に1〜2イニング程度を担当する投手のことだ。
一般的な先発投手は、できるだけ長いイニングを投げることを想定して登板する。
しかし、オープナーは最初から短い登板を前提にしている。
目的は、相手チームの上位打線を効果的に抑えることだ。
野球では、試合開始時に打席へ入るのは相手の1〜3番打者である。一般的に上位打線には出塁率や長打力の高い選手が並ぶ。
そこで、短いイニングに集中して力を発揮できるリリーフ投手を最初に登板させ、相手の強力な打者を抑える。
その後、別の投手に交代することで、通常の先発投手が最初から相手の上位打線と対戦する状況を避けられる。
バルクピッチャーとは?オープナーの後を引き継ぐ投手
バルクピッチャー(Bulk Pitcher)は、オープナーの後に登板し、まとまったイニングを投げる投手を指す。
「Bulk」は大量・まとまった量という意味であり、投手運用では長いイニングを担当する役割を表す。
例えば、次のような継投がある。
1. オープナーが1回を無失点で抑える。
2. バルクピッチャーが2回から6回までを担当する。
3. 7回以降をセットアッパーとクローザーが担当する。
この場合、オープナーは試合序盤の攻略役、バルクピッチャーは中盤のイニング消化役という役割分担になる。
バルクピッチャーは、必ずしも通常の先発投手とは限らない。長いイニングを投げられる中継ぎ投手や、先発経験のある投手が担当することもある。
ショートスターターとの違い
ショートスターター(Short Starter)は、通常の先発投手よりも短いイニングを担当することを前提に起用される投手を指す。
オープナーとの違いは、登板する目的と役割にある。
ショートスターターは、先発投手として試合を始め、通常より早い段階で交代する運用だ。
一方、オープナーは最初の打者や序盤の打線との相性を重視し、救援投手を先発役として配置する戦術である。
両者は実際の運用で重なることもあり、明確な境界線が常に存在するわけではない。
4つの投手運用を比較
| 用語 | 主な役割 | 投手起用の特徴 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| ブルペンデー | 試合全体 | 複数の救援投手で9回を構成 | ブルペン全体の活用 |
| オープナー | 試合序盤 | 最初の1〜2回程度を担当 | 上位打線への対策 |
| バルクピッチャー | 試合中盤 | オープナーの後に長く投げる | まとまったイニングの消化 |
| ショートスターター | 試合序盤〜中盤 | 通常より短い先発登板 | 投手の負担や対戦回数の調整 |
この比較から分かるのは、ブルペンデーは試合全体の戦術、オープナーやバルクピッチャーはその戦術を構成する投手の役割ということだ。
オープナーを使ったからといって、必ずブルペンデーになるわけではない。オープナーの後に通常の先発投手が長く投げる場合は、ブルペンデーとは区別される。
【戦術分析】ブルペンデーを採用する理由とメリット・デメリット
ブルペンデーは、単に先発投手が不足しているチームだけが使う戦術ではない。
2018年のレイズのように、投手陣の構成や相手打線との相性を分析したうえで、積極的に採用するケースもある。
では、球団はどのような理由でブルペンデーを選ぶのだろうか。
採用する理由① 先発投手不足や故障への対応
最も分かりやすい理由は、先発投手が不足していることだ。
例えば、次のような状況が考えられる。
- 先発ローテーションの投手が故障で離脱した。
- 先発投手のコンディションが整っていない。
- 2軍にも十分な先発候補がいない。
- 連戦や過密日程で通常のローテーションを組めない。
このような場合、ブルペンデーは試合を成立させるための現実的な選択肢になる。
特に、先発投手が急遽登板できなくなった場合、複数の救援投手を組み合わせることで、試合前の計画を大きく崩さずに済む。
採用する理由② 打者との相性を最大限に生かす
ブルペンデーの大きな特徴は、打者との相性を細かく考慮できることだ。
例えば、相手打線に左打者が多い場合、左投手を効果的な場面で登板させられる。
逆に、右打者が並ぶ場面では右投手を投入する。
また、速球派、変化球主体、制球重視など、異なるタイプの投手を次々に登板させれば、打者は短時間で対応を変えなければならない。
先発投手が同じ球種や配球で何度も打者と対戦する状況を避けられる点も強みだ。
採用する理由③ 打者の「3巡目の壁」を避ける
ブルペンデーやオープナーが注目される背景には、打者が同じ投手と何度も対戦することで有利になるという分析がある。
一般に、打者は同じ投手との対戦を重ねるほど、球種や配球、投球フォームに慣れていく。
特に先発投手が打線と3巡目に対戦する頃には、疲労も重なり、打者側が有利になる可能性がある。
これを「3巡目の壁」や「サードタイム・スルー・ザ・オーダー」と呼ぶ。
オープナーの後にバルクピッチャーを投入する方式では、バルクピッチャーが相手の上位打線と対戦するタイミングを遅らせられる。
結果として、通常の先発投手が同じ打者と3回目の対戦をする状況を回避しやすくなる。
MLB公式の戦術解説でも、オープナーの狙いとして上位打線との対戦タイミングをずらし、3巡目の対戦による不利を軽減する点が説明されている。
ブルペンデーのメリット
主なメリットは次の4つだ。
1. 相手打線に対応した継投ができる
右投手と左投手を使い分け、打者ごとの相性を考えた投手起用が可能になる。
2. 故障や先発不足を補える
通常の先発ローテーションが崩れても、救援投手の組み合わせで試合を戦える。
3. 投手の短期集中型の能力を生かせる
1イニングや2イニングに限定すれば、投手は長いイニングを意識せず、自分の持ち味を出しやすい。
4. 相手打者に対応を考えさせられる
投手が交代するたびに球速や球種、投球スタイルが変わるため、打者にとっては攻略が難しくなる。
ブルペンデーのデメリット
一方、ブルペンデーには無視できない問題もある。
1. 救援投手の疲労が蓄積する
最大の課題は、ブルペン全体の負担が大きくなることだ。
通常なら1人の先発投手が担当する複数イニングを、何人もの投手で分担するため、登板機会が増える。
しかも、登板しなかった投手もブルペンで準備している場合がある。
試合で投げた球数だけでなく、ウォーミングアップや登板準備の負担も考慮しなければならない。
2. 継投に失敗すると大量失点につながる
複数の投手が必ずしも好投するとは限らない。
1人が四球や連打で崩れれば、予定していた継投順序を変更する必要がある。
3. 延長戦に弱い場合がある
9イニングを想定した投手配分では、延長戦に入ったときに投手が足りなくなる可能性がある。
4. 捕手との連携や準備が複雑になる
投手が次々に交代するため、捕手は異なる投手の球質や配球に対応しなければならない。
ベンチも投手の状態、相手打線、残りの投手数を常に把握する必要がある。
ブルペンデーは、投手の人数さえそろえば成功する戦術ではない。各投手の能力と登板間隔を管理するチーム全体の運用力が問われる。
【歴史と実例】タンパベイ・レイズ2018年と千葉ロッテ2019年のブルペンデー
ブルペンデーを理解するには、実際の試合を確認するのが分かりやすい。
特に重要なのが、MLBで戦術を定着させたタンパベイ・レイズと、NPBで印象的なブルペンデーを成功させた千葉ロッテマリーンズだ。
2018年:タンパベイ・レイズがMLBの投手運用を変えた
2018年のタンパベイ・レイズは、従来の先発ローテーションにこだわらない投手起用を積極的に進めた。
注目されたのが、2018年5月19日のロサンゼルス・エンゼルス戦だ。
この試合では、救援投手として実績を積んでいたセルジオ・ロモが先発投手として登板した。
ロモは最初の1イニングを無失点に抑え、その後、ライアン・ヤーブローが登板。ヤーブローは6回2/3を投げて自責点1に抑え、チームは5対3で勝利した。
この起用方法がオープナーの代表例として知られるようになった。
レイズが注目されたのは、単にロモを先発させたからではない。
投手陣全体を組み替え、試合ごとに最適な投手の組み合わせを考えるという発想が、従来の野球観を変えたからだ。
MLB公式の2018年シーズン総括によると、レイズは同シーズンにオープナーを55試合で使用したほか、救援投手だけで試合を組み立てるブルペンデーも23試合実施した。
加えて、救援投手がチーム全体の投球回数に占める割合は56.2%に達し、当時のMLB記録を大きく更新した。
これはブルペンデーとオープナーを別々の戦術として運用していたことを示す重要なデータでもある。
2019年:千葉ロッテが6人の継投で日本ハムを完封
NPBにおける印象的な事例が、2019年7月10日の千葉ロッテマリーンズ対北海道日本ハムファイターズ戦だ。
この試合では、当初先発予定だったマイク・ボルシンガーが右足首の捻挫によって登板を回避した。
急な先発投手の変更を受け、千葉ロッテはブルペンデーを選択する。
当時の投手コーチだった吉井理人氏は、試合前から投手の登板順を細かく考えていた。
実際の継投は次のとおりだ。
- 唐川侑己:1イニング
- チェン・グァンユウ:3イニング
- 石川歩:2イニング
- 松永昂大:1イニング
- 田中靖洋:1イニング
- 益田直也:1イニング
合計6人で9イニングを投げ切り、北海道日本ハムを5対0で完封した。
NPB公式の試合記録でも、千葉ロッテの6投手による継投と、チェン・グァンユウの勝利投手記録が確認できる。
この試合で興味深いのは、最初に登板した唐川ではなく、2番手のチェンに勝利投手が記録された点だ。
チェンは3イニングを1安打無失点に抑え、6人の中で最も長いイニングを担当した。
試合後、吉井コーチは、先発投手の故障に加えて2軍にも先発できる投手がいなかったため、選択肢が限られていたことを説明している。
また、事前に継投順を考え、選手たちに最適と判断した順番を伝えていたという。
この事例は、ブルペンデーが単なる投手不足への応急処置ではなく、明確な継投計画によって成功する戦術であることを示している。
MLBとNPBの代表的な事例・関係性
| 時期・対象 | 関係する人物・チーム | 投手運用・結果 | 戦術上の意味 |
|---|---|---|---|
| 2018年3月 | タンパベイ・レイズ | 4人の通常先発とブルペンデーを組み合わせる構想 | ブルペンデーの計画的な導入 |
| 2018年5月19日 | セルジオ・ロモ、ライアン・ヤーブロー | ロモが1回、ヤーブローが6回2/3を担当。5対3で勝利 | オープナーの代表例 |
| 2018年シーズン | タンパベイ・レイズ | オープナー55試合、ブルペンデー23試合 | 救援投手中心の運用を本格化 |
| 2019年7月10日 | 千葉ロッテマリーンズ | 6人の継投で日本ハムを5対0で完封 | 先発投手の故障に対応したブルペンデー |
| 2019年7月10日 | 唐川侑己、チェン・グァンユウ | 唐川が1回、チェンが3回を担当 | オープナーとバルクピッチャーに近い役割分担 |
| 2026年 | MLB各球団 | ポストシーズンで救援投手の投球割合が拡大 | 先発とリリーフの役割がさらに流動化 |
この2球団の事例を比較すると、同じブルペンデーでも採用する理由は異なることが分かる。
レイズは、投手陣の構成を戦略的に変えることを目指した。一方、千葉ロッテは先発投手の急な故障という事情から、ブルペンデーを選択した。
つまり、ブルペンデーには、最初から計画された戦術と、突発的な事情に対応する戦術の両方が存在する。
【記録の疑問】ブルペンデーで勝利投手になる条件とは?
ブルペンデーの試合では、複数の投手が登板するため、勝利投手が誰になるのか疑問に感じる人も多い。
通常の先発投手なら5イニング以上を投げて勝利投手の条件を満たすことが一般的だが、ブルペンデーでは先発投手が1〜2イニングしか投げない場合もある。
この場合、勝利投手はどのように決まるのだろうか。
先発投手には原則5イニング以上の条件がある
NPBの公認野球規則9.17では、勝利投手の決定について定められている。
9イニング制など、勝利チームが6回以上守備を行った試合では、先発投手は5イニングを完了しなければ勝利投手の資格を得られない。
つまり、ブルペンデーで最初の投手が1イニングしか投げなかった場合、その投手がチームの勝利に貢献していても、通常の先発投手としての勝利投手の条件は満たせない。
複数の救援投手が登板した場合はどうなる?
先発投手が必要な投球回数を満たしていない場合、救援投手の中から勝利投手が選ばれる。
救援投手が1人だけなら、その投手に勝利が記録される。
2人以上が登板した場合は、記録員が勝利に最も効果的な投球をしたと判断した投手に勝利が与えられる。
判断材料には、次のような要素がある。
- 失点や自責点の数
- 許した走者の数
- 投球内容の安定性
- 試合展開に対する貢献度
- リードを守るうえでの重要性
また、救援投手が勝利投手として記録されるには、原則として1イニングを投げるか、試合の流れの中で決定的なアウトを奪うことが求められる。
短い登板で効果的な投球をしなかった投手に、単純に勝利が与えられるわけではない。
2019年ロッテ戦ではチェン・グァンユウが勝利投手に
前述の2019年7月10日の千葉ロッテ戦では、唐川が初回を無失点に抑えた後、チェンが2番手として登板した。
チェンは3イニングを1安打無失点に抑え、その後の投手につないだ。
最終的にチームは5対0で勝利し、NPB公式記録にはチェンの名前が勝利投手として記載されている。
これはブルペンデーにおいて、最初に投げた投手が必ず勝利投手になるわけではないことを示す分かりやすい例だ。
MLBとNPBで勝利投手の条件は違う?
基本的な考え方は共通している。
MLBでも、通常の9イニング以上の試合では先発投手に5イニング以上の投球が求められる。
条件を満たさない場合、複数の救援投手が登板していれば、公式記録員が最も効果的な投球をしたと判断する投手に勝利が記録される。
つまり、ブルペンデーだからといって特別な勝利投手ルールが適用されるわけではない。
勝利投手の記録は登板順だけでは決まらず、投球内容と試合への貢献度によって判断される。
【2026年最新動向】MLB・NPBの投手運用はどう変わった?
2026年の野球では、先発投手と救援投手の役割分担が従来より柔軟になっている。
ただし、すべての試合がブルペンデーになったわけではない。通常の先発投手が長いイニングを投げる試合も依然として重要だ。
注目すべきなのは、試合の状況やシーズン日程に合わせて、投手の役割を変える考え方が広がっていることだ。
2026年MLBでは救援投手の投球割合がさらに拡大
CBS Sportsが2026年のポストシーズンを分析した記事では、ポストシーズン25試合時点で救援投手が投げたイニングは232回2/3、先発投手は207イニングだった。
つまり、救援投手が担当した投球回数は全体の52.9%に達している。
同記事が示したレギュラーシーズンとポストシーズンの救援投手の投球割合は次のとおりだ。
- 2022年:レギュラーシーズン41.3%、ポストシーズン45.3%
- 2023年:42.0%、48.1%
- 2024年:41.2%、51.9%
- 2025年:41.5%、50.7%
- 2026年:43.1%、52.9%
2026年はレギュラーシーズンでも救援投手の投球割合が43.1%に達し、ポストシーズンではさらに高くなっている。
ただし、この数字は救援投手全体の投球割合であり、ブルペンデーを採用した試合数そのものではない。
この区別は重要だ。
救援投手の投球回数が増えたからといって、すべての試合でブルペンデーが採用されているわけではない。
それでも、先発投手だけに長いイニングを任せる従来の発想から、救援投手も含めた投手陣全体で試合を組み立てる方向へ変化していることは読み取れる。
2026年は投手の能力だけでなく「疲労管理」も重要に
2026年8月22日付のMLB公式記事では、ポストシーズンを見据えたブルペン評価において、投球内容と投手のフレッシュさを組み合わせて分析している。
評価対象には、次のような指標が含まれている。
- K-BB%:奪三振率と与四球率の差
- SIERA:投手の能力を評価する指標
- FIP:守備の影響をできるだけ除いた投手評価指標
- Stuff+:球質を評価する指標
- Location+:投球位置の質を評価する指標
- 投球回数・投球数・交代回数:投手の負担を測る材料
特に興味深いのは、登板回数だけでなく、投手が何度ブルペンから呼び出され、交代しているかという点まで考慮されていることだ。
試合で実際に投げた球数が少なくても、複数回の準備や登板が続けば負担が蓄積する可能性がある。
ブルペンデーを成功させるには、優秀なリリーフ投手を集めるだけでは足りない。次の試合に向けて誰を休ませ、誰を登板させるかという長期的な管理も必要になる。
NPBとMLBの投手運用を比較
MLBでは2018年のレイズをきっかけに、オープナーやブルペンゲームが戦術として広く知られるようになった。
NPBでも2019年の千葉ロッテの事例のように、先発投手の故障や投手陣の事情に応じて、複数の救援投手で試合を組み立てるケースがある。
ただし、両リーグの違いは単純にブルペンデーの採用回数だけでは測れない。
| 比較項目 | MLB | NPB |
|---|---|---|
| 戦術の注目点 | オープナーやブルペンゲームの戦略的活用 | 先発不足や試合状況に応じた継投 |
| 代表的な事例 | 2018年タンパベイ・レイズ | 2019年千葉ロッテ |
| 投手起用 | 相手打線や対戦回数を考慮した柔軟な役割分担 | 先発・中継ぎ・抑えの役割を生かした継投 |
| 勝利投手の基本条件 | 先発は原則5イニング以上 | 先発は原則5イニング以上 |
| 運用上の課題 | 長期的なブルペン疲労と登板準備の管理 | 救援陣の負担と通常のローテーションとの両立 |
MLBでは、短期決戦のポストシーズンにおいてブルペンの力を集中的に投入しやすい。
2026年のCBS Sportsの分析でも、ポストシーズンはレギュラーシーズンより休養日が多く、救援投手を積極的に投入しやすいことが指摘されている。
一方、NPBでも投手起用の柔軟化は見られるが、MLBのような戦術をすべての球団が同じ頻度で採用しているわけではない。
2026年の時点で注目すべきなのは、ブルペンデーという名称の普及だけでなく、投手を固定された役割から解放し、試合状況に応じて最適な場所で使うという考え方である。
【プロの結論】ブルペンデーは本当に強い戦術なのか?成功するチームの条件
ブルペンデーは、適切に運用できれば大きな効果を発揮する。
しかし、どのチームにも適しているわけではない。
その成否を分けるのは、救援投手の人数よりも、各投手がどのような役割を担えるかという点だ。
ブルペンデーが向いているチーム
次のような条件を満たすチームは、ブルペンデーを採用するメリットが大きい。
① 複数のロングリリーフを確保している
1イニング限定の救援投手だけでは、9イニングを安定してカバーするのは難しい。
2〜4イニング程度を投げられる投手が複数いれば、継投の選択肢が広がる。
② 右投手と左投手のバランスが取れている
相手打線に応じて投手を使い分けられるため、左右のバランスが良いブルペンは戦術的に有利だ。
③ 投手の登板間隔を管理できる
ブルペンデーを実施した翌日に、救援投手が連投を強いられる状況は避けたい。
試合後の休養日や、次の試合の先発予定まで含めた計画が必要になる。
④ 投手コーチと捕手の連携が取れている
投手交代のタイミング、配球、相手打者との相性を共有できるチームは、継投の精度を高めやすい。
ブルペンデーをおすすめできないチーム
逆に、次のようなチームではリスクが大きい。
- ロングリリーフを担当できる投手がいない。
- 救援投手の登板が連日続いている。
- 右投手や左投手に偏りがある。
- 投手交代の判断基準が明確になっていない。
- 延長戦や連戦を想定した投手の余裕がない。
特に注意したいのは、ブルペンデーを先発投手の代わりに使えば、救援投手の負担が軽くなるという誤解だ。
実際には、先発投手が長いイニングを担当しない分、救援投手の総投球回数や登板準備の負担は増える可能性がある。
ブルペンデーの本質は「投手の配置を最適化すること」
プロの視点から見ると、ブルペンデーは単純な継投作戦ではない。
相手打線の特徴、投手の能力、登板間隔、球数、試合日程など、複数の条件を組み合わせた投手運用の最適化である。
2018年のタンパベイ・レイズが示したのは、先発投手が長く投げることだけが勝利への道ではないという発想だった。
そして、2019年の千葉ロッテは、突発的な先発変更であっても、事前に緻密な継投計画を立てれば勝利につなげられることを示した。
2026年の野球では、投手の役割を固定せず、状況に応じて最適な投手を配置する考え方がさらに重要になっている。
ただし、ブルペンの力を使い切ってしまえば、翌日以降の試合に悪影響が及ぶ。
目の前の1試合に勝つことと、長いシーズンを戦い抜くこと。その両方を成立させられるかどうかが、ブルペンデーの本当の評価基準だ。
【よくある質問】ブルペンデーに関するFAQ
Q1:ブルペンデーとは簡単にいうと何ですか?
A1:先発投手1人に長いイニングを任せず、複数の中継ぎ・救援投手を継投させて試合全体を組み立てる戦術です。通常はブルペンにいる投手を中心に9イニングを担当します。
Q2:ブルペンデーとオープナーは同じ意味ですか?
A2:厳密には異なります。ブルペンデーは試合全体を救援投手中心で戦う運用方法です。オープナーは最初の1〜2イニングを担当する投手の起用方法で、ブルペンデーの一部として使われることもあります。
Q3:ブルペンデーでは何人の投手を使いますか?
A3:決まった人数はありません。一般的には複数の救援投手を使い、各投手が1〜3イニング程度を担当する形が考えられます。投手の能力や試合展開によって人数は変わります。
Q4:ブルペンデーで先発投手は登板しないのですか?
A4:必ずしもそうではありません。救援投手を先発として登板させる場合もあれば、先発経験のある投手を短いイニングだけ起用する場合もあります。重要なのは、通常の先発投手に長いイニングを任せないという運用方針です。
Q5:ブルペンデーで勝利投手になるのは誰ですか?
A5:先発投手が規定投球回数を満たさない場合、複数の救援投手の中から、記録員が最も効果的な投球をしたと判断する投手に勝利が記録されます。登板順だけで決まるわけではありません。
Q6:日本のプロ野球でもブルペンデーは採用されていますか?
A6:はい。2019年7月10日の千葉ロッテ対北海道日本ハム戦では、千葉ロッテが6人の継投で5対0の完封勝利を収めました。先発予定だったボルシンガーの故障に対応した事例です。
Q7:ブルペンデーは先発投手がいないときだけ使うのですか?
A7:いいえ。先発投手の故障や不足に対応する場合だけでなく、相手打線との相性や投手陣の能力を考慮して、戦略的に採用することもあります。2018年のタンパベイ・レイズが代表例です。
まとめ:ブルペンデーは2026年の野球を理解する重要な戦術
ブルペンデーとは、複数の救援投手を計画的に起用し、試合全体を組み立てる投手運用のことだ。
2018年のタンパベイ・レイズが積極的に採用したことで注目され、2019年には千葉ロッテも6人の継投による完封勝利を記録した。
オープナーは序盤を担当する投手、バルクピッチャーはその後に長いイニングを担当する投手であり、ブルペンデーとは役割の範囲が異なる。
この戦術には、相手打線との相性を生かせる、先発投手不足を補える、打者との対戦回数を調整できるという利点がある。一方で、救援投手の疲労や延長戦への対応、継投の複雑さといった課題も抱えている。
2026年のMLBでは、ポストシーズンにおける救援投手の投球割合が52.9%に達するなど、先発とリリーフの境界はさらに柔軟になっている。
これからの野球を見る際には、単純に「誰が先発するのか」だけでなく、「誰が何イニングを担当するのか」「どの打者にどの投手をぶつけるのか」にも注目したい。
ブルペンデーは、投手の役割を変えることで勝利の可能性を広げる、現代野球を象徴する戦術の一つなのである。
主な事実確認に使用した資料
- MLB公式:2018年のレイズによるブルペンデー構想、オープナーの導入実績、救援投手の投球割合。
- NPB公式:2019年7月10日の千葉ロッテ対北海道日本ハム戦の公式試合記録、公認野球規則9.17。
- Full-Count:2019年の千葉ロッテの継投計画と吉井理人投手コーチの解説。
- CBS Sports:2026年MLBポストシーズンの投手起用分析と救援投手の投球割合。
- MLB公式:2026年8月のブルペン評価と投手の疲労管理に関する分析。