霜降り肉を理解するうえで欠かせないのが、公益社団法人日本食肉格付協会(JMGA)が定める「牛枝肉取引規格」です。
日本の牛肉の格付けは、単に見た目のサシが多いかどうかで決まるものではありません。枝肉からどれだけ食用部分を取れるかという歩留まりと、肉そのものの品質を組み合わせて評価します。
農林水産省が2026年3月に公表した畜産・酪農に関する資料でも、この全国統一の格付け制度が説明されています。
BMSとは?霜降りを12段階で評価する基準
BMSとは、Beef Marbling Standardの略称で、日本語では牛脂肪交雑基準と呼ばれます。
牛肉の赤身にどれほど脂肪が入り込んでいるかを、No.1からNo.12までの12段階で評価する仕組みです。
数字が大きいほど脂肪交雑が多く、霜降りの度合いが高いことを示します。
日本食肉格付協会が公表している基準では、BMSと肉質等級の関係は次のように整理されています。
- BMS No.1: 霜降りがほとんどない状態。肉質等級1に対応。
- BMS No.2: 霜降りがやや少ない状態。肉質等級2に対応。
- BMS No.3~4: 標準的な脂肪交雑。肉質等級3に対応。
- BMS No.5~7: やや多い脂肪交雑。肉質等級4に対応。
- BMS No.8~12: かなり多い脂肪交雑。肉質等級5に対応。
つまり、最高の肉質等級5に必要な脂肪交雑の基準は、BMS No.8以上です。No.12だけが5等級になるわけではありません。
牛肉の肉質等級は5段階で決まる
肉質等級は、次の4項目をそれぞれ評価して決定します。
1.脂肪交雑
BMSを使って霜降りの量を判定します。サシが多いほど高い評価につながります。
2.肉の色沢
牛肉の色と光沢を評価します。牛肉色基準(BCS)を用いて肉色を判定し、見た目の光沢も確認します。
3.肉の締まり及びきめ
肉の組織がどれほど細かく、締まりがあるかを評価します。きめが細かく、締まりの良い肉ほど高い等級になります。
4.脂肪の色沢と質
脂肪の色、光沢、質を評価します。牛脂肪色基準(BFS)も使用されます。
ここで特に重要なのが、4項目のうち最も低い等級が、その牛肉の肉質等級になるというルールです。
例えば、脂肪交雑が5、肉色が4、締まり・きめが5、脂肪の色沢と質が5だった場合、肉質等級は4になります。
サシが十分に入っていても、ほかの項目が基準に届かなければ肉質等級5にはなりません。
A5ランクの「A」と「5」は何を意味する?
A5という表示は、2つの異なる評価を組み合わせたものです。
- A:歩留等級。枝肉から取れる部分肉の割合が標準より良いことを示す。
- 5:肉質等級。脂肪交雑、肉色、締まり・きめ、脂肪の色沢と質の総合評価が最高等級であることを示す。
歩留等級はA・B・Cの3段階です。
| 歩留等級 | 歩留基準値 | 評価 |
|---|---|---|
| A | 72以上 | 標準より良い |
| B | 69以上72未満 | 標準 |
| C | 69未満 | 標準より劣る |
したがって、A5は歩留等級Aと肉質等級5を組み合わせた格付けです。
歩留基準値は、胸最長筋の面積、ばらの厚さ、枝肉重量、皮下脂肪の厚さなどを用いた算式によって求められます。
ここから分かるのは、A5が単に「脂肪の多い牛肉」を意味するわけではないということです。肉質と部分肉の取れやすさという、異なる観点から評価されています。
牛肉の格付けは全部で15段階
歩留等級3段階と肉質等級5段階を組み合わせることで、牛肉は全部で15段階に分類されます。
A5が最上位の組み合わせですが、B5やC5も制度上の格付けとして存在します。
つまり、肉質等級5であっても歩留等級がBならB5、CならC5です。
この区別を理解しておくと、スーパーや飲食店でA5という表示を見たとき、その意味を正確に判断できます。
【霜降り肉の見分け方】スーパーや精肉店で確認したい5つのポイント

霜降り肉を購入するときは、サシの量だけでなく、脂肪の入り方や肉全体の状態を確認することが大切です。
ただし、店頭で販売されているスライス肉の見た目だけから、正式なBMSを判定することはできません。BMSは枝肉の所定の切開面を基準に評価するものだからです。
1.サシが細かく均一に入っているか
霜降り肉を選ぶときは、脂肪の量だけでなく分布にも注目します。
赤身の中に細かな白い線が均等に広がっている肉は、見た目にもきめ細かな霜降りが確認できます。
反対に、一部分だけに太い脂肪が集中している場合は、全体としてのサシの分布が異なる可能性があります。
2.赤身と脂肪の色を確認する
良質な牛肉を選ぶ際には、赤身の色と脂肪の色も判断材料になります。
公益財団法人日本食肉消費総合センターは、牛肉の選び方として、赤身の美しい赤色、脂肪の白色または乳白色、肉のきめや光沢などを挙げています。
ただし、牛肉は切りたての状態では暗い色をしていることがあります。空気に触れることで色素が変化し、鮮やかな赤色に発色するためです。重なった部分が暗く見えるだけで、直ちに鮮度が悪いとは判断できません。
3.脂肪が白色から乳白色か
脂肪の色は、牛肉を選ぶ際のチェックポイントです。
一般的には白色や乳白色の脂肪が好まれます。
ただし、脂肪が黄色みを帯びているからといって、必ずしも品質が悪いわけではありません。飼料などによって脂肪の色が変化することもあります。
4.ドリップが多く出ていないか
ドリップとは、肉から流れ出る赤みを帯びた液体のことです。
トレーの底に大量のドリップがたまっている肉は、購入時に注意したいポイントです。
肉の状態や保存状況によっては、肉汁が流出して食感や風味に影響することがあります。
5.用途に合った霜降りの量か
最も大切なのは、料理に合わせて肉を選ぶことです。
- すき焼き:脂の甘みを楽しめる適度な霜降り。
- しゃぶしゃぶ:薄切りで脂が口の中に広がるロースなど。
- 焼肉:脂の量と赤身のバランスが取れた部位。
- ステーキ:好みに応じて霜降りまたは赤身主体の部位。
- ローストビーフ:肉そのものの風味を楽しめる赤身主体の部位。
A5という表示だけで選ぶのではなく、料理の種類や食べる人の好みに合わせることが、満足度の高い買い物につながります。
【霜降り肉の特徴と実態】よくある誤解を専門的に検証
霜降り肉には、高級牛肉の象徴というイメージがあります。しかし、霜降りに関する評価には、誤解されやすいポイントもあります。
誤解1:A5なら必ずBMS No.12である
これは間違いです。
A5の肉質等級5に必要な脂肪交雑はBMS No.8以上です。
No.8、No.9、No.10、No.11、No.12はいずれも脂肪交雑の等級5に該当します。
また、肉質等級5には脂肪交雑以外の3項目も関係します。
誤解2:霜降りが多いほど必ずおいしい
霜降りが多い肉には、脂の甘みや滑らかな食感を楽しめる利点があります。
しかし、おいしさは脂肪交雑だけでは決まりません。
肉の風味、香り、柔らかさ、加熱方法、食べる人の好みなどが関係します。
脂の強い味わいが苦手な人にとっては、サシの少ない赤身肉のほうが満足度が高い場合もあります。
誤解3:霜降り肉は和牛にしか存在しない
霜降りは筋肉内脂肪の状態を示す言葉であり、和牛だけに限定されたものではありません。
牛の品種や個体によって脂肪交雑の程度は異なりますが、和牛以外でも筋肉内に脂肪が入ることはあります。
一方、日本の黒毛和種は霜降りの入りやすさが特徴として知られ、和牛肉の代表的な魅力になっています。
誤解4:店頭のサシを見れば正式なBMSが分かる
これも正確ではありません。
日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格では、第6肋骨と第7肋骨の間で枝肉を切り開き、胸最長筋などの状態を確認して評価します。
つまり、スーパーに並ぶ一枚のステーキや焼肉用スライスの見た目だけで、正式なBMSを決めることはできません。
店頭で確認できるサシは購入時の参考情報であり、公式の枝肉格付けとは区別する必要があります。
【プロの結論】霜降り肉は「脂肪の量」より「脂肪と赤身のバランス」で選ぶ
霜降り肉の本質は、赤身の内部に脂肪がどのように入り込んでいるかという点にあります。
BMSは脂肪交雑を客観的に評価するための基準ですが、牛肉のおいしさを完全に数値化するものではありません。
購入する側が意識したいのは、次の3つです。
- 高級感や脂の甘みを重視する人: BMSの高い霜降り肉やA5などの格付けを参考にする。
- 肉本来の味や噛み応えを重視する人: 赤身主体の肉や適度な脂肪交雑の肉を選ぶ。
- 価格と満足度を重視する人: 格付けだけでなく、部位、用途、脂肪の分布を総合的に確認する。
A5は優れた肉質を示す重要な指標ですが、すべての料理やすべての人にとって最適な牛肉という意味ではありません。
霜降りの量、脂肪の質、肉のきめ、調理方法まで考慮することで、格付けの数字だけでは分からない牛肉の魅力が見えてきます。
【霜降りとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:霜降りとは簡単にいうと何ですか?
A1:牛肉の赤身の中に脂肪が網目状に入り込んだ状態です。正式には脂肪交雑と呼ばれ、白い模様が霜のように見えることから霜降りと呼ばれます。
Q2:霜降り肉とサシは同じ意味ですか?
A2:厳密には少し異なります。霜降りは脂肪が筋肉内に入り込んだ状態を指し、サシはその脂肪が赤身の中に現れた白い模様を指します。
Q3:BMS No.12が最高ランクですか?
A3:BMSの脂肪交雑評価ではNo.12が最も高い数値です。ただし、肉質等級5に必要なのはBMS No.8以上であり、No.12だけが最高等級になるわけではありません。
Q4:A5ランクは霜降りの量だけで決まりますか?
A4:いいえ。Aは歩留等級、5は肉質等級です。肉質等級は脂肪交雑、肉の色沢、締まり・きめ、脂肪の色沢と質の4項目で決まり、そのうち最も低い評価が採用されます。
Q5:霜降り肉と赤身肉ではどちらが柔らかいですか?
A5:一般的には、筋肉内脂肪が細かく入り込んだ霜降り肉は柔らかく感じられやすい傾向があります。ただし、部位や筋肉の構造、熟成、調理方法によっても柔らかさは変わります。
Q6:霜降り肉は和牛だけにあるのですか?
A6:いいえ。霜降りは牛肉の脂肪交雑を示す言葉なので、和牛以外にも存在します。ただし、黒毛和種は脂肪交雑に優れた特徴を持つ品種として知られています。
まとめ:霜降りの意味とA5ランクの正しい見方
霜降りとは、牛肉の赤身に脂肪が網目状に入り込んだ脂肪交雑のことです。サシの細かさや分布は肉の見た目や食感に影響し、和牛ならではのおいしさを構成する要素の一つになっています。
2026年現在も、日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格では、脂肪交雑をBMS No.1~12の12段階で評価しています。さらに肉質等級は5段階、歩留等級はA・B・Cの3段階で判定され、両者を組み合わせて15段階の格付けが行われています。
特に覚えておきたいのは、A5ランクが単に霜降りの多さを示す表示ではないことです。歩留等級Aと肉質等級5を組み合わせた評価であり、脂肪交雑以外の品質も反映されています。
霜降り肉の魅力は、脂の甘み、柔らかさ、香り、見た目の美しさにあります。一方、赤身肉にも肉本来の風味や食べ応えという魅力があります。BMSやA5という数字を正しく理解し、料理や好みに合った牛肉を選ぶことが、本当に満足できる一皿への近道です。