宝くじで1億円、あるいは数億円を手にした人は、その後どのような人生を送っているのか。高級車や豪邸を購入して華やかな生活を始める人がいる一方、浪費による破産、家族との関係悪化、友人からの金銭要求、投資詐欺などに巻き込まれた人もいる。海外では、当選後に財産を失い、生活が一変した事例も報じられてきた。
しかし、「宝くじ高額当選者の7割が破産する」という有名な説には、意外な事実がある。出典とされる米国の金融教育団体NEFEは、2018年にこの数字を裏付ける研究は存在しないと公式に説明している。加えて、宝くじ公式サイトが2025年8月5日に公表した令和6年度「宝くじ長者白書」では、1,000万円以上の高額当選者540人の実態が明らかになった。2026年11月現在、その公表データと海外の研究・実例を照らし合わせると、当選者のその後は「大半が破産する」という単純な話ではないことが分かる。
【結論】宝くじ高額当選者のその後は本当に悲惨なのか?

宝くじの高額当選によって人生が大きく変わり、最終的に経済的な困窮や人間関係の問題を経験した人は実在する。しかし、当選者の大半が破産したり、不幸になったりするという統計的な証拠は確認されていない。
このテーマを理解するうえで重要なのは、個別の転落事例と、当選者全体の傾向を分けて考えることだ。
例えば、イギリスでは高額当選後に浪費を重ねて破産した人物が報道されている。一方、同じく数千万ポンド規模の当選金を手にしながら、家族への援助や社会貢献に使い、生活を維持した人もいる。
つまり、当選金の金額だけで、その後の人生が決まるわけではない。資産管理の方法、生活水準の変化、周囲との付き合い方などが、その後の経済状態を左右する。
日本では高額当選者の破産率が公表されているのか
日本国内では、宝くじの高額当選者を対象に、当選後何年で何%が自己破産したかを追跡した公的統計は確認できない。
宝くじ公式サイトが公表する「宝くじ長者白書」は、1,000万円以上の高額当選者を対象とした調査だが、主な調査内容は当選者の属性、購入状況、換金時期、当選金の使い道などである。
破産率や当選後の資産残高を長期間追跡した調査ではないため、この540人のデータから日本の高額当選者の破産率を算出することはできない。
それでも、実際の当選者が何にお金を使おうとしているのかを知るには、貴重な一次資料となっている。
【最新公表データ】宝くじ長者白書540人が明かした当選金の使い道
2026年時点で確認できる重要な資料が、宝くじ公式サイトの令和6年度「宝くじ長者白書」だ。
この調査は、令和6年度の1年間に1,000万円以上の当選金を受け取った高額当選者を対象に実施された。数字選択式宝くじの当選者は対象外で、回答者は男性349人、女性191人の合計540人となっている。
当選金の使い道は「貯蓄」が圧倒的なトップ
最も注目すべき結果は、当選金の使い道として貯蓄を挙げた人が252人、全体の46.7%に達したことだ。
高額当選というと、ブランド品や高級車、海外旅行などへの派手な支出を想像しがちだが、実際の回答では貯蓄が最も多かった。
宝くじ公式サイトの公表データを整理すると、上位項目は次のようになる。
| 順位 | 当選金の使い道 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 貯蓄 | 252人 | 46.7% |
| 2位 | 旅行 | 91人 | 16.9% |
| 3位 | 家族サービス・親孝行 | 76人 | 14.1% |
| 4位 | 借入金の返済 | 66人 | 12.2% |
| 5位 | 車の購入 | 59人 | 10.9% |
| 6位 | 土地・住宅の改築や購入 | 53人 | 9.8% |
| 7位 | 投資 | 49人 | 9.1% |
| 8位 | 趣味の充実 | 40人 | 7.4% |
| 9位 | 子どもの教育・養育費 | 35人 | 6.5% |
| 10位 | 仕事・事業の資金 | 16人 | 3.0% |
| その他 | 退職する | 4人 | 0.7% |
※宝くじ公式サイトの令和6年度調査。複数回答方式のため、人数・割合は合計540人・100%にはならない。
特に注目したいのは、投資を選んだ人が49人(9.1%)いる一方、ブランド品の購入は6人(1.1%)、退職は4人(0.7%)にとどまっていることだ。
高額当選をきっかけに仕事を辞めたり、ぜいたく品を大量に購入したりする人ばかりではない。むしろ、生活の安定や将来への備えを優先する回答が目立つ。
当選者の年齢や職業にも特徴がある
同じ白書によると、540人のうち60歳以上は280人で、全体の51.9%を占める。50代は135人(25.0%)で、50歳以上が全体の約77%に達した。
職業では会社員が228人(42.2%)で最多。無職は122人(22.6%)、主婦・主夫は44人(8.1%)だった。
この結果から分かるのは、高額当選者が必ずしも若い世代の一攫千金型の購入者ではないということだ。長年の購入習慣を持つ中高年層も多く含まれている。
なお、使い道の「退職する」4人という数字は、当選金の使い道に関する回答であり、実際に退職した人の追跡調査結果ではない。
540人の調査だけでは分からないこと
この調査は、当選後の生活実態を考えるうえで重要だが、いくつかの限界もある。
第一に、対象は1,000万円以上の当選金を受け取った人のうち、アンケートに回答した540人である。すべての当選者を代表するとは限らない。
第二に、回答された使い道は、実際に長期間かけて消費した金額や最終的な資産残高を示すものではない。
第三に、破産、借金、人間関係の悪化、詐欺被害などを追跡した調査ではない。
したがって、この白書から導けるのは「高額当選者には貯蓄や生活の安定を優先する人が多い」という傾向であり、「日本の当選者は破産しない」という結論ではない。
【7割破産説の真相】NEFEの公式見解と海外研究を比較
「宝くじに当選した人の70%は数年以内に破産する」という話は、インターネットの記事や金融関連の解説で繰り返し紹介されてきた。
この数字の出典として頻繁に名前が挙がるのが、米国の金融教育団体National Endowment for Financial Education(NEFE)である。
NEFEは2018年に70%という数字を否定
NEFEは2018年1月12日、「Research Statistic on Financial Windfalls and Bankruptcy」という公式声明を発表した。
同団体によると、70%という数字はNEFEの研究によって裏付けられたものではなく、団体として確認できる統計でもない。
数字の発端とされるのは2001年に開催された専門家による意見交換会だ。心理学やファイナンシャルプランニングなどの専門家が、人生を変えるような出来事と金銭的な臨時収入の影響について議論していた際、参加者の一人が70%という数字を口にしたとされる。
しかし、その発言は調査結果に基づいて検証されたものではなかった。
その後、メディアなどがNEFEの研究結果であるかのように紹介したことで、出典が曖昧なまま広まっていった。
つまり、「NEFEが宝くじ当選者を調査した結果、70%が破産すると判明した」という説明は誤りである。
一方で、当選後に破産リスクが高まる研究も存在する
70%説が間違いだからといって、宝くじの当選金が経済的な問題を解決するとは限らない。
ヴァンダービルト大学の研究者らが2011年に発表した研究「The Ticket to Easy Street? The Financial Consequences of Winning the Lottery」では、米国フロリダ州の宝くじ当選者を対象に、当選金と破産の関係が分析された。
研究対象は1993年から2002年にかけてのFantasy 5の当選者で、約3万5,000人のデータが用いられた。
その結果、5万~15万ドルの当選者は、1万ドル未満の小額当選者と比べ、当選直後には破産しにくかったものの、当選から3~5年後には破産申請の可能性が約50%高くなっていた。
研究者らは、一定額の臨時収入が借金問題を根本的に解決するのではなく、破産を先送りする場合があると指摘している。
ただし、この結果も「当選者の50%が破産した」という意味ではない。異なる当選金額のグループ間における相対的な比較であり、対象も米国の特定の宝くじに限られる。
スウェーデンの研究では生活満足度が長期間上昇
反対に、宝くじの当選が長期的な幸福度にプラスの影響を与えるという研究もある。
エリック・リンドクヴィスト氏、ロバート・オストリング氏、デビッド・チェザリーニ氏らが発表した研究「Long-Run Effects of Lottery Wealth on Psychological Well-being」は、スウェーデンの宝くじ当選者を対象に、当選後5~22年の心理的な状態を分析したものだ。
2020年に学術誌「The Review of Economic Studies」に掲載されたこの研究では、高額当選者の総合的な生活満足度が、当選後10年以上にわたって高い状態を維持していた。
一方、日常的な幸福感や精神的健康への影響は、生活満足度ほど大きくなかった。経済的な安心感が、生活全体への評価を高める要因になっていたと分析されている。
ここから見えてくるのは、宝くじ当選が必ずしも人生を破壊するわけではないという事実だ。
研究対象、当選金額、国の制度、当選者の経済状況によって結果は変わる。単一の数字で全当選者の人生を説明することはできない。
【実際の転落事例】日本と海外の高額当選者はどうなった?
統計上の誤解とは別に、高額当選後に深刻な問題を抱えた実例は存在する。ここでは、報道や公表記録で確認できる代表的なケースを取り上げる。
日本の事例:ロト7で9億円超に当選した元弁護士をめぐる破産問題
国内で注目された特殊なケースが、元弁護士の田畠光一氏をめぐるロト7の高額当選金と破産手続きの問題だ。
NetIB-Newsが2023年9月15日に報じた内容によると、田畠氏は2020年10月27日に福岡地方裁判所から破産手続き開始決定を受けていた。
ところが、その手続き中に当たる2021年4月、ロト7で9億円を超える当選金を獲得した。
問題となったのは、当選金が破産手続き開始決定後に取得した財産に当たるという点だった。報道によれば、当選金を破産財団に組み入れるかどうかをめぐって債権者側との協議が行われたものの、金額面で合意に至らなかった。
さらに2022年8月には、関係する法人の破産管財人らによる新たな破産申し立てが行われたと報じられている。
この事例は、宝くじで当選したために破産したという単純な話ではない。破産手続きが先に始まっていた人物が高額当選したことで、当選金の帰属や債権者への弁済をめぐる法律問題が生じたケースだ。
日本国内で高額当選後の資産管理や債権者との関係を考えるうえで、非常に特殊な事例といえる。
イギリスの事例①:16歳で190万ポンドを当てたキャリー・ロジャース
イギリスのキャリー・ロジャース氏は、2003年、16歳のときに約190万ポンドの宝くじに当選した人物だ。
当時、カンブリア州で小売店のレジ係として働いていたロジャース氏は、若くして巨額の資産を手にした。
当選後は自身と母親のために住宅を購入したが、その後、パーティーや美容整形、薬物などに当選金を費やしたと英紙ガーディアンが報じている。
2021年の報道では、4人の子どもを育てながら、ユニバーサル・クレジット(英国の社会保障給付)に頼る生活を送っている状況が伝えられた。
このケースで注目すべきなのは、当選した年齢だ。16歳という若さでは、巨額の資産を長期的に管理する経験や知識を身につける機会が限られていた可能性がある。
ただし、彼女の経歴をすべて宝くじの当選だけに帰することはできない。浪費、生活環境、個人的な事情など複数の要素が関係している。
イギリスの事例②:約1,000万ポンドを当てたマイケル・キャロル
マイケル・キャロル氏は、2002年に約1,000万ポンドの宝くじに当選した人物だ。当時はごみ収集作業員として働いていた。
当選後、ノーフォーク州に6寝室の住宅を購入し、グラスゴー・レンジャーズの株式にも約100万ポンドを投じた。
しかし、その後の生活は安定しなかった。離婚に伴う約140万ポンドの支払い、薬物やぜいたくな生活、暴行事件などが報じられ、2010年には破産した。
一時的に手にした巨額の資金が、継続的な資産形成につながらなかった代表例である。
イギリスの事例③:高級車やヘリコプターを購入したリー・ライアン
リー・ライアン氏は、1994年、英国の国営宝くじが始まって間もない時期に約650万ポンドを獲得した。
当選金で高級車やヘリコプター、約200万ポンドの豪邸を購入したが、その後、盗難車の取り扱いに関する罪で服役し、ロンドンで路上生活を送った時期もあったとガーディアンは伝えている。
高額な買い物によって生活水準を急激に引き上げても、その後の収入や資産管理が伴わなければ、安定した生活を維持することは難しい。
アメリカの事例:3億ドル超を当てたジャック・ウィテカー
米国のジャック・ウィテカー氏は、2002年のクリスマスに約3億1,490万ドルのPowerballに当選した人物だ。
当時の米国で、1枚の当選券による史上最高額のジャックポットとして注目された。税引き後の一括受取額は約1億1,340万ドルだった。
ウィテカー氏は建設関連会社を経営しており、当選前から事業を成功させていた。単純に貧困から一夜にして大富豪になった人物ではない。
しかし、当選後は金銭を求める人々からの要求や訴訟、盗難などの問題に直面した。2005年には薬物の過量摂取によって孫娘を亡くし、2009年には娘も亡くなった。妻との関係も悪化したとAP通信は伝えている。
また、自宅や車両への侵入・盗難被害も複数回発生した。
ウィテカー氏は2020年6月27日に72歳で亡くなった。葬儀を担当した葬儀場の公表記録では、死因は長い闘病の末の自然死とされている。
彼の人生には当選後の深刻な問題が重なったが、家族の死を宝くじの当選が直接引き起こしたと断定することはできない。
転落しなかった例:2,500万ポンドを獲得したブライアン・キャスウェル
高額当選者の全員が転落するわけではない。ガーディアンは、2009年にEuroMillionsで2,500万ポンドを獲得したブライアン・キャスウェル氏の例も紹介している。
キャスウェル氏は娘たちのために住宅を購入し、菜園を手に入れ、慈善団体も設立した。
家族旅行ではプライベートジェットを利用したこともあったが、普段は地元のパブに通う生活を続けていたという。
同じ高額当選でも、生活のすべてを変えるのではなく、家族や地域との関係を維持しながら資産を活用した例だ。
【なぜ人生が狂う?】当選後の浪費・家族トラブル・詐欺の構造
高額当選者の転落を理解するには、単純に「お金を使いすぎた」という説明だけでは足りない。突然の資産増加によって、本人の生活環境だけでなく、周囲との関係や金銭感覚まで変化することが問題になる。
理由①:突然の大金で金銭感覚が変わる
一般的な給与所得は、働き続けることで毎月入ってくる。一方、宝くじの当選金は原則として一度に受け取る臨時収入だ。
ここに大きな違いがある。
例えば、数億円を手にすると、これまでなら購入をためらっていた高級車や住宅、ブランド品が現実的な選択肢に見えてくる。
しかし、高額な買い物には購入費用だけでなく、維持費も発生する。
- 高級車:保険料、税金、修理費、駐車場代
- 大型住宅:固定資産税、修繕費、光熱費、管理費
- 別荘:維持管理費、交通費、設備の更新費用
- 高額な趣味:継続的な購入費用や利用料
一度上がった生活水準を元に戻すのは簡単ではない。資産が減少していることに気づいたときには、すでに毎月の支出が膨らんでいる場合もある。
理由②:家族や友人から金銭を求められる
当選後の人間関係で問題になりやすいのが、親族や友人との金銭的な距離感だ。
家族の住宅購入や生活費を援助したいと考えること自体は自然なことだが、援助が続けば、本人が想定していなかった支出に発展する可能性がある。
例えば、最初は親への援助として数百万円を渡したとしても、その後、兄弟姉妹や親戚から同じような援助を求められることがある。
友人から事業資金や借金の相談を受ける場合もある。断れば関係が悪化し、応じれば返済されない可能性がある。
こうした問題は、当選者が金銭的な援助をどこまで行うか、事前に基準を決めていない場合に起こりやすい。
ウィテカー氏のケースでも、当選後に絶え間なく金銭を求められたことが、人への不信感につながったとAP通信は報じている。
なお、宝くじ長者白書の「家族サービス・親孝行」14.1%は、家族との関係悪化を示す数字ではない。家族への支出と家族間のトラブルは、別々に考える必要がある。
理由③:当選金を狙う詐欺や投資勧誘
大きな資産を手にした人にとって、第三者からの投資話や金銭的な提案にも注意が必要だ。
特に警戒したいのは、短期間で大きな利益が得られると説明する投資話や、元本保証を強調する勧誘である。
具体的には、次のような特徴がある。
- 元本を保証すると言いながら高い利回りを約束する
- 今日中に契約しなければ利益を逃すと急かす
- 実績や運用先を十分に説明しない
- 家族や専門家に相談しないよう求める
- 個人名義の口座への振り込みを要求する
- 紹介料や手数料を先に支払うよう求める
米国の連邦取引委員会(FTC)も、宝くじや懸賞を装った詐欺について警告している。賞金を受け取るために税金、手数料、配送費などの名目で先払いを要求したり、銀行口座や個人情報を求めたりする手口は、典型的な詐欺の特徴だ。
実際の当選者を狙う投資詐欺と、架空の当選を装う賞金詐欺は同じものではない。しかし、いずれも突然の大金や利益への期待を利用する点には共通性がある。
投資を始める場合は、契約を急がず、複数の専門家に確認することが重要だ。
理由④:当選を隠すことによる心理的な負担
高額当選を周囲に知られたくないと考える人もいる。
これまでと同じ生活を続けたいのに、周囲からの期待や金銭的な要求によって行動が制限される可能性があるからだ。
反対に、当選したことを隠し続けると、配偶者や親族との間で資産の使い方を話し合えず、将来的に不信感が生まれることもある。
重要なのは、誰に、どの範囲まで伝えるのかを決めることだ。全員に知らせる必要はないが、生活や財産の管理に関係する人とは適切な情報共有が必要になる。
理由⑤:家族への贈与に税金が発生する場合がある
日本の宝くじの当選金は、宝くじ公式サイトの説明によれば所得税の対象ではない。
しかし、当選者が受け取ったお金を家族や友人に渡す場合は、別の問題が生じる。
国税庁によると、個人から財産を贈与された場合、原則として贈与税の対象となる。暦年課税では、受贈者が1年間に受け取った贈与財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いて税額を計算する。
つまり、当選金そのものが非課税だからといって、家族に多額のお金を渡しても必ず非課税になるわけではない。
特に、住宅購入資金やまとまった生活援助を考えている場合は、渡す前に税理士などへ相談しておきたい。
【当選後の仕事と生活】高額当選者は会社を辞めるのか?
宝くじに当選したら仕事を辞めて、毎日自由に暮らしたい。そう考える人は少なくないだろう。
しかし、令和6年度の宝くじ長者白書を見ると、仕事を辞めることを当選金の使い道として選んだ人は、540人中わずか4人だった。
日本では当選後すぐに退職する人は少ない
令和6年度の調査では、当選金の使い道として「退職する」を選んだ人は4人(0.7%)だった。
一方、会社員は228人(42.2%)を占めている。
この数字だけで当選後も全員が働き続けたとはいえないが、少なくとも退職が高額当選者の一般的な使い道になっているとは確認できない。
宝くじ公式サイトが紹介する過去の当選者エピソードにも、仕事を続ける予定の人や、定年退職の時期に合わせて住宅の建て替えを考えている人が登場する。
2018年度の年末ジャンボで7億円に当選した京都府在住の40代男性は、実家を新しくして妹たちが集まれる家を建てる構想を紹介している。
また、愛知県在住の50代男性は、1億円の当選後、2~3年後に自身が定年を迎えるタイミングで車や住宅を買い替える計画を語っていた。
当選金を得たからといって、仕事や生活を直ちに変える必要はない。むしろ、時間をかけて生活設計を見直す人もいる。
海外の研究では労働時間を減らす傾向も確認
一方、スウェーデンの宝くじ当選者を対象とした労働供給の研究では、当選後に労働時間や就業状況が変化することが確認されている。
マサチューセッツ工科大学を拠点とする研究ネットワークJ-PALが紹介する研究では、1994~2010年のスウェーデンの宝くじデータを利用し、約24万9,000人を分析対象とした。
研究結果では、当選者は当選直後から労働供給を減らし、その後少なくとも10年間にわたって所得が低くなる傾向が確認された。
ただし、これは全員が仕事を辞めたという意味ではない。労働時間を減らすことが大きな要因であり、職業や勤務先、勤務地が大きく変わったという結果も確認されていない。
つまり、海外では当選後に働き方を調整する傾向が確認されているが、それを日本の当選者にそのまま当てはめることはできない。
当選後の生活で大切なのは収入と資産を分けて考えること
高額当選者が仕事を辞めるかどうかを判断する際には、当選金の総額だけで考えるべきではない。
例えば、3億円を保有していても、住宅購入、家族への援助、税金、生活費などを差し引けば、自由に使える資金は変わる。
また、資産運用を始める場合は、元本割れや市場の変動も考慮しなければならない。
退職するかどうかは、今後の生活費、年齢、家族構成、年金、住宅ローン、運用方針などを踏まえて決める必要がある。
【プロの結論】宝くじ高額当選者が転落を避けるための判断基準
ここまでの公表データと海外事例から分かるのは、高額当選そのものが不幸を生み出すのではなく、突然増えた資産に対して、管理方法や生活設計が追いつかないことが問題になり得るという点だ。
特に重要なのは、当選直後の判断を急がないことだ。
当選後に優先したい5つの行動
1. 当選を知らせる相手を限定する
当選したことを広く知らせると、金銭的な相談や援助の依頼が増える可能性がある。まずは信頼できる家族や専門家など、必要な相手に限定して伝える。
2. 大きな買い物や退職をすぐに決めない
高級住宅、車、事業への投資などは、購入後の維持費まで含めて考える必要がある。気持ちが落ち着くまで大きな決断を保留することが有効だ。
3. 資産を用途別に整理する
生活費、将来の備え、住宅購入、家族への援助、自由に使うお金などに分けると、使いすぎを防ぎやすい。
4. 贈与や投資の前に専門家へ相談する
税理士、弁護士、金融の専門家などに相談し、贈与税や契約上のリスク、投資商品の仕組みを確認する。紹介者の説明だけで決めないことが大切だ。
5. 生活水準を急激に引き上げない
当選金が入ったからといって、毎月の支出を何倍にも増やす必要はない。これまでの生活を基準にしながら、少しずつ使い道を考える方が長期的な安定につながりやすい。
失敗しやすい判断と堅実な判断の違い
- 失敗しやすい判断:当選直後に仕事を辞める、親戚や友人に無計画にお金を渡す、仕組みの分からない投資に大金を入れる。
- 堅実な判断:生活費を試算する、贈与と貸付を区別する、専門家に税務・法律面を確認する、資産の一部を長期的な備えとして残す。
当選金の使い方に絶対的な正解はない。旅行や趣味に使うことも、家族に住宅を贈ることも、本人が納得して計画的に行うなら問題ではない。
重要なのは、資産を使う目的と上限を自分で決め、他人の期待や一時的な興奮だけで行動しないことだ。
【宝くじ高額当選者のその後の悲惨な人生】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:宝くじの高額当選者は本当に7割が破産するのですか?
A1:いいえ。70%という数字はNEFEの研究で確認された統計ではない。NEFEは2018年1月12日の公式声明で、この数字に研究上の裏付けがないと説明している。日本国内でも高額当選者の7割が破産することを示す公的統計は確認されていない。
Q2:宝くじ長者白書では当選金を何に使う人が多いですか?
A2:令和6年度の調査では、540人中252人(46.7%)が貯蓄を挙げており、最も多かった。次いで旅行が91人(16.9%)、家族サービス・親孝行が76人(14.1%)となっている。なお、複数回答方式である。
Q3:宝くじに高額当選したら仕事を辞めてもよいですか?
A3:当選金額だけで判断するのは避けたい。令和6年度の宝くじ長者白書では、退職を使い道に挙げた人は4人(0.7%)だった。生活費、住宅費、家族への援助、将来の支出などを試算してから判断することが望ましい。
Q4:当選金を家族や友人に分けても税金はかかりませんか?
A4:宝くじの当選金自体は所得税の対象ではないが、当選者から家族や友人に財産を贈与した場合は、贈与税が発生する可能性がある。暦年課税では、受贈者の年間の贈与額から110万円の基礎控除を差し引いて計算する。
Q5:日本にも宝くじ当選後に破産した人はいますか?
A5:国内では高額当選と破産手続きをめぐる特殊な事例が報じられている。代表例として、破産手続き中にロト7で9億円超に当選した元弁護士のケースがある。ただし、これは当選によって破産した事例ではなく、当選前から存在した破産手続きと当選金の帰属をめぐる問題だった。
まとめ:宝くじ高額当選者のその後は当選金の管理で変わる
宝くじ高額当選者のその後には、浪費や破産、人間関係の悪化など、深刻な転落事例が確かに存在する。海外ではキャリー・ロジャース氏やマイケル・キャロル氏、ジャック・ウィテカー氏のように、当選後に大きな困難を経験した人物もいる。
しかし、「高額当選者の7割が破産する」という説は、NEFE自身が研究上の根拠を否定している。加えて、スウェーデンの研究では、高額当選者の生活満足度が10年以上にわたって高い状態を維持するという結果も出ている。
日本の令和6年度宝くじ長者白書でも、540人の回答者のうち46.7%が貯蓄を使い道に挙げており、当選金を堅実に管理しようとする傾向が見られた。
【プロの結論】宝くじに当選した後の人生を左右するのは、当選金の大きさだけではない。突然手にした資産をどう守り、どう使い、誰と共有するかが重要になる。
高額当選は人生を豊かにする可能性を持つ一方、無計画な支出や人間関係の変化によって経済的な負担を生む可能性もある。
一攫千金を夢見るだけでなく、その後の生活まで考えておくこと。それこそが、宝くじの当選を本当の意味で人生の幸運につなげるための条件だ。