阪神タイガースの糸原健斗は、かつて二塁や三塁のレギュラーとしてチームを支えた左打ちの内野手だ。2018年、2019年には2年連続で全143試合に出場し、巧みなバットコントロールと勝負強い打撃で存在感を示した。一方、2023年以降は代打を中心とする起用に変わり、2026年シーズンも一軍での出場機会は限られた。
2026年シーズン終了時のNPB公式記録では、糸原の成績は21試合出場、20打数1安打、打率.050、0本塁打、0打点。かつてのレギュラー時代と比較すると、数字の落差は大きい。なぜ代打中心の選手になったのか。開星高校、明治大学、JX-ENEOSを経た経歴やFA残留の経緯、推定年俸5,500万円の背景も含め、2026年時点の立ち位置を検証する。
【2026年の役割と現在地】21試合・打率.050が示す厳しい現状

2026年の糸原健斗は、阪神の一軍で主に代打を担う左打ちの内野手としてシーズンを過ごした。しかし、結果だけを見ると、期待された役割を十分に果たせたとは言いにくい。
2026年の打撃成績を詳しく確認
NPB公式の2026年シーズン終了時の個人年度別成績によると、糸原の打撃成績は次のとおりだ。
- 出場試合数:21試合
- 打席数:20打席
- 打数:20打数
- 安打:1本
- 打率:.050
- 二塁打:1本
- 本塁打:0本
- 打点:0
- 四球:0
- 三振:6
- 出塁率:.050
- 長打率:.100
注目したいのは、20打数1安打という打率だけではない。20打席で四球がなく、6三振を記録している点も、限られた打席で結果を求められる代打としては厳しい数字だ。
もっとも、20打数という母数は決して大きくない。1本の安打が増減するだけで打率は5分変動する。したがって、打率.050だけで打撃能力のすべてを判断するのは適切ではない。一方で、少ない打席で結果を残すこと自体が代打の仕事である以上、成績が起用判断に影響するのも避けられない。
2026年は一軍と二軍を行き来するシーズンに
2026年は開幕から一軍で定位置を確保したシーズンではなかった。6月には交流戦期間中に一軍へ昇格したものの、7月1日に出場選手登録を抹消されている。
日刊スポーツの2026年7月1日付報道によると、昇格後の打席は8打席で、すべて代打だった。打率は.125。6月17日の楽天戦では代打で左翼への二塁打を放ったが、その後は安打が続かなかった。
9月29日には再び一軍へ昇格した。しかし、10月14日には登録を抹消され、クライマックスシリーズのファイナルステージを前に一軍の登録メンバーから外れた。NPBの公示では再登録可能日が10月24日以降とされており、CSファイナルステージ期間中の出場はできない状況だった。
2026年10月31日時点で確認できるNPBのシーズン終了時選手情報では、糸原は引き続き阪神所属の内野手として掲載されている。現在地を一言で表すなら、かつてのレギュラーから、限られた出場機会で勝負するベテランの控え選手へと役割が変化した段階だ。
【歴代年度別成績】レギュラー定着から代打中心へ変わった10年間
糸原のキャリアを理解するには、単年の打率だけでなく、出場試合数や打席数の変化を追う必要がある。NPB公式記録を基に2017年から2026年までの一軍成績を整理すると、2022年までと2023年以降で明確な変化が見えてくる。
糸原健斗の年度別成績一覧
| 年度 | 試合数 | 打席数 | 安打 | 打率 | 主な転換点・役割 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017年 | 66 | 193 | 42 | .259 | プロ1年目。一軍で経験を積む |
| 2018年 | 143 | 637 | 152 | .286 | レギュラー定着。キャリアハイの安打数 |
| 2019年 | 143 | 572 | 131 | .267 | 2年連続全試合出場 |
| 2020年 | 63 | 244 | 64 | .294 | 打率は自己最高を記録 |
| 2021年 | 125 | 488 | 126 | .286 | 主力内野手として活躍 |
| 2022年 | 132 | 495 | 110 | .247 | 二塁・三塁を中心に出場 |
| 2023年 | 69 | 83 | 17 | .236 | 代打中心へ役割が変化 |
| 2024年 | 89 | 128 | 24 | .216 | 左の代打としてチームを支える |
| 2025年 | 61 | 75 | 14 | .203 | 出場機会がさらに減少 |
| 2026年 | 21 | 20 | 1 | .050 | 一軍と二軍を往復するシーズン |
出典:日本野球機構(NPB)個人年度別成績。2026年はシーズン終了時の記録。打率は公式記録の表記。
全143試合出場を達成した2018年・2019年
糸原がレギュラーとして最も存在感を示したのは2018年と2019年だ。
2018年は143試合に出場し、531打数152安打、打率.286を記録。出塁率は.390に達し、四球も86個を選んだ。単純に安打を重ねるだけでなく、四球によって塁に出る能力も高かったことが分かる。
2019年も143試合に出場し、打率.267、45打点を記録した。2年連続で全試合に出場した実績は、当時の阪神における信頼の大きさを物語っている。
2020年から2022年までの主力時代
2020年は63試合の出場ながら、打率.294を記録した。これは一軍での年度別打率として、2026年終了時点でのキャリア最高値に当たる。
2021年は125試合、打率.286。2022年も132試合に出場し、打率.247、3本塁打、36打点を残した。2018年から2022年まで、糸原は阪神の内野陣を支える存在だった。
2023年以降に起きた変化
大きな転換点は2023年だ。出場試合数は69試合、打席数は83打席まで減少。2024年は89試合に出場したものの打席数は128、2025年は61試合・75打席となった。
つまり、試合に出場する機会そのものだけでなく、打席に立つ機会も減っている。これは単なる打率の低下ではなく、チーム内での役割が変わったことを示す数字でもある。
【糸原健斗の経歴とプロフィール】開星高校・明治大学・JX-ENEOSから阪神へ
糸原健斗は1992年11月11日生まれ、島根県出身。右投左打の内野手で、阪神では背番号33を着用している。
NPB公式プロフィールに掲載されている経歴は、開星高校、明治大学、JX-ENEOS、阪神タイガースという順番だ。高校、大学、社会人野球を経てプロ入りした、いわゆる社会人出身の選手である。
開星高校時代から明治大学へ
島根県の開星高校で野球に取り組み、その後、明治大学へ進学した。大学野球を経験した後は、社会人野球の強豪として知られるJX-ENEOSに入社している。
ENEOS野球部の公式選手紹介にも、糸原が2015年に入社し、2016年に阪神タイガースへドラフト5位で入団した経歴が掲載されている。
2016年ドラフト5位で阪神に入団
2016年のドラフト会議で阪神から5位指名を受け、2017年からプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせた。
プロ入り当初から内野手として起用され、複数の内野ポジションを守れる柔軟性と、左打者としての対応力を武器に出場機会を増やしていった。2018年にはレギュラーに定着し、2年連続全試合出場へとつながった。
背番号33と守備位置
糸原の背番号は33。ポジション登録は内野手で、右投左打というプロフィールだ。
プロ入り後は二塁や三塁を中心に、一塁など複数の内野ポジションで起用されてきた。打撃だけでなく、複数の守備位置に対応できる点もチームにとっての選択肢となっている。
ただし、ユーティリティー性があることと、各ポジションでレギュラーを確保できることは別問題だ。阪神の内野陣には複数の実力者がいるため、糸原にとっては打撃面でのアピールも欠かせない。
【代打起用の理由】なぜレギュラーから控えの切り札に変わったのか
糸原が代打中心になった背景には、本人の成績だけでなく、阪神の内野陣の構成と監督の起用方針がある。
2023年の岡田監督による役割の明確化
2023年2月、岡田彰布監督は糸原健斗と原口文仁を代打の切り札として起用する方針を明らかにした。
当時の日刊スポーツの報道では、岡田監督は原口を右の代打、糸原を左の代打として考えていたことが伝えられている。つまり、代打への転換は単にレギュラー争いに敗れた結果というだけではなく、チーム編成の中で明確に役割を与えられた側面もあった。
当時の岡田監督は、レギュラーの顔ぶれが固まりつつあることを踏まえ、控え選手にも役割を明確に与える考えを示していた。
中野拓夢の二塁転向と佐藤輝明の三塁固定
もう一つの大きな要因が、内野の守備位置の再編だ。
2023年、岡田監督はそれまで遊撃を守っていた中野拓夢を二塁へコンバートした。また、佐藤輝明を三塁で起用する方針を明確にした。
これにより、糸原が主に出場していた二塁や三塁の先発枠は狭くなった。週刊ベースボールONLINEの2023年の記事でも、中野の二塁転向と佐藤の三塁固定が、糸原の出場機会に影響した経緯が紹介されている。
守備位置の固定化が進むチームでは、複数ポジションを守れる選手であっても、先発出場の機会が必ず増えるわけではない。糸原の場合、経験豊富な左打者という特徴を生かし、代打で勝負する方向へ役割が移った。
代打に求められるのは少ない打席での結果
代打はレギュラーとは異なる難しさを持つ。試合の流れを読み、相手投手の特徴や左右の相性を考慮しながら、短い準備時間で打席に入らなければならない。
糸原はもともと四球を選ぶ能力や粘り強い打撃に定評があった。2018年には86四球を記録しており、出塁率.390という数字も残している。
一方、代打では出場機会が限られるため、打席数を重ねながら調子を上げることが難しい。2026年は20打席で打率.050という結果に終わった。今後も代打として信頼を得るには、少ない機会でも安打や出塁につなげる対応力が必要になる。
【FA残留の経緯と年俸】2024年の決断から2026年の推定5,500万円まで
糸原健斗を語るうえで、2024年に取得した国内FA権と、阪神残留を決めた経緯も要点だ。
2024年4月に国内FA権を初取得
糸原は2024年4月に国内FA権を取得した。プロ入り後、阪神でプレーを続けてきた生え抜き選手として、初めて他球団への移籍を選択できる立場になった。
シーズン終了後の2024年11月12日、阪神球団は糸原がFA権を行使せず、チームに残留すると正式に発表した。
球団発表に掲載された本人のコメントでは、残留を決めた理由として、チームとタイガースファンとともに再び優勝の喜びを分かち合いたいという思いが語られている。
「このチーム、そしてタイガースファンのみなさんと、また優勝の喜びを分かち合いたい」
この決断は、単なる契約条件の比較だけでは説明できない。長年プレーしてきた阪神への愛着や、チームの一員として優勝を目指したいという本人の意向が表れている。
2026年6月には海外FA権も取得
2026年6月28日には、糸原が植田海とともに海外FA権の取得条件を満たしたことが日刊スポーツで報じられた。
2024年に取得した国内FA権を行使しなかったことと、2026年に海外FA権を取得したことは、別々の出来事として理解する必要がある。
海外FA権の取得は、移籍を決断したという意味ではない。資格を得たことと、実際にFA宣言することは別の手続きだ。2026年10月31日時点で、取得そのものを退団や移籍の決定と結び付けることはできない。
2026年の推定年俸は5,500万円
糸原の2026年シーズンの推定年俸は5,500万円だ。
2025年11月18日の契約更改では、前年から1,500万円減となる5,500万円の単年契約を結んだと日刊スポーツが報じている。前年の推定年俸は7,000万円だった。
契約更改時点での2025年成績は61試合出場、69打数14安打、4打点、打率.203。プロ9年目で自己最少の出場試合数となり、シーズン終盤には一軍登録を抹消され、CSと日本シリーズにも出場できなかった。
こうした成績と出場機会の減少が、1,500万円の減額につながったと考えられる。なお、年俸は報道による推定額であり、球団が契約金額の詳細を公式に公表したものではない。
【プロの結論】糸原健斗の評価は打率だけでは決まらない
糸原の2026年を評価する際には、厳しい打撃成績と、これまで積み上げてきた実績を分けて考える必要がある。
通算成績にはレギュラーとしての実績が残る
NPB公式記録による2026年シーズン終了時の通算成績は、912試合出場、2,935打席、681安打、12本塁打、208打点、通算打率.266だ。
2018年には152安打、2020年には打率.294を記録している。こうした実績を見ると、2026年の20打数1安打だけを取り上げて、選手としての能力を全面的に評価することには無理がある。
ただし、過去の実績が現在の出場機会を保証するわけでもない。プロ野球では、過去の貢献と現在のチーム事情を分けて判断する必要がある。
今後の起用を考える3つの判断材料
- 打撃の対応力:代打として少ない打席でも安打や出塁を記録できるか。特に左投手・右投手への対応や、得点圏での結果が注目される。
- 守備の柔軟性:二塁・三塁など複数の内野ポジションを守れる経験を、チームの選手構成に応じて生かせるか。
- チーム内での役割:若手選手との競争の中で、左の代打や内野のバックアップとして必要とされるか。
特に重要なのは、打撃と守備の両方で起用するメリットを示せるかという点だ。代打専門の選手として評価されるには打席での結果が必要であり、守備でも複数のポジションを任せられれば、ベンチに置く価値は高まる。
糸原は2018年、2019年に阪神の主力として全試合に出場した経験を持つ。その経験を、現在のチームでどのように還元できるかも評価の対象になる。
過去の実績だけでレギュラー復帰を予測するのも、2026年の打率だけで戦力としての価値を否定するのも早計だ。今後の評価は、限られた打席での結果と、チームが求める役割にどれだけ応えられるかによって決まっていく。
【糸原健斗の現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:糸原健斗の2026年の打率と出場試合数は?
A1:NPB公式記録による2026年シーズン終了時の成績は、21試合出場、20打数1安打、打率.050。0本塁打、0打点、二塁打1本、三振6です。
Q2:糸原健斗が代打中心になった理由は?
A2:2023年に岡田彰布監督が原口文仁と糸原を左右の代打の切り札として起用する方針を示したことが大きな転機です。中野拓夢の二塁転向や佐藤輝明の三塁固定など、内野のポジション再編も出場機会に影響しました。
Q3:糸原健斗の2026年の年俸はいくら?
A3:2025年11月の契約更改で、1,500万円減となる推定5,500万円の単年契約を結びました。2026年シーズンの推定年俸は5,500万円です。
Q4:糸原健斗はFAで阪神を退団した?
A4:2024年に国内FA権を取得しましたが、行使せず阪神残留を決めました。2026年6月には海外FA権も取得していますが、資格取得と移籍決定は異なります。
Q5:糸原健斗の出身校と背番号は?
A5:開星高校、明治大学、JX-ENEOSを経て2016年ドラフト5位で阪神に入団しました。ポジションは内野手で、背番号は33です。
まとめ:糸原健斗の2027年に向けた注目ポイント
糸原健斗は、開星高校、明治大学、JX-ENEOSを経て2016年ドラフト5位で阪神に入団し、2018年・2019年には2年連続全143試合出場を達成した実績ある内野手だ。
しかし、2023年からは代打中心の役割に変化し、2026年は21試合、打率.050という厳しい成績でシーズンを終えた。2024年の国内FA権行使見送りによる残留や、2026年の海外FA権取得も、現在のキャリアを考えるうえで押さえておきたい出来事だ。
今後の注目点は、代打としての打撃結果、内野の複数ポジションを守れる経験、そして若手選手との競争の中でどのような役割を担うかという3点にある。
かつてのレギュラーとしての実績は確かなものだ。一方で、2026年の成績が示すように、プロの世界では現在の結果も厳しく問われる。背番号33の糸原が、これまで培った経験を生かして再び一軍で存在感を示せるか。2027年に向けた動向にも注目したい。
主な確認資料: 日本野球機構(NPB)公式年度別成績、阪神タイガース公式プロフィール・球団発表、ENEOS野球部公式情報、日刊スポーツ、週刊ベースボールONLINE。