2023年11月、東京ビッグサイトで開催された「デザインフェスタvol.58」で販売されたマフィンをめぐり、X(旧Twitter)で購入者から異臭や糸引き、食後の体調不良を訴える投稿が相次いだ。問題となったのは、東京都目黒区の焼き菓子店「Honey×Honey xoxo(ハニー・ハニー・キス)」が販売したマフィンだ。納豆のような臭いがする、栗の部分が糸を引いているといった購入者の報告が拡散し、大きな食品衛生問題へと発展した。
一方、2023年12月に公表された目黒区保健所の調査結果では、検査した食品や関係者の検体から食中毒菌・ウイルスは検出されず、食中毒とは断定されなかった。厚生労働省のリコール情報ではCLASS Iに分類されていたにもかかわらず、なぜ行政処分は見送られたのか。また、店舗はその後どうなったのか。2026年11月現在の公式発表と公的資料、当時の報道をもとに経緯を整理する。
【騒動の発端】デザインフェスタvol.58でマフィンに何が起きたのか

2023年11月11日・12日に販売された9種類のマフィン
問題が発生したのは、2023年11月11日(土)と12日(日)の2日間に東京ビッグサイトで開催された「デザインフェスタvol.58」だ。
出店していたのは、東京都目黒区の焼き菓子店Honey×Honey xoxo。イベント会場では、栗やチョコチップ、スイートポテトなどを使用したマフィンを販売していた。
目黒区が2023年11月16日に発表した注意喚起によると、対象となった商品は以下の9種類である。
- 栗マフィン
- チョコチップマフィン
- スイートポテトマフィン
- ミルクティーマフィン
- 焼きりんごマフィン
- ベーコンとクリームチーズマフィン
- ざくろマフィン
- ブルーベリーマフィン
- チェリーマフィン
販売数については、当時の報道で合計3,008個と伝えられている。複数の種類を扱うイベント出店だったこともあり、購入者への影響や回収の範囲が大きな問題となった。
購入者から異臭・糸引きの報告
販売後、購入者がSNSに投稿したのは、マフィンの表面や具材に異常が見られたという内容だった。特に注目を集めたのが、栗マフィンなどについての「納豆のような臭いがする」「糸を引いている」という報告である。
加えて、実際に食べた後に腹痛や吐き気などの体調不良を訴える人も現れた。
目黒区の公式発表でも、購入者から納豆のような臭いと糸引きを確認したという申し出があり、喫食後に腹痛などの症状を呈した人が複数確認されたと説明されている。
目黒区は対象商品を手元に持っている人に対して、食べずに廃棄するよう注意を呼びかけた。また、既に食べて体調不良が生じている人には、居住地を管轄する保健所への相談を促した。
【Twitterの反応】糸引きマフィンの投稿が拡散した理由
X(旧Twitter)で写真や動画が広がった
この騒動が全国的に知られるようになった大きな理由は、X(旧Twitter)で購入者による報告が拡散したことだ。
購入者が投稿したのは、マフィンの異常な状態を示す写真や動画、購入時のやり取り、食後の体調についての情報などだった。これらが別のユーザーによって共有され、デザフェスの来場者以外にも問題が知られるようになった。
2023年11月14日のJ-CASTニュースなどの報道でも、購入者による異臭や糸引きの報告、販売店の謝罪、保健所への相談が取り上げられている。
ネット上の反応は、大きく分けると次のような論点に集中した。
- 食品の安全性への不安:糸を引く状態や異臭があるマフィンを販売したことへの疑問。
- 衛生管理への批判:製造日、保存方法、販売までの管理体制に対する懸念。
- 店舗の初期対応への疑問:最初のSNS上の説明や購入者への案内が適切だったのかという批判。
- 購入者への対応:返金や回収がどのように進められるのかという関心。
一部では「デスマフィン」という刺激的な呼び名まで広がった。しかし、この名称はSNS上で生まれた俗称であり、行政機関が認定した事件名や医学的な診断名ではない。
店舗側も謝罪し、営業停止と回収を案内
店舗側は2023年11月13日以降、SNSで謝罪と購入者への案内を行った。異臭の報告を受けた商品については、食べずに連絡するよう呼びかけ、返金対応についても説明していた。
11月14日には目黒区保健所への相談や衛生指導について報告。店舗は営業を停止する意向を示した。
また、デザインフェスタの運営側も11月14日に謝罪を公表し、フードエリアの出展者に対する注意喚起を強化する考えを示した。
この段階では、原因が食中毒なのか、食品の腐敗なのか、どのような管理上の問題があったのかは確定していなかった。SNS上の情報が先行する一方、行政による調査が進められることになった。
【自主回収とCLASS I】厚生労働省が発表したリコール情報の意味
対象は9種類・約3,008個
問題を受けて、Honey×Honey xoxoは対象マフィンの自主回収を実施した。
厚生労働省の食品等リコール情報にも掲載され、対象となったのは栗マフィン、チョコチップマフィン、スイートポテトマフィンなど9種類。販売数は約3,008個と報じられている。
回収の理由は、一部商品について糸を引き、納豆のような臭いがするという申し出があったこと、さらに喫食後の体調不良に関する連絡が寄せられたことだった。
CLASS Iは何を意味するのか
この件で特に注目されたのが、厚生労働省のリコール情報に表示されたCLASS I(クラス1)という分類だ。
厚生労働省の食品リコール制度では、回収対象となる食品について、健康被害が発生する可能性などを考慮してクラス分類を行っている。
- CLASS I:喫食によって重篤な健康被害や死亡の原因となる可能性が高い場合。
- CLASS II:重篤な健康被害や死亡につながる可能性が低い場合。
- CLASS III:健康被害の可能性がほとんどない場合。
今回のマフィンがCLASS Iに分類されたことは、食品の安全性について重大な懸念があり、回収を優先すべき状況だったことを示している。
ただし、ここで押さえておきたいのは、CLASS Iへの分類と、食中毒菌が検出されたという検査結果は別のものだという点だ。
リコール分類は回収時点での健康被害リスクを判断する仕組みであり、特定の病原菌による食中毒が確定したことを意味しない。この違いが、後に保健所の調査結果とSNS上の受け止め方に大きな隔たりを生んだ。
【時系列で検証】目黒区保健所の調査と食中毒が断定されなかった理由
2023年11月から12月までの主な経緯
騒動の経緯を時系列で整理すると、SNS上での問題発覚、自主回収、行政による検査、店舗の閉業発表という流れが見えてくる。
| 時期 | 出来事・関係者 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 2023年11月11日・12日 | デザインフェスタvol.58 | Honey×Honey xoxoが9種類のマフィンを販売。 |
| 11月13日 | 購入者・店舗 | 異臭や糸引きの報告がSNSで広がり、店舗が謝罪。 |
| 11月14日 | 目黒区保健所・店舗・イベント運営 | 保健所への相談や衛生指導が行われ、運営側も謝罪。 |
| 11月15日 | 目黒区保健所 | 店舗への立ち入り検査を実施。 |
| 11月16日 | 厚生労働省・店舗 | 9種類のマフィンがリコール対象として公表され、CLASS Iに分類。 |
| 11月21日 | Honey×Honey xoxo | 閉業、返金方針、購入証明の必要性などを公式サイトで案内。 |
| 12月15日 | 目黒区保健所 | 食中毒と断定できないとの調査結果を店舗側に説明。 |
| 12月19日 | 店舗・報道各社 | 検査結果が公表され、行政処分を見送ったことが報じられる。 |
検査対象は疑いのある購入者7人と食品15検体
2023年12月19日、店舗側は公式ウェブサイトで目黒区保健所から説明を受けた調査結果を公表した。
調査対象となったのは、店舗の食品従事者の検体、食中毒患者の疑いがある購入者7人の検体、購入者から提供されたマフィン15検体である。
その結果について、店舗の公式発表には次のように記載されている。
「食中毒菌及びウィルスが検出されなかった」
つまり、検査された購入者の検体や食品、食品従事者の検体から、食中毒の原因となる菌やウイルスが確認されなかったということだ。
また、店舗側の発表によると、検査対象となった7人の中に入院した人や重症者はいなかったという。
菌が検出されなかったのに、なぜ体調不良の報告があったのか
ここで注意したいのは、検査で菌が検出されなかったことと、購入者が体調不良を訴えたことは、必ずしも矛盾しないという点だ。
検査結果が示すのは、あくまで調査対象となった検体から食中毒菌・ウイルスが検出されなかったという事実である。販売されたすべての商品を検査したわけではなく、購入者が食べたすべてのマフィンについて、同一の状態だったことが証明されたわけでもない。
また、検査で原因菌が確認されなかった以上、体調不良がマフィンに由来する食中毒だったと科学的に結論づけることも難しい。
J-CASTニュースの2023年12月20日の報道では、目黒区保健所への取材を通じて、体調不良を訴え調査に協力した人の数や、検査した食品の状態についても説明されている。
食品の腐敗と、病原菌による食中毒は同じ概念ではない。食品に異常があることが疑われても、検査で特定の食中毒原因菌が見つからなければ、感染症としての食中毒を確定できない場合がある。
【行政処分の見送り】食中毒と断定できなかった本当の理由
食中毒の原因となる菌が検出されなかった
2023年12月19日、目黒区保健所が店舗への行政処分を見送ったことが報じられた。
日本テレビの報道などによると、保健所は体調不良とマフィンとの因果関係を断定できず、営業停止などの行政処分を行わない判断をした。
理由の一つは、前述の検査で食中毒の原因となる細菌が検出されなかったことだ。
食品衛生法では、病原微生物に汚染された食品などについて販売を禁止し、違反が確認された場合には行政上の措置を取ることができる。しかし、今回の検査では、その根拠となる原因菌が確認されなかった。
「腐敗」と「食中毒」の法的な判断は異なる
もう一つの論点が、食品の腐敗をどのように判断するかという問題だった。
食品衛生法第6条では、腐敗・変敗した食品の販売などを禁止している。しかし、今回のようなケースでは、どのような状態を法的に腐敗と認定するのかという判断が難しかった。
2023年12月19日の弁護士ドットコムニュースによると、目黒区保健所は腐敗について具体的な数値などの明確な定義がなく、何をもって腐敗と判断するかが難しいと説明している。
つまり、SNSで報告された糸引きや異臭の状態が問題視されていたとしても、それだけで食品衛生法上の行政処分に必要な事実がすべて立証されたわけではなかった。
ここで重要なのは、行政処分の見送りが「販売されたマフィンに問題はなかった」という意味ではないことだ。
食中毒の発生を認定できなかったことと、食品の製造・保存・衛生管理に問題がなかったことは別の問題である。店舗側も2023年11月21日の謝罪文で、食品の製造・販売業者として食品衛生に関する知識や対策が不十分だったと反省を表明している。
【2026年現在】Honey×Honey xoxoは閉業?営業再開と返金対応の現状
2023年11月21日に閉業を公式発表
Honey×Honey xoxoは、騒動発生後に店舗の営業停止を発表し、2023年11月21日付の公式案内で閉業を明らかにした。
加えて、同店の公式ウェブサイトには、事故発生以来閉業しており、営業再開の予定はないという説明が掲載されている。
2026年11月現在、確認できる同店の公式対策サイトにも、この閉業と営業再開予定なしという案内が掲載されている。営業再開を裏付ける新たな公式発表は確認できない。
したがって、現在も同店が通常営業している、あるいはマフィンの販売を再開しているという情報を事実として扱うことはできない。
公式サイトが注意喚起した偽サイト問題
もう一つ注意したいのが、店舗を名乗るウェブサイトについてだ。
同店の公式対策サイトでは、店舗とは無関係の第三者が、あたかも営業中であるかのようなホームページを公開していたとして、注意を呼びかけている。
店舗側は、そのサイトを虚偽の情報を掲載したものと説明し、Googleに削除を要請したとしている。
そのため、2026年現在、検索結果に店舗名が表示されていたとしても、それだけで営業再開を意味するわけではない。店舗自身が公表した情報なのか、第三者が作成した情報なのかを区別する必要がある。
マフィンの返金対応には購入証明が必要だった
騒動後の返金対応についても、同店は2023年11月21日の公式発表で具体的な条件を説明している。
購入者に対して購入代金を返金する方針を示した一方、警察からの指導により、返金対象は購入したことを証憑などによって確認できた人に限定するとしていた。
また、対象商品を保有している人には廃棄を依頼し、廃棄したことについても店舗側の食品事故対策室へ連絡するよう案内していた。
当時の対応を整理すると、次のようになる。
- 返金対象:対象マフィンを購入したことを証明できる人。
- 確認方法:購入を確認できる証憑等による確認。
- 対象商品の扱い:喫食せずに廃棄するよう依頼。
- 問い合わせ窓口:店舗が設置した食品事故対策室。
なお、これは2023年11月21日に公表された当時の返金方針である。2026年現在も新規の返金受付が継続しているか、受付条件が変更されたかについては、現行の公式案内から確定できる情報はない。
【プロの結論】マフィン騒動から考える食品衛生とSNS情報の見極め方
今回の騒動を振り返ると、食品の安全性に関する問題では、SNSの投稿、リコール情報、保健所の検査結果をそれぞれ異なる情報として理解する必要がある。
特に重要なのは、次の3つの区別だ。
1. SNSで報告された異常と行政の検査結果は別の情報
購入者による糸引きや異臭の報告は、食品の異常を知らせる重要な情報だった。一方、行政の検査は、提出された検体から食中毒の原因となる微生物が検出されるかを調べるものだ。
両者は異なる役割を持っている。検査で菌が検出されなかったからといって、購入者の報告そのものが虚偽だったと判断することはできない。
2. CLASS Iと食中毒確定を混同しない
CLASS Iは、食品のリコールにおける健康被害リスクの分類である。食中毒の原因菌が検出されたことや、被害者全員の症状が医学的に証明されたことを示すものではない。
今回のケースは、回収時点では重大な健康リスクが考慮された一方、その後の検査では食中毒の原因菌・ウイルスが検出されず、食中毒の認定には至らなかったという経緯だった。
3. 店舗の現在は公式発表を基準に判断する
閉業した店舗については、検索エンジンの店舗情報や第三者のSNS投稿だけで営業状況を判断するのは危険だ。
今回のように、店舗自身が無関係な第三者による偽サイトについて注意喚起しているケースでは、公式発表と情報の発信元を確認することが欠かせない。
食品を購入する際にも、異臭、変色、糸引きなど、普段と異なる状態が見られた場合は食べずに販売元や保健所へ相談することが基本となる。見た目や臭いだけで安全性を判断したり、加熱すれば必ず安全になると考えたりすることも避けたい。
今回の騒動が残した大きな教訓は、食品の製造・販売における衛生管理と、問題発生時の迅速な情報公開が消費者の安全を守るうえで欠かせないという点にある。
【マフィン食中毒騒動のTwitter投稿】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:デザフェスのマフィン騒動はいつ起きた?
A1:2023年11月11日・12日に東京ビッグサイトで開催されたデザインフェスタvol.58で発生した。Honey×Honey xoxoが販売したマフィンについて、異臭や糸引き、食後の体調不良を訴える報告がSNSで広がった。
Q2:マフィンから本当に納豆のような臭いや糸引きがあったの?
A2:購入者から納豆のような臭いや糸引きを確認したという報告があり、目黒区の公式発表でもそのような申し出があったことが確認されている。
Q3:目黒区保健所の検査では何が分かった?
A3:店舗側の2023年12月19日の公表によると、食品従事者の検体、疑いのある購入者7人の検体、マフィン15検体から食中毒菌・ウイルスは検出されなかった。
Q4:CLASS Iなのに食中毒と認定されなかったのはなぜ?
A4:CLASS Iはリコールにおける健康被害リスクの分類であり、食中毒の確定診断ではない。検査で原因菌が検出されず、体調不良と食品との因果関係を断定できなかったため、食中毒とは認定されなかった。
Q5:Honey×Honey xoxoは2026年現在も営業している?
A5:営業していない。店舗は2023年11月21日に閉業を公表し、営業再開の予定はないと説明している。2026年11月現在も確認できる公式案内に営業再開の発表はない。
Q6:マフィンの返金は購入証明が必要だった?
A6:必要だった。店舗の2023年11月21日の案内では、警察からの指導により、購入したことを証憑などで確認できる人に返金対象を限定すると説明していた。
Q7:デスマフィンという名称は正式な事件名?
A7:正式名称ではない。SNS上で広がった俗称であり、行政機関が付けた事件名や食中毒の医学的な診断名ではない。
まとめ:マフィン食中毒Twitter騒動の真相と2026年現在
2023年のデザインフェスタvol.58で発生したマフィン騒動は、購入者による糸引きや異臭の報告がX(旧Twitter)で広がり、厚生労働省によるCLASS Iのリコール、目黒区保健所の調査へと発展した食品衛生問題だった。
調査では、疑いのある購入者7人や食品15検体などから食中毒菌・ウイルスが検出されず、食中毒とは断定されなかった。そのため、店舗への行政処分も見送られた。一方、店舗側は食品衛生に関する知識や対策が不十分だったと反省を表明し、2023年11月に閉業している。
2026年11月現在、Honey×Honey xoxoは営業再開の予定がないとする公式案内を掲載している。返金についても、当時は購入証明を条件とする方針が示されていた。
この騒動を理解するうえで大切なのは、SNS上の被害報告、食品リコールの危険度分類、保健所による検査結果を混同しないことだ。食中毒と断定されなかったからといって、食品の安全性に問題がなかったと結論づけることもできない。
食品を扱う事業者には、製造から保存、販売まで一貫した衛生管理が求められる。そして消費者には、異常を感じた食品を口にせず、公的機関の発表と信頼できる情報を確認する姿勢が求められる。マフィン騒動は、その両方の重要性を改めて示した出来事だった。
主な根拠資料: 目黒区の公式発表、Honey×Honey xoxoの公式対策サイト、厚生労働省の食品リコール制度資料、J-CASTニュース、弁護士ドットコムニュース、ねとらぼの当時の報道。