- 廃止は未決定: 2025年の年金制度改正法には第三号被保険者制度の在り方を検討する規定が盛り込まれたが、廃止そのものは決まっていない。
- 2026年に本格的な検討が始動: 厚生労働省は9月4日に専門の検討会を開催し、アンケートとヒアリングによる実態調査を進めている。
- 106万円の壁は2026年10月に撤廃: 一方、130万円の扶養基準は残っており、今後の適用拡大と制度見直しが注目される。
【2026年最新】第三号被保険者廃止は決定した?いつから変わるのか

最初に、最も気になる廃止の決定状況を整理したい。
2026年11月現在、第三号被保険者制度の廃止を定めた法律は成立していない。廃止日や経過措置、専業主婦に対する新たな保険料負担の方法も確定していない。
一方、制度の見直しに向けた政府の動きは具体化している。2025年6月に成立した年金制度改正法では、第三号被保険者制度の在り方について国民的な議論が必要との認識が示され、実態調査と制度の検討を行うことが法律の附則に盛り込まれた。
つまり、現在は「廃止決定後の準備期間」ではなく、制度を維持するのか、縮小するのか、抜本的に見直すのかを検討する段階にある。
2025年年金制度改正法で何が決まったのか
2025年5月16日、政府は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を国会に提出した。
衆議院での修正を経て、同年6月13日に成立。6月20日に公布された。
この改正法の目的は、働き方や男女の違いに左右されにくく、家族構成やライフスタイルの多様化に対応した年金制度を構築することにある。
第三号被保険者制度については、法律の附則第二条の検討規定が重要だ。
政府は、第三号被保険者の在り方について国民的な議論が必要との認識の下、制度の議論に役立つ実態調査研究を行い、その在り方を検討することとされた。
ここで注意したいのは、法律が定めたのはあくまで調査と検討であることだ。
「第三号被保険者制度を廃止する」と法律に明記されたわけではない。
第三号被保険者の廃止はいつから?
現時点で廃止時期は決まっていない。
2026年9月には厚生労働省の検討会が始動したものの、制度変更の具体的な施行日を決める段階には至っていない。
今後、実態調査の結果や検討会での議論を踏まえ、制度の課題や改革の方向性が整理される見通しだ。
厚生労働省の検討会では、2026年度中に課題を整理し、2027年度も引き続き検討する方針が示されている。
したがって、「2026年に第三号被保険者が一斉に廃止される」「2027年から専業主婦全員が国民年金保険料を払う」といった情報は、現段階の制度決定とは一致しない。
【制度の基本】第三号被保険者とは?専業主婦の年金が保障される仕組み
第三号被保険者制度を理解するには、国民年金の被保険者区分を知っておく必要がある。
日本の公的年金制度では、加入者を大きく第1号、第2号、第3号の3種類に分けている。
第1号・第2号・第3号被保険者の違い
第1号被保険者は、自営業者、農業従事者、学生、無職の人など、厚生年金に加入していない20歳以上60歳未満の人が中心だ。原則として国民年金保険料を自分で納付する。
第2号被保険者は、会社員や公務員など厚生年金に加入している人を指す。給与から厚生年金保険料が天引きされ、原則として勤務先と本人が保険料を折半する。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者だ。原則として年間収入130万円未満などの生計維持要件を満たす必要がある。
第3号被保険者は、自分で国民年金保険料を納付する必要がない。それでも、対象期間は保険料納付済み期間として扱われ、老齢基礎年金の計算に反映される。
第3号被保険者の保険料は誰が負担している?
ここは誤解が多い部分だ。
第3号被保険者の保険料は、配偶者の給与から本人分が直接天引きされているわけではない。
厚生年金制度に加入する被保険者全体の保険料拠出によって、第3号被保険者の基礎年金に必要な費用を賄う仕組みになっている。
厚生労働省の制度説明でも、第3号被保険者本人に独自の保険料負担を求めず、被用者年金制度全体で費用を負担する仕組みとして整理されている。
そのため、本人の保険料負担がないことだけを見て、配偶者が納めた保険料だけで本人の年金が成立していると理解するのは正確ではない。
なぜ1985年に制度が導入されたのか
第三号被保険者制度が創設されたのは、1985年の年金制度改正だ。
当時の年金制度では、会社員の夫と専業主婦の妻を一つの世帯として捉える考え方が強かった。
被用者の扶養配偶者は国民年金への加入が任意だったため、加入していない場合には、離婚したときや障害を負ったときに自分名義の年金保障が不十分になる問題があった。
そこで、基礎年金制度の導入とともに、会社員などに扶養される配偶者も国民年金の強制加入対象とし、本人名義の基礎年金を確保する仕組みが作られた。
当初の制度目的は、専業主婦を優遇することだけではなく、女性自身の年金権を確立することだったのである。
【廃止議論の背景】第三号被保険者制度が見直される3つの理由
第三号被保険者制度の見直しが長年議論されてきた背景には、制度創設時と現在の社会構造の違いがある。
理由1:共働き世帯の増加と保険料負担の公平性
1985年の制度創設時と比較すると、女性の就業率は上昇し、共働き世帯も増加した。
その結果、夫婦の一方が働いて配偶者を扶養する世帯と、夫婦双方が厚生年金に加入する世帯との間で、保険料負担の公平性が議論されるようになった。
特に指摘されるのが、第3号被保険者は自分で保険料を納めなくても基礎年金を受け取れる一方、第1号被保険者は自ら保険料を納める必要があるという違いだ。
単身者や共働き世帯から見れば、世帯構成によって負担の仕組みが異なることに疑問が生じる。
ただし、世帯単位で比較すると、夫婦の標準報酬の合計が同じ場合には、保険料負担と老齢年金給付が同額になるという考え方もある。
公平性をどの単位で評価するかによって、制度への見方が変わる点も議論を難しくしている。
理由2:年収の壁による就業調整
第三号被保険者制度と密接に関係しているのが、年収の壁だ。
扶養の範囲内で働くパート従業員の中には、社会保険料の負担を避けるために勤務時間を調整する人がいる。
これが人手不足の企業にとっても課題となってきた。
特に注目されてきたのが、次の2つの基準だ。
- 106万円の壁: 短時間労働者の社会保険加入に関係していた月額8万8,000円の賃金要件。
- 130万円の壁: 配偶者の社会保険上の扶養に入るための年間収入基準。
2025年の年金制度改正法では、こうした就業調整を減らすため、被用者保険の適用拡大が進められた。
理由3:女性の働き方と家族構成の多様化
現在の第3号被保険者には、さまざまな事情を抱える人がいる。
短時間のパート勤務をしている人だけではない。
育児のために仕事を離れている人、介護を担っている人、健康上の理由で働けない人、就業を希望していても仕事を見つけられない人など、背景は一様ではない。
そのため、単純に「働いていない配偶者は保険料を払うべき」という議論だけでは、制度の実態を捉えきれない。
制度の縮小や廃止を検討する場合にも、育児・介護・健康上の事情をどのように保障するかが重要な論点となる。
【経緯と最新データ】2026年の検討会・実態調査で何が分かった?
2026年の大きな動きは、厚生労働省が専門の検討会を立ち上げ、第三号被保険者の実態を詳しく調べ始めたことだ。
第三号被保険者制度の見直しの経緯
これまでの主な動きを整理すると、次のようになる。
| 時期 | 関係する制度・組織 | 主な動きと意味 |
|---|---|---|
| 1985年 | 年金制度改正 | 第三号被保険者制度を創設。女性の年金権を確立 |
| 2002年 | 社会保障審議会年金部会 | 制度の廃止・見直しに関する論点を整理 |
| 2015年 | 社会保障審議会年金部会 | 第三号被保険者の縮小を視野に、被用者保険の適用拡大を進める方向性を議論 |
| 2025年6月13日 | 2025年年金制度改正法 | 制度の在り方に関する調査研究と検討を附則に規定 |
| 2026年9月4日 | 厚生労働省 | 国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会の第1回を開催 |
| 2026年10月 | 被用者保険の適用拡大 | 月額8万8,000円の賃金要件を撤廃 |
| 2026年度末まで | 実態調査・検討会 | 調査結果の取りまとめと課題整理を予定 |
| 2027年度 | 厚生労働省 | それまでの議論を踏まえ、さらに検討する方針 |
この流れを見ると、2025年の法改正が制度見直しの出発点となり、2026年に実態把握と専門的な議論が具体化したことが分かる。
国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会とは?
厚生労働省が2026年9月4日に第1回を開催した検討会だ。
議題は、主に次の3つだった。
1. 座長の選出
2. 第三号被保険者制度を巡る現状の確認
3. 第三号被保険者等に関する実態調査
検討会では、菊池馨実座長の下で、制度の歴史や現在の加入状況、女性の就業状況、被用者保険の適用拡大などが説明された。
厚生労働省が示した資料には、制度をめぐる実態について興味深い数字もある。
- 夫婦双方が第2号被保険者である世帯が48%。
- 第2号被保険者と第3号被保険者の組み合わせは38%。
- 第3号被保険者の5割以上が就労している。
- 就労している第3号被保険者の8割以上がパートとして働いている。
これらの数字が示しているのは、第三号被保険者が必ずしも専業主婦だけで構成されているわけではないということだ。
2026年の第三号被保険者実態調査の内容
今回の実態調査は、大きく分けてアンケート調査とヒアリング調査の2種類で構成される。
アンケート調査
厚生労働省は、独立行政法人労働政策研究・研修機構に研究を要請し、ウェブアンケートを実施する計画を示した。
調査対象は、学生を除く20歳から59歳までの男女で、年収260万円以下の人を中心とした約2万人規模だ。
内訳として予定されているのは次の通り。
- 第1号被保険者:約5,000人
- 第2号被保険者:約5,000人
- 第3号被保険者:約9,000人
加えて、第3号から第2号に転換した人を第2号の内数として約1,000人確保する計画だ。
調査では、年齢や収入だけでなく、世帯構成、就業状況、働きたくても働けない理由、制度に対する認識などを確認する。
ヒアリング調査
アンケートでは把握しきれない生活実態や当事者の考えを聞き取るため、約70人を対象としたオンラインインタビューも予定されている。
内訳は、第3号被保険者50人、第2号被保険者10人、第1号被保険者10人。
1人当たり約60分を予定し、育児や介護、就業状況、制度への理解、年金に対する認識などを聞き取る。
特に、第3号から第2号に移行した人の経験は、制度変更後の働き方を考えるうえで重要な材料になる。
なお、これらは調査の設計・実施計画であり、約2万人のアンケート結果がすでに公表されたという意味ではない。結果の取りまとめは2026年度中を予定している。
【専業主婦・扶養内パートへの影響】廃止されたら保険料はいくらになる?
第三号被保険者制度の見直しで、最も影響を受ける可能性があるのは、現在扶養に入っている専業主婦やパート勤務の人だ。
ただし、実際の負担額は制度変更の内容によって変わる。
第2号被保険者に変更される場合
勤務先の社会保険加入要件を満たせば、第3号から第2号被保険者に変更される。
この場合、本人は厚生年金保険料と健康保険料を負担することになる。
一方、保険料は原則として勤務先と本人が折半する。
将来は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取れるようになるため、長期的には年金額の増加につながる可能性がある。
また、健康保険の傷病手当金など、保障面でのメリットもある。
つまり、目先の手取り額だけでなく、将来の年金や保障を含めて考える必要がある。
第1号被保険者に変更される場合
勤務先の社会保険に加入できず、配偶者の扶養からも外れる場合には、第1号被保険者になる可能性がある。
この場合、原則として国民年金保険料を自分で納付する必要がある。
加えて、健康保険についても、勤務先の健康保険や別の制度に加入しない場合は、国民健康保険などへの加入が必要になる。
第2号への移行と違い、国民年金保険料は本人が全額負担するため、家計への影響は小さくない。
ただし、所得などの条件を満たせば、国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用できる場合がある。
106万円の壁は2026年10月に撤廃された
ここは2026年の重要な変更点だ。
2025年の年金制度改正法に基づき、2026年10月に短時間労働者の月額8万8,000円以上という賃金要件が撤廃された。
厚生労働大臣も2026年9月29日の記者会見で、翌10月からの撤廃を説明している。
これにより、従来の106万円の壁として意識されていた賃金要件はなくなり、週の所定労働時間が20時間以上かどうかが加入判断の中心となった。
ただし、2026年11月時点では企業規模要件などが残っている。
企業規模要件は、次のスケジュールで段階的に縮小・撤廃される。
- 2027年10月:厚生年金の被保険者数36人以上の企業
- 2029年10月:同21人以上の企業
- 2032年10月:同11人以上の企業
- 2035年10月:企業規模要件を撤廃
週20時間以上などの条件を満たす短時間労働者について、段階的に加入対象を広げる仕組みだ。
130万円の壁はなくなったわけではない
106万円の壁が撤廃されたからといって、130万円の壁までなくなったわけではない。
130万円は、配偶者の社会保険上の扶養認定に関係する基準として残っている。
一時的な残業や人手不足による労働時間の延長などで年収が130万円以上になった場合には、事業主の証明を活用することで、原則として連続2回まで扶養認定を継続できる取り扱いもある。
また、勤務先の社会保険に加入する条件を満たす場合は、130万円未満に抑えることよりも、被用者保険への加入による保障や将来の年金額を考えることが重要になる。
専業主婦は今から何を準備すべき?
現時点では、第三号被保険者制度の廃止を前提に、急いで働き方を変える必要はない。
ただし、今後の制度変更に備えて、次の点を確認しておきたい。
- 自分の勤務先が社会保険の適用対象か。
- 週の所定労働時間が20時間以上か。
- 現在の年間収入と今後の収入見込みはいくらか。
- 配偶者の健康保険の扶養認定を受けているか。
- 育児や介護などで勤務時間を増やせない事情があるか。
特に重要なのは、年収だけで判断しないことだ。
保険料の負担だけを見て働き方を決めると、将来の年金額や健康保険の保障を十分に考慮できない可能性がある。
【プロの結論】制度変更で確認すべきなのは保険料だけではない
第三号被保険者制度の見直しを考える際には、次の3つの視点が欠かせない。
第一に、現在の家計への影響だ。保険料負担が発生した場合、毎月の手取り収入がどう変わるかを確認する必要がある。
第二に、老後の年金額だ。第2号被保険者になれば、厚生年金の加入期間や報酬に応じた年金が上乗せされる。短期的な負担増だけで損得を判断するのは適切ではない。
第三に、育児や介護などの事情だ。働く意思があっても、家庭の事情で十分な労働時間を確保できない人もいる。今後の制度設計では、こうした人たちへの配慮が大きな課題になる。
【よくある質問】第三号被保険者制度の廃止に関するFAQ
Q1:第三号被保険者制度は2026年に廃止されますか?
A1:廃止されていない。2025年の年金制度改正法で制度の在り方を検討する規定が設けられ、2026年9月に厚生労働省の検討会が始まった段階だ。廃止の決定や具体的な施行日は公表されていない。
Q2:第三号被保険者制度が廃止されたら専業主婦も年金保険料を払うのですか?
A2:将来の制度設計による。勤務先の社会保険に加入すれば第2号被保険者となり、保険料は勤務先と本人が原則折半する。加入対象外で扶養からも外れる場合は、第1号被保険者となり国民年金保険料を納める可能性がある。ただし、廃止後の具体的な負担方法は決まっていない。
Q3:106万円の壁と130万円の壁は両方なくなりますか?
A3:両者は別の制度上の基準だ。106万円の壁として意識されていた月額8万8,000円の賃金要件は2026年10月に撤廃された。一方、130万円の扶養認定基準は残っているため、今後も勤務先の社会保険加入条件と合わせて確認する必要がある。
まとめ:第三号被保険者廃止の行方と今後の判断基準
2026年11月現在、第三号被保険者制度の廃止は決定していない。
2025年6月に成立した年金制度改正法では、制度の在り方について実態調査と検討を行うことが規定された。加えて、2026年9月4日には厚生労働省の専門検討会が始まり、アンケート調査や当事者へのヒアリングが進められている。
注目すべきなのは、制度の見直しが単なる保険料負担の問題ではなく、女性の就業機会、共働き世帯との公平性、育児・介護の支援、老後の年金保障など、幅広い課題に関わっている点だ。
今後の大きな節目は、2026年度中に予定されている実態調査の取りまとめと課題整理、そして2027年度の継続的な検討となる。
専業主婦や扶養内パートで働く人は、現時点で廃止を前提に行動する必要はない。ただし、106万円の賃金要件が撤廃されたことや、企業規模要件が2035年までに段階的に撤廃されることは、すでに進んでいる制度変更だ。
本当に注目すべきなのは、第三号被保険者制度がいつ廃止されるかだけではない。誰が保険料を負担し、育児や介護で働けない人をどう支え、将来の年金をどのように保障する制度へ変わるのかという点である。
今後は厚生労働省の検討会の議事録や実態調査の公表内容を確認しながら、自分の加入区分と家計への影響を把握しておくことが大切だ。
主な公的根拠資料: 厚生労働省の年金制度改正法、検討会資料・議事録、年金制度の仕組みと考え方、年収の壁への対応資料。