「2025年7月に日本を襲う大災難」。漫画家・たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』をきっかけに広まった地震の7月予言は、2026年11月現在も検索され続けている。2025年7月5日に発生したトカラ列島近海のM5.4の地震、そして2026年7月28日に発生した熊本県熊本地方のM7.1・最大震度7の地震。この2つの出来事が、予言の的中を裏付けるものなのかに関心が集まっている。
実際の公的記録を照合すると、2025年7月の予言と2026年の熊本地震は、発生時期も場所も異なる別の出来事である。また、話題になった「7月5日午前4時18分」という時刻には、夢を見た日時と災害の発生日時を取り違えた経緯がある。飛鳥新社の公式説明、気象庁の地震記録、地震調査研究推進本部の評価をもとに、予言の内容と実際の地震を検証する。
【予言の原点】たつき諒『私が見た未来 完全版』に書かれた2025年7月の大災難とは?

地震の7月予言を理解するには、まず漫画家・たつき諒氏の著書『私が見た未来 完全版』に記された内容を整理する必要がある。
同書は2021年10月1日に飛鳥新社から刊行されたA5判216ページの作品である。1999年に刊行された漫画『私が見た未来』を復刻し、作者が記録していた夢日記や新たな夢の解説を加えた内容となっている。
出版社の商品紹介では、作品の大きなテーマとして「本当の大災難は2025年7月にやってくる」という記述が紹介されている。また、太平洋周辺に関係する大津波の夢や、その後に訪れる世界についても解説されている。
この記述が広く知られるようになり、2025年7月には日本や周辺地域で大規模な地震・津波が発生するのではないかという不安が広がった。
「7月5日午前4時18分」は災害の発生日時ではない
予言をめぐる情報の中でも、とりわけ大きな誤解を生んだのが「2025年7月5日午前4時18分」という日時である。
飛鳥新社は2025年4月19日、公式サイトで『私が見た未来 完全版』に関する説明を公表した。その内容によると、夢日記に記録されていたのは2021年7月5日午前4時18分に夢を見たという事実である。
つまり、2025年7月5日午前4時18分に大災害が発生すると、たつき氏が著書で予告していたわけではない。
映画『2025年7月5日午前4時18分』などのタイトルや、SNSでの情報拡散によって、夢を見た日時と災害が起きるとされた時期が混同されたことが、誤解の大きな原因となった。
出版社は同じ発表の中で、当該映画の製作・宣伝には関与しておらず、著者も出版社も映画の具体的な日時を予言したわけではないと説明している。
1999年の『私が見た未来』と東日本大震災の関係
たつき諒氏が注目を集めるきっかけとなったのは、1999年に刊行された初期作品の表紙に「大災害は2011年3月」と記されていたことだ。
2011年3月11日に東日本大震災が発生したことで、作品は予言漫画として大きな注目を浴びた。
ただし、過去の出来事と漫画の記述が重なったことだけで、夢によって未来の地震を科学的に予測できると証明されたわけではない。過去の記述と実際の災害の一致を評価する場合も、発生場所、災害の種類、規模、予測時期などを個別に確認する必要がある。
【2025年7月5日の真相】トカラ列島近海M5.4の地震は予言の的中だったのか
2025年7月5日、鹿児島県のトカラ列島近海で実際に地震が発生した。
気象庁の発表によると、地震の発生時刻は2025年7月5日午前6時29分。マグニチュードはM5.4、震源の深さは19kmで、鹿児島県十島村では最大震度5強を観測した。
予言の話題が広がっていた時期と重なったため、この地震は大きな関心を集めた。特に7月5日という日付が一致していたことから、予言が現実になったのではないかと受け止める人もいた。
気象庁が発表した地震の実際の規模
重要なのは、実際に発生した地震の規模と被害状況である。
気象庁の2025年7月5日付発表では、トカラ列島近海の地震について、最大震度5強、マグニチュード5.4と記録されている。また、同地震による津波の心配はないとされた。
当時はトカラ列島近海で複数の地震が続いており、地域の住民にとって警戒が必要な状況だった。気象庁は揺れの強かった地域に対し、今後の地震活動や降雨による土砂災害などへの注意を呼びかけた。
しかし、この地震を「予言された太平洋規模の大災難」や「巨大津波の発生」と同一視することはできない。発生場所や規模、津波の有無という重要な条件が異なるからだ。
7月5日の4時18分と6時29分を混同しない
もう一つ確認したいのが発生時刻である。
夢日記に記録された午前4時18分は2021年の夢を見た時刻であり、2025年の地震の発生予定時刻ではない。実際の地震は午前6時29分に発生している。
したがって、「午前4時18分に地震が起きた」という情報は正確ではない。一方で、7月5日に実際の地震が発生したという日付の一致は事実である。
この日付の一致と、予言全体が的中したかどうかは、分けて考える必要がある。
【公的記録で徹底比較】2025年トカラ地震と2026年熊本地震の違い
2025年のトカラ列島近海の地震と、2026年7月28日の熊本県熊本地方の地震は、どちらも7月に発生した。しかし、地震の規模や発生場所、予言との時間的な関係には明確な違いがある。
以下は、気象庁と地震調査研究推進本部などの公的記録に基づく比較である。
| 比較項目 | 2025年トカラ列島近海の地震 | 2026年熊本県熊本地方の地震 |
|---|---|---|
| 発生日 | 2025年7月5日 | 2026年7月28日 |
| 発生時刻 | 午前6時29分 | 午後4時27分 |
| 震源地 | トカラ列島近海 | 熊本県熊本地方 |
| マグニチュード | M5.4 | M7.1 |
| 震源の深さ | 19km | 16km |
| 最大震度 | 震度5強 | 震度7 |
| 主な観測地域 | 鹿児島県十島村 | 熊本県宇城市・氷川町 |
| 津波 | 津波の心配なし | 別途、気象庁の津波情報を確認する必要がある地震 |
| 予言との時期の関係 | 予言された2025年7月と同じ月 | 予言された時期の翌年 |
この比較で特に重要なのは、2026年の熊本地震がM7.1だったという事実と、2025年7月の予言が的中したかどうかは別問題だという点である。
マグニチュードは地震そのものの規模を表し、震度は特定の場所で実際に観測された揺れの強さを表す。M5.4とM7.1では地震の規模に大きな違いがあるが、震度も震源の深さや地盤などによって変化する。
単に「7月に大きな地震が起きた」という共通点だけで、両方を一つの予言の的中事例として扱うことはできない。
【2026年7月28日の熊本M7.1】最大震度7の地震は7月予言の続きなのか
2026年7月28日午後4時27分、熊本県熊本地方でマグニチュード7.1の地震が発生した。
気象庁の発表によると、震源の深さは16km。熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測し、北陸地方から九州地方にかけて広い範囲で揺れが観測された。
気象庁は、この地震とその後に続いた一連の地震活動について「令和8年熊本地震」と命名している。
2026年の熊本地震は実際に起きた重大災害
今回の熊本地震は、単なる小規模な揺れではない。最大震度7という極めて強い揺れが観測され、建物やインフラなどに大きな影響を及ぼした。
気象庁の2026年8月10日付の月間地震活動報告では、7月28日のM7.1の地震によって最大震度7を観測し、8月9日午前10時現在、消防庁集計で死者39人などの被害が発生したと報告されている。
また、地震調査研究推進本部が公表した8月12日時点の評価資料では、地震活動が依然として活発な状態にあり、7月28日以降、最大震度1以上を観測した地震が多数発生したことが示されている。
こうした被害と観測記録は、予言とは関係なく、熊本地震そのものが重大な災害であったことを示している。
2016年の熊本地震との違いにも注意
熊本県では2016年にも大きな地震が発生し、最大震度7を観測した。2026年の地震も最大震度7だったため、過去の熊本地震と混同されることがある。
しかし、2016年の熊本地震と2026年の令和8年熊本地震は、それぞれ異なる時期に発生した地震活動である。2026年の地震を2016年の再発と決めつけたり、たつき諒氏の2025年7月の記述と直接結びつけたりするのは適切ではない。
なぜ2026年の熊本地震は予言の的中といえないのか
最大の理由は、予言として広まった著書の記述が2025年7月を対象としていることだ。
2026年7月の熊本地震は、発生年が1年異なる。加えて、トカラ列島近海と熊本県熊本地方では震源地も異なる。
もし2026年の熊本地震を2025年の予言の的中として扱うなら、予測対象の年を変更し、発生場所についても別の地域に広げる必要がある。それは当初の予言条件をそのまま検証した結果とはいえない。
2026年の地震が実際に起きたことは重大な事実だが、それによって2025年7月の予言が後から証明されたことにはならない。
【後付け解釈を検証】7月の大災害説と地震予言が的中したように見える理由
地震予言の検証で見落とされやすいのが、予言の条件が出来事の後から広げられていないかという問題である。
今回のケースでは、「2025年7月の大災難」という記述が、2025年7月5日の地震、さらに2026年7月28日の熊本地震と関連づけられている。
しかし、予言の的中を判断するなら、発生時期だけでなく、場所、規模、災害の種類も含めて比較しなければならない。
「7月」という共通点だけでは的中の証明にならない
日本では年間を通じて地震が発生している。気象庁の説明によると、日本では震度1以上の有感地震が概ね年間2,000回程度あり、平均すると1日約5回発生している。
そのため、特定の月を指定した場合、その期間中に何らかの地震が発生する可能性は決して低くない。
例えば「7月に日本で地震が起こる」という条件なら、発生する地震が小規模でも条件に合致してしまう。これでは、将来の大災害を正確に予測したことにはならない。
後付け解釈を見抜くための4つの判断基準
地震予言を検証する際は、次の4項目を確認すると判断しやすい。
- 日時:予言された期間と実際の発生日が一致しているか。
- 場所:予言された地域と実際の震源地が一致しているか。
- 規模:想定された大災害と実際のマグニチュードや被害規模が一致しているか。
- 災害の種類:地震なのか、津波なのか、火山噴火なのかという現象が一致しているか。
この基準を2025年7月の予言に当てはめると、2025年7月5日のトカラ地震には日付の共通点がある一方、M5.4の地震であり、津波の心配もないと発表された。大津波を伴う大災難というイメージとは一致しない。
2026年7月の熊本地震についても、規模の大きな地震だったことは事実だが、予言された2025年7月とは発生年が違う。
こうした条件の変更によって、後から発生した別の地震まで予言の対象に含めることは、検証の基準を曖昧にする。
【気象庁の科学的見解】地震予知は可能なのか?2026年現在の研究と限界
地震の7月予言を考えるうえで、最も重要なのが現在の地震学で何が分かっていて、何が分かっていないのかという問題である。
気象庁は、地震予知について、発生する時期・場所・規模の3要素を精度よく限定して予測することと説明している。
例えば「今後1週間以内に東京直下でM6~7の地震が発生する」といった具体的な予測を、高い確度で事前に行うことは、現在の科学的知見では難しいとしている。
地震予知と地震活動の長期評価は別物
ここで区別したいのが、地震予知と長期評価である。
地震予知は、地震が発生する前に具体的な日時・場所・規模を予測することを指す。一方、長期評価は過去の地震活動、活断層の調査、プレートの動きなどの研究成果をもとに、一定期間内に地震が発生する確率や規模を評価するものだ。
地震調査研究推進本部は、現在の科学技術では大きな地震に限っても一般的な地震予知は困難としている。その一方で、南海トラフ沿いなどのプレート境界で観測されるゆっくりすべりなどから、地震発生の可能性が平常時より相対的に高まったと評価できる場合があるとしている。
つまり、地震の発生確率や活動状況を評価することは可能でも、特定の日の午前4時18分に大地震が起きると断定することとは、科学的な意味が大きく異なる。
2026年の地震活動評価から分かること
2026年の熊本地震についても、気象庁や地震調査研究推進本部は、観測データをもとに継続的な評価を行っている。
気象庁は地震発生直後、過去の同地域における地震活動を踏まえ、強い揺れを伴う地震が続発する可能性について注意を呼びかけた。
地震調査研究推進本部の評価では、熊本県熊本地方の地震活動が続いている状況や、震源域の広がりなどが分析されている。
このような評価は、観測された事実に基づいて危険性を判断し、防災に役立てるためのものである。夢や占いによる未来予測とは、情報の根拠も目的も異なる。
緊急地震速報も地震の発生前を予言するものではない
もう一つ誤解されやすいのが緊急地震速報である。
緊急地震速報は、地震が発生した後に観測された地震波を解析し、強い揺れが到達する前に警報を出す仕組みである。
そのため、地震が発生する何日も前に発生日を予測する技術ではない。震源に近い場所では警報が強い揺れに間に合わない場合もある。
現在の科学では、地震発生後の観測と情報伝達、長期的なリスク評価を組み合わせて被害を減らすことが、防災の中心となっている。
【地震の7月予言】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:たつき諒氏の地震予言は2025年7月5日午前4時18分に起きるという内容だった?
A1:違う。飛鳥新社の公式説明によると、午前4時18分は2021年7月5日に夢を見た時刻である。著書では大災難が起こる時期を2025年7月としているが、2025年7月5日午前4時18分を発災時刻として指定してはいない。
Q2:2025年7月5日のトカラ列島近海M5.4の地震は予言の的中?
A2:7月5日という日付は一致している。しかし、実際の地震は午前6時29分に発生したM5.4・最大震度5強の地震であり、気象庁は津波の心配はないと発表した。大津波を伴う大災難の予言全体が的中したと判断する根拠にはならない。
Q3:2026年7月28日の熊本地震M7.1は予言が当たった証拠?
A3:そうは判断できない。2026年7月28日の熊本地震はM7.1・最大震度7を観測した重大な災害だが、予言の対象とされたのは2025年7月である。発生年も場所も異なるため、同じ予言の的中事例として扱うことはできない。
Q4:地震の発生日や場所を科学的に予測することはできる?
A4:現在の科学では、特定の日付・場所・規模を高い精度で事前に予測することは困難とされている。ただし、過去の地震活動や活断層、プレートの状態などから、一定期間内の発生確率や相対的な危険性を評価する研究は進んでいる。
Q5:2026年7月以降も7月の地震予言を警戒する必要はある?
A5:予言された日付に過度にとらわれる必要はないが、日本では年間を通して地震が発生する。家具の固定、非常用持ち出し袋の準備、避難場所の確認、気象庁や自治体の防災情報の確認など、日常的な備えを続けることが大切だ。
まとめ:地震の7月予言より公的データと日常の防災を重視しよう
2026年11月現在、たつき諒氏の『私が見た未来 完全版』をめぐる地震の7月予言について、公的記録から確認できる事実は明確になっている。
2025年7月5日にはトカラ列島近海でM5.4・最大震度5強の地震が発生した。2026年7月28日には熊本県熊本地方でM7.1・最大震度7の地震が発生した。いずれも実際に起きた地震だが、2026年の熊本地震は2025年7月を対象とした予言とは時期も場所も異なる。
また、「7月5日午前4時18分」は2021年に夢を見た時刻であり、災害が起きると予告された時刻ではない。この点は出版社自身が公式に説明している。
【プロの結論】
今回の検証で見えてくるのは、予言の的中を判断するには、日付だけでなく場所・規模・災害の種類まで照合する必要があるということだ。2025年のトカラ地震との日付の一致だけで大災難の予言全体を的中と評価することはできず、2026年の熊本地震を後から結びつけることも科学的な検証にはならない。
地震は予言された日だけに起きるものではない。いつ、どこで発生してもおかしくない自然現象だからこそ、気象庁の地震情報、地震調査研究推進本部の長期評価、自治体のハザードマップなど、根拠のある情報を日頃から確認しておきたい。
恐怖をあおる日付の予言に振り回されるのではなく、科学的な情報を正しく理解し、いつ起きても命を守れる準備を整えること。それが、2026年以降の地震への最も現実的な向き合い方である。
記事の主要な根拠資料: 飛鳥新社の書籍紹介・2025年4月19日付公式説明、気象庁の2025年7月5日地震発表、2026年7月28日熊本地震発表、2026年8月の月間地震活動報告、地震調査研究推進本部の地震予知に関するFAQおよび熊本地震評価資料。