2025年の警察官・警察職員の懲戒処分理由で最も多かったのは「異性関係」だった。104人に上り、全体337人の約31%を占める。
2位は「窃盗・詐欺・横領等」の63人、3位は「職務放棄・懈怠等」の44人。上位3分類だけで211人となり、全体の約63%に達した。
1位:異性関係(104人)
異性関係には、盗撮、セクハラ、不適切な交際などが含まれる。
警察官は犯罪被害者や相談者など、一般市民の個人情報に接する機会が多い。立場を利用した不適切な接触や、相手の同意を欠く性的な行為は、個人の権利を侵害するだけでなく、警察への信頼を根本から損なう。
2025年は前年より26人増加しており、最多分類であることに加えて増加幅も大きい。
ただし、104人全員が盗撮や性犯罪で逮捕されたわけではない。異性関係という行政上の分類には複数の行為が含まれるため、数字をそのまま性犯罪の発生人数として扱うことはできない。
2026年上半期も43人で最多となっており、この分野の問題は解消されていない。
2位:窃盗・詐欺・横領等(63人)
2位は、窃盗、詐欺、横領などの財産犯に関する問題だ。
2025年は63人で、前年より11人増加した。
特に注目したいのは、処分の重さである。
警察庁の統計によると、63人の内訳は次のとおり。
- 免職:20人
- 停職:20人
- 減給:23人
懲戒処分を受けた63人のうち20人が免職となっている。職務上の立場や警察官としての信用を失うような行為は、厳しい処分につながっている。
警察官には犯罪を捜査し、被害を防ぐ役割がある。その立場にある人物が窃盗や横領などに関与すれば、市民から見れば取り締まる側と取り締まられる側の境界が崩れることになる。
3位:職務放棄・懈怠等(44人)
2025年に特に増加が目立ったのが、職務放棄・懈怠等だ。
前年の7人から44人へと37人増加した。警察庁の資料でも、増加幅が大きい分類の一つとなっている。
代表例として挙げられるのが、兵庫県警で発覚した交番勤務中のスマートフォンゲーム問題だ。
交番は地域住民が事件や事故の相談を持ち込む身近な警察施設である。勤務中の職務放棄は、実際に重大事件が発生したかどうかだけで評価できるものではない。
必要なときに警察官が対応できる状態を維持すること自体が、地域警察の基本的な責務だからだ。
4位以下にも見逃せない問題がある
2025年のその他の主な処分理由は次のとおり。
- 交通事故・違反:40人
- その他法令違反等:31人
- その他の勤務規律違反等:21人
- 公文書偽造・毀棄、証拠隠滅等:11人
- 職権濫用・収賄供応等:10人
- 暴行・傷害等:9人
特に公文書偽造や証拠隠滅は、刑事事件の捜査そのものの信頼性に関係する。
また、職権濫用や収賄供応は、警察官が持つ権限を不適切に利用する問題だ。単なる勤務態度の問題とは性質が異なり、組織としての権限管理が問われる。
【2026年最新】上半期155人の懲戒処分で見えた新たな問題

2026年11月3日時点で、警察庁が公表した最新の懲戒処分統計は、2026年上半期(1~6月)の集計である。
全国の処分者数は155人。前年同期より1人増加した。
国家公安委員会委員長は2026年7月23日の記者会見で、上半期の特徴について、私行上の事案が減少する一方、業務上の事案が増加していると説明した。
2026年上半期に増加が目立つ業務上の問題
2026年上半期の主な処分理由を詳しく見ると、次の特徴がある。
- 異性関係:43人
- 交通事故・違反:23人
- 窃盗・詐欺・横領等:21人
- 職務放棄・懈怠等:15人
- 被疑者事故等:10人
- 公文書偽造・毀棄、証拠隠滅等:11人
業務上の事案は57人で、前年同期から18人増加した。
なかでも注目すべきは、被疑者事故等が10人で前年同期より9人増えたこと、公文書偽造・証拠隠滅等が11人で4人増えたことだ。
単純な私生活上の規律違反だけでなく、警察活動の現場で起きる問題が増加している。
2026年の逮捕者数は23人
警察官・警察職員の逮捕者数も重要な指標だ。
| 集計期間 | 逮捕者数 |
|---|---|
| 2024年通年 | 57人 |
| 2025年通年 | 64人 |
| 2025年上半期 | 27人 |
| 2026年上半期 | 23人 |
2025年は前年から7人増加した。一方、2026年上半期は前年同期より4人減少している。
ただし、逮捕者数と懲戒処分者数は同じ指標ではない。
懲戒処分には、刑事事件として逮捕されていない勤務規律違反や不適切行為も含まれる。反対に、逮捕されたことだけで懲戒処分の内容や確定時期が決まるわけでもない。
そのため、逮捕者数だけで警察組織全体の規律を評価することはできない。
【警察不祥事の組織的問題】なぜ不祥事は繰り返されるのか
2025年の統計と2026年上半期の状況を合わせて見ると、警察不祥事の問題は大きく3つに整理できる。
1. 上司による監督と内部チェックが機能していない
兵庫県警の交番でのゲーム問題では、複数の警察官が一定期間にわたり勤務中のゲームを繰り返していた。
神奈川県警のストーカー対応でも、相談を受けた後の情報共有や組織的な判断に問題があったと検証されている。
大川原化工機事件でも、警視庁の検証で幹部への報告や捜査指揮系統の機能不全が指摘された。
これらの事案に共通するのは、個人の行動だけでなく、問題を早期に発見して是正する仕組みが十分に働かなかった点だ。
警察組織では階級による指揮命令系統が明確に定められている。その仕組みは迅速な対応に役立つ一方、上司への報告が形式化したり、現場の問題が上層部に届かなかったりすれば、組織全体の判断を誤らせる危険がある。
2. 不祥事を個人の責任だけで終わらせてしまう
警察官が違法行為や規律違反をした場合、本人への懲戒処分は必要だ。
しかし、それだけでは再発防止として不十分なケースがある。
例えば、勤務中の職務放棄が複数人に広がった場合、本人だけでなく、勤務状況の確認や上司の監督が適切だったかを調べる必要がある。
捜査上の不適切行為であれば、証拠の保全、捜査方針の承認、上司への報告、第三者による検証まで確認しなければならない。
個人への処分と組織的な原因究明は、別々に進めるべきではない。
3. 被害者の訴えを組織全体で受け止める体制が必要
神奈川県警のストーカー事件は、被害相談への対応がいかに重大な結果につながり得るかを示した。
被害者から相談を受けた警察官が適切に対応していても、その情報が組織内で共有されなければ、必要な保護措置につながらない可能性がある。
再発防止には、次のような仕組みが欠かせない。
- 相談履歴の一元管理: 被害相談の内容や対応履歴を組織内で共有する。
- 危険性の継続的な評価: 一度相談を受けて終わりにせず、状況の変化を確認する。
- 上司の責任明確化: 重要な相談や捜査判断について、誰が確認・承認したのかを記録する。
- 内部通報制度の実効性: 同僚や部下が問題を指摘しても不利益を受けない環境を整える。
- 第三者による検証: 重大事案では、組織内部だけでなく外部の視点を取り入れる。
警察庁も2026年2月の国家公安委員会委員長記者会見で、2025年の処分者数が過去10年で最多となったことを重く受け止め、警察組織全体の規律の緩みを懸念する考えを示した。
再発防止策が研修や注意喚起だけにとどまらず、現場の管理体制や情報共有の改善につながっているかが今後の焦点となる。
【ランキングを見る際の注意点】人数が多い警察ほど不祥事が多いのか?
警察不祥事ランキングを読むとき、最も注意したいのが数字の意味である。
懲戒処分者数は不祥事の発生件数ではない
2025年の兵庫県警50人という数字は、懲戒処分を受けた警察官・警察職員の人数である。
50件の事件が起きたという意味ではない。
一つの事案で複数人が処分されることもあれば、一つの組織で異なる種類の不祥事が複数発生することもある。
警察組織の規模を考慮する必要がある
兵庫県警の50人と警視庁の30人を比較しても、職員数の違いを考慮しなければ、不祥事の発生率は判断できない。
公平な比較には、次の指標が必要だ。
- 職員1,000人当たりの懲戒処分者数
- 重大な法令違反による処分者数
- 業務上の違反と私行上の違反の割合
- 逮捕者数と懲戒処分者数の推移
- 同種事案の再発状況
特に、職員数を分母にした処分率は重要である。
ただし、職員数の基準年や集計対象をそろえずに計算すると、かえって誤った順位になる可能性がある。今回の都道府県別ランキングは実人数による順位であり、人口当たりや職員数当たりの不祥事率ランキングではない。
「懲戒処分」と「訓戒・注意」は区別する
もう一つの注意点が、処分の種類である。
警察内部の対応には、懲戒処分のほか、訓戒、注意などの措置がある。
例えば、2026年1月の大阪府警の捜査対象者暴行事件では、訓戒などを含む全体の処分対象者は35人だった一方、懲戒処分を受けたのは12人だった。
このように、報道で使われる「処分者」という表現が、正式な懲戒処分者を指すのか、訓戒などを含む広い意味なのかを確認することが大切だ。
ランキングを正しく読むための判断基準は、集計期間・処分の定義・対象人数・職員数の4点である。
【警察不祥事ランキング2026】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2025年に最も不祥事が多かった都道府県警はどこですか?
兵庫県警が50人で全国最多だった。次いで神奈川県警34人、警視庁30人、大阪府警26人、福岡県警18人の順となっている。これは懲戒処分者数による実人数のランキングであり、不祥事の発生率を示すものではない。
Q2:2025年の警察官・警察職員の懲戒処分者数は何人ですか?
警察庁の発表によると337人。前年の239人から98人増加し、過去10年間で最多となった。逮捕者は64人だった。
Q3:警察官の不祥事で最も多い理由は何ですか?
2025年は異性関係が104人で最多だった。盗撮、セクハラ、不適切交際などが含まれる。次いで窃盗・詐欺・横領等が63人、職務放棄・懈怠等が44人だった。
Q4:2026年の警察官の懲戒処分者数は何人ですか?
2026年上半期は155人。前年同期より1人多い。処分理由では異性関係が43人で最多となり、業務上の事案も57人に増加している。
Q5:2026年上半期に懲戒処分者が最も多かった警察はどこですか?
大阪府警が27人で最多だった。次いで神奈川県警が12人、警視庁と愛知県警がそれぞれ9人となっている。
Q6:警察官の逮捕者数も増加していますか?
2025年は64人で、前年の57人から7人増加した。2026年上半期は23人で、前年同期より4人減少している。懲戒処分者数と逮捕者数は異なる統計指標として見る必要がある。
【プロの結論】警察不祥事ランキングから見える本当の問題と今後の課題
2025年の警察不祥事ランキングで明らかになったのは、全国の警察官・警察職員337人という過去10年間で最多の懲戒処分者数だった。
都道府県別では兵庫県警が50人で最多となり、神奈川県警、警視庁、大阪府警と続いた。
処分理由では異性関係が104人で最も多く、窃盗・詐欺・横領等が63人、職務放棄・懈怠等が44人だった。
そして2026年上半期も155人が懲戒処分を受けており、業務上の事案は前年同期より18人増加している。
この結果から見えてくるのは、警察不祥事を単純に個人の倫理観の問題として片付けられないということだ。
警察は、犯罪を捜査する権限を持つと同時に、市民の生命や財産を守る責任を負う組織である。だからこそ、一般の組織以上に透明性の高い管理と検証が求められる。
今後、注目すべきなのは懲戒処分者数が減少するかどうかだけではない。
- 不祥事の発覚後、原因究明が十分に行われているか。
- 上司や幹部の監督責任が適切に問われているか。
- 被害相談や捜査情報が組織内で確実に共有されているか。
- 同じ種類の不祥事が繰り返されていないか。
- 再発防止策が現場で実際に機能しているか。
これらの点を継続的に確認することが、警察組織への信頼を取り戻すための判断基準になる。
警察不祥事ランキングの本当の意味は、ワースト順位を決めることではない。数字の背後にある組織の問題を見つけ、同じ被害や不祥事を二度と起こさない仕組みが整っているかを検証することにある。
2026年後半以降も、警察庁が公表する懲戒処分者数、都道府県別の状況、業務上の不祥事の推移を追う必要がある。