「押収(おうしゅう)」とは、刑事事件の捜査や裁判に必要な証拠物などを、警察・検察・裁判所が取得して確保する手続きです。ニュースで「警察がスマートフォンを押収した」「関係先から証拠品を押収した」と報じられることがありますが、押収されたからといって、その物の所有者が犯罪を犯したと決まるわけではありません。
押収には、令状に基づいて強制的に物を確保する「差押え」や、遺留品・任意提出された物を取得する「領置」などがあります。また、押収と没収は別の概念であり、事件が終わる前でも返還される場合があります。2026年11月現在の刑事訴訟法を踏まえ、令状の必要性、対象物、手続きの流れ、保管期間、還付請求までを具体的に解説します。
【基本知識】押収とは?読み方・意味・刑事訴訟法上の定義

押収の読み方は「おうしゅう」
押収の読み方は「おうしゅう」です。
「押」はおさえること、「収」は取り入れて保管することを意味します。法律上は、犯罪の証拠となる物や没収すべき物について、捜査機関や裁判所がその占有を取得・確保する処分を指します。
例えば、次のような場面で使われます。
- 警察が事件の証拠となるスマートフォンを押収する。
- 詐欺事件の捜査で関係書類や通帳を押収する。
- 薬物事件で薬物や関連する器具を押収する。
- 窃盗事件で盗品や犯行に使用された物を押収する。
押収の主な目的は、証拠の隠滅や改ざん、破棄を防ぎ、捜査や裁判で適切に利用できる状態を保つことです。
刑事訴訟法における押収の規定
押収については、刑事訴訟法第9章「押収、捜索等」に規定されています。
特に重要なのが、次の条文です。
- 第99条:裁判所による証拠物などの差押え。
- 第101条:遺留物や任意提出物の領置。
- 第106条:公判廷外での差押え・捜索に関する令状の原則。
- 第114条:押収目録の作成・交付。
- 第123条:押収物の還付・仮還付。
- 第218条:捜査機関による令状に基づく差押えなど。
- 第220条:逮捕に伴う無令状の差押え・捜索など。
- 第221条:捜査機関による領置。
- 第222条:裁判所に関する押収・捜索等の規定の捜査段階への準用。
ここで押さえたいのは、押収が単に物を取り上げる行為ではないという点です。法律上の根拠、対象物の特定、手続きの適法性、保管の必要性などが関係します。
押収されたら犯罪者という意味なのか
答えはいいえです。
押収は、物が事件に関連する証拠である可能性や、没収の対象となる可能性を踏まえて行われます。所有者本人が被疑者であるとは限りません。
例えば、家族が所有するパソコンや、会社が管理する書類が事件の証拠として押収される場合もあります。
したがって、「押収された」という報道だけで、所有者の犯罪関与や有罪を判断することはできません。
【違いを比較】押収・差押え・領置・没収・捜索は何が違う?
押収に関連する法律用語には、差押え、領置、没収、捜索があります。いずれも刑事事件で使われますが、それぞれの意味と目的は異なります。
押収と差押えの違い
押収は、証拠物などの占有を取得・確保する手続きを広く指す言葉です。一方、差押えは、その中でも相手の意思にかかわらず強制的に物を確保する処分を指します。
つまり、刑事手続きでは差押えは押収の一種と理解すると分かりやすいでしょう。
押収と領置の違い
領置は、被疑者や第三者が置き忘れた物、または所有者・所持者などが任意に提出した物を、捜査機関が取得して保管する手続きです。
刑事訴訟法第221条が根拠となります。
差押えのように強制的に占有を取得するのではなく、遺留や任意提出を前提とする点が大きな違いです。
押収と没収の違い
押収と没収は、特に混同しやすい言葉です。
押収は証拠などを確保するための手続きですが、没収は刑事裁判で科される付加刑の一つです。
刑法第19条では、犯罪行為を組成した物、犯罪行為に使用した物、犯罪によって生じた物や得た物などを、一定の条件の下で没収できると定めています。
押収された物が必ず没収されるわけではありません。押収された後、証拠としての必要性がなくなれば返還されることもあります。
押収と捜索の違い
捜索は、証拠物や人などを発見するために、身体・物・住居などを調べる手続きです。
押収は、発見した証拠物などを確保する手続きです。
例えば、警察が捜索差押許可状に基づいて自宅を調べ、事件に関係するパソコンを発見して持ち帰った場合、場所を調べる行為が捜索、パソコンを確保する行為が差押えに当たります。
5つの法律用語を一覧で比較
| 用語 | 意味・目的 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 押収 | 証拠物などを取得・確保すること | 差押えや領置を含む広い概念 |
| 差押え | 物の占有を強制的に取得すること | 原則として令状が必要 |
| 領置 | 遺留物や任意提出物を取得すること | 刑事訴訟法第221条が根拠 |
| 没収 | 一定の物を刑罰として国に帰属させること | 刑法第19条などが根拠 |
| 捜索 | 証拠物や人などを発見するために調べること | 差押えに先立って行われる場合がある |
この比較から分かるように、押収と没収は目的も法的性質も違います。また、捜索と差押えも同じ行為ではありません。
【令状の必要性】押収に令状は必要?令状なしでも違法にならないケース
押収に関して多くの人が疑問に感じるのが、警察が令状なしで物を持ち去ることは許されるのかという点です。
原則として、捜査機関が強制的に差押えを行う場合には、裁判官が発する令状が必要です。ただし、法律には一定の例外が設けられています。
原則は裁判官が発する令状が必要
日本国憲法第35条は、住居・書類・所持品について、侵入・捜索・押収を受けない権利を保障しています。
原則として、正当な理由に基づき、捜索する場所や押収する物を明示した令状がなければ、これらの権利を侵すことはできません。
刑事訴訟法第218条第1項も、検察官、検察事務官、司法警察職員が犯罪捜査に必要な差押えや捜索などを行う場合、裁判官の発する令状によることを定めています。
この仕組みは令状主義と呼ばれ、捜査機関による権限の濫用を防ぐための重要な制度です。
令状なしで押収できる主なケース
令状がないからといって、必ずしも違法な押収になるわけではありません。代表的な例は次のとおりです。
1.逮捕に伴う差押え
刑事訴訟法第220条では、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕に伴い、必要がある場合に逮捕の現場で差押え・捜索・検証を行うことを認めています。
この場合、同条第3項により別個の令状は必要ありません。ただし、逮捕との関連性や実施場所など、法律上の要件を満たす必要があります。
なお、緊急逮捕に伴う差押えについては、逮捕状が得られなかった場合に差押物を直ちに還付する規定もあります。
2.任意提出された物の領置
刑事訴訟法第221条では、所有者・所持者・保管者が任意に提出した物や、被疑者その他の者が遺留した物について、捜査機関が領置することを認めています。
任意提出の場合は、差押えとは異なり、強制的に占有を取得することを前提としていません。
3.遺留物の取得
事件現場などに残された物についても、刑事訴訟法第221条に基づく領置が可能です。
ただし、単に警察が物を見つけたというだけで、どのような物でも自由に持ち去れるという意味ではありません。遺留物に該当するかなど、具体的な事情が問題になります。
令状なしの押収が違法になる可能性は?
法律上認められた例外に該当せず、任意提出も成立していないのに、強制的に物を持ち去った場合は、違法な差押えとなる可能性があります。
判断に当たっては、次のような事情が重要です。
- 令状が必要な処分だったか。
- 令状に記載された場所や対象物の範囲内だったか。
- 逮捕に伴う差押えなどの例外要件を満たしていたか。
- 任意提出が本当に本人の自由意思によるものだったか。
- 押収の必要性や手続きに問題がなかったか。
特に、任意提出という形式が取られていても、実際には強い圧力によって提出を迫られた場合などは、任意性が争われることがあります。
令状のない押収を受けた場合、直ちに違法と断定するのではなく、どの条文を根拠として行われたのかを確認することが大切です。
【対象物と手続き】警察が押収できる物の一覧と押収までの流れ
押収の対象は、事件の内容や捜査の必要性によって異なります。物理的な証拠だけでなく、電子データや記録媒体なども対象になります。
押収対象物の具体例
代表的な押収対象物を整理すると、次のようになります。
- 電子機器:スマートフォン、パソコン、タブレット、外付けハードディスク。
- 記録媒体:USBメモリー、SDカード、CD、DVDなど。
- 書類:契約書、帳簿、領収書、伝票、手帳、メモ。
- 金銭・財産:現金、通帳、犯罪収益に関連する財産。
- 衣類・所持品:事件当時の衣服、かばん、靴など。
- 凶器・道具:刃物、工具、事件に使用された器具など。
- 車両・機械:事件に使用された自動車や関連機器など。
- 映像・音声資料:防犯カメラ映像、録音データ、保存された通信記録など。
ただし、これらがすべて自動的に押収されるわけではありません。事件との関連性、証拠としての必要性、法的な手続きなどが判断されます。
スマートフォンやパソコンも押収される理由
デジタル機器には、メッセージ、写真、位置情報、通信履歴、文書ファイルなど、事件の経緯を明らかにする情報が保存されている場合があります。
そのため、詐欺、横領、窃盗、薬物事件など、さまざまな事件で電子機器が証拠物として扱われます。
現行の刑事訴訟法では、電子計算機に接続された記録媒体から電磁的記録を複写して差し押さえる仕組みや、電磁的記録の提供を命じる制度も設けられています。
つまり、2026年現在の押収は、スマートフォンやパソコンという物理的な機器だけでなく、そこに保存されたデジタル情報の確保にも関係しています。
押収手続きの基本的な流れ
令状に基づく差押えの場合、一般的には次のような流れで進みます。
- 捜査上の必要性を判断する:事件との関連性がある証拠物や没収対象となる物を特定する。
- 令状を請求する:捜査機関が裁判官に差押えや捜索の令状を請求する。
- 令状が発付される:裁判官が必要性などを審査し、令状を発付する。
- 令状を執行する:対象となる場所などで、令状に基づく捜索や差押えを行う。
- 押収物を特定する:品名や数量などを記録し、適切に管理する。
- 押収目録を交付する:刑事訴訟法第114条に基づき、押収目録を所有者・所持者・保管者などに交付する。
- 証拠品を保管する:必要に応じて警察・検察などが保管し、捜査や裁判で利用する。
- 還付・処分を判断する:証拠としての必要性や没収の有無などに応じて、返還その他の処分を行う。
なお、領置の場合は令状請求・発付という段階を経ず、任意提出や遺留を根拠として取得することがあります。
また、押収目録は、どのような物が持ち去られたのかを確認する重要な書類です。受け取った場合は、品名や数量、記載内容を確認して保管しておくと、後の返還請求にも役立ちます。
【保管期間と返還】警察の押収品はいつ戻る?還付請求・返還手続き
押収された物の所有者にとって、最も気になるのが返還の時期です。
押収された物は、事件が終わるまで必ず返ってこないわけではありません。証拠として保管する必要がなくなれば、事件の終結前でも返還される可能性があります。
警察が押収品を保管する期間に決まりはある?
刑事訴訟法には、すべての押収品に共通する「30日間」「90日間」「1年間」といった一律の保管期限は定められていません。
基本的な判断基準は、その物を証拠として留置しておく必要があるかどうかです。
刑事訴訟法第123条第1項では、留置の必要がない押収物について、被告事件の終結を待たずに還付しなければならないと定めています。この規定は第222条第1項によって、捜査機関による押収にも準用されます。
保管期間が長くなる事情としては、次のようなものがあります。
- 証拠物の鑑定や解析が終わっていない。
- 事件の全容解明に必要な資料として保管されている。
- 共犯者や関連事件の捜査が続いている。
- 公判で証拠として使用する必要がある。
- 没収の対象となる可能性が残っている。
法務省の証拠品事務規程では、中止処分となった事件の証拠品について、公訴時効が完成するまで保管する取扱いも定められています。ただし、これは還付などの法定処分を妨げるものではありません。
押収物の還付請求とは?
還付とは、押収されている物を権利者などに返すことです。
刑事訴訟法第123条では、留置の必要がなくなった押収物について還付することを定めています。また、所有者・所持者・保管者・差出人などの請求によって、決定により仮に還付することも認められています。
返還を希望する場合には、単に「返してください」と申し出るだけでなく、対象物や権利関係を明らかにすることが大切です。
押収物の返還手続きの進め方
一般的な確認・申請の流れは次のとおりです。
- 押収した機関を確認する:警察署、検察庁、裁判所のどこが現在保管しているかを確認する。
- 事件の担当者に連絡する:捜査担当者や証拠品を管理する担当部署に返還を希望する旨を伝える。
- 押収物を特定する:押収目録などを確認し、返還を求める物の品名や数量を明らかにする。
- 所有権などを証明する:購入記録、契約書、領収書、本人確認書類など、必要な資料を準備する。
- 還付を請求する:担当機関の案内に従い、還付請求や仮還付の申出を行う。
- 判断・返還を受ける:留置の必要性などが審査され、還付が認められれば所定の方法で受け取る。
請求に必要な書類や受付方法は、保管機関や事件の状況によって異なります。全国一律の申請書式がすべてのケースに適用されるわけではないため、まず担当機関に確認してください。
還付と仮還付の違い
返還には、通常の還付と仮還付があります。
還付は、留置の必要がなくなった物を権利者などに返す手続きです。
仮還付は、事件が終結していないなどの事情がある場合でも、請求に基づいて一時的に返すことができる制度です。後に証拠として必要になった場合などには、再提出を求められることがあります。
例えば、捜査に必要なデータの確認が済んでいるスマートフォンについて、機器そのものを長期間保管する必要がなくなった場合などには、返還やデータの複写といった方法が検討されることがあります。
また、現行法第123条第3項には、一定の記録媒体について、留置の必要がなくなった場合に、媒体の交付や電磁的記録の複写を認める規定もあります。
押収物の返還を拒否されたら?
還付請求を行っても、すべてのケースで返還が認められるわけではありません。
例えば、証拠として引き続き必要な場合や、犯罪に関係する財産として没収の可能性がある場合、所有権をめぐって争いがある場合などは、返還が認められないことがあります。
その場合は、次の点を確認するとよいでしょう。
- 現在も証拠として保管する必要があるのか。
- 返還できない法的な理由は何か。
- 一時的な仮還付が可能か。
- デジタルデータの複写や記録媒体の交付で対応できないか。
- 弁護士を通じた申入れや法的手段を検討する必要があるか。
所有者と被疑者が異なる場合や、仕事・生活に必要な機器が押収された場合は、権利関係や生活への影響も含めて、弁護士に相談することが有効です。
【押収品の処分】返還されないケースと警察・検察による処分方法
押収された物が必ず所有者に返還されるとは限りません。事件の結果や物の性質によって、没収、廃棄、売却などの処分が行われる場合があります。
押収物が返還されない主なケース
代表的なのは次の3つです。
1.裁判で没収が言い渡された場合
刑法第19条などの要件を満たし、裁判で没収が言い渡された物は、通常の還付とは異なる扱いになります。
例えば、犯罪行為に使用された物や犯罪によって得られた財産などが、法律上の要件に従って没収される場合があります。
2.所有者が所有権を放棄した場合
所有者が押収物の所有権を放棄した場合も、通常の返還は受けられません。
検察庁の公式FAQでも、没収の言渡しがあった証拠品や、所有者が所有権を放棄した証拠品は返還されないと説明されています。
3.所有者が分からず、公告後も請求がない場合
押収物の所有者が不明などの理由で返還できない場合には、刑事訴訟法第499条に基づく公告が行われます。
同条第3項では、公告した日から6か月以内に還付請求がなければ、その物が国庫に帰属すると定めています。
ここで注意したいのは、6か月という期間は通常の押収品の保管期限ではなく、返還できない物について公告を行った後の請求期間だという点です。
押収品はどのように処分される?
押収品の処分方法には、法律上の根拠があります。
- 還付:証拠として保管する必要がなくなった物を権利者などに返す。
- 仮還付:事件終結前などに、一時的に物を返す。
- 廃棄:危険を生じるおそれがある物などについて、法律に基づき廃棄する。
- 売却:滅失・破損のおそれがある物や保管に不便な一定の押収物を売却し、その代金を保管する。
- 没収物の処分:没収された物を、法律や規程に従って売却・廃棄などの方法で処分する。
刑事訴訟法第121条は危険を生じるおそれがある押収物の廃棄などを、第122条は一定の押収物の売却と代価の保管を定めています。
検察庁の公式説明によると、没収された有価物は売却され、その代金は国庫に帰属します。価値のない物は廃棄・破壊される場合があります。
つまり、押収品の処分は担当者が自由に決めるものではなく、法律と証拠品の管理規程に従って行われます。
押収品を勝手に処分したり、取り戻したりできる?
押収された物を所有者が勝手に持ち出したり、保管場所から取り戻したりすることは適切ではありません。
返還を希望する場合は、担当する警察署や検察庁などに正式に申し出る必要があります。
また、任意提出を求められた場合でも、提出した物がどのように扱われるのか、返還を希望する場合の窓口はどこかを確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
【誤解を解消】押収について知っておきたい要点
押収に関する報道や法律用語には、誤解されやすい点があります。特に重要なのが、押収と有罪判決を結び付けないこと、令状の有無だけで違法性を判断しないことです。
押収された物は必ず犯罪の証拠なのか
押収される物は、捜査上の証拠として必要と判断された物や、没収の対象となる可能性がある物などです。
ただし、押収された物が最終的に犯罪を証明する証拠として採用されるとは限りません。捜査の結果、事件との関連性が否定されることもあります。
押収されたら必ず返還されるのか
必ず返還されるわけではありません。
留置の必要がなくなれば還付されるのが原則ですが、没収の言渡しや所有権放棄など、返還されない事情もあります。
押収されたら事件が起訴されたという意味なのか
これも誤解です。
押収は捜査段階でも行われます。押収されたという事実だけでは、起訴されたかどうかも、有罪かどうかも判断できません。
捜査中の証拠保全と、検察官による起訴判断、裁判所による有罪・無罪の判断は、それぞれ別の手続きです。
【押収とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:押収とは簡単にいうとどういう意味ですか?
A1:押収とは、刑事事件の証拠となる物や没収対象となる物などを、捜査機関や裁判所が取得・確保する手続きです。差押えや領置などが含まれます。
Q2:押収の読み方は何ですか?
A2:「おうしゅう」と読みます。警察や検察が証拠品などを取得・確保することを意味します。
Q3:警察が押収するときは必ず令状が必要ですか?
A3:強制的な差押えは原則として裁判官の令状が必要です。ただし、逮捕に伴う差押えや、遺留物・任意提出物の領置など、令状を必要としない場合もあります。
Q4:押収と差押えは同じ意味ですか?
A4:厳密には異なります。押収は証拠物などを取得・確保する広い概念であり、差押えはその中でも強制的に占有を取得する処分です。
Q5:押収と没収の違いは何ですか?
A5:押収は証拠などを確保する手続きです。一方、没収は刑事裁判で科される付加刑であり、一定の物を国に帰属させる処分です。
Q6:警察に押収されたスマートフォンはいつ返ってきますか?
A6:一律の返還期限はありません。データ解析や捜査、公判での証拠利用などが必要かどうかによって異なります。留置の必要がなくなれば、事件終結前でも還付される場合があります。
Q7:押収物の返還を請求することはできますか?
A7:できます。刑事訴訟法第123条では、所有者・所持者・保管者・差出人などの請求による仮還付も認めています。現在の保管機関に問い合わせ、必要な手続きを確認してください。
Q8:押収された物は必ず没収されますか?
A8:いいえ。押収は証拠などを確保する手続きであり、没収とは別です。証拠としての必要性がなくなれば返還される場合があります。
Q9:押収品の保管期間は何年ですか?
A9:すべての押収品に共通する保管年数は定められていません。証拠としての必要性や事件の進行状況などによって異なります。
Q10:令状なしで押収された場合は違法ですか?
A10:必ずしも違法ではありません。逮捕に伴う差押えや任意提出物の領置など、法律が認める例外があります。具体的な事情を確認して判断する必要があります。
まとめ:押収の意味と返還の判断で知っておきたいこと
押収とは、刑事事件の捜査や裁判で必要となる証拠物などを取得・確保する手続きです。読み方は「おうしゅう」で、刑事訴訟法では差押えや領置などに関する規定が設けられています。
重要なのは、押収・差押え・領置・没収・捜索を混同しないことです。押収は広い概念であり、差押えは強制的な取得、領置は遺留物や任意提出物の取得、没収は刑罰としての財産の取得、捜索は証拠などを発見するための調査を意味します。
令状については、強制的な差押えが原則として令状主義に従う一方、逮捕に伴う処分や任意提出物の領置などの例外もあります。そのため、令状がないという一点だけで適法・違法を判断することはできません。
押収物の返還については、刑事訴訟法第123条が重要です。証拠として保管する必要がなくなった物は、事件終結前でも還付される場合があります。返還を希望する場合には、現在の保管機関を確認し、還付請求や仮還付を検討することができます。
【プロの結論】 押収を理解するうえで最も大切なのは、「押収されたこと」と「没収されること」、そして「犯罪が確定したこと」を明確に区別することです。押収はあくまで証拠保全などを目的とした刑事手続きであり、その適法性や返還の可否は、令状の有無だけでなく、取得方法、証拠としての必要性、所有権、事件の進行状況などによって判断されます。
自分や家族、会社の所有物が押収された場合には、押収目録を確認し、保管機関と担当者を把握したうえで、返還の見通しや還付請求の方法を確認することが現実的な対応となります。
法律上の手続きと権利関係を正しく理解することが、押収をめぐる不要な誤解やトラブルを防ぐ第一歩です。
主な法令・公的資料の確認根拠: e-Gov法令検索「刑事訴訟法」、日本国憲法第35条、刑法第19条、法務省「証拠品事務規程」、検察庁「裁判の執行等について」。