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【加工肉ががんの原因になるのは本当?】IARCグループ1と発がん性の真相

橘 宗 橘 宗 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

加工肉に発がん性があるという評価は、インターネット上の噂や食品業界の宣伝ではない。2015年10月26日、IARCは加工肉をグループ1、赤肉をグループ2Aに分類した。

この評価は、10か国から集まった22人の専門家が、疫学研究や動物実験、発がんメカニズムに関する研究を総合的に検討した結果だ。国立がん研究センターも2015年10月29日に公式解説を公表している。

IARCグループ1とは?「危険度ランキング」ではない

IARCの発がん性分類は、ある物質や要因が人間にがんを引き起こすという科学的証拠がどれほど確かかを示すものだ。

ここで押さえておきたいのが、発がん性の証拠の強さと、実際にがんになる確率は別の概念だという点である。

例えば、たばこやアスベストもグループ1に分類されている。しかし、同じグループに属するからといって、加工肉とたばこが同じ程度に危険という意味ではない。

IARC分類 意味 主な例
グループ1 ヒトに対して発がん性がある 加工肉、たばこ、アスベスト
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある 赤肉、熱い飲み物(65℃超)
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある 一部の化学物質など
グループ3 ヒトに対する発がん性を分類できない 証拠が不十分な物質など

グループ1とグループ2Aの違いは、危険度の大小ではなく、発がん性を裏付ける証拠の確かさにある。

WHOが2026年9月23日に更新した解説でも、この区別は明確に説明されている。加工肉については、ヒトを対象とした疫学研究から十分な証拠が得られていることがグループ1の根拠だ。

毎日50gで大腸がんリスク18%上昇とは?

加工肉の発がん性を説明する際、必ずといってよいほど登場するのが「毎日50gで大腸がんリスクが18%上昇する」という数字だ。

これはIARCの評価に関連してWHOが紹介した、10件の研究データをまとめた推計に基づいている。

具体的には、加工肉を毎日50g食べる場合、大腸がんの相対リスクが約18%高くなるという結果だ。

ただし、18%という数字には注意が必要だ。

- 発症確率が18ポイント増えるわけではない。
- 50gを一度食べただけでリスクが18%上がるわけではない。
- 毎日継続して摂取する場合の集団レベルの相対リスクの推計である。
- 個人の年齢、体質、遺伝、喫煙、飲酒などによって実際のリスクは異なる。

例えば、ある集団の基準となる発症リスクが5%だったと仮定すれば、相対リスクが18%増加した場合の計算上のリスクは5.9%となる。18%と18ポイントの違いは、このように考えると理解しやすい。

また、この数字を使って50g、100g、150gと単純に比例計算し、個人の発症確率を予測することもできない。

重要なのは、加工肉の摂取量が多いほどリスクが高くなる傾向が示されていることだ。

【ハム・ソーセージ・ベーコンを比較】赤肉と加工肉は何が違う?

加工肉がん

加工肉の定義は、単純に肉を細かくしたり、形を変えたりした食品という意味ではない。

WHOによると、加工肉とは、保存性や風味を高めるために塩漬け、塩せき、発酵、燻製などの処理を施した肉のことだ。

したがって、加工肉かどうかを判断するうえでは、原材料の色よりも製造工程が重要になる。

発がん性評価の対象となる代表的な食品


ハム

豚肉などを塩せき・加工した食品。サンドイッチや朝食の定番で、薄切りタイプでも加工肉に該当する。


ソーセージ

挽肉に調味料などを加え、腸詰めや成形などを行った食品。ウインナーやフランクフルトも代表的な加工肉だ。


ベーコン

豚肉を塩せき・燻製などで加工した食品。炒め物やパスタ、朝食などに使われる。


コンビーフ・ジャーキー

塩漬けや乾燥などによって保存性を高めた食品。缶詰や乾燥肉も加工肉に含まれる。

赤肉と加工肉の違いを比較

比較項目 赤肉 加工肉
定義 哺乳類の筋肉部分 保存・風味向上などの加工を施した肉
代表例 牛肉・豚肉・羊肉 ハム・ソーセージ・ベーコン
鶏肉 赤肉には含まれない 加工方法によっては加工肉に該当
IARC分類 グループ2A グループ1
大腸がんの証拠 限定的な疫学的証拠など 十分な疫学的証拠
国際的な摂取の考え方 週500g以内を目安とする推奨 できるだけ摂取を控える方向

特に注意したいのが、赤肉と加工肉は同じものではないという点だ。

例えば、牛肉のステーキは赤肉だが、通常の調理だけで加工肉になるわけではない。一方、鶏肉であっても、塩せきや燻製などの加工を施せば加工肉に該当する場合がある。

つまり、牛肉か豚肉か鶏肉かという原材料の違いだけでは判断できない。

国際的には赤肉の摂取量を調理後の重量で週500g以内に抑えることが推奨されている。一方、加工肉については、できるだけ摂取を控えるという考え方が示されている。

【日本人はどれほど危険?】国立がん研究センターの研究と2026年の評価

海外の研究で加工肉の発がん性が確認されているとしても、日本人が同じ量を食べた場合に同じリスクになるとは限らない。

食生活や摂取量、体格、生活習慣などが国によって異なるためだ。

この問題を考えるうえで重要なのが、国立がん研究センターによる日本人対象の研究である。

2011年:約8万人を対象にした日本人の追跡調査

国立がん研究センターは2011年11月、日本国内の45~74歳の男女約8万人を対象に、赤肉・加工肉の摂取量と大腸がんの発生リスクを調べたコホート研究を公表した。

研究では、参加者を肉の摂取量に応じて5つのグループに分け、その後の大腸がんの発生状況を比較している。

主な結果は次の通りだ。

- 女性では、赤肉を毎日80g以上食べるグループで結腸がんのリスク上昇がみられた。
- 男性では、肉全体の摂取量が最も多いグループでリスク上昇がみられた。
- 男性の赤肉摂取については、明確な関連が確認されなかった。
- 加工肉については、男女ともに明確な関連が確認されなかった。

当時の日本人の摂取量が海外と比較して少なかったことも、研究結果を解釈するうえで重要な背景となる。

2013年の国民健康・栄養調査では、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は合計で1日約63g。その内訳は赤肉約50g、加工肉約13gだった。

ただし、この研究は2011年に公表されたものであり、現在の食生活をそのまま反映するものではない。

2019年:6つのコホート研究を統合した大規模解析

さらに注目されるのが、2019年に学術誌「Cancer Science」に掲載された研究だ。

この研究では、日本人を対象とした6つの大規模コホート研究を統合し、肉の種類と大腸がんの関係を詳しく分析した。

解析対象は、合計35万6,038人、9,244件の大腸がん発症例に及ぶ。

研究結果では、加工赤肉をほぼ毎日食べる女性について、週1回未満の女性と比較して、大腸がんリスクが高くなる傾向が示された。

ただし、加工赤肉の摂取量に基づく解析では明確な関連が確認されず、男性では同様の関連も認められなかった。

女性の結腸がんについては、ほぼ毎日食べるグループのハザード比が1.39だったが、95%信頼区間は0.97~2.00であり、推定には不確実性が残る。

この研究が示すのは、日本人でも加工肉と大腸がんの関連が認められる可能性がある一方、性別や摂取頻度、解析方法によって結果が異なるということだ。

2026年5月26日改訂版では何が変わった?

国立がん研究センターの研究班は、2026年5月26日に「日本人のためのがん予防法」を改訂した。

今回の改訂では、体重に関する推奨や、喫煙・肥満と特定のがんとの関係などが更新されている。

加工肉については、同ページの「その他の項目」に整理されており、日本人を対象とした研究に基づいて、特に女性ではハムやソーセージなどの加工肉、赤肉の摂取によって大腸がんリスクが高くなる可能性があると評価している。

つまり、2026年時点でも加工肉の影響を無視してよいという評価にはなっていない。

一方で、日本人全員に対して加工肉を一律に禁止するような新しい基準が設けられたわけでもない。

年代・資料 研究・評価の内容 注目すべきポイント
2011年 日本人約8万人の追跡調査 加工肉は男女とも明確な関連なし
2015年 IARCによる国際評価 加工肉をグループ1に分類
2015年 国立がん研究センターの解説 日本人の平均的な摂取量では影響がないか小さいとの見解
2019年 日本人6コホートの統合解析 女性の加工赤肉の頻繁な摂取と大腸がんとの関連を示唆
2026年5月26日 日本人のためのがん予防法改訂 女性で加工肉・赤肉によるリスク上昇の可能性を評価
2026年9月23日 WHOの最新Q&A更新 発がん性分類と実際のリスクの違いを改めて説明

このように、海外の国際評価と日本人の研究結果は、必ずしも矛盾しているわけではない。

海外では加工肉による発がん性を裏付ける証拠が十分にある。一方、日本人の研究では摂取量が比較的少ないことや男女差などが影響し、リスクの大きさについて異なる結果が出ている。

【なぜ加工肉でがんリスクが上がる?】亜硝酸塩・ニトロソアミンの関係

加工肉の発がん性を理解するには、単に「添加物が入っているから危険」と考えるだけでは不十分だ。

研究では、肉に含まれる成分、保存加工、調理時の化学反応など、複数の要因が検討されている。

亜硝酸塩とニトロソアミン

加工肉の話題で頻繁に登場するのが亜硝酸塩だ。

亜硝酸塩は、ハムやソーセージなどの製造に使われる食品添加物の一つで、主に次の役割がある。

- 食中毒の原因となる有害な細菌の増殖を抑える。
- 肉の色調を保つ。
- 保存性や製品の品質を安定させる。

一方、亜硝酸塩は食品中のアミン類などと反応し、ニトロソアミンを含むN-ニトロソ化合物を生成する可能性がある。

一部のニトロソアミンには発がん性が認められている。

また、ベーコンなどを高温で炒める場合にも、こうした化学物質の生成に関係する反応が起こる可能性がある。

ただし、ここで誤解してはいけないのが、亜硝酸塩そのものだけが加工肉の発がん性の原因と確定しているわけではないという点だ。

国立医薬品食品衛生研究所が2026年1月に紹介した食品安全関連資料でも、加工肉の発がん性に関係する可能性がある成分として、ヘム鉄、脂肪の酸化生成物、複素環芳香族アミン、多環芳香族炭化水素、N-ニトロソ化合物などが挙げられている。

原因となる単一の成分は特定されていない。

加工肉の発がん性に関係する主な要因

成分・要因 特徴 研究上の注目点
亜硝酸塩 保存性や色調を保つ添加物 ニトロソ化合物の生成に関係
ニトロソアミン N-ニトロソ化合物の一種 一部に発がん性がある
ヘム鉄 肉に含まれる鉄の一種 発がんメカニズムとの関係が研究されている
燻製・塩せき 肉の保存や風味向上に使われる 化学物質の生成に影響
高温調理 炒める、焼くなどの調理 複素環芳香族アミンなどの生成に関係

特に重要なのは、亜硝酸塩には食品の安全を守る役割もあるということだ。

添加物を一律に悪者扱いするのではなく、食品中の成分がどのような条件で反応し、どのような健康影響につながる可能性があるのかを理解する必要がある。

加工肉は胃がんとも関係する?

大腸がん以外では、胃がんとの関連も研究されている。

WHOの2026年9月の説明では、加工肉と胃がんの関連を示唆する研究結果はあるものの、確定的な結論を出すには証拠が不十分とされている。

国立がん研究センターの2026年版の評価でも、加工肉による胃がんリスクの上昇は「限定的に示唆される」という位置づけだ。

したがって、大腸がんと胃がんを同じ確実性で扱うことはできない。

【加工肉はどれくらい食べていい?】2026年の摂取量と現実的な対策

加工肉の発がん性を知った人が、次に気になるのは「結局、何グラムまでなら食べてもいいのか」という問題だろう。

この点については、明確な安全上限を示すことが難しい。

WHOは2026年9月時点で、加工肉の摂取量とがんリスクには関連があり、摂取量が増えるほどリスクも高くなる傾向を説明している。一方、どの量までなら安全と断言できるかについては、十分なデータがないとしている。

動物性食品全体の適切な摂取量については、WHOが新たなガイドラインを策定中だ。

加工肉50gを毎日食べる習慣を見直す

50gという数字は、毎日の摂取量を考えるうえでの参考になる。

例えば、朝食でハム、昼食でソーセージ、夕食でベーコンを食べる生活が続いている場合、1日全体の加工肉の量を一度確認してみるとよい。

大切なのは、特定の食品を一度食べたかどうかではなく、長期的な食習慣を見直すことだ。

日常生活で実践したい5つの対策

1.加工肉を毎日の定番にしない

朝食のハムやソーセージを毎日食べている場合は、卵、納豆、魚などと交互にする。食べる機会そのものを減らすことが第一歩になる。

2.肉料理を魚や大豆製品に置き換える

焼き魚、豆腐、納豆、豆類などを活用すれば、食事のバリエーションを増やせる。加工肉を減らした分を別の食品で補う考え方が現実的だ。

3.野菜や食物繊維を十分に摂る

野菜、海藻、豆類、全粒穀物などを取り入れ、食事全体の栄養バランスを整える。

4.肉を焦がすような高温調理を避ける

肉を必要以上に焦がさず、調理温度や時間に配慮する。これは加工肉だけでなく、肉料理全般で意識したい点だ。

5.飲酒・喫煙・運動不足も見直す

大腸がんの予防では、食事だけでなく、喫煙、飲酒、体重、身体活動なども重要な要素となる。加工肉だけに注目して、ほかの生活習慣を見落とさないようにしたい。

加工肉を減らすなら何に置き換える?

これまでの食品 置き換え候補 期待できるメリット
ハム 卵・納豆 加工肉を使わない朝食にできる
ソーセージ 焼き魚・鶏肉 食事の選択肢が広がる
ベーコン きのこ・豆類 野菜や食物繊維を増やせる
コンビーフ 豆腐・ツナ 食品の種類を分散できる

加工肉を食べない生活が難しい人でも、毎日の食事の一部を置き換えることから始められる。

また、加工肉を減らすことだけで、がんの発症を完全に防げるわけではない。国立がん研究センターが示すように、喫煙を避ける、飲酒を控える、適度な体重を保つ、身体を動かすといった総合的な対策が大切になる。

【加工肉がんに関するよくある質問(FAQ)】

Q1:加工肉を一度食べただけでも、がんになる可能性はありますか?

A1:一度食べたからといって、直ちにがんになるわけではない。IARCの評価は、主に長期的な摂取と発がん性の関係を示すものであり、単発の摂取による発症を意味しない。日常的な摂取量や生活習慣全体を見直すことが大切だ。

Q2:ハムやソーセージは完全に食べないほうがいいですか?

A2:加工肉はできるだけ摂取を控えることが国際的に推奨されている。ただし、食べたら必ずがんになるという意味ではない。毎日の習慣になっている場合は、食べる頻度を減らし、魚や卵、大豆製品などに置き換える方法が現実的だ。

Q3:加工肉の亜硝酸塩は発がん性があるのでしょうか?

A3:亜硝酸塩は、条件によってニトロソアミンなどの化学物質を生成することがある。一部のニトロソアミンには発がん性が認められている。ただし、亜硝酸塩だけが加工肉の発がん性の原因と確定しているわけではなく、食中毒予防などの役割もある。

Q4:加工肉は大腸がんだけでなく胃がんの原因にもなりますか?

A4:胃がんとの関連を示す研究はあるが、大腸がんほど十分な証拠は確立していない。WHOも胃がんについては関連を示唆する段階と説明している。

Q5:日本人なら加工肉を食べても問題ないのでしょうか?

A5:日本人を対象とした研究では、海外の研究と異なる結果や男女差が報告されている。しかし、日本人なら加工肉を大量に食べても安全という意味ではない。2026年の国立がん研究センターの評価でも、特に女性では加工肉の摂取による大腸がんリスク上昇の可能性が示されている。

まとめ:加工肉は食べる量と頻度を見直すことが大切

加工肉ががんの原因になるという話には、科学的な根拠がある。

IARCは2015年に加工肉をグループ1に分類し、毎日50gの摂取で大腸がんの相対リスクが約18%上昇するという推計も公表されている。

一方、日本人を対象にした国立がん研究センターの研究では、2011年の約8万人の追跡調査と2019年の6つのコホート研究で異なる結果が示され、性別や摂取頻度による違いも確認されている。

2026年5月のがん予防法改訂、同年9月のWHOの最新情報を踏まえても、加工肉を完全に禁止しなければならないという話ではない。しかし、毎日食べる習慣を見直し、摂取頻度を減らすことには合理的な意味がある。

【プロの結論】

加工肉の発がん性をめぐる問題で、最も避けたいのは「グループ1だから絶対に食べてはいけない」という極端な判断と、「日本人の研究では影響が小さいから気にしなくてよい」という過小評価の両方だ。

科学的に重要なのは、発がん性の証拠、実際の摂取量、個人差、食生活全体を分けて考えることにある。

ハムやソーセージを楽しむことと、健康リスクを減らすことは両立できる。毎日の食卓で加工肉に偏らない選択を続けることが、2026年時点で取り組める現実的な予防策だ。


主な参考資料

- 世界保健機関(WHO)「Carcinogenicity of red and processed meat」2026年9月23日更新
- 国際がん研究機関(IARC)「Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans」
- 国立がん研究センター「日本人のためのがん予防法」2026年5月26日改訂版
- 国立がん研究センター「赤肉・加工肉のがんリスクについて」2015年10月29日
- Islam et al.「Meat subtypes and colorectal cancer risk: A pooled analysis of 6 cohort studies in Japan」Cancer Science、2019年
- 国立医薬品食品衛生研究所「食品安全情報(化学物質)No.1/2026」

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