血圧の薬には、血管を広げる薬、血圧を上げるホルモンの働きを抑える薬、体内の余分な水分や塩分を排出する薬など、複数の種類があります。同じ高血圧の治療薬でも作用の仕組みや副作用、適した患者の条件は異なります。薬を選ぶ際には、血圧の数値だけでなく、腎臓や心臓の状態、糖尿病、年齢、ほかに服用している薬なども考慮されます。
2026年11月現在、日本の高血圧診療で基準となるのは、日本高血圧学会が2025年8月29日に発行した「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」です。診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満という降圧目標が示され、薬の選択や併用の考え方も整理されました。血圧が下がったからといって自己判断で薬をやめることにはリスクがあります。薬の種類、選び方、副作用、減量・中止を検討するタイミングまで、最新の基準に沿って解説します。
【2026年最新】高血圧管理・治療ガイドライン2025で何が変わった?

6年ぶりの改訂で降圧目標が見直された
日本高血圧学会は2025年7月25日、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発表しました。冊子の発行日は同年8月29日です。
前回の2019年版から約6年ぶりの改訂であり、今回の大きな特徴は、医学的な知識を示すだけでなく、患者や医療従事者が実際に血圧を下げる行動につなげられる構成にしたことです。
ガイドラインは次の3部構成になっています。
- 第1部:国民全体を対象とした血圧管理と予防
- 第2部:成人の本態性高血圧患者の管理・治療
- 第3部:二次性高血圧や特殊な病態への対応
特に注目されるのが、降圧目標の見直しです。
基本的な目標は、年齢によらず診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満に統一されました。ただし、すべての患者に同じ速度で血圧を下げるわけではありません。個人の身体状況や副作用、治療への耐容性を考慮することも明記されています。
なお、2026年3月31日版の正誤表も日本高血圧学会の公式案内に掲載されています。2026年時点で情報を確認する際には、2019年版と2025年版を混同しないことが大切です。
診察室血圧と家庭血圧の目標値は違う
血圧管理では、医療機関で測定する診察室血圧と、自宅で測定する家庭血圧を区別する必要があります。
| 項目 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
|---|---|---|
| 正常血圧の目安 | 120/80mmHg未満 | 115/75mmHg未満 |
| 高値血圧の目安 | 130~139/80~89mmHg | 125~134/75~84mmHg |
| 高血圧の診断基準 | 140/90mmHg以上 | 135/85mmHg以上 |
| 治療中の基本的な降圧目標 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
ここで注意したいのは、高血圧の診断基準と治療目標は別の数字だということです。
例えば、診察室で135/82mmHgだった場合、2025年版の分類では高値血圧に該当します。一方、治療中の人であれば、基本的な降圧目標である130/80mmHg未満には達していません。
家庭血圧でも同じ考え方が当てはまります。
血圧が130/80mmHg前後だから問題ないと考えるのではなく、診断なのか治療中の目標なのかを区別して判断する必要があります。
出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」、日本高血圧協会の血圧に関する解説。
【種類別に比較】血圧の薬5種類の効果と副作用は?
降圧薬は、血圧を上げる原因となる仕組みのどこに働きかけるかによって分類されます。
2025年版ガイドラインでは、主要な降圧薬として、長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、少量のサイアザイド系利尿薬、β遮断薬が位置付けられています。
それぞれの特徴を理解すると、なぜ人によって処方される薬が異なるのかが分かります。
1.Ca拮抗薬:血管を広げて血圧を下げる
Ca拮抗薬は、血管の筋肉にカルシウムイオンが流入するのを抑えることで、血管を広げる薬です。
血管が広がると血液が流れやすくなり、血管にかかる抵抗が小さくなって血圧が下がります。
代表的な薬には、次のものがあります。
- アムロジピン
- ニフェジピン
- シルニジピン
特に長時間作用型のジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、主要な降圧薬として広く使用されています。
主な副作用
- 足首やすねのむくみ
- 顔のほてり
- 頭痛
- 動悸
- 歯肉肥厚
- 胸やけ
Ca拮抗薬の特徴として知っておきたいのが、下肢のむくみです。
血管が拡張することで毛細血管の圧力バランスが変わり、足首などに水分がたまりやすくなる場合があります。
むくみが出た場合、単純に水分の摂りすぎと判断するのではなく、服用している薬との関係を確認することが必要です。
2.ARB:血圧を上げるホルモンの働きを抑える
ARBは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の略称です。
体内にはアンジオテンシンIIという血管を収縮させる物質があります。ARBは、この物質が受容体に結合するのを妨げ、血管の収縮やアルドステロンを介した血圧上昇を抑えます。
代表的な薬は次のとおりです。
- カンデサルタン
- ロサルタン
- バルサルタン
- テルミサルタン
- オルメサルタン
ARBは、腎臓の状態や糖尿病、蛋白尿の有無などを考慮して選択されることがあります。
特に蛋白尿を伴う慢性腎臓病では、腎臓への負担を考慮した治療選択肢になります。
主な副作用・注意点
- 血清カリウム値の上昇
- 腎機能の変化
- 血圧低下
- まれな血管性浮腫
ARBを使用する場合、血圧だけでなく血液検査による腎機能やカリウム値の確認も大切です。
腎機能が低下している人や高カリウム血症のある人では、特に慎重な管理が必要です。
また、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は使用できない薬剤があるため、必ず医師に伝えてください。
3.ACE阻害薬:アンジオテンシンIIの生成を抑える
ACE阻害薬は、アンジオテンシン変換酵素の働きを阻害し、アンジオテンシンIIが作られるのを抑える薬です。
ARBと同じく、血管収縮に関わるレニン・アンジオテンシン系に作用しますが、作用する段階が異なります。
代表的な薬には次のものがあります。
- エナラプリル
- イミダプリル
- リシノプリル
- ペリンドプリル
心臓や腎臓の病態などを踏まえて選択されることがあります。
ACE阻害薬の代表的な副作用は空咳です。
これは、ACE阻害薬によってブラジキニンなどの分解が抑えられることが関係しています。
ほかにも、次のような注意点があります。
- 高カリウム血症
- 腎機能の悪化
- 血圧低下
- 血管性浮腫
空咳が長く続く場合には、薬との関連を医師に相談してください。症状や病態に応じてARBなどへの変更が検討されることがあります。
ただし、ACE阻害薬とARBは、すべての病態で同じ効果が期待できるわけではありません。自己判断で置き換えることは避けましょう。
4.サイアザイド系利尿薬:余分な塩分と水分を排出する
サイアザイド系利尿薬は、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑え、尿と一緒に余分な塩分や水分を排出する薬です。
体内の循環血液量を減らすことなどによって、血圧を下げます。
代表的な薬には次のものがあります。
- ヒドロクロロチアジド
- トリクロルメチアジド
- インダパミド
食塩摂取量が多い人や、食塩感受性が高い人などで選択肢になります。
主な副作用・注意点
- 低カリウム血症
- 低ナトリウム血症
- 尿酸値の上昇
- 痛風の悪化
- 血糖値への影響
- 光線過敏症
特に痛風や高尿酸血症のある人は、尿酸値の変化に注意が必要です。
また、利尿作用があるため、脱水や電解質異常が起きていないか確認することも重要です。
5.β遮断薬:心臓への交感神経の刺激を抑える
β遮断薬は、交感神経のβ受容体に作用し、心拍数や心臓の収縮力を抑えることで血圧を下げる薬です。
心臓から送り出される血液量を抑えるほか、腎臓から分泌されるレニンにも影響します。
代表的な薬には次のものがあります。
- ビソプロロール
- カルベジロール
- アテノロール
高血圧だけでなく、心不全、狭心症、心筋梗塞後、不整脈などの病態を考慮して選ばれる場合があります。
主な副作用・注意点
- 徐脈
- 疲労感
- めまい
- 手足の冷え
- 血圧低下
- 気管支収縮
喘息のある人や、もともと脈拍が遅い人では慎重な判断が必要です。
β遮断薬は突然中止すると、心拍数や血圧が上昇することがあるため、減量や中止も医師の指示に従う必要があります。
5種類の降圧薬を比較すると?
| 薬の種類 | 主な作用 | 代表的な副作用 | 選択時の注目点 |
|---|---|---|---|
| Ca拮抗薬 | 血管を拡張する | 足のむくみ、頭痛、ほてり | 血管抵抗、むくみの有無 |
| ARB | アンジオテンシンIIの作用を遮断 | 高カリウム血症、腎機能の変化 | 腎機能、蛋白尿、糖尿病 |
| ACE阻害薬 | アンジオテンシンIIの生成を抑制 | 空咳、高カリウム血症 | 心臓・腎臓の状態 |
| サイアザイド系利尿薬 | 塩分と水分の排出を促進 | 低カリウム血症、尿酸値上昇 | 食塩感受性、痛風 |
| β遮断薬 | 心拍数や心臓の収縮力を抑制 | 徐脈、疲労感、めまい | 心不全、狭心症、不整脈 |
この比較で分かるように、降圧薬は単純に血圧を下げる強さだけで選ぶものではありません。
同じ血圧の人でも、腎機能、心拍数、尿酸値、心臓の病気の有無などによって適した薬が変わります。
出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」、厚生労働省「薬局における疾患別対応マニュアル~心血管疾患~」。
【降圧薬の選び方】持病・年齢・副作用から何を判断する?
血圧の数字だけで薬を決めない
降圧薬の選択では、血圧値だけでなく、脳や心臓、腎臓などの状態を総合的に確認します。
例えば、同じ140/90mmHgの人でも、糖尿病を合併している人と、心拍数が高い人では治療の考え方が異なる場合があります。
医師が確認する主な項目は次のとおりです。
- 年齢と身体機能
- 腎機能と尿蛋白
- 糖尿病の有無
- 心不全や狭心症の既往
- 心拍数や不整脈
- 高尿酸血症や痛風
- 喘息や慢性閉塞性肺疾患
- ほかに服用している薬
- 起立時の血圧低下や転倒歴
特に高齢者では、血圧を下げることだけに注目すると、立ちくらみや転倒につながる可能性があります。
そのため、目標値を意識しながらも、日常生活に支障が出ていないかを確認することが欠かせません。
JSH2025のG1・G2・G3という薬剤グループ
2025年版では、降圧薬を治療段階に応じて選びやすくするため、G1、G2、G3というグループ分類が設けられました。
G1:主要な降圧薬
- G1a:長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬
- G1b:少量のサイアザイド系利尿薬、β遮断薬
G1は治療の基本となる薬剤群です。病態に応じて単剤から開始し、必要に応じて組み合わせます。
G2:病態に応じて追加する薬
- ARNI
- MR拮抗薬
G1だけでは目標に届かない場合などに、病態や合併症を踏まえて使用が検討されます。
G3:特殊な病態などで使用する薬
- α遮断薬
- ヒドララジン
- 中枢性交感神経抑制薬など
治療抵抗性高血圧や特殊な病態で検討される薬剤群です。
今回の改訂では、少量のサイアザイド系利尿薬とβ遮断薬がG1に明確に位置付けられた点も注目されています。
1種類で下がらない場合は併用療法を検討する
降圧薬は、必ずしも1種類だけで治療するわけではありません。
JSH2025では、血圧が十分に下がらない場合、早い段階で作用の異なる薬を組み合わせる治療方針が示されています。
治療の基本的な流れは次のとおりです。
- STEP1:G1から1種類を選択する。
- STEP2:必要に応じてG1の2剤を併用し、病態によってG2も検討する。
- STEP3:必要に応じて3剤併用に進む。
重症高血圧や高リスクの患者では、最初から併用療法を検討する場合もあります。
例えば、Ca拮抗薬とARBを組み合わせると、血管拡張とレニン・アンジオテンシン系への作用を組み合わせて降圧を図れます。
また、薬の種類が増えることで服薬管理が難しくなる場合には、複数の成分を1錠にまとめた配合剤を利用する方法もあります。
併用してはいけない組み合わせにも注意
薬を増やせば必ず安全に血圧が下がるわけではありません。
特に注意したいのが、ARBとACE阻害薬の併用です。
どちらもレニン・アンジオテンシン系に作用するため、組み合わせによっては腎機能の悪化や高カリウム血症などのリスクが高まります。通常の高血圧治療で安易に併用するものではありません。
もう一つ知っておきたいのが、トリプルワーミーと呼ばれる薬剤の組み合わせです。
これは次の3種類を同時に使用することで、急性腎障害のリスクが高まる問題を指します。
- ARBまたはACE阻害薬
- 利尿薬
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
NSAIDsは一部の痛み止めに含まれています。市販薬を購入する場合も、降圧薬を服用していることを薬剤師に伝えておくと安心です。
【血圧の薬の副作用】見逃してはいけない症状と対処法
降圧薬の副作用は、薬の種類によって異なります。
服用を始めた直後だけでなく、増量したとき、別の薬を追加したとき、脱水や体調不良が起きたときにも症状が現れる場合があります。
むくみや空咳、立ちくらみは薬との関係を確認する
日常生活で気付きやすい副作用には、次のようなものがあります。
足のむくみ
Ca拮抗薬で見られることがあります。左右の足首やすねにむくみが出たり、靴がきつくなったりする場合は相談してください。
長引く空咳
ACE阻害薬で起こる代表的な副作用です。風邪の症状がないのに乾いた咳が続く場合は、服用薬との関係を確認します。
立ちくらみやふらつき
降圧作用が強く出ている場合や、起立時に血圧が低下している場合などに起こります。特に高齢者では転倒につながるため注意が必要です。
脈が遅くなる
β遮断薬では心拍数が低下することがあります。めまいや失神しそうな感覚を伴う場合は、早めに医療機関へ相談してください。
血液検査で確認する副作用もある
降圧薬の副作用は、自覚症状だけでは判断できません。
ARBやACE阻害薬では腎機能やカリウム値、サイアザイド系利尿薬ではナトリウムやカリウム、尿酸値などを確認することがあります。
そのため、定期的な採血を受けることは、薬の効果を確認するだけでなく、安全に治療を続けるためにも重要です。
すぐに医療機関へ相談したい症状
次のような症状が出た場合は、服用薬との関係を確認する必要があります。
- 顔、舌、喉が急に腫れる
- 尿量が明らかに減る
- 強い立ちくらみや失神
- 強い脱力感や動悸
- 急激に悪化するむくみや息切れ
特に舌や喉の腫れ、呼吸困難がある場合は、気道が塞がる危険があるため、直ちに救急対応を求めてください。
副作用が疑われても、自己判断で服用を中断するのではなく、症状と服用状況を医師や薬剤師に伝えることが基本です。
【血圧の薬をやめるタイミング】減量・中止が可能になる条件とは?
血圧が正常になったからといって中止できるわけではない
血圧の薬を飲み始めた人が気になりやすいのが、「一度飲み始めたら一生続けなければならないのか」という疑問です。
実際には、降圧薬を必ず生涯服用しなければならないわけではありません。
食生活の改善、減量、運動習慣の定着などによって血圧が下がり、医師の管理のもとで減量や中止を検討できる人もいます。
ただし、薬を服用している状態で血圧が正常なのは、薬が効果を発揮している結果である可能性があります。
薬を飲まなくても血圧が安定するかどうかは、別に確認しなければなりません。
JSH2025が示す減量・中止の注意点
2025年版ガイドラインでは、降圧薬の減量・中止についても独立した項目が設けられています。
特に重要なのは、薬を中断した後に血圧が再上昇する可能性です。
JSH2025を解説した海外学術誌の掲載論文では、降圧薬を中止すると、約4人に3人で血圧が再上昇すると説明されています。
長期間にわたって中止できる可能性が比較的高いのは、次のような条件を満たす人です。
- 1種類の降圧薬を少量で服用している
- 高血圧による臓器障害がない
- 減塩や体重管理などの生活習慣改善が十分にできている
- 中止後も家庭血圧を継続して測定できる
- 定期的に医師の診察を受けられる
これらは中止を保証する条件ではありません。最終的には、薬を使用している目的や合併症も含めて判断されます。
夏に血圧が下がった場合は減量できる?
血圧は季節によって変動します。
一般的には、冬に高くなり、夏に低くなる傾向があります。
気温が高くなると血管が拡張しやすくなり、発汗によって体内の水分量も変化するためです。
そのため、夏場に家庭血圧が低くなり、立ちくらみやふらつきが増える人では、医師が薬の量を見直す場合があります。
一方、冬場には血圧が再び上昇する可能性があります。
夏に血圧が下がったからといって、自分で薬を半分にしたり、服用をやめたりすることは避けてください。
減量や中止を検討するときの流れ
薬の見直しは、次のような手順で進めるのが基本です。
1. 家庭血圧を毎日測定し、朝と夜の推移を記録する。
2. めまい、ふらつき、むくみなどの症状を医師に伝える。
3. 血液検査で腎機能や電解質などを確認する。
4. 服用している薬の目的と合併症を再評価する。
5. 医師の判断で必要に応じて減量や中止を試みる。
6. 変更後も家庭血圧を測定し、再上昇がないか確認する。
大切なのは、薬をやめること自体を目標にしないことです。
薬の量を減らすことよりも、脳卒中や心筋梗塞、腎機能低下などのリスクを抑えながら、長く安定した生活を送れることを優先します。
【家庭血圧の測り方】受診前に確認したい5つのポイント
降圧薬の効果を正しく評価するには、家庭血圧の記録が欠かせません。
医療機関で測定した数値だけでは、早朝や夜間の血圧変動を十分に把握できない場合があるためです。
朝と夜の測定を習慣にする
日本高血圧学会の2025年版ガイドラインでは、家庭血圧の測定方法が重視されています。
基本的な測定タイミングは次のとおりです。
朝
- 起床後1時間以内
- 排尿後
- 朝食前
- 朝の服薬前
- 1~2分間安静にしてから測定
夜
- 就寝前
- 1~2分間安静にしてから測定
原則として、朝と夜にそれぞれ2回測定し、その平均値を記録します。
1回の測定機会に4回以上測る必要はありません。
測定期間は7日間を基本とし、少なくとも5日間以上の記録を参考に朝と夜の平均値を確認します。
血圧計は上腕式を選ぶ
家庭で使用する血圧計は、上腕にカフを巻くタイプが推奨されています。
手首式の血圧計は手軽ですが、手首の高さによって測定値が変わりやすいため、正しい姿勢を保つことが重要です。
測定するときは次の点を確認します。
- 背もたれのある椅子に座る
- 足を組まずに床につける
- 腕を心臓と同じ高さにする
- 測定中は会話しない
- 測定前に喫煙やカフェイン摂取を避ける
- すべての測定値を記録する
血圧が低く出るまで何度も測定し、都合のよい数値だけを残すのは適切ではありません。
受診時に医師へ伝えたいこと
血圧の記録を持参する際には、数値だけでなく、体調の変化も伝えると治療方針を検討しやすくなります。
特に確認しておきたいのは次の5項目です。
1. 朝と夜の平均血圧
2. 服薬後に血圧がどう変化しているか
3. めまい、むくみ、空咳などの症状
4. 飲み忘れや服薬時間の変化
5. 市販薬、サプリメント、ほかの医療機関から処方された薬
例えば、日中の血圧は目標範囲内でも、朝だけ高い状態が続いている場合があります。
こうした早朝高血圧は、家庭血圧を測定していなければ見逃される可能性があります。
また、血圧が低い数値を示している場合も、立ちくらみなどの症状があるかどうかを合わせて確認が必要です。
数値だけを見て治療の成功・失敗を判断するのではなく、生活の質や副作用も含めて評価する必要があります。
【血圧の薬に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:血圧の薬は一度飲み始めたら一生やめられないのですか?
A1:必ずしも一生服用しなければならないわけではありません。減塩、減量、運動などによって血圧が安定し、医師の判断で減量や中止を検討できる人もいます。ただし、中止後に血圧が再上昇することがあるため、家庭血圧の測定と定期受診が必要です。
Q2:血圧の薬は朝と夜のどちらに飲むのがよいですか?
A2:薬の種類や作用時間、患者の血圧変動によって異なります。朝に服用する薬も夜に服用する薬もあります。自己判断で服用時間を変更せず、処方された指示に従ってください。
Q3:ARBとACE阻害薬は何が違いますか?
A3:どちらも血圧上昇に関係するレニン・アンジオテンシン系に作用しますが、ARBはアンジオテンシンIIが受容体に結合するのを防ぎ、ACE阻害薬はアンジオテンシンIIの生成を抑えます。ACE阻害薬では空咳が代表的な副作用です。腎機能やカリウム値などへの注意は両方に必要です。
Q4:血圧が125/75mmHgなら薬をやめても大丈夫ですか?
A4:その数値だけでは判断できません。125/75mmHg未満は家庭血圧における基本的な降圧目標ですが、服薬によって達成されている可能性があります。中止後の再上昇や合併症のリスクも考慮する必要があるため、必ず医師に相談してください。
Q5:血圧の薬を2種類以上飲むのは危険ですか?
A5:複数の薬を併用すること自体が危険というわけではありません。作用の異なる薬を組み合わせることで、少量ずつでも十分な降圧効果が期待できます。ただし、薬の組み合わせによっては腎機能や電解質への影響が強くなる場合があるため、医師による管理が必要です。
Q6:血圧の薬を飲むと足がむくむのはなぜですか?
A6:Ca拮抗薬などでは、血管拡張による血管内外の圧力バランスの変化から、足首やすねにむくみが生じることがあります。むくみが続く場合や悪化する場合は医師に相談してください。心不全など別の原因が隠れている可能性もあります。
Q7:血圧の薬を飲み忘れた場合はどうすればよいですか?
A7:薬によって対応が異なります。気付いた時点で追加服用してよいか、次の服用時間まで待つべきかは、薬の種類と服用スケジュールによって違います。自己判断で2回分をまとめて飲最初に、処方時の説明書や薬剤師の指示を確認してください。
まとめ:血圧の薬は種類・副作用・家庭血圧を総合して判断する
2026年11月現在、日本の高血圧治療では、日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が基本となっています。
診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満という目標を踏まえ、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬などから、患者の病態に合った薬を選択することが基本です。
それぞれの薬には異なる作用と副作用があります。足のむくみ、空咳、立ちくらみ、腎機能や電解質の変化などを確認しながら、必要に応じて併用療法や配合剤への変更も検討されます。
また、血圧が安定した場合でも、自己判断による減量・中止は避けるべきです。生活習慣の改善や家庭血圧の推移を確認し、医師と相談しながら適切な治療を続けることが大切です。
血圧の薬を選ぶうえで最も大切なのは、薬の種類や錠数ではなく、脳・心臓・腎臓を守りながら安全に目標血圧を維持できるかどうかです。
毎日の血圧測定と定期的な診察を組み合わせ、自分の身体の状態に合った治療を続けていきましょう。