ムツゴロウ動物王国の歴史を理解するうえで欠かせないのが、創設者である畑正憲さんの人物像です。
畑正憲さんは1935年4月17日、福岡県福岡市生まれ。1954年に東京大学理学部生物学科へ入学し、卒業後は学習研究社(現在の学研ホールディングス)で動物の記録映画制作に携わりました。
1968年に同社を退社して作家活動に専念すると、同年に『われら動物みな兄弟』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。1977年には第25回菊池寛賞も受賞しています。
単なる動物好きのタレントではなく、動物の生態や人間との関係を文章と映像で伝えてきた作家・動物研究家だったのです。日本プロ麻雀連盟の最高顧問を務めるなど、麻雀の世界でも知られた存在でした。
北海道浜中町に動物王国をつくった理由
畑さんは1971年、家族と動物たちを連れて北海道浜中町沖の無人島・嶮暮帰島に移住しました。そして翌1972年、対岸の浜中町に動物王国を開設します。
移住の背景には、飼育していたクマの成長という現実的な事情もありました。クマを適切に飼育するには条例に基づく飼育環境の整備が必要で、無人島で施設を整えることが難しかったためです。
こうして始まった動物王国は、一般的な動物園とは性格が異なっていました。動物を展示するためだけの施設ではなく、畑さん自身が動物たちと暮らし、その生活を通して動物の個性や生命の営みを伝える場所だったのです。
1972年の開設は、単なる観光施設の誕生ではありません。畑さんの作家としての活動と、動物と暮らす実践が結び付いた転換点でした。
この北海道での生活が、後に全国的なテレビ人気へとつながっていきます。
【1972年から2007年まで】ムツゴロウ動物王国の歴史を年表で整理

北海道で誕生した動物王国は、テレビ番組によって知名度を高め、2004年には東京へ進出しました。その一方で、東京での事業は期待された集客を実現できず、2007年に幕を閉じます。
混同しやすいのが、北海道浜中町の動物王国と、後に中標津町で運営されたムツ牧場の存在です。それぞれの位置付けも含めて、主な出来事を整理します。
この年表で押さえておきたいのは、1972年の浜中町での開設と、1978年の中標津町でのムツ牧場開設は別の出来事だという点です。
また、テレビ番組の放送開始は1980年。放送ライブラリーにも、1980年12月29日放送の『ムツゴロウとゆかいな仲間たち これが動物王国だ』が記録されています。番組が動物王国の暮らしを全国へ伝える大きな役割を果たしたことが分かります。
畑さんは1986年には映画『子猫物語』の監督・脚本も担当。テレビだけでなく映画や著作を通して、動物の魅力を幅広い層に届けました。
【なぜ閉園した?】東京ムツゴロウ動物王国の経営破綻と閉園までの経緯
ムツゴロウ動物王国の歴史で最も大きな転換点となったのが、2004年の東京進出です。
東京都あきる野市にある東京サマーランドの敷地内に、東京ムツゴロウ動物王国が開園したのは2004年7月。北海道で培ってきた動物とのふれあいを、首都圏の子どもたちや家族にも体験してもらうことが狙いでした。
しかし、東京での事業は想定どおりに進みませんでした。
最大の問題は来場者数が伸びなかったこと
2007年の閉園を伝えた当時の報道によると、東京施設は年間約30万人の入場者を見込んでいました。しかし、実際の年間来場者数は約10万〜12万人程度にとどまり、開園から約3年半の累計でも約31万人でした。
年間30万人という目標に対して、実績はおよそ3分の1。施設の維持・運営を続けるには厳しい数字だったことがうかがえます。
運営会社の経営難から閉園へ
当初、東京施設の経営は運営会社に委託されていました。しかし、集客が計画を大きく下回り、2006年7月には運営会社が事実上倒産します。
その後は畑さんの個人事務所が運営を引き継ぎましたが、入場者数は回復せず、経営を立て直すことはできませんでした。
そして2007年10月に閉園が発表され、同年11月25日、東京ムツゴロウ動物王国は営業を終了しました。
東京ムツゴロウ動物王国は、入場者数の伸び悩みと運営会社の経営難を経て、2007年11月25日に閉園した。
閉園後の2008年には、畑さんが従業員への賃金未払い問題で書類送検されたことも報じられています。また、東京進出に伴って3億円ともいわれる借金を抱えたものの、その後返済したとスポーツ紙が伝えています。書類送検は刑事手続き上の事実であり、それだけで有罪を意味するものではありません。
東京進出の失敗は何を意味していたのか
東京進出の失敗を、単にムツゴロウさんの知名度不足と考えるのは正確ではありません。
畑さん自身と北海道の動物王国には、テレビを通じて全国的な知名度がありました。それでも、テレビで動物たちの生活を見ることと、実際に施設へ足を運んで料金を支払うことは別の行動です。
北海道の動物王国は、畑さんと動物たちが長い時間をかけて築いてきた生活そのものが魅力でした。一方、東京の施設は、都市部の来場者に継続的に訪れてもらう観光事業として成立させる必要がありました。
動物の飼育やスタッフの配置には、来場者数が少ない日でも必要となる運営コストがあります。こうした固定的な負担に対し、想定した集客を確保できなかったことが経営難の大きな要因になったと考えられます。
つまり、動物と暮らす理想を実現することと、その環境を都市型の有料施設として維持することの間に、大きな隔たりがあったのです。
閉園の直接的な背景は、報道された集客不振と運営会社の経営難です。住民の反対や移転計画を巡る問題も当時報じられましたが、それらだけを閉園の決定的な原因とすることはできません。
【混同注意】ムツゴロウ動物王国とムツ牧場の違いとは?
ムツゴロウ動物王国を調べる人が混乱しやすいのが、「ムツ牧場」という施設の存在です。
名前が似ているため、動物王国がそのまま中標津町へ移転して現在も営業していると思われることがあります。しかし、浜中町の動物王国と中標津町のムツ牧場は、開設時期も場所も異なる施設です。
2つの施設を比較
ムツ牧場は1978年に開設された施設です。畑さんが北海道の在来馬である北海道和種、いわゆる道産子に親しみ、馬との暮らしを大切にしてきたこととも深く関係しています。
2023年のスポーツニッポンの報道では、ムツ牧場には畑さんが愛した馬ゴンベとポンコの血統を引き継ぐ馬など、当時11頭が飼育されていました。また、畑さんの死後は、これまでも実質的に運営を担ってきた娘夫婦が引き継ぐ方針と報じられています。
2026年もムツ牧場で乗馬体験ができる?
中標津町観光協会が公開する2026年度のアクティビティ一覧には、現在も「乗馬(ムツ牧場)」が掲載されています。
ただし、観光協会の案内では、ムツ牧場の詳細をウェブ上で閲覧できないため、直接問い合わせるよう案内されています。掲載されていることと、希望日に必ず体験できることは同じではありません。
乗馬を目的に訪問する場合は、営業日や予約方法、受け入れ状況を事前に確認する必要があります。
このように、東京の施設が閉園したからといって、畑さんが北海道で築いたすべての活動が消滅したわけではありません。ムツ牧場は、動物王国とは異なる形で受け継がれている施設です。
【動物たちはその後どうなった?】畑正憲さんの晩年と2023年の死去
東京ムツゴロウ動物王国が閉園すると、気になるのはそこで暮らしていた犬や猫、馬たちの行方です。
閉園後、多くの動物は北海道へ戻った
2007年の閉園に際しては、東京の施設で暮らしていた犬や猫、馬などの多くが北海道へ戻ることが報じられました。北海道浜中町や中標津町が、その後の活動の拠点となりました。
東京の施設には犬や猫だけでなく馬も暮らしており、動物たちを北海道へ移す作業は閉園に伴う大きな課題でした。
ただし、当時の動物全頭について、その後の移動先や寿命までを網羅した公的な一覧が公開されているわけではありません。現在のムツ牧場で暮らす馬たちと、2007年当時の東京施設の動物全頭を同一視することはできません。
畑正憲さんは中標津町で晩年を過ごした
東京施設の閉園後、畑さんは北海道中標津町のログハウスを拠点に生活しました。
2021年に文春オンラインが掲載したロングインタビューでは、畑さんは自宅で大型犬1頭と猫1匹と暮らし、近くの牧場に馬がいる生活を紹介していました。
かつて多くの動物たちと暮らしていた畑さんですが、晩年は自分の手で世話ができる範囲を大切にしていたことが伝わってきます。
2023年4月5日、87歳で死去
畑正憲さんは2023年4月5日午後5時53分、心筋梗塞のため北海道中標津町の病院で亡くなりました。87歳でした。
1935年生まれの畑さんは、動物王国の創設だけでなく、作家、テレビ出演者、映画監督として幅広い活動を続けてきました。
『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』が残した映像や数多くの著作は、現在も畑さんの活動を知る手掛かりになっています。
畑さんの死去によって、本人が中心となって築いた時代は一区切りを迎えました。しかし、ムツ牧場の運営を引き継ぐ動きや、家族による情報発信は続いています。
【2026年最新情報】ムツゴロウ動物王国は現在も活動している?
2026年11月現在のムツゴロウ動物王国を理解するには、実際の施設運営と、畑さんの活動を受け継ぐ情報発信を分けて考える必要があります。
東京ムツゴロウ動物王国は2007年に閉園しており、かつての東京施設が現在も営業しているわけではありません。一方、北海道ではムツ牧場を中心に馬との暮らしが続き、畑さんの作品や動物たちに関する情報も発信されています。
2026年11月2日、2027年度カレンダーの発売を告知
注目したいのは、ムツゴロウ動物王国のブログが2026年11月2日に更新した「2027年度『ムツゴロウ動物王国カレンダー』発売のお知らせ」です。
このカレンダーには、ムツ牧場の放牧地を走る馬たちや、エゾリス、ブログに登場する犬など、北海道で暮らす動物たちの写真が掲載されています。
また、2026年10月25日のブログ記事では、4匹の子犬の成長についても紹介されていました。北海道の牧草地や森の様子とともに、動物たちの現在の生活を伝える発信が続いています。
これは、かつての動物王国がそのまま営業再開したという意味ではありません。王国の名前を受け継ぐブログや商品販売を通じて、畑さんの世界観を現在の活動につなげているということです。
畑正憲さんの作品展も継続
公式ブログでは、2026年4月20日から5月2日まで銀座で開催された畑正憲さんの絵画個展「ムツゴロウ世界をまわる」についても案内されていました。
動物の生態を観察して文章や映像で伝えてきた畑さんには、絵画という別の表現方法もありました。動物たちの姿や自然の風景を描いた作品は、テレビ番組だけでは知ることのできない畑さんの一面を伝えています。
現在のムツ牧場を訪れたい場合の確認事項
中標津町観光協会の2026年度アクティビティ一覧では、ムツ牧場での乗馬が紹介されています。ただし、ウェブ上での詳細確認はできず、直接問い合わせる形式です。
訪問を考えている人は、次の点を確認するとよいでしょう。
- 現在の乗馬体験の実施状況
- 希望日の予約受付と営業時間
- 体験できるコースと所要時間
- 服装や年齢などの参加条件
- 天候による変更や中止の有無
ムツ牧場は、かつての東京ムツゴロウ動物王国を再現したテーマパークではありません。馬との交流を中心とする牧場として考えると、施設の現在の姿を正しく理解できます。
2026年の最新情報として重要なのは、東京施設の復活ではなく、北海道での牧場活動と家族による発信が続いていることです。
【動物王国ムツゴロウに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:ムツゴロウ動物王国は現在も営業していますか?
A1:2004年に開園した東京ムツゴロウ動物王国は、2007年11月25日に閉園しています。北海道中標津町には別施設のムツ牧場があり、2026年度の観光協会の案内にも乗馬体験が掲載されています。
Q2:ムツゴロウ動物王国が閉園した理由は何ですか?
A2:主な理由は集客不振と運営会社の経営難です。年間30万人を見込んでいた東京施設の来場者数が年間約10万〜12万人にとどまり、2006年7月に運営会社が事実上倒産。その後、畑さん側が運営を引き継ぎましたが、2007年に閉園しました。
Q3:ムツゴロウ動物王国とムツ牧場は同じ施設ですか?
A3:別の施設です。動物王国は1972年に北海道浜中町で開設され、ムツ牧場は1978年に北海道中標津町で開設されました。ムツ牧場は馬の飼育や乗馬体験を中心としています。
Q4:畑正憲さんはいつ亡くなりましたか?
A4:2023年4月5日、心筋梗塞のため87歳で亡くなりました。北海道中標津町の病院で亡くなったことが報道されています。
Q5:ムツゴロウ動物王国の動物たちはその後どうなりましたか?
A5:2007年の東京施設閉園時には、多くの犬や猫、馬が北海道へ戻ることが報じられました。ただし、個々の動物すべてのその後が公表されているわけではありません。現在はムツ牧場の馬たちや北海道で暮らす犬たちの様子がブログなどで発信されています。
Q6:2026年現在、ムツ牧場を訪問できますか?
A6:中標津町観光協会の2026年度案内には乗馬体験が掲載されています。ただし、詳細はウェブ上で確認できないため、訪問前にムツ牧場へ直接問い合わせ、営業状況や予約条件を確認してください。
まとめ:ムツゴロウ動物王国の歴史は北海道で受け継がれている
ムツゴロウ動物王国は、1972年に北海道浜中町で始まりました。畑正憲さんが動物たちと暮らしながら、その魅力を著作やテレビ番組で伝えたことで、全国的に知られる存在となりました。
2004年には東京サマーランド内に東京ムツゴロウ動物王国が開園しましたが、年間の来場者数が想定を下回り、運営会社の経営難も重なって2007年11月25日に閉園しました。
ただし、閉園したのは東京の施設です。1978年に開設された中標津町のムツ牧場とは別の施設であり、こちらは畑さんの死後も家族が運営を引き継ぐ方針が報じられています。
2026年11月現在も、ムツゴロウ動物王国のブログでは動物たちの暮らしやカレンダー、畑さんの作品に関する情報が発信されています。2027年度版カレンダーの発売告知は、王国の名前が今も受け継がれていることを示す新しい動きです。
ムツゴロウ動物王国の歴史を調べる際に大切なのは、次の3点です。
- 1972年:北海道浜中町に始まった動物王国の原点。
- 2007年:東京進出後の集客不振と経営難による東京施設の閉園。
- 2026年:中標津町のムツ牧場と、家族による情報発信を通じた活動の継承。
施設としてのムツゴロウ動物王国は、かつての形では存在しません。しかし、畑正憲さんが動物たちと築いた暮らしや、その姿を伝えた映像・著作は今も残っています。東京進出の失敗だけで歴史を語るのではなく、北海道から始まった動物との共生という原点に目を向けることが、ムツゴロウ動物王国を理解するうえで欠かせません。