2018年12月31日、さいたまスーパーアリーナで行われたメイウェザー対那須川天心の試合は、開始からわずか139秒で決着した。
RIZIN公式試合レポートに記録された結果は次のとおりだ。
Cygames presents RIZIN.14 スペシャルエキシビション
フロイド・メイウェザーTKO

1R 2分19秒
那須川天心
2018年12月31日・さいたまスーパーアリーナ
勝敗:メイウェザーの1ラウンドTKO勝利
試合開始から終了までの流れ
ゴングが鳴ると、那須川は積極的に前へ出て、メイウェザーにパンチを当てる機会をうかがった。
メイウェザーは笑みを浮かべながら相手の攻撃をかわし、落ち着いたディフェンスを見せる。
しかし、那須川の左ストレートが当たった直後、メイウェザーの攻撃が加速する。
- 最初のダウン: メイウェザーの右フックで那須川がダウン。
- 2度目のダウン: 右ボディから右フックにつなぐコンビネーションが決まる。
- 3度目のダウン: 左フックを受けて那須川が再び倒れる。
- 試合終了: 那須川陣営がタオルを投入し、1R2分19秒でTKOとなる。
この一連の攻防は、RIZIN公式の試合レポートにも記録されている。
重要なのは、単にメイウェザーが強烈なパンチを当てたというだけではない。那須川が攻撃に出た瞬間を捉え、カウンターを返し、さらに倒れた相手に連続して攻撃を重ねた点にある。
【対戦の経緯】一度は中止騒動も!メイウェザーと那須川天心はなぜ戦った?
この試合が実現するまでには、短期間ながら大きな混乱があった。
発端は2018年11月5日。RIZINが記者会見を開き、大晦日にメイウェザーと那須川が対戦すると発表したことだった。
メイウェザーは当時、プロボクシング50戦無敗のスーパースター。一方の那須川は、キックボクシング界で圧倒的な実績を積み上げていた20歳の若手選手だった。
世界的なボクシング王者と日本のキックボクシング王者という組み合わせは、発表直後から大きな話題になった。
発表から試合実施までの時系列
| 時期 | 関係者・出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 2018年11月5日 | RIZIN | メイウェザー対那須川のカードを発表 |
| 11月8日 | メイウェザー | SNSで公式戦への合意を否定し、混乱が発生 |
| 11月10日 | RIZIN | 基本契約をもとに実施へ向けた協議を継続すると発表 |
| 11月17日 | 榊原信行実行委員長 | メイウェザー側との誤解が解消したと報告 |
| 12月7日 | 両陣営 | 3分3ラウンドのボクシングルールなどを発表 |
| 12月30日 | 両選手 | 前日計量で4.6kgの体重差が判明 |
| 12月31日 | 両陣営 | グローブの条件を最終調整し、試合を実施 |
| 12月31日 | RIZIN.14 | 1R2分19秒、メイウェザーのTKO勝利 |
なぜメイウェザーは一度対戦を拒否したのか
2018年11月8日、メイウェザーは自身のSNSで、那須川との公式戦に同意していなかったという趣旨の説明を発信した。
当初、自身が想定していたのは、RIZINの選手を相手にした3分3ラウンドのエキシビションだったという。
一方、RIZIN側は11月10日の公式発表で、メイウェザー側と締結した基本契約をもとに協議を続けると説明した。
その後、榊原信行実行委員長が渡米して話し合いを行い、11月17日に誤解が解消されたことを報告。大晦日の対戦が正式に実施される方向でまとまった。
この経緯から分かるのは、当初から通常のプロボクシング公式戦として計画されていたわけではないということだ。
最終的に成立したのは、世界的なボクシングスターと日本の格闘技スターが、それぞれの知名度と競技実績を背景に実現させた特別なエキシビションだった。
【ルールと体重差】147ポンド契約の実態と8オンスグローブの誤解
この試合を理解するうえで、最も重要なのがルールと体重の違いだ。
検索では「147ポンド」「8オンスグローブ」という条件がよく取り上げられるが、実際には試合当日にグローブの条件が変更されている。
試合に適用された主なルール
| 項目 | 試合条件 |
|---|---|
| 競技形式 | スペシャルエキシビション |
| 競技ルール | ボクシングルール |
| ラウンド数 | 3ラウンド |
| 1ラウンド | 3分 |
| 契約体重 | 147ポンド以下 |
| キログラム換算 | 約66.7kg以下 |
| 攻撃手段 | パンチのみ |
| 判定 | ジャッジなし |
| KO・TKO | あり |
| 公式戦績への反映 | ボクシング・MMAともに反映されない |
| 最終グローブ条件 | メイウェザー10オンス、那須川8オンス |
147ポンドは何キロ?実際の体重差は4.6kg
147ポンドは約66.68kgで、プロボクシングのウェルター級に相当する契約体重だ。
ここで注意したいのは、147ポンドが両選手の実際の計量体重を意味するわけではないこと。
2018年12月30日に行われた前日計量では、次の数字が発表された。
- メイウェザー:66.7kg
- 那須川天心:62.1kg
- 体重差:4.6kg
つまり、契約体重の上限に近い体重で計量を終えたメイウェザーに対し、那須川は約4.6kg軽かった。
那須川が普段戦っていたRISEフェザー級の契約体重は57.15kg。メイウェザーが主戦場としていたウェルター級とは、階級上の隔たりもあった。
8オンスグローブは両者共通だったのか?
この点は、ネット上で情報が混同されやすい。
2018年12月7日のルール発表時点では、両者ともRIZIN製の8オンスグローブを使用する予定だった。
しかし、前日計量で約4.6kgの体重差が明らかになり、RIZIN側が安全面を考慮して条件変更を交渉した。
そして試合当日の12月31日、最終的に次の条件で合意した。
メイウェザー10oz
10オンスグローブを使用
那須川天心8oz
8オンスグローブを使用
これはメイウェザー側に大きめのグローブを着用してもらうことで、体重差を考慮したハンディキャップを設けるためだった。
日刊スポーツや格闘技専門メディアのeFightも、試合当日に10オンス対8オンスへ変更された経緯を報じている。
したがって、正確には「当初は両者8オンス、最終的な試合条件はメイウェザー10オンス・那須川8オンス」と整理するのが正しい。
【TKOの理由を分析】なぜ那須川天心はわずか2分19秒で敗れたのか?
試合の決着を、単純に体重差だけで説明することはできない。
大きかったのは、競技ルールの違いとメイウェザーが積み重ねてきたボクシング経験だ。
1. キックボクシングの武器を封じられた
那須川の最大の武器は、パンチだけではない。
キック、膝蹴り、距離を変えるステップなどを組み合わせ、相手の攻撃を予測しにくくすることができる。
しかし、今回の試合ではボクシングルールが採用された。
当然ながらキックは禁止。那須川は得意とする攻撃の選択肢を失い、パンチだけでメイウェザーと勝負する必要があった。
一方、メイウェザーにとっては長年磨き続けてきた専門競技そのものだった。
2. メイウェザーのディフェンスとカウンター技術
メイウェザーの強みは、攻撃力だけではない。
相手のパンチを最小限の動きでかわし、攻撃が終わる瞬間に正確なカウンターを返す技術にある。
那須川が左ストレートを当てた場面はあったものの、その直後にメイウェザーの右フックが決まった。
RIZIN公式レポートに記された試合展開からも、メイウェザーが相手の攻撃に合わせて反撃する能力を発揮したことが分かる。
3. 体重差がパンチの交換に影響した
4.6kgという体重差は、格闘技では軽視できない数字だ。
体重が大きい選手は、一般的にパンチの衝撃やフィジカル面で有利になりやすい。
特に今回のように、パンチだけで勝負する競技では、相手の攻撃を受ける際の身体的負担も無視できない。
メイウェザーは10オンスグローブを使用する条件になったが、体格そのものの差がなくなったわけではなかった。
4. ボクシング専門家としての経験値が違った
メイウェザーは1996年にプロデビューし、2017年までのプロボクシングキャリアで50勝無敗を記録した選手だ。
その間に世界5階級を制覇し、世界トップクラスのボクサーたちと戦い続けてきた。
那須川もキックボクシングでは優れた実績を持っていたが、2018年当時はプロボクシングの経験を積んでいた選手ではない。
つまり、単なる年齢や体重の比較ではなく、ボクシングという競技における経験値の違いが大きかった。
那須川天心の実力が否定された試合ではない
ここは非常に要点だ。
この試合で那須川が敗れたからといって、キックボクサーとしての実績や能力まで否定されるわけではない。
そもそも、キックボクシングとボクシングは似ているようで、距離の取り方、攻撃の組み立て、守備の選択肢が異なる。
得意競技の武器を制限された状態で、別競技の世界的王者と戦ったという特殊性を理解する必要がある。
【試合動画と両者の戦績】2018年の一戦はどこで見られる?
試合映像を見直したい場合、まず確認したいのはRIZINの公式アーカイブだ。
公式の試合動画について
RIZINは2022年9月22日、RIZIN 100 CLUBでメイウェザー対那須川戦を含む「RIZIN.14」の全試合フルファイト映像を公開したと発表している。
当時の試合を確認する場合、公式アーカイブを利用するのが確実性の高い方法だ。視聴条件や現在の配信状況はサービス側の案内で確認したい。
映像を見る際は、次の3点に注目すると試合内容を理解しやすい。
- 試合開始直後、メイウェザーがどのように那須川の攻撃をかわしているか。
- 那須川の左ストレートが当たった直後、どのように反撃へ移行したか。
- 連続ダウンに至るまで、メイウェザーがどのようにパンチを組み立てているか。
短いハイライトだけでは分からない、試合全体の距離感や攻防の変化を確認できる。
フロイド・メイウェザーのプロボクシング戦績
50勝0敗
27KO・プロボクシング戦績
プロ活動期間:1996~2017年
メイウェザーは、プロボクシングで50戦50勝という無敗記録を残した。
世界5階級制覇を達成し、卓越したディフェンス技術とカウンターを武器に長期間にわたりトップに君臨した。
この50勝0敗という記録に、那須川とのエキシビションの結果は加算されていない。
つまり、那須川戦でTKO勝利を収めても、メイウェザーの公式プロ戦績は50勝0敗のままだ。世界ボクシング評議会(WBC)も、27KOを含む無敗の50勝という記録を紹介している。
那須川天心は試合後、ボクシングの世界へ
8勝2敗
プロボクシング戦績・2026年11月時点
3KO・WBOアジアパシフィックバンタム級王者
那須川は2018年の敗戦後も格闘家として活動を続け、2023年にプロボクシングへ転向した。
2024年にはWBOアジアパシフィック・バンタム級王座を獲得。2025年にはジェイソン・モロニーらと対戦し、世界トップクラスの選手との経験を積んだ。
2026年4月にはファン・フランシスコ・エストラーダとのWBC世界バンタム級挑戦者決定戦で勝利した一方、同年9月27日の井上拓真とのWBC世界バンタム級タイトルマッチでは判定負けを喫している。
帝拳ジムの公式プロフィールでは、2026年9月の試合終了時点でプロ戦績は10戦8勝(3KO)2敗となっている。
2018年のメイウェザー戦は、那須川の競技人生における一つの転換点として振り返ることができる。
【那須川天心とメイウェザー】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:那須川天心とメイウェザーの試合結果は?
A1:2018年12月31日に開催されたRIZIN.14で、メイウェザーが1ラウンド2分19秒、TKOで勝利した。那須川陣営がタオルを投入して試合が終了した。
Q2:那須川天心とメイウェザーの体重差は何キロ?
A2:2018年12月30日の前日計量では、メイウェザーが66.7kg、那須川が62.1kg。体重差は4.6kgだった。
Q3:試合のルールはキックボクシングだった?
A3:いいえ。ボクシングルールで行われた。キックは禁止され、3分3ラウンド、判定なしのスペシャルエキシビションだった。
Q4:グローブは両者とも8オンスだった?
A4:当初は両者8オンスの予定だったが、試合当日に条件が変更された。実際にはメイウェザーが10オンス、那須川が8オンスを使用した。
Q5:メイウェザーの公式戦績に那須川戦は含まれる?
A5:含まれない。今回の試合はエキシビションであり、メイウェザーのプロボクシング公式戦績50勝0敗には加算されていない。
Q6:那須川天心はメイウェザーに負けた後、ボクシングに転向した?
A6:那須川は2023年にプロボクシングへ転向した。2026年にはWBC世界バンタム級タイトルにも挑戦している。
まとめ:【プロの結論】那須川天心VSメイウェザー戦から分かる格闘技の本質
2018年12月31日の那須川天心対フロイド・メイウェザー戦は、1R2分19秒でメイウェザーがTKO勝利を収めた歴史的なエキシビションだった。
この試合を正しく理解するには、次の3つの視点が欠かせない。
1. 競技の違い: キックボクシングの実力とボクシングの実力は同じ基準では比較できない。
2. 身体的な条件差: 前日計量では4.6kgの体重差があり、グローブにも最終的なハンディキャップが設けられた。
3. 専門技術と経験: メイウェザーは50戦無敗のボクシング王者であり、パンチの防御とカウンターに圧倒的な経験を持っていた。
特に重要なのは、この試合の勝敗を、そのまま両者の格闘家としての総合的な優劣に置き換えないことだ。
那須川はキックボクシングで築いた実績を持ち、その後はプロボクシングという新しい舞台に進んだ。メイウェザーはボクシングの歴史に名を残す無敗の元世界王者である。
異なる競技で頂点を目指してきた2人が、ボクシングという共通のルールで対戦したからこそ、この試合は今も語り継がれている。
2026年の視点で振り返れば、単なる大晦日の話題性だけではなく、競技特性、体重差、専門技術の重要性を考えるうえでも興味深い一戦だった。