ディープフェイクポルノを見分けるには、画像の細部だけでなく、投稿者、公開時期、元画像の出所、関連情報などを総合的に確認する必要があります。
2026年現在、生成AIの性能向上によって、以前は目立っていた顔や手の不自然さが減少しています。スマートフォンの画面で一見しただけでは、真偽を判断できないケースもあります。
偽物を疑うべき5つのチェックポイント
1. 顔や身体の細部に不自然な部分がないか
- 顔の輪郭と首の境界が不自然
- 肌の質感や色が周囲と一致していない
- 髪の毛や耳の輪郭がぼやけている
- 指や歯、目の描写に不自然さがある
2. 光や影が一致しているか
顔に当たる光と身体に当たる光が異なっていたり、背景の影と人物の位置関係が不自然だったりする場合は注意が必要です。
3. 動画の前後で描写が変化していないか
動画の場合、連続する場面で顔の輪郭が変わる、背景の物体が突然消える、動作のつながりが不自然になるといった現象が手掛かりになります。
4. AI生成を示す透かしやラベルがないか
生成AIサービスや動画投稿プラットフォームによっては、AI生成を示すラベルやウォーターマークが付与されます。
ただし、透かしがないからといって実写とは限りません。
5. 投稿者と元情報を確認する
投稿者の過去の投稿、アカウントの開設状況、画像の初出、本人の公式発信などを照合します。
画像だけで判断せず、複数の情報源を比較することが大切です。
AI生成画像の判定ツールはどこまで信用できる?
AI生成画像を判定するツールは、画像や動画の特徴を分析して、AIによって生成・加工された可能性を示すものです。
ただし、判定結果は確定的な証拠ではありません。
日本ファクトチェックセンターが2026年1月7日に公開した解説でも、透かし、描写の破綻、関連情報との照合、検証ツールの活用という複数の確認方法が紹介されています。
同センターは、検証ツールについて、画質が低下した画像では精度が落ちる弱点があり、最終確認の補助として使っていると説明しています。
| 判定方法 | 確認できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 透かし・ラベル | AI生成の表示 | 表示がない場合もある |
| 画像の細部 | 描写の不自然さ | 高性能AIでは見つけにくい |
| 投稿者の確認 | 発信元や投稿傾向 | アカウント情報も偽装され得る |
| 関連情報との照合 | 元情報との矛盾 | 情報が不足する場合がある |
| AI判定ツール | 生成・加工の可能性 | 誤判定や精度低下がある |
特に注意したいのは、性的な被害画像を安易に外部のAI判定サイトへアップロードしないことです。判定のために第三者サービスへ画像を送ることで、新たなプライバシー上のリスクが生じる可能性があります。
プロの判断基準は、AI判定ツールの数値だけで本物・偽物を決めないことです。 複数の証拠を組み合わせても判断できない場合は、真偽不明として扱うのが適切です。
【被害時の対処法】ディープフェイク画像の削除依頼と相談窓口

自分の顔や名前を使った性的画像が公開された場合、最初にすべきことは、被害の拡大を防ぎながら証拠を確保することです。
本人が実際に撮影された画像ではないからといって、削除や相談を諦める必要はありません。
STEP1:投稿の証拠を保存する
最初に、次の情報を記録します。
- 投稿されているページのURL
- 投稿者のアカウント名・ID
- 投稿日時と確認した日時
- 投稿内容や公開範囲
- 脅迫や金銭要求があれば、そのメッセージや送信者の情報
可能であれば、投稿画面やアカウント情報のスクリーンショットも保存します。
警察庁も、削除依頼や警察への相談に備えて、サイト名、URL、投稿者、投稿日時、内容などを記録するよう案内しています。
なお、被害画像を第三者に転送したり、SNSで注意喚起のために再投稿したりすることは避けてください。
STEP2:投稿サイトやSNSに削除を申請する
続いて、投稿されたプラットフォームの通報機能を利用します。
申請時には、次のような項目を確認してください。
- 同意のない性的画像・動画
- 非同意の親密な画像(Non-consensual intimate imagery)
- ディープフェイク・画像の無断加工
- なりすまし・肖像権やプライバシーの侵害
削除申請では、本人が画像の被写体であること、性的な加工に同意していないこと、投稿URLなどを具体的に伝えます。
同じ画像が複数のサイトに掲載されている場合は、それぞれの運営者に削除を申請する必要があります。
STEP3:専門の相談窓口を利用する
削除方法が分からない場合や、投稿者への対応に不安がある場合は、公的な相談窓口を利用できます。
1. 違法・有害情報相談センター
総務省委託事業
インターネット上の名誉毀損やプライバシー侵害について、専門相談員が削除対応の方法を助言します。
警察庁が案内する公的な相談先です。
2. 法務省の人権相談
インターネット上の人権侵害について相談できます。削除依頼の方法を助言するほか、事案に応じて法務局がプロバイダ等に削除要請を行います。
3. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
医療、心理、法律などの専門的な支援につながる窓口です。被害による精神的な苦痛や生活への影響についても相談できます。
4. 警察の性犯罪被害相談電話
性犯罪被害に関する相談を受け付け、発信地域を管轄する都道府県警察につながります。警察庁の案内では24時間・無料で対応しています。
5. 警察相談専用電話
犯罪に当たるか判断できない場合や、脅迫、嫌がらせなどを含めて警察に相談したい場合に利用できます。緊急の危険がある場合は110番です。
これらの窓口は役割が異なります。画像の削除方法を知りたい場合は違法・有害情報相談センター、性的な被害による心理的・法的支援を求める場合は#8891、警察への相談を希望する場合は#8103や#9110が選択肢になります。
STEP4:脅迫や金銭要求があれば警察に相談する
「画像を公開されたくなければ金を払え」「家族や勤務先に送る」といった要求があれば、削除交渉だけで解決しようとせず、警察に相談してください。
- 相手に追加の個人情報を渡さない
- 金銭を支払う前に警察や専門家へ相談する
- 脅迫メッセージや送金要求を保存する
- 投稿者に直接接触して事態を悪化させない
警察庁は、性的画像について脅された場合、画像がまだ公開されていない段階でも警察などへ相談するよう呼びかけています。
STEP5:必要に応じて弁護士に削除・損害賠償を相談する
画像が削除されない場合や、投稿者を特定したい場合には、弁護士への相談も検討できます。
具体的には、次のような法的手段が考えられます。
- プラットフォームへの削除請求
- 発信者情報開示請求
- プライバシー侵害などを理由とする損害賠償請求
- 権利侵害を理由とする差止請求
ただし、どの手段が利用できるかは、投稿内容、権利侵害の状況、証拠、相手方の特定可能性などによって変わります。
削除が実現しても、すべての複製データが消えるとは限りません。早い段階から複数の窓口を利用することが、被害の拡大を抑えるうえで大切です。
【よくある質問】ディープフェイクアダルトに関するFAQ
Q1:ディープフェイクアダルトを作成するだけでも違法ですか?
A1:作成行為だけで一律に犯罪になるとは限りません。ただし、実在人物の肖像や人格的利益を侵害する場合、児童ポルノに該当する場合、わいせつ物の製造・販売などに該当する場合には、刑事責任や民事責任が問題になります。画像の内容や利用目的、対象者、公開方法などによって判断が異なります。
Q2:AIで作られた偽物でも削除を依頼できますか?
A2:可能です。本人の顔や名前を使った性的画像が無断で公開されている場合、プラットフォームの通報窓口や専門相談機関に削除を申請できます。実際の撮影画像ではないことだけを理由に、被害を放置する必要はありません。
Q3:ディープフェイクポルノは画像を見ただけで判別できますか?
A3:必ずしも判別できません。顔や手の描写、光と影、動画の動き、透かし、投稿者の情報などを確認する方法がありますが、高精度の生成AIでは不自然な部分が少なくなっています。AI判定ツールも補助的な手段として利用し、単独の結果で断定しないことが大切です。
まとめ:ディープフェイクアダルトは同意と権利を守る視点が重要
ディープフェイクアダルトは、AIによる画像・動画生成技術が悪用されることで生まれる、深刻なプライバシー・人権問題です。
2026年11月現在、日本では既存の刑法、私事性的画像記録提供等被害防止法、性的姿態撮影等処罰法、民法などを組み合わせて対応する法制度が中心となっています。法務省による2026年の報告書も、生成AIによる肖像や声の無断利用に関する民事責任を考えるうえで重要な動きです。
読者が押さえておきたい判断基準は、次の4点です。
1. 技術と同意は別問題: AIで作った画像であっても、本人の顔や人格を無断で性的に利用してよい理由にはならない。
2. 偽物でも被害は成立し得る: 実際に撮影された画像でなくても、プライバシーや名誉、人格的利益が侵害される可能性がある。
3. 真偽判定は複数の証拠で行う: 画像の見た目やAI判定ツールの数値だけで結論を出さない。
4. 被害に遭ったら早期に対応する: 証拠を保存し、削除申請と公的相談窓口への連絡を進める。
AI技術の発展によって、実在する人物と生成された人物の境界はますます分かりにくくなっています。しかし、どれほど技術が進歩しても、本人の同意を無視して性的な画像を作成・公開してよいことにはなりません。
ディープフェイク問題を考える際に最も大切なのは、画像が本物か偽物かだけではなく、その画像によって誰の権利が侵害され、誰が責任を負うべきなのかという視点です。
今後は、AI生成物の表示や検証技術の向上に加え、被害者が迅速に削除や救済を受けられる制度、プラットフォームの対応、生成AI事業者の安全対策が一層求められます。