2026年現在、生活保護の不正受給はどのくらい発生しているのか。厚生労働省が公表した最新の全国集計資料によると、令和6年度の不正受給件数は2万5,907件、金額は約114億円に上った。前年度と比較して件数・金額ともに増加しており、生活保護制度の適正な運用をめぐる課題が改めて浮き彫りになっている。
不正受給の内容を見ると、最も多いのはアルバイトや副業などによる稼働収入の無申告だ。年金、保険金、預貯金などの申告漏れも確認されている。一方、発覚のきっかけは通報だけではなく、福祉事務所による照会・調査が大部分を占める。返還義務や加算徴収、刑事罰についても、生活保護法第63条・第78条・第85条でそれぞれ仕組みが異なる。
この記事では、厚生労働省の令和6年度資料を中心に、2026年時点で確認できる生活保護不正受給の件数・金額・具体例・発覚経路を整理し、法律上の責任や通報方法まで詳しく解説する。
【2026年最新】生活保護不正受給は2万5,907件!件数・金額の推移と実態

生活保護不正受給の実態を把握するうえで、まず確認したいのが厚生労働省の全国統計だ。
2026年1月に公表された「全国厚生労働関係部局長会議資料(令和7年度詳細版資料)」には、生活保護法第78条に基づく不正受給の適用状況が掲載されている。
ここで示されている令和6年度の数字は、全国の福祉事務所における生活保護法施行事務監査の実施結果報告を集計したものだ。
令和6年度の不正受給件数と総額
令和6年度の主な数値は次のとおり。
- 不正受給件数:25,907件
- 不正受給金額:11,400,337千円(約114億円)
- 1件当たりの金額:約44万円
- 告発等:162件
- 保護の停止・廃止等:5,448件
前年度の令和5年度は23,786件、金額は9,735,638千円だった。
つまり、令和6年度は前年度と比べて2,121件増加し、金額も約17%増加している。
5年間の推移を見ると、次のようになる。
| 年度 | 不正受給件数 | 不正受給金額 |
|---|---|---|
| 令和2年度 | 32,090件 | 約126億円 |
| 令和3年度 | 27,891件 | 約110億円 |
| 令和4年度 | 24,683件 | 約106億円 |
| 令和5年度 | 23,786件 | 約97億円 |
| 令和6年度 | 25,907件 | 約114億円 |
令和2年度から令和5年度までは減少傾向だったが、令和6年度には増加へ転じた。
ただし、件数の増加だけで不正行為そのものが同じ割合で増えたとは判断できない。調査体制や発見能力の変化も、統計に影響するためだ。
2万5,907件は受給者全体の何%なのか
ここで注意したいのが、統計の読み方である。
2万5,907件という数字は、生活保護法第78条の適用状況を集計した件数であり、不正を行った人の実人数や、生活保護受給者全体に占める割合を直接示すものではない。
同じ人が複数の事案に関係する可能性もあり、受給者数と単純に割り算して不正受給率を算出することは適切ではない。
また、生活保護を受けている人の大部分は、制度に従って生活を維持している。限られた不正事案を理由に、受給者全体を不正と結び付ける見方には注意が必要だ。
【具体例】生活保護不正受給で多いのはアルバイト・副業・年金の申告漏れ
不正受給という言葉から、大規模な資産隠しや組織的な詐欺を想像する人もいるかもしれない。
しかし、厚生労働省の統計を見ると、実際に多いのは日常生活に関係する収入の申告漏れだ。
1.アルバイトやパート収入を申告しない
最も多いのが、働いて得た収入を福祉事務所に申告しないケースである。
具体例としては、次のようなものがある。
- パート勤務を始めたのに報告しない
- 日雇いや単発アルバイトの収入を申告しない
- 現金手渡しの給与を隠す
- 副業や在宅ワークの収入を報告しない
- 勤務先が変わったことを伝えず、収入額を少なく申告する
給与が銀行振込ではなく現金手渡しであっても、収入申告の義務がなくなるわけではない。
また、本人だけでなく、同じ生活保護世帯に属する家族の収入についても申告が必要になる。
2.年金や各種社会保障給付を申告しない
年金の無申告も代表的な不正受給の類型だ。
例えば、生活保護を受けている人が新たに年金の受給資格を得た場合や、年金額が変更された場合には、収入状況を福祉事務所に届け出る必要がある。
対象となる収入には、次のようなものがある。
- 老齢年金
- 障害年金
- 遺族年金
- その他の公的年金・給付金
年金を受け取っていても、必ず生活保護が打ち切られるわけではない。
生活保護費は、世帯の最低生活費と収入を比較して決定される。年金収入があっても最低生活費に満たない場合には、不足分について保護を受けられる仕組みだ。
問題になるのは、受給資格や実際の受給額を隠し、正しい保護費の算定を妨げる行為である。
3.生命保険金や解約返戻金を申告しない
生命保険に関係する収入や資産も、申告漏れが発生しやすい分野だ。
具体的には、次のようなものが挙げられる。
- 生命保険の満期保険金
- 保険契約の解約返戻金
- 入院給付金
- その他の保険金
保険金を受け取った場合、その性質や使途によって収入認定の扱いが異なることがある。
ただし、受給した事実を隠してよいわけではない。受け取りが発生した段階で担当ケースワーカーに相談することが重要だ。
4.預貯金や資産を申告しない
生活保護では、収入だけでなく資産の状況も確認される。
例えば、次のようなケースだ。
- 申請時に預貯金を正しく申告しない
- 保護開始後にまとまった資産を取得したのに届け出ない
- 第三者名義の口座を使って資産を隠す
- 不動産や資産売却による収入を報告しない
預貯金は、それ自体が給与のような収入というわけではない。しかし、保有資産の申告義務や保護の要件に関係するため、隠している場合には問題となる。
5.交通事故の補償金や慰謝料を申告しない
交通事故による損害賠償金や慰謝料なども、申告が必要となる場合がある。
生活保護受給中に交通事故に遭い、保険会社などから補償金を受け取ったにもかかわらず、その事実を報告しないケースが該当する。
補償金の種類や目的によって収入認定の取り扱いは異なるため、自己判断で申告不要と決めつけないことが大切だ。
【厚労省の内訳を比較】生活保護不正受給で最も多い項目は何か
令和6年度の不正受給25,907件について、厚生労働省は不正内容を複数の項目に分類している。
最も多いのは稼働収入の無申告で、全体の半数以上を占めている。
令和6年度の不正受給の内訳一覧
| 不正内容 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 稼働収入の無申告 | 13,357件 | 51.6% |
| 稼働収入の過小申告 | 2,559件 | 9.9% |
| 各種年金等の無申告 | 3,199件 | 12.3% |
| 保険金等の無申告 | 540件 | 2.1% |
| 預貯金等の無申告 | 292件 | 1.1% |
| 交通事故に係る収入の無申告 | 236件 | 0.9% |
| その他 | 5,724件 | 22.1% |
| 合計 | 25,907件 | 100.0% |
出典:厚生労働省「全国厚生労働関係部局長会議資料(令和7年度詳細版資料)」令和6年度実績。
統計から見える3つの特徴
特徴1:働いて得た収入の申告漏れが約6割
稼働収入の無申告と過小申告を合わせると15,916件となり、全体の約61.5%に達する。
つまり、生活保護不正受給の大きな問題は、就労による収入を正しく申告していないことにある。
働いていること自体が不正なのではない。収入を隠したり、実際より少なく申告したりすることが問題なのだ。
特徴2:年金の無申告も1割を超える
各種年金等の無申告は3,199件、全体の12.3%だった。
年金は定期的に支給されるため、収入認定に直接影響する。受給資格を取得した場合や支給額に変更があった場合には、速やかな報告が求められる。
特徴3:その他の項目も2割以上を占める
その他は5,724件で22.1%となっている。
この分類には、上記の主要項目以外のさまざまな事案が含まれる。単純にアルバイトや年金だけを対策すれば、不正受給の問題が解決するわけではないことが分かる。
【発覚する理由】生活保護不正受給の88.6%は福祉事務所の照会・調査
生活保護の不正受給は、どのようなきっかけで発覚するのか。
厚生労働省の令和6年度資料では、発見の契機についても具体的な数字が示されている。
発覚のきっかけは通報よりも行政調査が中心
令和6年度の発見の契機は次のとおりだ。
- 照会・調査:22,962件(88.6%)
- 通報・投書:1,599件(6.2%)
- その他:1,346件(5.2%)
注目すべきなのは、88.6%が照会・調査によって発見されているという点である。
通報や投書も一定数あるが、全体から見ると少数派だ。
「誰かに通報されなければ不正受給は分からない」という認識は、実際の統計とは一致しない。
福祉事務所が実施する主な調査
福祉事務所には、生活保護法に基づく調査の仕組みが設けられている。
特に重要なのが第28条と第29条だ。
第28条では、必要に応じて本人への報告要求や居住場所への立ち入り調査などが認められている。
第29条では、関係機関や金融機関などに対して、必要な資料の提供や報告を求めることができる。
調査対象の例は次のとおり。
- 税務部門:所得や課税状況
- 日本年金機構:年金の受給資格や支給状況
- 金融機関:預貯金などの資産状況
- 保険会社:保険契約や解約返戻金など
- 勤務先:就労状況や給与額
- その他関係機関:雇用保険や各種給付に関する情報
これらの情報を本人の申告内容と照らし合わせ、収入や資産に食い違いがないか確認する。
なお、行政が全国民の全口座を常時監視しているという意味ではない。生活保護法に基づき、保護の決定や実施などに必要な場合に個別の照会・調査を行う仕組みである。
課税調査で収入の食い違いが見つかるケース
代表的なのが、本人が申告した収入と税務情報に記録された所得の金額が一致しないケースだ。
例えば、実際には年間100万円の給与収入があるにもかかわらず、申告内容がそれより大幅に少ない場合、福祉事務所は勤務先や本人に確認を求めることがある。
ただし、課税情報との不一致が見つかっただけで、直ちに不正受給が確定するわけではない。
収入の対象期間や金額、必要経費、申告状況などを確認したうえで判断される。
通報や投書によって発覚する場合もある
通報・投書による発見は1,599件だった。
例えば、具体的な就労状況や収入の存在について情報提供があり、その内容をもとに福祉事務所が事実確認を進めるケースなどが考えられる。
ただし、単なるうわさや個人的な感情だけでは、不正受給の証拠にはならない。
行政側には、情報提供を受けた後に客観的な資料を確認し、事実関係を判断することが求められる。
【返還・加算徴収・罰則】生活保護法第63条・第78条・第85条の違い
生活保護の不正受給が発覚した場合、どのような処分が行われるのか。
ここで重要なのが、生活保護法第63条、第78条、第85条の違いだ。
これらは同じ返還制度ではなく、それぞれ適用される状況や法的な意味が異なる。
生活保護法第63条:資力がある場合の費用返還
第63条は、急迫した事情などによって資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に、その後、受け取った保護費に相当する金額の返還を求める制度だ。
例えば、次のようなケースが考えられる。
- 不動産を所有しているが、すぐに売却できないため保護を受けた
- 後日、保険金などの資力が明らかになった
- 急迫した事情のため、資産の換金前に保護が開始された
この場合、必ずしも不正受給を目的としていたわけではない。
保護の実施機関は事情を考慮し、返還額の全部または一部を免除できる場合もある。
生活保護法第78条:不正受給による費用徴収
第78条は、不実の申請やその他の不正な手段によって生活保護を受けた場合に適用される。
行政は、不正に受給した保護費の全部または一部を徴収できる。
加えて、法律上は徴収する金額に対して最大40%の加算徴収を行うことが認められている。
例えば、不正受給として徴収対象となった金額が100万円の場合、最大40万円を加算できる仕組みだ。
ただし、40%が必ず加算されるわけではない。法令に基づく行政判断によって決定される。
第63条と異なり、第78条は不正受給に対する費用徴収であり、返還額の全部または一部を免除する扱いとは異なる。
生活保護法第85条:悪質な不正受給に対する刑事罰
加えて、不実の申請や不正な手段によって生活保護を受けた場合には、第85条に基づく刑事罰の対象となる可能性がある。
2026年時点の法令では、次の罰則が定められている。
- 3年以下の拘禁刑
- 100万円以下の罰金
なお、2025年6月1日から刑罰の名称が変更されているため、従来の「懲役」という表記ではなく、現在の法律に合わせて「拘禁刑」とする必要がある。
すべての申告漏れが自動的に刑事事件になるわけではない。悪質性や不正の経緯、証拠などを踏まえ、告発や刑事手続きに進むかどうかが判断される。
第63条・第78条・第85条の比較
| 法律 | 主な対象 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 第63条 | 資力がある状態で急迫などの事情から保護を受けた場合 | 保護費の全部または一部を返還 |
| 第78条 | 不正な手段で保護を受けた場合 | 保護費の徴収・最大40%の加算 |
| 第85条 | 不実の申請などによる不正受給 | 3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
特に重要なのは、第63条と第78条の区別だ。
厚生労働省の運用基準では、不正受給の意思の有無だけでなく、本人の病状や家庭環境なども考慮して適用を判断することが示されている。
例えば、収入の申告方法を十分に理解できていなかったケースと、繰り返し説明を受けながら意図的に収入を隠したケースでは、事情が異なる。
申告漏れが見つかった場合には、事実確認を経て適切な法律上の取り扱いが決定される。
【通報・調査方法】生活保護不正受給の疑いがある場合はどうすればいい?
身近な人や近隣住民について、生活保護の不正受給が疑われる場合、どこに相談すればよいのか。
基本的な窓口は、対象者の居住地を担当する自治体の福祉事務所、または生活保護担当部署だ。
不正受給の疑いを通報する方法
情報提供を行う場合は、次のような情報を整理しておくと、自治体側が事実確認を進めやすくなる。
1. 対象者について把握している情報
2. 不正受給が疑われる具体的な内容
3. いつ、どのような状況で確認したのか
4. 収入や資産について把握している客観的な情報
5. 関連する資料がある場合は、その内容
通報や情報提供の受付方法は自治体によって異なるため、各自治体の公式窓口で確認したい。
匿名での情報提供を受け付けるかどうかについても、自治体ごとの案内を確認する必要がある。
通報された後の調査の流れ
情報提供を受けた福祉事務所は、内容に応じて必要な事実確認を行う。
一般的には、次のような流れになる。
- 情報提供の受付
- 提供された情報の確認
- 本人への説明要求や聞き取り
- 必要に応じた関係機関への照会
- 収入・資産などの客観的資料の確認
- 第63条または第78条などの適用について検討
- 必要に応じて保護費の変更や徴収、告発などを判断
通報されたという理由だけで、直ちに保護が停止されたり、犯罪が成立したりするわけではない。
また、個人的な疑いや推測だけで対象者の名前や住所、生活状況をSNSなどに公開することは避けるべきだ。
事実確認は行政機関に任せ、情報提供は適切な窓口を通じて行うことが重要となる。
生活保護受給者本人が申告漏れに気付いた場合
反対に、本人が収入や資産の申告漏れに気付いた場合は、できるだけ早く担当ケースワーカーに相談することが望ましい。
例えば、次のような状況だ。
- アルバイトを始めたが、申告していなかった
- 副業の収入が発生した
- 年金の受給が始まった
- 保険金や解約返戻金を受け取った
- 家族から仕送りを受けるようになった
給与明細、通帳、年金通知書、保険会社の支払通知書など、収入の内容を確認できる資料を準備すると説明しやすい。
自分で判断して報告を先延ばしにするよりも、早い段階で担当者に相談することが大切だ。
【よくある質問】生活保護不正受給に関するFAQ
Q1:生活保護を受けながらアルバイトをすると不正受給になりますか?
A1:アルバイトをすること自体は不正ではない。収入を正しく申告し、必要経費や勤労控除などを考慮して保護費が算定される。少額の収入であっても申告が必要となるため、担当ケースワーカーに相談することが大切だ。
Q2:生活保護の不正受給が発覚すると必ず逮捕されますか?
A2:必ず逮捕されるわけではない。行政による事実確認や返還・徴収の手続きが行われ、悪質な事案などでは刑事告発に進む場合がある。生活保護法第85条では3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められている。
Q3:生活保護の不正受給は匿名で通報できますか?
A3:情報提供の受付方法や匿名での通報の取り扱いは自治体によって異なる。居住地を担当する福祉事務所や自治体の生活保護担当部署に確認するとよい。通報後も、行政による客観的な事実確認が必要となる。
まとめ:【プロの結論】生活保護不正受給は統計の数字と法律の違いを正しく理解することが重要
2026年時点で確認できる厚生労働省の最新の全国集計では、令和6年度の生活保護不正受給は2万5,907件、金額は約114億円だった。前年度より増加しており、制度の適正な運用に向けた調査や確認の重要性が浮き彫りになっている。
不正内容の半数以上を占めるのは稼働収入の無申告であり、アルバイトや副業、年金、保険金などの申告漏れが主な問題となっている。また、発覚の88.6%は福祉事務所による照会・調査がきっかけであり、通報だけが発見経路ではない。
法律上の対応については、第63条が資力に応じた費用返還、第78条が不正受給に対する費用徴収と最大40%の加算、第85条が刑事罰という違いを押さえておきたい。
【プロの結論】
生活保護不正受給を考える際に重要なのは、不正を厳正に取り締まることと、正当に制度を利用する人の権利を守ることを両立させる視点だ。
収入が発生したからといって、直ちに生活保護が受けられなくなるわけではない。働くことをためらわせるような誤解を広げるのではなく、正しい収入申告と適切な保護費の算定を促すことが、制度本来の目的にも合致する。
今後も、行政による調査の適正化、申告制度の周知、個々の事情を考慮した返還・徴収の判断が求められる。統計の数字だけで受給者全体を評価せず、事実と法律に基づいて問題を判断することが、生活保護制度への信頼を守るうえで欠かせない。
主な根拠資料: 厚生労働省「全国厚生労働関係部局長会議資料(令和7年度詳細版資料)」、生活保護法、厚生労働省の生活保護実務・収入認定資料、e-Gov法令検索。統計値・法令の確認には以下の公的資料を使用しています。
出典資料
-
-
-