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【輸入検査の実態】厚生労働省の監視制度と残留抗菌薬の基準

如月 淳 如月 淳 • 更新: • 公開: • 読了約 13 分
目次

ブラジル産鶏肉が日本国内で流通するまでには、輸入食品監視制度に基づく複数の確認段階がある。

中心となるのは、厚生労働省が食品衛生法第23条に基づいて毎年度策定する「輸入食品監視指導計画」だ。輸出国での衛生管理、輸入時の検査、国内流通後の監視を組み合わせ、輸入食品の安全性を確保する仕組みになっている。

輸入時には何を検査している?

輸入食品の監視は、主に次の3段階で実施される。



輸入届出の審査

販売や営業に使用する目的で輸入する食品は、輸入の都度、厚生労働大臣への届出が必要。食品衛生法の規格基準に適合しているかなど、届出内容が審査される。


モニタリング検査

輸入実績や過去の違反率などを考慮して検査対象や件数を設定する。残留動物用医薬品、残留農薬、微生物などを確認する。


検査命令

違反の可能性が高い食品について、輸入の都度、輸入者に検査を命じる。検査で適合が確認されなければ輸入できない。

2025年度の輸入食品監視指導結果によると、日本全体では輸入届出約253万件に対し、214,030件の検査が実施され、791件に食品衛生法違反が確認された。

これはブラジル産鶏肉だけの数字ではなく、あらゆる輸入食品を対象とした実績だ。検査は全輸入品に一律で同じ項目を実施するのではなく、食品の種類や過去の違反状況などに応じて重点化されている。

ドキシサイクリンとエンロフロキサシンは何が問題?

今回の違反で名前が挙がった2種類の抗菌剤について、それぞれの特徴を整理しておこう。



ドキシサイクリン

テトラサイクリン系
細菌のタンパク質合成を阻害する抗菌剤。家畜や家きんの感染症治療などに使用される動物用医薬品の一つ。


エンロフロキサシン

ニューキノロン系
細菌のDNA複製に関係する酵素の働きを阻害する抗菌剤。動物用医薬品として使用される。


問題になるのは、これらの薬剤を使用したこと自体ではなく、食品中に残った成分が日本の残留基準を超えているかどうかだ。

食品衛生法では、動物用医薬品について食品ごとの残留基準を設定している。基準が設定されていない物質などには、原則として一律基準の0.01ppmが適用される仕組みもある。

重要なのは、ドキシサイクリンとエンロフロキサシンの違反が、2025年度の厚生労働省資料ではいずれも「基準値超過」に分類されていることだ。すべての検出を禁止する制度と混同してはいけない。

また、残留薬剤の基準違反と、サルモネラやカンピロバクターによる細菌汚染は別の問題だ。薬剤の残留検査に合格しても、細菌による食中毒リスクまでなくなるわけではない。

【国産・タイ産と比較】ブラジル産鶏肉の評判と安全性の実態

鶏肉ブラジル産安全性

ブラジル産鶏肉を選ぶ際、気になるのが国産やタイ産との違いだろう。

日本の鶏肉市場では、国産、ブラジル産、タイ産がそれぞれ異なる供給上の役割を担っている。ただし、原産国だけで安全性の優劣を決められるわけではない。

3つの原産地の特徴



国産鶏肉

国内生産
国内で生産され、スーパーなどの家庭向け販売で広く流通する。産地や生産者などの情報を確認しやすい商品もある。


ブラジル産鶏肉

輸入シェア68.2%
輸入鶏肉の最大供給国。冷凍品を中心に、加工食品や外食・中食などの業務用需要を支えている。


タイ産鶏肉

輸入シェア30.6%
ブラジルに次ぐ主要輸入先。鶏肉や鶏肉加工品の調達先として、日本の食品産業を支えている。


農畜産業振興機構の資料では、2025年度の国内鶏肉生産量は173万7617トン。輸入品の推定出回り量は60万6944トンで、主に加工用、外食・中食用に仕向けられている。一方、国産品の推定出回り量は172万5559トンで、家計消費用に使われることが多い。

この違いは、国産と輸入品の安全性に差があることを示すものではない。流通経路や利用目的の違いとして理解したい。

ブラジル産の評判は本当に悪い?

ブラジル産鶏肉については、価格の安さ、冷凍流通、過去の食肉検査不正問題などが評価に影響しやすい。

ただし、価格が安いことと食品衛生上の危険性は同じではない。大規模な生産・輸出体制や調達条件、輸送・保管方法など、価格を左右する要素は複数ある。

また、解凍後のドリップや食感、肉の風味に関する感想は個人差が大きく、食品衛生法上の違反実績とは区別して考える必要がある。

公的な輸入統計や検査実績からは、ブラジル産鶏肉が日本の輸入市場で大きな位置を占めていることは確認できる。一方、国産・タイ産と比べてブラジル産が一律に危険、あるいは安全だとする根拠にはならない。

鶏肉の原産国表示はどう見分ける?

スーパーでブラジル産か国産かを見分ける際には、パッケージの原産地表示を確認するのが基本だ。

消費者庁の食品表示制度では、生鮮畜産物について、国産品には国産である旨、輸入品には原産国名を表示することが定められている。

  • 「鶏肉(ブラジル産)」:ブラジル産の輸入鶏肉。
  • 「鶏肉(タイ産)」:タイ産の輸入鶏肉。
  • 「鶏肉(国産)」:国内産の鶏肉。
  • 「鶏肉(鹿児島県産)」:国内の主たる飼養地に基づく地域表示。

ただし、加工食品は表示の仕組みが異なる。国内製造の加工食品では、重量割合が最も高い原材料の原産地表示が基本となる。一方、輸入された加工食品では、商品の原産国名が表示されるが、それが必ずしも鶏肉の原産地を意味するわけではない。

例えば、海外で加工された鶏肉食品の場合、原産国名は加工食品として輸入された国を示す。原料の鶏肉が別の国から調達されている可能性もあるため、原材料表示も確認したい。

【家庭でできる安全対策】サルモネラ・カンピロバクターを防ぐ方法

ブラジル産に限らず、鶏肉を食べる際に気をつけたいのが細菌による食中毒だ。

代表的な原因菌は、サルモネラ属菌とカンピロバクター。いずれも鶏肉や鶏の内臓に関連する食中毒の原因となる。

産地に関係なく注意したい2種類の細菌



サルモネラ属菌

鶏肉や卵などを介して食中毒を引き起こす細菌。腹痛、下痢、発熱などの症状が生じることがある。加熱不足や調理器具を介した二次汚染に注意が必要。


カンピロバクター

鶏の腸管内などに存在する細菌。生や加熱不十分な鶏肉を食べることで感染することがある。下痢、腹痛、発熱などを引き起こす。


厚生労働省の2026年5月27日最終改正のQ&Aによると、カンピロバクター食中毒は日本で発生する細菌性食中毒の中でも発生件数が多い。2025年は220件、患者数1226人が報告されている。

これは国産・輸入を問わない国内全体の統計であり、ブラジル産鶏肉が原因となった件数ではない。

鶏肉は中心温度75℃以上で1分間加熱する

厚生労働省と農林水産省が推奨している基本的な加熱条件は、中心部の温度が75℃以上で1分間以上だ。

表面だけに火を通しても、内部に残った細菌を十分に減らせない可能性がある。厚みのある鶏むね肉や鶏もも肉、冷凍鶏肉を調理するときは、中心まで加熱されているか確認しよう。

家庭で実践したい5つのポイント




鶏肉を安全に調理するチェックリスト

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特に注意したいのが、生の鶏肉を水で洗う行為だ。汚れを落とすつもりでも、水滴とともに食中毒菌がシンクや周辺の食品に飛び散る可能性がある。ドリップが気になる場合は、キッチンペーパーで拭き取る方法が適切だ。

また、「冷凍だから細菌がいない」「新鮮だから生でも大丈夫」という考え方も避けたい。冷凍や鮮度だけで食中毒リスクがなくなるわけではない。

家庭での対策は、原産国を問わず同じように実践する必要がある。

【ブラジル産鶏肉の安全性】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2026年10月30日以降、ブラジル産鶏肉は輸入検査を受けなくなったのですか?

A1:いいえ。終了したのは2017年から続いていたブラジル産鶏肉向けの特別な取扱いです。輸入届出の審査や一般的なモニタリング検査、必要に応じた検査命令などは引き続き実施されます。

Q2:ブラジル産鶏肉には抗生物質が残っているのでしょうか?

A2:2025年度にはドキシサイクリン2件、エンロフロキサシン1件の基準値超過が記録されています。ただし、これは違反項目別の延べ件数であり、ブラジル産鶏肉すべてに薬剤が残留していることを示す数字ではありません。

Q3:ブラジル産より国産やタイ産の鶏肉を選んだ方が安全ですか?

A3:原産国だけで安全性の優劣は判断できません。日本国内で販売される輸入鶏肉にも食品衛生法に基づく基準が適用されます。購入時は原産国、保存状態、消費期限などを確認し、調理時には十分に加熱してください。

Q4:ブラジル産鶏肉のドキシサイクリンやエンロフロキサシンは検出されたら即違反ですか?

A4:必ずしもそうではありません。食品ごとに定められた残留基準があり、適用される基準を超えた場合に規格違反となります。2025年度のブラジル産鶏肉の違反は、厚生労働省の資料で基準値超過に分類されています。

Q5:ブラジル産の冷凍鶏肉は解凍後に生で食べられますか?

A5:生食は避けてください。冷凍や解凍によってカンピロバクターやサルモネラのリスクがなくなるわけではありません。必ず中心部まで75℃以上で1分間以上加熱してください。

まとめ:ブラジル産鶏肉は検査制度と家庭での管理が判断の鍵

2026年11月現在、ブラジル産鶏肉は日本の鶏肉輸入市場で68.2%という大きなシェアを占めている。2025年度には40万2773トンが輸入され、国内の食肉供給を支える重要な存在になっている。

一方、厚生労働省の2025年度監視結果には、ドキシサイクリン2件、エンロフロキサシン1件の残留基準違反が記録された。こうした実績を踏まえ、2026年には薬剤ごとのモニタリング対象も検査結果に応じて見直されている。

そして、2026年10月30日にはブラジル政府の改善報告を踏まえ、2017年から続いた特別な取扱いが廃止された。これは日本とブラジルの食品衛生管理における重要な節目だが、通常の輸入食品監視まで終了したわけではない。

【プロの結論】購入時に見るべき3つの判断基準

ブラジル産鶏肉を選ぶ際には、次の3点を判断基準にしたい。



原産国と商品表示を確認する

ブラジル産、タイ産、国産の違いを表示で確認し、加工食品では原材料表示もチェックする。


保存状態と流通管理を重視する

包装の破損、異常な液漏れ、保存温度、期限などを確認する。価格だけで選ばない。


調理時の衛生管理を徹底する

生肉からの二次汚染を防ぎ、中心部まで十分に加熱する。これは国産・輸入を問わない基本ルールだ。

ブラジル産だから危険、国産だから絶対に安全という単純な判断では、食品の安全性を正しく理解できない。大切なのは、国の輸入監視制度、残留薬剤の検査実績、商品の表示、家庭での衛生管理をそれぞれ分けて考えることだ。

2026年10月の制度変更を新たな出発点として、今後も厚生労働省の輸入食品監視結果やブラジル政府の衛生管理改善状況を確認していきたい。

主な情報源:厚生労働省「輸入食品監視業務」「令和7年度輸入食品監視指導結果」「ブラジル産鶏肉等の取扱いについての廃止通知」、農畜産業振興機構「令和7年度の食肉の需給動向について」、消費者庁「食品表示基準Q&A」、農林水産省「カンピロバクター食中毒予防情報」。

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如月 淳

芸能・エンタメ領域を10年以上取材してきたデスク。所属事務所の公式リリース、番組公式サイト、配信サービスの告知を一次情報として確認し、裏付けのない情報は記事にしない方針です。

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