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【歴史を振り返る】モンゴル出身力士はどのように角界へ広がったのか

橘 宗 橘 宗 • 更新: • 公開: • 読了約 11 分
目次

モンゴル出身力士の活躍は、1990年代初頭に始まった新しい潮流です。現在のように横綱や大関を輩出するまでには、先駆者たちの苦労と後輩へつながる入門ルートの形成がありました。

1992年、6人のモンゴル出身者が相撲界へ

転機となったのは1992年春場所です。

大島部屋からモンゴル出身の6人が新弟子検査に合格しました。その中には、後に関脇まで昇進する旭鷲山や、長く幕内で活躍する旭天鵬がいました。

しかし、入門当初から順調だったわけではありません。

言葉の壁、食生活、相撲部屋独特の上下関係などに苦労し、1992年8月には5人が部屋を離れてモンゴル大使館に駆け込む騒動も発生しました。その後、旭鷲山や旭天鵬らが日本に残り、力士としての道を歩み続けます。

1995年春場所には旭鷲山がモンゴル出身者として初めて関取に昇進。多彩な技を繰り出す相撲で注目を集めました。

朝青龍と白鵬がモンゴル勢の時代を築く

旭鷲山や旭天鵬の活躍によって、モンゴル国内で大相撲への関心が高まりました。

その後、朝青龍や白鵬らが次々と頭角を現します。

特に朝青龍の横綱昇進は、後輩たちにとって大きな目標になりました。日本の高校に進学して相撲を学ぶ道も広がり、明徳義塾高校から角界に入った朝青龍も、その代表例です。

1998年九州場所には外国出身力士の入門自粛が解禁され、原則として1部屋1人という受け入れ制限が設けられました。

先駆者が道を切り開き、後輩が続く。この循環が、モンゴル出身力士の層を厚くしていきました。

【強さの秘密】モンゴル相撲(ブフ)と大相撲は何が違う?

モンゴルの力士

モンゴル出身力士の強さを考えるうえで欠かせないのが、伝統格闘技のモンゴル相撲「ブフ」です。

ブフはモンゴルで親しまれてきた伝統的な格闘競技で、組み合いから相手を倒すことを基本とします。大相撲と似た技もありますが、ルールや競技環境には大きな違いがあります。

ブフと日本の大相撲の違い

比較項目 モンゴル相撲(ブフ) 日本の大相撲
試合場所 固定された土俵がない 円形の土俵
勝敗 相手の肘・膝・頭・背中などが地面につくと負け 足裏以外が地面につくと負け
足取り 足を取る技が認められる 原則として禁止
主な特徴 組み手、投げ、倒す技 押し、寄り、投げなど
試合環境 屋外の大会などでも実施 本場所は土俵上で実施

ブフでは手のひらが地面についても、それだけでは負けになりません。一方、日本の大相撲では手をつくと基本的に負けとなります。

また、ブフでは相手の足を取る攻撃も認められています。このルールの違いは、両競技の技術的な特徴を理解するうえで重要です。

ブフで培われる技術は大相撲でどう生きる?

ブフの経験が大相撲に生きると考えられるのは、主に次の能力です。

- 組み手の強さ: 相手の体勢を崩し、自分に有利な位置を確保する技術。
- 投げの感覚: 相手の重心を見極め、力の方向を利用する能力。
- バランス感覚: 組み合った状態で姿勢を保ち、崩されても立て直す能力。
- 身体の使い方: 腕力だけに頼らず、腰や脚を連動させる動作。

こうした能力は、四つ相撲や投げ技を得意とする力士にとって有利に働く可能性があります。

ただし、ブフの技術をそのまま大相撲で使えるわけではありません。土俵の大きさ、勝敗の条件、足取りの制限などが違うため、日本の相撲に合わせた技術の習得が必要です。

【プロの結論】モンゴル出身力士が強い理由は文化と育成環境にある

モンゴル出身力士の強さは、単に体格や身体能力だけで説明できません。

注目すべきなのは、伝統競技、入門ルート、日本での育成、個々の技術的な適応が組み合わさっていることです。

1. 伝統的な格闘文化が身近にある

モンゴルではブフが伝統文化として受け継がれています。

相手と組み合い、バランスを崩し、投げるという動作に親しみやすい環境は、大相撲に挑戦する際の基礎になり得ます。

ただし、モンゴル出身者全員が幼少期からブフを経験しているわけではありません。

実際、玉鷲は日本相撲協会のプロフィールで相撲を始めた年齢を20歳、欧勝馬は18歳と回答しています。出身国だけで競技経験を一括りにできないことも分かります。

2. 先駆者が後輩の目標になった

旭鷲山や旭天鵬の成功は、モンゴルの若者に大相撲という進路を示しました。

朝青龍、白鵬といった横綱が生まれると、成功の可能性はさらに具体的なものになります。

先輩の実績が後輩の挑戦を促し、相撲部屋や関係者を通じた入門のネットワークが形成されたことは、モンゴル勢の継続的な活躍を支えた大きな要因です。

3. 日本の相撲部屋で技術が磨かれる

大相撲で勝ち続けるには、ブフの経験だけでは足りません。

立ち合い、四股、すり足、ぶつかり稽古、四つの形、押し相撲など、日本の相撲に特化した技術が必要です。

加えて、15日間の本場所を戦い抜く体力や、相手ごとに攻め方を変える判断力も求められます。

モンゴル出身の実力者たちは、伝統的な身体の使い方を土台にしながら、日本の相撲部屋で専門技術を身につけてきました。

4. 個性の異なる力士が結果を残している

モンゴル出身力士の特徴は、全員が同じ相撲を取るわけではないことです。

- 朝青龍:攻撃力と瞬発力。
- 白鵬:技術と対応力。
- 日馬富士:スピードと鋭い立ち合い。
- 鶴竜:安定感と冷静な判断。
- 照ノ富士:重量を生かした寄り。
- 豊昇龍:投げを含む多彩な攻め。
- 霧島:左四つからの寄りと投げ。
- 玉鷲:強烈な突き押し。

同じ出身国でも、勝ち方は大きく異なります。

この多様性こそ、モンゴル勢を一つの固定的なスタイルで説明できない理由です。

【誤解を解消】モンゴル出身力士について知っておきたいこと

モンゴル出身力士を調べる際には、人数や横綱の歴史について混同しやすいポイントがあります。

モンゴル出身の横綱は5人ではなく6人

照ノ富士までを数えると5人ですが、2025年3月に豊昇龍が第74代横綱へ昇進したことで、合計6人になりました。

古い記事や過去のランキングでは5人と紹介されていることがあるため、情報の更新時期に注意が必要です。

現役23人が全員幕内力士というわけではない

2026年の23人という数字は、幕内だけの人数ではありません。

十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口など、各段の力士を含めた人数です。

大相撲では幕内と十両が関取と呼ばれ、幕下以下とは待遇や生活環境にも違いがあります。

モンゴル出身と外国籍は同じ意味ではない

日本相撲協会の力士検索では、出身地を基準に力士を調べられます。

そのため、モンゴル出身という分類は、現在の国籍だけを意味するものではありません。出身地と国籍を混同しないことが大切です。

現役力士を調べるなら番付とプロフィールを併用する

力士の情報を確認するときは、次の順番で見ると分かりやすくなります。

1. 日本相撲協会の力士検索で出身地を指定する。
2. 最新場所の番付で現在の地位を確認する。
3. 個別プロフィールで幕内優勝回数や最高位を見る。
4. 過去の星取表で直近の成績と休場状況を確認する。

特に横綱や大関は、番付に名前が残っていても休場している場合があります。番付だけで現在の実力を判断しないことが大切です。

【よくある質問】モンゴルの力士に関するFAQ

Q1:2026年現在、モンゴル出身の現役力士は何人いますか?

A1:日本相撲協会の力士検索では、2026年11月場所に向けた現役力士は23人です。横綱の豊昇龍、大関の霧島、幕内の欧勝馬や玉鷲などがいます。

Q2:モンゴル出身の歴代横綱は誰ですか?

A2:朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍の6人です。最も幕内優勝回数が多いのは白鵬の45回です。

Q3:モンゴル出身力士で最も強いのは誰ですか?

A3:歴代の実績で比較するなら、幕内優勝45回を誇る白鵬が代表格です。現役では豊昇龍と霧島が注目されます。優勝回数、最高位、直近の成績など、比較する基準によって評価は変わります。

Q4:モンゴル相撲と日本の大相撲は同じ競技ですか?

A4:同じではありません。ブフは土俵がなく、相手の肘や膝などを地面につけて勝敗を決めます。日本の大相撲は土俵から出ることや足裏以外が地面につくことも敗北につながります。

Q5:モンゴル出身力士が多く活躍するようになったのはいつからですか?

A5:大きな転機は1992年です。大島部屋から6人が入門し、旭鷲山や旭天鵬らが先駆者となりました。その後、朝青龍や白鵬らの成功によって後輩の入門が続きました。

Q6:玉鷲は2026年も現役ですか?

A6:はい。2026年11月場所の番付では東前頭15枚目に位置しています。9月場所で十両10勝5敗の成績を残し、幕内に復帰しました。

まとめ:モンゴル出身力士の歴史は2026年も続いている

2026年の大相撲でモンゴル出身力士は23人。豊昇龍と霧島が上位で存在感を示し、欧勝馬や玉鷲らが幕内で戦っています。加えて、出羽ノ龍や旭海雄といった新しい力士も幕内へ進出しました。

歴代横綱は朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍の6人。幕内優勝回数の合計は97回に達します。とりわけ白鵬の45回という記録は、モンゴル勢が大相撲の歴史に刻んだ大きな足跡です。

その背景には、モンゴル相撲(ブフ)の伝統、1990年代の先駆者たちの努力、日本の相撲部屋で培われた技術、そして後輩へ続く育成の流れがあります。

今後の注目点は、豊昇龍が横綱として安定した成績を残せるか、霧島が大関の地位を守りながら優勝を重ねられるか、そして新世代のモンゴル出身力士が三役や大関へ進めるかという点です。

モンゴル出身力士の歴史は、過去の名横綱だけで完結していません。2026年の土俵にも、その伝統を受け継ぐ新たな挑戦者たちがいます。

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