大相撲の賞金制度を理解するうえで、もう一つ知っておきたいのが「力士褒賞金」です。優勝賞金や懸賞金とは別に、過去の成績を積み重ねることで支給額が増えていく、角界独特の仕組みです。
力士褒賞金とは?持ち給金が増える仕組み
力士褒賞金は、十両以上の関取に本場所ごとに支給される報奨金です。基本となる金額は「持ち給金」と呼ばれ、力士が現役生活の中で積み重ねてきた成績によって増えていきます。
基本的な仕組みは次のとおりです。
- 序ノ口に上がった際の持ち給金は原則3円。
- 本場所で勝ち越した星1つにつき0.5円が加算。
- 平幕力士が横綱に勝つ金星1つにつき10円が加算。
- 幕内優勝で30円、全勝優勝なら50円が加算。
- 実際の支給額は、持ち給金に4,000を掛けて計算。
例えば、勝ち越しによって持ち給金が0.5円増えた場合、1場所当たりの力士褒賞金は2,000円増えます。幕内優勝による30円の加算なら、1場所当たり12万円の増額に相当します。全勝優勝の場合は50円の加算となり、1場所当たり20万円の差になります。
この制度の特徴は、優勝賞金のような一度限りの支給ではないことです。持ち給金が増えれば、その後も関取として在位する限り、本場所ごとの褒賞金に反映されます。
つまり、優勝はその場所の賞金を獲得するだけでなく、将来の報奨金にも影響する実績なのです。長く活躍してきた力士ほど、基本給以外の収入にも過去の成績が反映される仕組みになっています。
天皇賜盃や優勝副賞も受け取れる?
幕内最高優勝の魅力は、2,000万円という賞金だけではありません。千秋楽の表彰式では、優勝力士に天皇賜盃や優勝旗などが授与されます。
代表的な表彰・副賞には次のものがあります。
- 天皇賜盃: 幕内最高優勝を象徴する重要な賜盃。
- 優勝旗: その場所の幕内優勝を記念する旗。
- 内閣総理大臣杯: 幕内優勝力士に贈られる表彰。
- 各国・自治体・企業などの副賞: 友好杯や地域の特産品など、提供者によって内容が異なる賞品。
日本相撲協会の公式クイズでは、天皇賜盃の重さは約29kg、優勝旗は約5.5kg、内閣総理大臣杯は約40kgと紹介されています。特に内閣総理大臣杯は、天皇賜盃より重いことでも知られています。
こうした品々は、単なる金銭的な報酬とは違います。大相撲の伝統と歴史を背負った名誉の象徴であり、優勝力士の名前が歴史に刻まれる意味を持っています。
なお、副賞の品目は提供する国や企業、自治体などによって異なります。毎場所必ず同じ品物が贈られるわけではなく、優勝賞金と副賞を同じ金額として扱うこともできません。
【プロの結論】2027年の賞金改定で大相撲はどう変わる?

今回の改定で注目すべきなのは、幕内優勝賞金の2,000万円という数字だけではありません。十両以下の各段や三賞まで増額され、力士全体の待遇を見直す方向性が明確になったことです。
① 幕内優勝の価値を金額でも示した改定
幕内優勝は、15日間の本場所を通して最高成績を収めた力士だけが手にできる栄誉です。横綱や大関を含む幕内力士が争う頂点であり、優勝には安定した強さだけでなく、体調管理や精神面の充実も求められます。
その賞金が2倍になったことは、競技としての大相撲の価値を報酬面でも示す変更です。藤島親方が他競技との比較に触れたことからも、賞金水準を見直す必要性が協会内で検討されていたことがうかがえます。
② 下位の力士にも増額が及ぶ意味
大相撲は幕内だけで成り立っているわけではありません。十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口と、各段で力士が競い合い、番付を上げるために日々稽古を重ねています。
特に幕下以下は、十両以上の関取とは収入の仕組みが異なり、原則として月給制ではなく場所手当などが中心です。そのため、優勝賞金の増額は、各段で結果を残した力士にとって貴重な報奨となります。
序ノ口優勝の賞金が10万円から20万円に上がることも、下位の番付で戦う力士にとって無視できない変化です。幕内だけでなく、土俵全体に増額の恩恵が広がる点に今回の改定の意義があります。
③ 賞金と給与、手当を分けて見ることが大切
力士の収入を比較するときは、優勝賞金だけでなく、月額給与、場所手当、懸賞金、力士褒賞金を区別する必要があります。
例えば、幕内優勝賞金が2,000万円になったからといって、すべての幕内力士の収入が同じように増えるわけではありません。優勝できるのは各場所で原則1人であり、賞金は成績に応じた一時的な報奨です。
一方、関取の給与改定は毎月の収入に関係します。持ち給金による力士褒賞金は過去の成績が積み重なる仕組みです。この違いを理解すると、番付や成績による収入格差も見えやすくなります。
読者が賞金制度を比較するときは、次の3点を基準にすると分かりやすくなります。
- 一度に受け取る金額を知りたい場合: 優勝賞金・三賞・懸賞金を見る。
- 継続的な収入を知りたい場合: 月額給与と力士褒賞金を見る。
- 優勝の名誉や価値を知りたい場合: 天皇賜盃、優勝旗、各種副賞も確認する。
金額だけで力士の待遇や活躍を評価するのではなく、これらの制度を組み合わせて見ることが、大相撲の経済的な仕組みを理解する近道です。
【大相撲優勝賞金】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年11月場所の幕内優勝賞金はいくらですか?
A1:2026年11月場所までは1,000万円です。2027年1月の初場所から2,000万円に倍増します。
Q2:十両や幕下以下の優勝賞金も増えるのですか?
A2:増額されます。2027年初場所から十両300万円、幕下70万円、三段目50万円、序二段30万円、序ノ口20万円です。
Q3:殊勲賞・敢闘賞・技能賞の賞金はいくらですか?
A3:2026年11月場所までは各賞200万円です。2027年初場所からは各賞300万円になります。3つすべてを受賞した場合、賞金の合計は900万円です。
Q4:懸賞金と優勝賞金は同じものですか?
A4:別の制度です。優勝賞金は本場所の各段で優勝した力士に支給されます。懸賞金はスポンサーが懸けた取組に勝った力士が獲得するもので、1本7万円のうち力士の獲得分は6万円です。
Q5:大相撲の優勝賞金が改定されるのは何年ぶりですか?
A5:33年ぶりです。前回は1994年で、幕内優勝賞金が500万円から1,000万円に引き上げられました。2027年初場所からは2,000万円になります。
まとめ:大相撲優勝賞金は2027年から新時代へ
2026年11月場所までの大相撲優勝賞金は、幕内1,000万円、十両200万円、幕下50万円、三段目30万円、序二段20万円、序ノ口10万円です。
2027年1月の初場所からは、幕内が2,000万円、十両が300万円、幕下が70万円、三段目が50万円、序二段が30万円、序ノ口が20万円に改定されます。三賞も各200万円から300万円へ増額されます。
今回の改定は、1994年以来33年ぶりとなる大きな制度変更です。背景には力士の待遇改善や物価上昇があり、月額給与なども同時に見直されます。
大相撲の賞金制度を正しく理解するには、優勝賞金だけでなく、三賞、懸賞金、力士褒賞金、天皇賜盃や副賞まで区別して見ることが欠かせません。
2026年11月場所は従来の賞金額で争われる最後の場所となり、2027年初場所からは新しい賞金制度が始まります。幕内2,000万円という新たな目標が、力士たちの戦いにどのような変化をもたらすのか。これからの本場所では、優勝争いとともに賞金制度の新しい動向にも注目が集まりそうです。